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魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年

作者:レゾナ
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真・五十話  顕現した神。そして来る全の理解者

全が起き上がり、その手にシンを持つ。

その姿と瞳を見ただけでなのは達は安心できた。

その瞳には迷いなどが一切なかったからだ。もう、全は迷わず突き進んでくれるだろう、そういうのが見て取れるからだ。

「アリサ、すずか、俺なんかの為に体を張ってくれてありがとう」

「そ、そこまで辛い事じゃなかったから気を使わなくてもいいわよっ」

「うん、全君と一緒に歩んでいきたいと思ったからだもん」

「本当に、ありがとう…………なのは」

「っ……」

「記憶を取り戻してくれて、ありがとう。俺さ、まだ心のどこかで「どうでもいいや」って思ってる所があったんだ。なのは達が幸せならそれでいいって。でも、違ったんだな」

「全、君……」

「俺もさ……抗ってみるよ。精一杯。この破滅の運命からさ」

「…………うん!私も、頑張るよ!」

なのはは満面の笑みを全に向ける。

そんな光景を見ていたフェイト達はどういう事なのかよく分からなかった。

全が起き上がったと思ったらつい先日までの顔とは違う顔をしているのだから尚更だろう。

全は少しだけフェイト達を見つめる。

「俺さ、まだまだ未熟者でさ。自分の本当の気持ちも分からない位なんだ。だからさ、皆の悩みとか相談にのってあげれないかもしれない。でも、それでも……俺は皆の幸せを第一に考えたい。それが、俺の決めた俺の生き方だ。だから……記憶が戻らないならそれでもいい。でも、もし知りたいと思ってくれるんなら、俺は協力は惜しまないから」

全はそう言うと、今度はなのは達の横に歩み寄り、並び立つ。

そのまま、四人は聖と向かい合う。聖の周りには聖自身が連れてきた一個大隊の隊長格の人物と他数名しか立ってはいない。

しかし、それでも聖や隊長格の人物の顔に焦りの表情はなかった。

「高宮。お前が何を考えているのかは知らないし知りたくもない」

「そうだな。僕もお前の考えなんか知りたくもない。なのは達を洗脳したお前の考えなんかな」

「俺が洗脳したという証拠もないだろう。まあ、かといって証明も出来ないが」

「そうだろうが!お前は僕の踏み台だ、踏み台は踏み台らしくさっさといなくなれ!」

もはや何を言っているのかクロノ達には分からない。踏み台とは何なのか、なぜ聖は洗脳したなどと言っているのか。

前々からクロノは思っていたが、流石に我慢の限界だった。

「聖!お前は間違っている!」

「クロノ?」

「クロノ、君?」

クロノの傍にいたフェイト達がクロノを見つめる。

「人を踏み台などと言うお前は既に人を物の価値感でしか見ていない。何がお前をそうしたんだ!?」

「何言ってるんだ?そんなもんだろ、人の価値なんて」

「……そ、そんな……」

「聖……」

「そんな事いうなんて……」

「それが貴方の本性だったっていうの、聖……?」

フェイト達は聖の本性を確信して愕然とする。仕方ない事だろう。

なぜなら今まで好意を寄せていた男の子が人を物としてしか見ていないという事なのだから。

「………………………お前は今、人として一番やってはいけない事をやった」

そこで、黙っていた全が小さくそう呟く。

「やってはいけない事?僕のやった事の何がいけないんだ?」

何がいけない事なのか本当に分からないのか、聖は聞き返す。

「お前は幾つも許せない事をした。人を物という価値観でしか見ていないし、それを悪びれようともしていない。しかも、自身の権力を使って他人を殺そうとしもしている!」

「はぁ?いなくならないお前が悪いんだろ?」

「だけどな……今、俺が一番許せないのは………………お前を、お前を思うフェイト達の心を踏み躙った事だ!!!」

「踏み躙ってなんかいないよ。それが当然なんだからな」

「当然だと!?それが当然な訳あるか!俺の存在の全てを掛けてでも……………お前だけは絶対に倒す!!それが、傷つけられた彼女達に出来る俺の唯一のやれる事だ!!」

全は叫びながらシンを構え、聖に向かって走り出す。

その後ろ姿を見て。フェイトは、アリシアは、はやては、るいは、その背中に確かな既視感を感じていた。

そして、彼女達の頭の中の欠けていたパズルのピースが今、再び埋められた。

彼女達の記憶が戻る。それと同時に彼女達は涙を流した。

「っ、全……」

「全……」

「全、君……」

涙ぐみながらそれ以上の言葉が出せないのか、口元を抑えるフェイト達。

それでも、フェイト達は嗚咽を何とか抑え込んで同時にその言葉を何とか言う。

「「「「……ありがとう……!」」」」

それは感謝の言葉だった。




「くっ!?踏み台の分際で!?」

「人をそういう解釈でしか見れないから!!」

全は聖ともみ合いになりながらも、斬り合いに発展する。

「いかん、高宮殿を!」

「「「邪魔はさせない!!」」」

なのはとアリサ、すずかが聖の援護に行こうとする隊長格の女性を止める。

「くっ……」

援護に行けない事が悔しいのか、歯噛みする女性。

しかし、次の瞬間、女性はその口元を歪める。

「だが、これでいい。これであなた達を手に入れられるのだからね」

「何を……!?」

と、そこで気づいた。聖と斬り合っている全もまた急激な力の増大に気付く。

そして全は悟った。なぜならこの気配を一番知っているからだ。これはそう、()()()

「なぜっ、まさか!?」

そして、全は一度聖を蹴り、無理やり距離を取る。

「みんな、すぐにその場から離脱しろ!!!早く!!!!」

「もう、遅い」

聖がそう呟くやいなや、無事だった女性隊員達がアリサ達をそれぞれ一人ずつ囲むように立ち、それぞれの近くに出来た穴のような何かの中に引きずり込んだ。

「これは!?」

「ま、まさか神のっ!?」

アリサとすずかは自身が使っている神力を感じ取ったのかこれが神の仕業だと分かった。しかし、他の面々は何なのか分からずそのまま穴の中に引きずり込まれていった。

そしてその場には隊長格の女性と聖、そして全とクロノだけになった。

「な、皆をどこにやった!?」

クロノは自身のデバイスS2Uを構えながら女性に問いかける。

「それに貴様、アルマ隊長ではないな!?あの人はそんな凶悪な笑みは浮かべなかった!!」

アルマ、というのが女性の名前だったのだろう。しかし、そのアルマという女性は既に存在していなかった。

「あら?何を言っているんですか、私はアルマ・ウェルスタイン。貴方の教官ですよ?」

「ふざけるな!みんなは騙せても僕は騙されないぞ!!」

「………………はぁ、うざ」

「何をっ!!!??」

うざ、とアルマと名乗った女性が言った瞬間、クロノの体にこれまで感じたこともない衝撃が襲う。

そのまま、遊具に激突し、痛みに腹部を抑えるクロノ。

「お前みたいなモブは物語に必要ないの。だから、邪魔しないで。これは聖の物語なんだから」

「お、まえは……誰、だ…………?」

「知らなくてもいい事よ。どうせ、すぐに忘れるんだからね」

女性がそう言うと、クロノは限界だったのか気絶した。

「お前…………まさか、お前が神だったとはな……」

「あら?踏み台くんの癖によくわかったわね。腐っても転生者という事かしら?」

余裕の表情を崩さない女性、いや神。

「確か、聞いた話だと神は下界である人間界には顕現してはいけないルールじゃなかったか?」

「そんなのいくらでも改変できるわ。私は運命の神。そんなルール、適用されるわけないでしょ」

(運命の神……?何を言っているんだ、こいつは?運命の神は真耶の筈。そして真耶以外に運命の神が務まるとは思えない)

〈全。恐らくこいつは自身が記憶の神ではなく運命の神と錯覚している〉

錯覚って……と全は呆れる。神はそれぞれ決められた役職という物がある。

例えば恋愛を司る神や剣を司る神。農耕を司る神や音楽を司る神など多種多様だ。

その中でも目の前の女性は記憶を司る神だというのになぜ運命の神と錯覚出来るのか。

〈私にもよくわからんがな。しかし、それなら納得できる。こいつは降りてきた事を改変できると思っているんだろう。まあ、本当は神界に帰ったら死罪では済まんだろうがな〉

だろうな、と全は思う。

〈だが、納得出来ない事が一つだけある。こいつ、力は今の私よりもずっと下だ。だというのに、なぜこいつはどの神にもバレる事無く降りてこれたんだ?〉

真耶に疑問にそれもそうだ、と全は思う。

神憑きに選ばれた神が降りてくるのは特例だ。しかし目の前の神はそういう物じゃない。

神本体が降りてきている。しかも力関係でいえば今の真耶よりも弱い。

では、なぜこの神は他の有名な神達にバレる事なく顕現出来ているのか。そこが真耶は疑問だった。

「折角だから見せてあげるわ、彼女達が再び聖のヒロインに返り咲く瞬間をね」

記憶の神がそう言うと、空間に穴が開き、そこの場面が見えていた。

そこには倒れているなのは達。そしてそれと相対している翼を持った女性達が立っていた。

「ああ、私の守護天使達。流石ね」

「まさか……自分の守護天使達さえも顕現させていたのか……!?」

「あら、そこまで知っているのね。貴方を転生させたのは私じゃないし、あのるいって娘も私じゃないし貴方を転生させた神が教えたのかしら?まあ、そんなのは別段どうでもいいんだけどね。さあ、貴方も諦めて終わりなさい。それが貴方の運命なのだから」

「止めろ!彼女達は関係ないだろ!!」

「お前が洗脳したからさ。だから、彼女達を治すために洗脳し直すんだよ」

いつの間に移動したのか全によって蹴り飛ばされた聖は神の隣にいた。

「お前……………自分が何を言っているの分かっているのか?」

「わかっているさ、お前がいるから僕はこんな面倒くさい事をしなくちゃいけないんだよ?だから……とっとと消えてよ?」

不可視にしていたのか、魔力弾が襲い掛かる。

「くっ、!?しま!?」

全が避けた先にも魔力弾が迫っていた。聖は予めこう避けると分かっていたのかそしてそれが当たるとも思っているのか口元を深く歪める。













































「そこまでだ、高宮」
































しかし、その魔力弾は当たらなかった。いや、正確には間に割って入った誰かによって弾き飛ばされた。

「なっ!?」

そして弾き飛ばされた先には聖がいたが、神は慌てる事もなくその魔力弾を消滅させる。

「あ、ありがとう、神様」

「どういたしまして。聖の為だもん……で?お前、誰?」

全の前に立つ少年。少年と分かるのは身長からだ。

なぜならその少年は全身に鎧を纏っていた。体を覆うのは龍の鱗にも見える青い鎧、両腕を覆うのは汚されぬ白を彷彿とさせる手甲。

足を覆っているのは新緑を思わせる淡い緑色の足甲。右足から煙が出ている事から右足で魔力弾を蹴って弾いたんだろうというのが分かる。

そして聖からはわからないかもしれないが背中には赤い翼のような物が畳まれた状態でついている。

そして頭をすっぽりと覆う兜。その色は紅色だ。極めつけは腰に備え付けられている剣だろう。柄頭の部分が龍を模しており、鍔の部分も龍の口から剣が出ているような意匠が施されている。

「お前らもよぉく知ってる奴だぜ?俺的には久しぶりだな。まあ、外の様子を見るにお前らも俺の事は久しぶりって感じか」

「何を言ってるんだ、僕はお前の事なんて知らないぞ?」

「そうだな。確かに()()()をお前は知らない。でも、()()()()をお前らは知ってる筈だぜ?もちろん、全。お前もな」

少年は振り返り、その素顔を全は見る。しかしやはり全には分からなかった。

どうやら過去に会っているのだろうがいかんせん、記憶力のいい全でも分からなかった。

「ああ、まあ分かんねぇだろうな。髪の色とかも違うしな」

少年はやれやれと言いたげな表情を作ると、膝を立てた状態で座っていた全を立たせる。

「大丈夫か、全」

「あ、ああ。大丈夫だが……お前、本当に誰だ?」

「あんたは分かってるんじゃないか?全の中の神様」

〈ああ、久しぶりだな。本当に〉

「?真耶、知ってるのか?」

〈ああ、お前にとっては命の恩人だ〉

「折角だから名乗ってやるよ。高宮」

少年はそう言うと、一歩踏み込んで右手を高く掲げる。

「世界を守護せし四神の鎧、それを纏うは世界の守護者。されど我は今この時だけは、我が親友の為にこの力を振るおう。俺の名前は支倉(はせくら) 奏平(そうへい)。前世の名前は
















神楽院、沙華」


「か、神楽院!?バカな、神楽院はそこの橘の偽名だろうが!」

「ちっちっち、それが違うんだよ。紗華は俺が全の体を一時期借りて生活していた時の名前さ」

「ほ、本当に神楽院なのか?で、でもあの時」

目の前の少年は神楽院と名乗った。しかし、ではあの落ちていった神楽院は何だったのか。

「ああ、あの後、なぜか拾い上げられてな。で、お前を立ち直らせてくれた事に感謝の気持ちで一杯ですっつってなぜか転生させてくれた。驚いたのが他の神様も普通に承認してくれてよぉ、あっはっは!!」

「いや、それは笑うような事じゃないから……」

「ふん、仲間が一人増えた所で結末は変わらないわ。橘全、お前の運命は破滅。それしか「何言ってんだ?」?」

「いつ、誰が、全の援護に来たのは一人だっつったよ?俺しかここにいないって事は……?」

そう、問いかけるように奏平が言った瞬間、穴の先の空間が衝撃で揺れる。

「な、何が!?」

「到着したのさ。俺の仲間である歌姫達がな」

~別空間~

「お、お前ら何者だ!?」

ここはなのは達が連れ去られた別の空間。そこでは全ての事柄が空間の所有者にとって都合のいい出来ごとに書き換えられる。その力を以ってアリサ達さえも無力化していた。

しかも全員それぞれ別々の空間に飛ばされている為、援護も出来ない。

しかし、そんななのは達の前に何かが降りてきた。

土煙が晴れ、それぞれの少女達の前には装甲のような物を纏った少女達がいた。

外見年齢から察するに既に高校生だろう少女達。

なのはの前にはオレンジ色を主体とした装甲を纏っている少女と、銀色と青色を混ぜたような鎧を纏い、鞭のような青く光る糸状の物を持っている少女。

フェイトとアリシアの前に立っているのは碧色を主体とした鎧を纏い大きな鎌を持っている少女とピンクを主体とした足どころかツインテールの所までも装甲で覆われている少女。

はやての前には青い色を主体とした装甲を纏い、刀を手に持っている少女と、赤を主体とした装甲を纏い、ボウガンのような物を右手に持つ少女。

るいの前には銀色を主体とした鎧を纏い、右手には小さな剣を持っている女性と、白銀の鎧を纏い、その手には光り輝く槍を持った女性。

アリサとすずかの前には紫色を主体とした鎧を纏い、その手に鉄扇と呼ばれる物を持ったバイザーを頭につけている少女。

「あ、貴方達は?」

皆が一斉にその質問をし、なのは達を庇うように立つ少女達はその言葉に振り向き

「貴方たちの……全君の味方だよっ!!」

そう、力強く答えた。

それは握りしめた拳。

「激槍・ガングニールが装者、立花(たちばな) (ひびき)!唸る拳は、闇を穿つ!!」

それは果たすべき役目。

「絶刀・天羽々斬が装者、風鳴(かざなり) (つばさ)。一騎当千、光となりて」

それは追い続ける夢。

「魔弓・イチイバルが装者、雪音(ゆきね) クリス!闇を狙いし、赤の弾丸!」

それは友と過ごすかけがいのない日常。

「獄鎌・イガリマが装者、(あかつき) 切歌(きりか)!何人をも斬る、碧の刃、デス!!」

それは友と過ごす守るべき日常。

「塵鋸・シュルシャガナが装者、月読(つくよみ) 調(しらべ)。絆の証、悪をも斬る」

それは償うべき罪。

「銀腕・アガートラームが装者、マリア・カデンツァヴナ・イヴ。銀の腕に、断てぬ物なし」

それは果たされた復讐。

「聖剣槍・エクスミニアドが装者、天羽(あもう) (かなで)!聖なる槍と聖なる(つるぎ)、二つの光が悪を滅する!」

それは家族を守る誓い。

「鉄腕・ヤールングレイプルが装者、セレナ・カデンツァヴナ・イヴ!糸が紡ぐは、勝利への道!」

それは友を守りし誓いの証。

「歪鏡・神獣鏡(シェンショウジン)が装者、小日向(こひなた) 未来(みく)!鏡に映すは、勝利の姿!」

彼女達と奏平の思いはただ一つ。全を救う事。

今、聖遺物・シンフォギアを纏いし歌姫達が世界の守護者である四神と共に世界に舞い降りた。 
 

 
後書き
詰め込み感が半端ないですが、投稿。

さあさあ、やっと来ましたよ全君の理解者。その正体とは――――――――――神楽院紗華が転生した存在である支倉奏平君でした。そして彼が転生した世界こそが「戦姫絶唱シンフォギア」の世界です。

まあ、大分改変されてますし、GXは全く違う奴がラスボスですし、キャロル生きてますからね。ネタバレになりますが、奏平君の師匠はキャロルですので。

あ、後……イガリマとシュルシャガナ、それと神獣鏡の前の奴の言い方って何なんですかね?未だに分からないんですが。 
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