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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

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第九十四話 お料理会 後編


リンディ茶登場。

会場はローエングラム邸でした。
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第九十四話 お料理会 後編

帝国暦480年12月24日午後0時30分

■オーディン ノイエ・サンスーシ ローエングラム邸

 テレーゼ達が料理準備を終えて、テーブルへ料理が並べられると、
女官がそれぞれの部屋にいる。男子ゲストを呼びに行った。
最初に呼ばれてきたのは、フリーデグット、アルフレッドの士官学校組。

「殿下、この度は、宴にご招待頂き光栄でございます」
フリーデグットが礼儀正しく挨拶をする。テレーゼ殿下からの宴の招待を受けたとき、
それを聞いた祖父が、感謝の気持ちを忘れないようにと念を押してきた。
祖父は爵位を頂いたことに大変感謝しているのである。無論自分も感謝している。

「殿下、このランズベルク伯アルフレット、ご招待頂き光栄でございます」
アルフレッドは、装甲擲弾兵に弟子入りして精神的に落ち着きが出てきていた。
その為、今までと比べてオーバーアクションが少なくなってきていた。

「お二人とも良くいらっしゃいましたわ、今日はゆっくりしていってくださいね」
「「御意」」

続いてラインハルトとキルヒアイスが呼ばれてきた。
入るなりにアンネローゼの顔を見て嬉しそうな顔をする2人だが、
その前にはテレーゼが立っている為、嫌だが挨拶をせざるを得ない。

「殿下。この度は宴にお呼び頂きありがとうございます」
ラインハルトが、嫌々ながら言っているのが判る状態である。

「殿下、御意をえまして誠に祝着至極にございます。
この度は私のような者をお呼び頂きありがとうございます」
キルヒアイスは流石に人間が出来ているので、
不満を顔には出さずに感謝しているように挨拶を行う。

「シェーンヴァルト、一別以来ですね。今日は楽しんでいって下さいね」
「キルヒアイス、初めてですね、今日は楽しんでいって下さいね」
テレーゼの猫なで声にラインハルトは拍子抜けする。

キルヒアイスはテレーゼに初めて会うので、
ラインハルト様がテレーゼの事を言っているのと話が違うので、
大げさに言っていたのかと不思議がっていた。

ラインハルトはアンネローゼの元へ早く行きたいが座る位置が次のようになったのである。皇帝とグリンメルスハウゼンは未だ来ていないが、遙かに遠い状態である。


①皇帝
②グリンメルスハウゼン
③フリーデグット
④ランズベルク伯
⑤ラインハルト
⑥キルヒアイス

Aアンネローゼ
Bエリザベート
Cエルフリーデ
Dヒルデガルド
Eテレーゼ
Fマルガレータ

Gクラリッサ
Hブリギッテ
Iヴィクトーリア
Jヴェストパーレ
Kカテリーネ
Lズザンナ
Mカロリーネ

          
 ① A ② B ③ C ④ D ⑤ ⑥   
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 
        テーブル           
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 E F G H I J K L M        

     

遠くて挨拶にいけない状態のラインハルト達は非常に焦っていた。
取りあえずはこの位置で座り、好きな料理を取りに行き食べるのである。
しかし、男性陣は殆ど立つことが出来ずに、

女性陣が持ってくる料理を食べることになるのである。
それはラインハルトを簡単にはアンネローゼに近づけない為であった。
メインデッシュ(アンネローゼ)は最後に頂くのが良いからである。

ラインハルト達が挨拶を行って座った直ぐ後に、
侍従が皇帝陛下のお成りを告げた為、会場は驚きで静まりかえった。
知っていたのは、テレーゼのみだったらである。

アンネローゼすら知らされずにサプライズで登場したのだから、
参加者達は一様に椅子から立ち最敬礼で陛下を迎え入れた。
グリンメルスハウゼン子爵を先頭に陛下が入場して来る、
そして、定位置に立つと、全員の顔を上げさせてから挨拶を始めた。

ラインハルトは内心では何故此処に皇帝が来たのかと、
驚きと共に憎悪を顔に出さないように我慢を行っていた。
キルヒイアイスは、ラインハルトが無茶なことをしないで欲しいと考えていた。

「皆の者、本日はテレーゼの為の集まり大儀である」
続いてグリンメルスハウゼンが話し出す。
「本日は陛下のご配慮により、無礼講となっておる。
皆で料理を楽しもうではないかとのお考えです」
テレーゼも挨拶する。
「皆さん、私たちが作った料理をご賞味下さい」

陛下が宣言する。
「皆の者、挨拶は無用じゃ、楽しく歓談しようぞ」

テレーゼが早速、自分の作った自慢の料理を陛下とグリンメルスハウゼンに持って行き食べて貰う。
「お父様、爺や、私の作ったレタススープとロールレタスです」
「テレーゼ頂くとしようか」
「テレーゼ様頂きますぞ」

味は完全にOKなので、美味しそうに食べる2人。
「美味じゃ」
「美味ですな」

他の所でもそれぞれが料理を勧めたり、食べたりし始めている。
ラインハルトとキルヒアイスは皇帝が気になり、食を始めない状態である。
それを見てカロリーネが内心不敵な笑みを隠しながら、ラインハルトに料理を勧めていく。

「お初にお目にかかります。シェーンヴァルト男爵、私カロリーネ・フォン・グリンメルスハウゼンと申します。此は殿下のお作りしたロールレタスですわ、どうぞお食べになって下さい」

参加者の中で学友5人はラインハルトの噂を散々聞いている事と事前にテレーゼからの対策マニュアルを伝授されている為、芝居がかってラインハルト達に接しながら、嫌いなレタス料理ばかりを勧めている。
しかし皇帝陛下が美味しく食べている以上は食べなければ成らないので、嫌々ながら食べていた。

心の中では、レタスなんか滅んでしまえと思いながらも、顔には出さずに受け答えは続けていた。
逆にキルヒアイスにはアンネローゼの制作の料理が運ばれては勧められていて、両者の差が歴然としてきた。ラインハルトは、次第に辛そうな顔がにじみ出てきているのに対して、キルヒアイスは嬉しそうに食べているのであるから、他人が見てもはっきり判る状態になってきていた。

テレーゼは、陛下とグリンメルスハウゼンに進めた後は、ゲストのエリザベートやマルガレータの世話を焼くので2人には恐縮されていたが、にこやかに受け答えをして場を和ませていた。
その為に、ラインハルト以外の参加者からは気さくな皇女であると認識されて好感度を上げていた。

キルヒアイスもアンネローゼの料理を食べて居た為に上機嫌で普段ラインハルトが散々悪態をついているテレーゼ皇女に付いての文句が子供ならではの大げさな事ではないかと思い始めていた。
更に驚いたことに、陛下がお呼びであるとグリンメルスハウゼン子爵に言われたのである。

ラインハルト様の何か言いたそうな視線を浴びながら、
アンネローゼ様の隣りに座る陛下の前に進み出てると陛下からお言葉を賜った。
「ジークフリード、そちの父にはこの度の憲兵隊での活躍、誠に見事じゃ。
そちも成績優秀と聞く、父と同じく臣民のために頑張ってくれ」

驚きの言葉である、陛下の為とか帝国の為とか言われれば反論する気にもなるが、
臣民の為にと言われれば、最近の陛下の為され様を考えれば、
キルヒアイスは考えに混乱が生じるのであった。

その姿をアンネローゼが優しい微笑みで見つめていたのを、ラインハルトは見ながら、胸に何かもやもやしたモノが沸き上がるのを感じる事が出来た。しかし今は未だそれが何なのかは判らない状態である。

エルフリーデは、フリーデグットの所へ入り浸りで、自分が一生懸命真心込めて作った料理を食べて貰いながら、幸せな気持ちで一杯である、そしてこの人のお嫁さんになりたいと益々考えを強くし、帰ったら大叔父様に相談して、話を進めて貰おうと考えを纏めていた。

ランズベルク伯アルフレットは彼にしては珍しく大人しく食事を行っていた、
それは、装甲擲弾兵副総監オフレッサーに師事し教わった男は黙って寡黙な方が良いという事を実践しているからであった。そこへ陛下のお呼びが掛かり、お言葉を賜った。

「ランズベルク伯、そちは最近勉学に類い希なる努力を行っているそうじゃな」
「陛下、先頃の陛下のお言葉を肝に命じ貴族としての義務を全う致したく感じました故」
「その心意気見事じゃ、賞めて使わす」

「ランズベルク伯アルフレット、感嘆の極みにございます」
この辺は未だ大げさだが、次第に良い方へと向かっているのであった。
陛下のお言葉を賜り、アルフレッドは益々頑張ろうと考えた。

ヴェストパーレ男爵夫人は料理を食べて、飲みまくりモードに既に入っていて、
他のゲストから唖然とした目で見られていたが、女傑だけ有って平気の平左であった。
陛下もその姿を見てお笑いに成られていた。

少女達は陛下から此からのテレーゼの仲の良い友達としていて欲しいと直接言われて、
感動して、その後家に帰った後両親などに陛下から直接お言葉を賜ったと報告して、
両親共々陛下への感謝を感じたのである。

その様な姿を見ながら、ラインハルトはむかつく胃と歯に付くレタス葉の違和感を感じながら、益々偽善者めと憎悪を燃やし続けているが、端から見ると嫌いな物を無理やり食べさせられている子供がだだをこねて、怒っているようにしか見えず。他の出席者からは子供っぽいと思われているのである。

隣のヒルダからすれば、ラインハルトは確かに美しい顔をしてはいるが、
その顔が心なしか歪んで居るのを感じていた。
なぜこの人はこんな体の奥底からにじみ出る、何かを隠そうとしないのであろうかと。

マルガレータはテレーゼに凄くなついており、お姉様という状態になっている。
「マルガレータちゃんを妹として側にいて欲しいな」
「嬉しいです、お姉様」
和気藹々であるが、この事は後々ヘルクスハイマー伯爵が握るブラウンシュヴァイク公、リッテンハイム侯の秘密の為に殺されかけるマルガレータを後宮で引き取り守る為の布石であった。

エリザベートもマチアスの件でハルテンベルク伯爵に話を付ける際の伝手作りに使えるから呼んだのであるが、エリザベートを不幸にしない為に画策する為でもある。

キルヒアイスはラインハルトに悪いと思いながら、アンネローゼとの話をしていた。
陛下が幼なじみで話して行きなさいと粋な計らいをしてくれた為である。
実際は、テレーゼの指示であったが。

「アンネローゼ様、ご機嫌麗しく」
「ジークも元気そうで何よりです」
「弟の面倒を見て貰ってありがたく感じますわ」
「アンネローゼ様勿体のうございます」
2人世界を醸し出している。

ラインハルトがその姿を見て苛つきながら、大嫌いなレタス料理を食べさせられている中、カロリーネが更に止めを刺してきた、それはリンディ茶アタックである。

リンディ茶、それは【魔法少女リリカルなのは】で、
リンディ・ハラオウン提督が飲んでいる常識外れの緑茶である。

それは、御茶に角砂糖4個以上+ミルクを入れて飲むという非常に甘くクソ不味い御茶である。しかもラインハルトのカップには人工甘味料が仕込まれた角砂糖が入れてあったのである。


流石修行を積んでいるカロリーネは普通飲んでいる。
何故かヒルダも平気で飲んでいる、流石シャマルクッキングの猛者である。
カロリーネは、リンディ茶をキルヒアイス不在の隙を突いて、ラインハルトに勧めたのである。

苛ついていたラインハルトは、カロリーネが普通に飲んでいるのでグイッとリンディ茶を飲むと、その何とも言えない不味さとド甘な味に思わず吹き出した!
「ブファーーーーーーーーーーーーーー」

その吹き出した物は目の前に居たカロリーネに直撃し顔とドレスを御茶で緑に染めてしまっ。いきなりのリバースに騒がしくなる会場。
咽せるラインハルトと慌てるキルヒアイスと驚くアンネローゼの三者三様が見られ、

アンネローゼとキルヒアイスが駆け寄り、
アンネローゼがカロリーネの顔をハンカチで拭き、
ラインハルトがカロリーネに謝罪している。

「申し訳ない、大変な失礼をしてしまいました」
ラインハルトはこの変な飲み物を勧めた女ではあるが、
顔とドレスを汚した事については真摯に反省していた。

カロリーネは、緑色になった顔で一言。
「シェーンヴァルト卿、構いませんわよ。いつか埋め合わせをして頂きますわね」
そう言ったあと、陛下とテレーゼ達に一時退席することを話してから。
女官に連れられて、着替えと身だしなみに出て行った。

ラインハルトは姉に怒られることになった。
「ラインハルト、お行儀が悪いですよ」
「姉上済みません。余りにも不味かったので」

そこへヒルダが一言言ってきた。
「シェーンヴァルト卿、美味しいですわよ」
ラインハルトはこの女はどう言う味覚をしているんだと感じたのである。

「ともかく宴を台無しにしたのですから、謝罪なさい」
そこへ皇帝が一言。
「アンネローゼよ、よいよい今日は無礼講じゃ、きにすることはないぞ」
「陛下」

ラインハルトは皇帝の言葉にまた馬鹿にされた気がしてむくれるのである。
それを見ているアンネローゼとキルヒアイスはやれやれと思うのであった。

その後、カロリーネも復帰し夕方まで宴は続いたが、
終始ラインハルトの機嫌と胃のもたれが悪かったのである。
逆に皇帝やテレーゼと参加した者達の絆が深まり。
その家族との間の絆も深まったのである。

リッテンハイム侯の腰巾着のヘルクスハイマー伯爵を除いてだが。
 
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