レーヴァティン
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第四十六話 忍の者その二
「味方は出来る限り多く」
「敵は少なく」
「そうあるべきです」
「敵を作るのが好きな奴もおるがのう」
「それはもう愚か者か自暴自棄かそれを楽しんでいる様な」
「変わった奴じゃな」
「そうでもないとです」
とてもというのだ。
「敵を増えて喜ぶものではありません」
「そうじゃな、確かに」
「ましてやこの島を統一し確かな政もし世界をも救うなら」
「敵を増やさず、悪い芽は摘み」
「そうしていってだな」
「この島を治めることが肝心です」
「迂闊に敵を作るなぞな」
英雄も理解して良太に応える。
「まさに愚の骨頂だ」
「そうです、一人の人生でもそうです」
「国、そして治める者としてもな」
「するものではないです、まして忍の者は」
「織田信長の伊賀の話があるがな」
「あれは伊賀の国人衆を抑える為のものです」
信長の伊賀攻め、歴史に残るそれはというのだ。
「その為に必要だったもので」
「信長が忍者を嫌っていた、敵としていた訳ではないな」
「彼自身忍者をよく使っていましたし」
重臣の一人だった滝川一益は元々忍の出身だった、そして彼も諜報活動や工作によく忍を用いていたのは言うまでもない。
「むしろ彼はあくまで天下統一を目指していただけで」
「敵を作ることを望んでいなかったな」
「天下統一の障害になるものを取り除いていただけです」
「血を好んだ人物でもなかったな」
「確かに激しやすい性格だった様ですが」
このことは歴史に確かにある。
「しかし特に残忍でも虐殺を好んだ訳ではありません」
「合理主義だったな」
「はい、必要というかせねばならないと判断してです」
そのうえでというのだ。
「伊賀攻めも。有名な一向一揆との戦いもありました」
「どちらもよく殲滅戦と言われているな」
「ですが同じ時代の欧州の宗教戦争や異端審問と比べますと」
良太はこちらの話もした。
「殺した人の数も殺し方も遥かにましでした」
「現実としてそうだったな」
「はい、織田信長は実際はそうした人でした」
「敵を作る男でもなくだな」
「残忍でもありませんでした」
「むしろ領民からは慕われていたな」
これは若い頃からのことだ、うつけと呼ばれていた頃から。
「善政で」
「はい、かなり慕われていました」
「そうだったな」
「そのことを考えますと」
「俺達もだな」
「出来るだけ多くの者を味方にすべきであり」
「悪い芽もだな」
「摘んでいくべきです、もっとも悪い芽を摘む中で」
島を統一し行うべき政治を行い海の魔神を倒し世界を救う為にだ。
「敵がいればです」
「倒すべきだな」
「それは必要ですが」
「それでもだな」
「出来るだけです」
「敵は少ない方がいいな」
「そういうものです、これも織田信長はしてきました」
「天下統一の邪魔になる、そうしたものを排除してきた」
このことも歴史にある、具体的に言えば寺社勢力であり土着の国人勢力であり室町幕府であったのだ。
「そういうことだな」
「それが後で江戸幕府になった時に生きました」
「あの長い平和な時代にだな」
「至る土台になりました」
信長のその古い勢力、寺社勢力を一掃したことをだ。
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