銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません
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第九十五話 宴の後で
短めです。
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第九十五話 宴の後で
帝国暦480年12月24日
■オーディン 帝国軍幼年学校寮
テレーゼの料理会に招待された、ラインハルトとキルヒアイスが、
門限ギリギリに帰寮したが、2人の表情は正反対であった。
ラインハルトは終始なにか気にくわない顔をしているが、
キルヒアイスは苦笑いをしながら、ラインハルトをあやしている様に見える。
「キルヒアイス、今日ほど胃がむかつく事と頭にきたことはないぞ!!」
「ラインハルト様、お怒りをお鎮め下さい」
「キルヒアイスは、姉上と一緒に喋って、
姉上の料理を食べて居たからそんな事が言えるんだ!」
「ラインハルト様」
「あの小娘のせいで散々チシャを食べさせられたあげく。ド甘な茶を飲ませられて、
よりによって姉上の前で吹き出したんだ!これほど恥ずかしい事はない。
姉上には行儀が悪いと窘められるし、姉上にも恥をかかせてしまったんだ。
しかもあの男が姉上と一緒にいたため俺は殆ど姉上と喋れなかったんだぞ」
「ラインハルト様、今回は殿下が主催ですから、我が儘も言えませんし」
「グリンメルスハウゼンの娘は、チシャばかり勧めてきて苛つかせるばかりだ!」
「まあ、相手もラインハルト様がチシャを嫌いだとは知らなかったのでしょう」
「大体、マリーンドルフ伯の娘も味覚が可笑しいんじゃないか?
あんな変な物を旨いと飲んで」
「人それぞれですから。何とも言えないのではないですか?」
「それにしても、アレは悪意すら感じたぞ!」
「ラインハルト様の思い過ごしではありませんか?」
「キルヒアイスのみが、良い思いをしているのでから、そうも言えるだろう!」
ラインハルトが癇癪を起こし始めた為、キルヒアイスはやれやれと思いながら謝る。
「ラインハルト様、アンネローゼ様を独占して申し訳ございません」
結局はキルヒアイスがラインハルトの剣幕に謝る事で、
ラインハルトは多少なりとも溜飲を呑んだ。
キルヒアイスにしてみれば、単なるとばっちりを受けた訳で釈然としない感じであった。
キルヒアイスが機嫌が悪くなって来たのを感じたラインハルトは別の話題を振ってきた。ラインハルトは自分が不利になるとよく話題を変えてくる癖があった。
「所でキルヒアイス、あの老人を見たか」
「グリンメルスハウゼン大将閣下の事でしょうか?」
「そうだ、あの老いぼれだ」
「いくら何でも老いぼれは言い過ぎでは」
「いや、今回あの老いぼれが憲兵総監に就任したそうだが、なんの実績もない老いぼれを総監職に就けるとは皇帝の見識を疑うな、最も最近の平民への人気取りにしては些か穴が有りすぎるがな」
「グリンメルスハウゼン閣下は、フリードリヒ4世が大公時代に侍従武官をしていて、
口には出せない事のお世話をしていたそうですからね、そのことも関係しているのでは?」
「それだ、自分の腹心だからと地位を与える、此のどこが臣民の為になるといえるのか聞いてみたいモノだ。それにいきなり不正を暴いてガス抜きのつもりだろうが平民はだませても俺はだません。結局は単なる人気取りじゃないか」
「ラインハルト様、お声が大きいです」
「心配するな、外では言わないさ」
「しかもあの老いぼれは、宴中も居眠りばかりしていたじゃないか。噂に聞くと仕事中も総監室で居眠りをして、副総監と副官が仕事をしているそうじゃないか。あんな老いぼれは生きているだけで酸素の浪費でしかない。さっさと引退してしまえば晩節を穢さずに済むモノを」
キルヒアイスは、少々言い過ぎじゃないかと思いながら溜息をつくのであった。
「今回は、大変でしたが、少しでもアンネローゼ様とお話出来たのですから良しと致しましょう」
「キルヒアイスだけだ」
「再来週には館でお会いできるのですから、我慢致しましょう」
ラインハルトはキルヒアイスを見ながら、冗談を言おうと思った。
「キルヒアイス、再来週は俺だけで姉上の所に行くからな」
「ラインハルト様・・・・」
「冗談だ」
幼年学校の夜は更けていく。
■オーディン リヒテンラーデ侯爵邸
エルフリーデがにこやかに自宅へ帰宅してきた。
それをリヒテンラーデ侯が孫を見るような目でにこやかに見ている。
「大叔父様ただ今戻りました」
「エリー、お爺様で良いのだよ」
「すみません、お爺様」
「所で殿下のお食事会は如何であったかな」
「皇帝陛下がいらっしゃいまして、お料理を食べて頂きました」
「なんと陛下が、それは恐れ多いことだ」
「陛下がズーッとテレーゼ様のお友達でいて欲しいと、仰いました」
「それは、名誉なことだぞ。確と肝に銘じることだぞ」
「はい、お爺様」
「他には何か有ったかな?」
「お爺様、フリーデグット・フォン・エッシェンバッハ様に更にお近づきになりました」
「ふむ。エッシェンバッハの孫じゃな」
「はいそうです」
「エリーはフレーデグットを好いて居るのか?」
エルフリーデはそう言われて頬を赤くする。
「よいよい、よい事じゃ」
「お爺様・・・」
「エリーが幸せになるなら、エッシェンバッハに話しても良いぞ」
エルフリーデがもの凄い力を入れて返事をする。
「お爺様、是非お願いします」
リヒテンラーデ侯は、その返事を聞いて、オドオドしていたこの子も、明るい子になったな此もテレーゼ様のお陰やかもしれんなと考えながら、次期宇宙艦隊司令長官と誼を結んでおくのも良いことだと思い。エッシェンバッハにどう話そうかと思うのであった。
帝国暦480年12月25日
■オーディン エッシェンバッハ子爵邸
リヒテンラーデ侯がエッシェンバッハ子爵に面会を認めてきた。
グレゴール・フォン・エッシェンバッハは、国務尚書自ら訪ねてきたのを不思議がった。
「リヒテンラーデ侯爵、わざわざのお越し恐縮です」
「エッシェンバッハ子爵、いきなりの訪問すまんな」
「なにか不測の事態でも起こったのでしょうか?」
エッシェンバッハは不思議がっている。
「昨日、テレーゼ様の食事会が有ったのは承知して居るな」
「恐れ多くも陛下が御臨席為さったとのことですが」
「うむ、その時じゃがな」
「もしや、フレーデグットが何や粗相を?」
「いや、孫娘のエルフリーデがフレーデグット殿を見初めてな、是非婚約をして欲しいともってな」
エッシェンバッハは考えた。そう言う事か国務尚書と次期宇宙艦隊司令長官の縁組みか、ある意味政略的に良い話かもしれんな、皇帝陛下の御為になるなら受けても良い話だ。
「侯爵、陛下の思し召しならば、私には異存はございませんが」
リヒテンラーデ侯は考える、陛下に頼むと言う事かその方が良いやもしれんな。
「儂もそれは良い考えだと思う、近いうちに陛下へお伺いをしようではないか」
「判りました、そうして頂きたく存じます」
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