レーヴァティン
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第四十三話 鞍馬山その八
「お二方は既に多くのことをご存知でござるな」
「その通りだ」
最先達が智に答えた。
「我等はこの世界のことも知っている」
「その多くをな」
大天狗も言ってきた。
「今この世界が二つの島しかないこともな」
「そして下の海に広大な世界が眠っていることも」
「そなた達が世界を救う力があることも」
「そうしたことは知っている」
「ではでござる」
二人の言葉を聞いてだ、智は彼等にさらに問うた。
「下の世界を海で覆っている魔神のことは」
「それはわからない」
最先達は智のその問いにも答えた。
「残念だがな」
「左様でござるか」
「その魔神がどういった名前でどの様な力があり何故世界を眠らせ海に覆っているのかは。そうしたことはな」
「わからないでござるか」
「残念だがな」
「かなりの力を持っているのは確かだ」
大天狗はこう智に話した。
「何しろ広大な世界を眠らせてだ」
「その世界を海で覆う位だからでござるな」
「それは間違いない、しかしだ」
「しかしでござるか」
「それだけのことを神といえど一柱で出来るか」
広大な世界の全ての生物を眠らせそのうえで海の中に隠してしまえるなどというのだ。
「例え神といえどな」
「そういえばそうですね」
謙二も大天狗のその言葉を聞いて言った。
「どちらも相当な力です」
「それだけの力を持つ神となるとだ」
「異教の唯一神位だ」
そこまでの力だとだ、大天狗も最先達も言うのだった。
「それこそだ」
「神にしても恐ろしいまでに高位の存在だ」
「本朝の神々でもそこまでの神はそう多くない」
「天照大神でもどうか」
「天照大神は確かにかなりの力を持つ女神ですが」
良太が二人に応えこの神のことを話した。
「しかしです」
「出来るとすればだな」
「どちらかでしょう」
「天岩戸のことを見てもな」
「はい、隠れることは出来ましたが」
それでもというのだ。
「それ以上でありませんでした」
「本朝の神の力は限られている」
そうだというのだ。
「それはな、異教西の島のゼウスやオーディンだが」
「主神達ですね」
「彼等もそこまでの力を持っているか」
「それ程ではない」
英雄は西の島にいてそうした神々のことも聞いていたのでこう答えた。
「流石にな」
「そうだな、だからだ」
「海の魔神はか」
「果たして一柱なのか」
「そこが疑問か」
「我々はそう思っている」
「そうか、これまでそうしたことは考えていなかった」
英雄は答えた。
「この話を聞くまでな」
「あくまで我等の考えだが」
「いや、考えさせられる話だ」
「そう言えるか」
「それだけの根拠がある」
「神の力を考えるとだな」
「それだけのことは唯一神なら出来る」
西の島の宗教の一つのだ。
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