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ドリトル先生と奈良の三山

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第八幕その三

「帝でね、そして額田王って人のね」
「その人どんな人なの?」
「お名前からして皇族の方よね」
「日本の」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「女性の方で絶世の美人だったそうでね」
「へえ、そうなの」
「やっぱり皇族の方だったのね」
「それで美人であられたの」
「その天智帝と弟さんの天武帝との三角関係があったそうでね」
 恋愛、それも複雑なものだったというのです。
「天武帝は当時は大海皇子といったけれど」
「確か天智帝が中大兄皇子で」
「それぞれそうしたお名前だったわね」
「うん、そのお二方との間でね」
「額田王を巡って」
「恋の鞘当てがあったの」
「鞘当てというか取り合いというか凄いね」
 何というかというお顔でお話する先生でした。
「言い合いになってもいたらしいよ」
「そうだったんだ」
「それでなんだ」
「喧嘩にもなって」
「凄かったんだ」
「ご兄弟で」
「そうしたお話もあって」
 それにというのです。
「後山上憶良という歌人さんもいて」
「その人も恋愛の歌を詠ってたの?」
「そうだったの?」
「この人は苦しい暮らしや子供への想いを詠っていたんだ」
 そちらをというのです。
「そちらで素晴らしい歌を残しているよ」
「あっ、当時の日常も詠っていたっていうけれど」
「そちらの方を詠っていたの」
「そうだったの」
「そうなんだ、それとね」
 さらにお話する先生でした、ここでそのお店奈良のお酒が飲めるお店に入りました。そしてそこの一室に案内してもらってです。
 お酒と肴を楽しみながらとなりました、先生はここでまたお話をするのでした。
「食べものの歌もあるんだ」
「へえ、そうなんだ」
「そちらの歌もあるの」
「日常も詠ってるっていうけれど」
「そちらもなの」
「そこから当時の暮らしもわかるしね」
 先生は日本酒を飲みつつ皆にお話します。
「鰻とか沢蟹を食べていたこともね」
「ああ、鰻ね」
「鰻って昔から食べられていたの」
「そうだったの」
「そうだよ、鰻もね」
 そちらもというのです。
「当時から食べられていたんだ」
「成程ね」
「じゃあ当時から蒲焼にしてたの?」
「鰻丼を食べたの?」
「いや、どっちもなかったと思うよ」
 そこはとです、奈良の山菜の天麩羅を食べつつお話する先生でした。
「お醤油も普及してなかったし」
「たれに使うね」
「それもメインで」
「炭も金具もなかったから」
 江戸時代にはあったそういうものもです。
「お椀だって違ったし」
「だからなんだ」
「江戸時代みたいになの」
「蒲焼や鰻丼じゃなかった」
「鰻は食べていても」
「そうだよ、あと沢蟹は今も食べてるね」
「そう?」
 皆こちらの蟹についてはこう言いました。 
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