おぢばにおかえり
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72部分:第十一話 おてふりその五
第十一話 おてふりその五
「それじゃあね」
声を小さくしてきました。それでも聞いてきますけれど。
「どの色なの。ライトブルー?それとも黒とか」
「黒ってね」
流石にそれはないです。顔が赤くなりました。
「そんなの持ってないわよ」
「あら、大人しいのね」
「あんた持ってるのね、それじゃあ」
「一応はね」
高校生で黒だなんて何て大胆な。最近ティーバックの娘もいるそうですけれど。
「着けたことはないわよ。勝負用だから」
「わかったわ。私は黒は持っていないから」
「じゃあ何の色なのよ」
「・・・・・・白よ」
下着は白が好きなんでそれを一番多く持っています。他にはこの娘が挙げた黄色とかライトブルーとかベージュとか。東寮はそういうところにも厳しいのでそうそう派手な下着は持っていられないんです。
「清楚なのね、それじゃあ」
「清楚かどうかわからないけれどそうよ」
こう彼女に答えました。
「悪いかしら」
「別に」
それは悪くないと言ってきました。
「ちっち白が似合うしいいわよ」
「それって下着が?」
「決まってるじゃない」
今の会話の流れだとそれしかありませんでした。
「そっちよ。スタイルもいいし」
「胸ないわよ」
自覚しています。背と同じで凄くコンプレックス感じています。
「言っておくけれど」
「馬鹿ね、スタイルって胸だけじゃないわよ」
けれど逆にこう言い返されました。
「足とかお尻だって」
「お尻って」
「ちっちってお尻の形いいじゃない」
「そう?」
自分では全然自覚ないんですけれど。お尻の形なんて今まで全然意識したこともありませんでした。今はじめて言われたことです。
「ウエストだって締まってるし」
「それは有り難う」
「足だって奇麗じゃない」
「足見せるの好きじゃないのだけれどね」
これは本当です。ですから制服の時以外はズボンかロングスカートです。大抵それなんでお母さんは中森明菜さんみたいだって言います。お母さんは明菜さんのファンなんです。
「それでも奇麗じゃない。その胸だって」
「だから小さいんだけれど」
「小さくても形はいいじゃない」
また言われました。
「だからいいのよ。ちっちのスタイルは」
「あまり納得できないけれど」
口ではこう言いましたけれど実際は全然納得できません。とてもそうは思えないからです。
「まあまあ。それでね」
「ええ」
話は続きます。
「最近同じ部屋の長池先輩とか高井先輩のスタイルに目がいってるでしょ」
「だってあの人達」
高井先輩というのは三年の人で長池先輩といつも一緒におられる方です。色が白くて目が大きくてぱっちりとしていて唇がとても赤くて。長池先輩とはまた違ったタイプの凄い奇麗な人です。最初見た時はアイドルかしらと思った位で。岡山の方の教会の娘さんです。
「スタイルだっていいし」
「そうよね。それも凄くね」
「長池先輩は太ってるからって言われるけれど」
「何処がよ」
彼女はそれはすぐに否定しました。
「あんなスタイルの人って。タレントさん位よ」
「そうよね。凄いスタイルよね」
「絶対に謙遜よ。水着なんか着たら多分凄いわよ」
「水着ね」
「そう、水着」
彼女は言います。
「それ着たら凄いと思うわよ」
「下着姿見たことある?長池先輩の」
「お風呂場でね」
こう答えが返ってきました。東寮にもお風呂があります。やっぱり一年生は長い間入るだけの時間はありませんがそれでも毎日入っています。
「見たことあるけれどあれ男の子が見たら」
「一撃よね」
「そうね、それで終わりだわ」
それだけ先輩のスタイルっていいんです。本当に羨ましい。
「顔もあんなに奇麗だし」
「そうなのよねえ。親神様から二物も三物も与えられているわよね」
「だから羨ましいのよ」
何か先輩の話だとどんどん出て来ます。
「おぢばって本当に奇麗な人多いけれどね」
「何故かわからないけれど先輩に多いのよね」
「特に三年にね」
「そうそう」
彼女は私の言葉に頷いてくれました。
「私達は全然なのに」
「けれどいつもこうらしいわよ」
「いつもって?」
私の言葉に顔を向けてきました。
「三年の人はいつも後輩から奇麗な人が多いって言われるんだって」
「そうなの」
「私も先輩から聞いたのよ」
こう彼女に教えます。
「いつもこう言われていくらしいわ。天理高校の伝統らしくて」
「そうだったの。何か面白いわね」
「どうしてかはわからないけれどね」
「女の子って十八になったら凄い奇麗になるって言うけれど」
「諺でもあったわよね」
「確かね」
娘十八番茶もでばなでしたっけ。誰かがそんなことを言っていたような。
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