魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話
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第九十七話
パレードキャスト。
耳と尾を隠す。
「ふむ…世界のヴェールよ我らを隠し、匿いたまへ」
何故か箒が認識阻害の式句を詠唱した。
「ねぇ二人とも、さっきから言ってるのって呪文?」
「詠唱は無くてもいいけど、イメージがはっきりしやすいんだ。
さっき水珠造ったとき何もいわなかっただろ?
あと、最初に見せたのはサービスだよ」
「そうだな。あとは…」
箒の手が俺の猫耳に伸びる。
「今の一夏は猫耳が無いように『見せている』だけだ。
つまり、見えないけど触れられる」
「んっ…」
箒に耳をふにふにされる。
けどこっちも箒のしっぽをもふもふする。
「おりむぅに耳と尻尾があるの?」
「うむ。触ってみるか?」
「おい、俺の耳と尻尾だぞ。
お前がかってに…
ひぅっ!?」
突然尻尾を掴まれた。
「刀奈…」
「あら…本当にあるのね…」
「急に触るな。びっくりするだろう」
「刀奈さん。一夏は尻尾を責められるといい声で啼きますよ」
「本当?」
「本当です」
「止めろ。小さい子もいるんだぞ」
と円香達を指差す。
円香と箒、リムと簪の間に、情報的隔絶があった。
「何の為の認識阻害だと思っている?」
「まさかお前…」
「これで三人にバレずにお前を愛でられる」
そんな事の為に認識阻害かけたのか!?
「お前こそ自分に掛けている全ての魔法を解いたらどうだ?
先程からエレン達の氷球の維持にもリソースを割いているだろう?」
そりゃこんなの見られたくないからな。
現在、三人が氷球で遊んでいられるよう、氷球の温度維持をしている。
「響く12時の御告げ」
パレードディキャスト。
耳と尻尾が現れ、瞳が金色に染まる。
「おぉ…感激」
「おりむぅ…かわいい」
「箒ちゃん、抱っこさせて」
箒が俺の脇の下に手を入れ、刀奈の膝の上に置いた。
「おいこら」
「嫌なら抵抗すればいいじゃない。
しないって事はOKって事よね?」
「できたら苦労しねーよ」
今の膂力どんだけあると思ってんだ。
お前のせいだからな奏。
『俺様のせいってか?』
あーあ…円香助けたあと問答無用で叩き切れば良かった。
「あー、もう好きにしてくれ。寝る」
side out
「あー、もう好きにしてくれ。寝る」
一夏は目を瞑り、全身の力を抜いた。
「くぅ…くぅ…」
「寝るの早!?箒ちゃん、いつもこうなの?」
「だいたいこうですね。あと一夏は一回寝たらほぼ起きないので悪戯し放題ですよ」
「いた…ずら…?」
と簪が目を輝かせる。
「エロ方面は無しだがな」
刀奈が一夏の腹の前で手をくむ。
「おぉ…なんというフィット感…
箒ちゃんの気持ちがわかるよ…」
刀奈が、おもむろに一夏の首筋に顔を寄せる。
「お姉ちゃん…何してるの…」
「なんか、一夏君っていい匂いするのよね…
この前空港で抱きついたときもそうだったし…」
すんすんと首筋の匂いを嗅ぐ姉に、簪が低温の視線を向ける。
「お姉ちゃん…匂いフェチ?」
「違うわよ…簪ちゃんもやってみる?」
簪が席を立ち、刀奈の抱き抱える一夏の首筋に顔を近づける。
「ふぁぁぁ…」
うっとりとした顔を見せて、自分の席に座った簪を見た箒の内心は…
「(簪も堕ちたか…)」
「わあぁ~かんちゃんがエッチな顔してる~」
と本音も確かめようと席を立った。
「いいですか?」
「ええ、良いわよ本音」
本音が一夏の首筋の匂いを嗅ぐ。
「わ~…なんかえっちな匂いがするぅ…」
ペロッ…
「うみゅぅ…」
「ほ、本音!貴女なにしてるの!?」
簪が従者の暴挙を咎める。
「え~だってだってあんなにいい匂いなんだから味もどうかな~って…」
刀奈も同意見なのか、一夏の首筋を舐めようとして…
「あら…?」
刀奈がピタリと止まった。
「どうしました刀奈さん?」
「いえ…この傷…」
刀奈の視線の先には、二つの穴と歯形。
「ねぇ、箒ちゃん。これってもしかして…」
「はい…おそらくは…」
それは、一夏がニンゲンをヤメタ証し。
刀奈が、一夏の首筋、傷口に吸い付く。
「これでよし」
「良いわけないでしょお姉ちゃん。
なんでキスマークつけてるの」
「ちょっとした当て付けよ」
そこで、ピシリと音がした。
物理的な音ではなく、術式が崩壊した音だ。
「あー!おねーちゃんに耳がはえてるー!」
箒の認識阻害が切れたのだ。
一夏が眠った事で解除された氷球の維持。
そうして、氷球が溶け始め、エレンが一夏を見やった。
認識阻害とは注意を逸らす術であり、隠蔽の術ではないのだ。
「む、突破されたか」
三人が席を立ち、一夏を抱えた刀奈の前に集まる。
「さわってみる?」
「いいんですか?」
「構わんぞリム。好きにしていいという言質は取ってある」
箒が一夏を持ち上げ、刀奈と自らの膝の上に腹這いで乗せた。
するとリムが一夏の猫耳を触り始めた。
「わぁ…」
くすぐったそうに耳がぴこぴこ動く。
「わぁ…おねーちゃんの頬っぺたぷにぷに…」
エレンが頬をつつくと処女雪のように白く、絹のように滑らかな肌がへこむ。
ある程度つついていると…
「にぃ…」
と煩わしそうに寝返りを打ち、体を丸めた。
「おっと…」
膝の上から落ちそうになったのを箒が対物障壁で支える。
箒が窓際の席へ移動し、空いた箒と刀奈の間の席に一夏を下ろす。
「おりむぅって赤ちゃんみたいだね」
「赤子と言うよりは仔猫だな」
本音と箒の言うとおり、一夏が体を丸めて眠る姿には庇護欲がそそられる。
このコンパートメントの中心は、間違いなく一夏だった。
『一夏を好く者は多い方がいい』
箒はソレを見ながら、そんな事を思っていた。
『なにかあった時。一夏を繋ぎ止める鎖』
それこそ、一夏を最も近くで見てきた箒が求める物だ。
一夏は、箒の目の前で、預り知らぬ所で、幾度となく死しては甦っていた。
一夏は、箒や千冬や束には、気づかれていないと思っている。
だが…
『お前のメティス・サイトが弱まる時。
私達は、どうしようもなく不安になる…』
その小さい体の持ち主の異能。
それが弱まるとはすなわち…
「一夏……私達を置いていくなよ…」
その一言を聞いていたのは、猫座の少女だけだった。
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