魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話
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第九十八話
「おい、一夏昼食だ。起きろ一夏」
箒が一夏を揺すって起こそうとする。
「起きないわね…」
「あれだけ弄られて起きないなら、このくらいじゃおきない」
ベルリン発パリ行き。
朝9時から乗って現在12時37分。
約三時間の間、全身を弄られながらも一夏は目を覚まさなかった。
「仕方ない…」
箒が手にサイオンが集める。
「箒…なにしてる…の?」
「一夏を起こすだけだ」
箒の手…親指と中指に圧縮されたサイオン。
その右手を一夏の顔の前へ持っていき……
パチン! と指を鳴らした。
物理的な音は、軽い指パッチン。
しかし、コンパートメントにいる全員が咄嗟に耳をふさいだ。
そして眠り続けていた一夏も…
「ふみゃぁっ!?」
飛び起きた。
一夏がまるで猫が毛を逆立てるように背を丸める。
「ふーっ!」
そしてキョロキョロと周りを見渡す。
周りが耳をふさぐなか、箒だけが悠然と立っていた。
「ようやく起きたか一夏。昼食の時間だぞ」
「サイオン込めた指パッチンはダメだろ…」
「だがこれが確実だろう?」
想子を籠めた行動は、術式の意志がエイドスに焼き付き、概念的に強化される。
想子を籠めて殴れば、貫通力や衝撃が概念的に大きくなる。
指パッチンのように、音を発てる行動なら、音が概念的に大きくなり、音波と同様にサイオン波が広がる。
魔法の適性がある者ならば、今のサイオン波を擬似的な音と感知する。
「まぁ…いいや…パレードキャスト」
一夏がパレードで耳と尻尾を消す。
「おにーちゃん、なんでかくすの?」
「普通のニンゲンに猫耳ははえてないの。
今から降りて弁当を買うからな」
しかし、一夏が寝ている合間にずっと弄っていたので、円香は一夏の耳の位置を覚えていた。
「えい」
ふにふにふにふに…
「んっ…」
簪が一夏の顎に手をのばした。
「ふにぃ…」
そこで箒がウカノミタマを使い術式を編み始めた。
式の内容はパレード。
ただし一夏が隠した耳と尾が存在する姿への変更。
箒が一夏へ魔法をかけると、一夏の姿がぶれた。
やがて、定義破綻を引き起こし、どちらの術式も崩壊、一夏の耳と尾が現れた。
「稲荷、認識結界。私達全員の認識を楔にしろ」
『はいはー…あ、橙が式くれた』
「やってくれ」
ウカノミタマから箒の魔法演算領域へ式が送られる。
その式がゲートを通過し…
「これで問題あるまい」
「おりむぅ本当の猫みたいだ~」
そこで箒が悪い笑みを浮かべた。
箒が自分の狐の尾を一夏の前に出す。
ふりふり…ふりふり…
一夏がそれに手を伸ばす。
掴もうというタイミングでスルリと抜ける。
「あ…」
と一夏が声をあげ、箒を睨む。
再び箒が尾を出し、一夏がつかみ損ねる。
「むぅ…」
それを見て、エレンが口を開く。
「にゃんこだ…」
「はっ…!」
それを聞いた一夏がハッとした顔をして、湯気が出るほど顔を赤くした。
「や、これはその…えっと…」
「仕方あるまい。獣としての本能がそうさせているのだろう?
私とて、この獣の欲には逆らえん」
箒が自分の耳と尻尾を示しながら言った。
「狐って性欲強い動物だったっけか…?」
一夏の呟きは尽く無視された。
そして他の者が一夏を撫で回し、一夏がうっとりとした顔を見せる。
そして、ガラリとコンパートメントのドアが開かれた。
「若、昼はどうするんだ…………ぃぃ?」
入ってきたのはフィグネリア・アルシャーヴィン。
エレンとリムの母親だった。
「………なんで姫に耳と尻尾が…?」
「「「「「「??」」」」」」
箒と一夏以外が、クエスチョンマークを浮かべた。
何故箒だけに言及するのかと。
「そういう術だ気にするな」
と箒が答えた。
それはフィグネリアへの回答でも、このコンパートメントの中の全員への回答でもあった。
「あ、あぁ、そうかい。ならいいや…
あー…えと、昼はどうするんだい?」
停車時間は15分。
その間に弁当を買うなり何なりしなければいけない。
「弁当を買うつもりだ。千冬さん達はどうすると言っている?」
「ヴァナディース達も駅で弁当を買うと言っていた」
「そうか…行くぞ一夏。
ほらみんなも、一夏を弄るのはそこら辺にして」
「えー…おにーちゃんの耳と尻尾…」
円香が名残惜しそうに箒を見つめる。
「後で幾らでもできるだろう?
ほら、時間がないんだ」
「はーい…」
円香が渋々うなずいた。
箒が一夏を抱き上げ、コンパートメントを出る。
それに続いて後の面子も続く。
同時に隣のコンパートメントから千冬達が出てきた。
「む…何故お前達はケモミミをだしている」
二人にケモミミが有ることを知っている者には、認識結界は作用しない。
「いろいろあったんだよ姉さん。触れないで」
「そうか」
列車から降り、購買…と言うには大きい店に集まる。
「で、何食べる?」
一夏が聞いた。
全員がゲテモノでなければ何でもいいと答えた。
「じゃぁ全員並ぶのは不味いから買って来るぞ」
と一夏が箒の腕から出た。
しかし今度は千冬が抱き抱えた。
「なんだよ」
「たば……あぁ…いや…ヴィッサリオン、頼めるか?」
千冬が束の名を呼びかけ、止め、ヴィッサリオンの名を呼んだ。
「ああ、それが無難だな。フィーネ、手伝ってくれ」
「はいよ」
アルシャーヴィン夫婦が購買に並ぶ。
「いっ君の身長じゃぁ、十六人分は持てないでしょ?
いま身長いくつ?125ないでしょ?」
束がIScore0001INNOCENTで図った一夏の身長は…121.72センチ。
日本の平均的な『小学二年生』の『女子』の身長である。
一夏は幼い顔つきや腰近くまで伸ばした髪故に、本当に小二女子に見える。
なお円香の身長は一夏より頭一つ分大きい。
「うるせぇ…」
「ふむ、エレオノーラ、リムアリーシャ、今身長いくつか教えてくれないか?」
千冬が二人に尋ねた。
「ひゃくじゅうご」
「百十六です」
「やめろぉぉぉぉっ!?俺が必死に言及しなかった事を言うな!」
「あと数年でぬかれそうだな…
エレン、リム。もうすぐ一夏の身長を抜けるぞ」
「一夏お姉ちゃんを、抱っこ、できますか?」
「ああ、すぐになるだろう。箒は…小三あたりから一夏を膝の上に抱いていただろう?」
「ええ、だいたいその頃からですね」
「やめろ言うんじゃない!」
千冬の腕の中でジタバタする一夏は、駄々を捏ねる子供のようだった。
「でもいっ君って筋肉質だから見た目よりかなり重いよ?」
「30キロ強くらいかな…?」
と抱えている千冬が答えた。
121.72で30強。
一夏の体型から考えると明らかに異常な比率だ。
ムスッと膨れる一夏の頬を、両側から篠ノ之姉妹がつついた。
ぷしゅ、と空気が漏れて、いっそう一夏が不機嫌そうな顔になった。
「一夏くん、そんな顔しても可愛いだけよ?」
「うるさいぞ刀奈」
刀奈が一夏を撫でようとして…
「ふしゃー!」
威嚇された。
「もう、ツレないわね…」
一夏を中心にぎゃぁぎゃぁ騒いでいるとヴィッサリオンとフィグネリアが戻って来た。
「とりあえずハンバーガーでよかったか?」
「構わんだろ」
「あー、若はいいだろうが、ブリュンヒルデ達はカロリーとか大丈夫か?」
「ヴィッサリオン、お前フィグネリアの尻にしかれすぎだ。
まぁ、気にするな。ここには普通の女子の方が少ないからな。
成人男性より要求カロリー大きい輩ばっかりだぞ」
千冬が抱き締める腕をキツくした。
「ふぎゅ!」
「一夏。少し黙っていろ。いいな?」
「事実だろ…姉さんとか筋肉率よんじゅ…うきゅ!?」
尚も文句を言う一夏を自分の胸に押し付け黙らせた。
「む~!む~!」
「じゃぁ、ヴァナディース。若を連れて戻ってくれ。
私たちが配るから」
「うむ。わかった」
フィグネリアの呼び掛けで、全員が車内へ戻って行った。
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