魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Epica8-D邂逅~Scout~
†††Sideアインハルト†††
イクスヴェリア陛下のお誘いに応じ、私は今日、オリヴィエ王女殿下のクローンとして生まれたヴィヴィオさんや、オーディンさんのクローンとして生まれたフォルセティさんと直接顔を合わせる。指定されたストライクアーツ練習場にて・・・
「はじめまして! 高町ヴィヴィオです! ストライクアーツをやってます!」
ヴィヴィオさんに続き、コロナさん、リオさんとも自己紹介をした後、クラウスの記憶にオリヴィエ殿下とほぼ同じ頻度で登場する、魔神オーディンをそのまま幼くしたかのような「八神フォルセティです!」とも握手を交わすのですが・・・。
――あなたの握手に応じれば、あなたとの永遠の別れを受け入れることになる。オーディンさん。だから僕は――僕たちは、あなたの握手には応じられないのです。必ず生きて帰って来てください。たとえどれだけ傷を負っても必ず治します。そして再会した時、改めて握手を。僕たちはずっと待っています。何日でも、何ヵ月でも、何年でも・・・ずっと――
――また逢おう。再会の証として、その時にまた握手を――
クラウスの無念の1つとして私の胸の内を焦がす約束。やはりクローンとは言えオーディンさん本人ではないためか、あまり胸の内が晴れない。そして最後に、ヴィヴィオさん達にストライクアーツを教えているという、ノーヴェさんとも握手を交わす。
「じゃあ早速で悪いが、更衣室で着替えて来てもらえるか?」
「判りました」
「私が案内してきます。アインハルト、こちらですよ」
陛下の案内で更衣室へ。空いているロッカーに着ていた制服を仕舞い込み、トレーニングウェアへと着替える中、出入り口のドアの向こう側に居る陛下が「どうでした?」と尋ねてきました。
「どう、とは?」
「ヴィヴィオとフォルセティです。ずっと見守って来たのでしょう。どうです。直接言葉を交わした感想は・・・?」
「・・・とても小さな手で、体も脆そうで・・・。私の拳を受けられるのか不安です。それに・・・」
私の背負うものを、あの小さなヴィヴィオさんにも背負わせていいのかと改めて考えてしまう。私と自己紹介をした際、紅と翠のあの瞳で真っ直ぐ見詰められた。オリヴィエ殿下と同じ眼差し。でも彼女は違う・・・。
「ふふ。そうですか」
「何が面白いのですか?」
「あぁ、いえ。ここはひとつ後のお楽しみということで」
陛下にはぐらかされてしまったけど、着替えは済んだから戻りましょう。ロッカールームを出て、「お待たせしました」とコートへ入り、ヴィヴィオさんと向かい合う。私が構えを取ると、ヴィヴィオさんも構えを取る。
「スパーリング、4分1ラウンドだ。射砲撃やバインド無しでの格闘オンリーな。それじゃ・・・レディ・・・ゴー!」
振り下ろされるノーヴェさんの右腕。それと同時、「・・・!」ヴィヴィオさんが驚くほどの速さで間合いを詰めて来た。繰り出される右の拳打ですが、不意打ちを狙ったにしては遅い。左掌でそれを防ぐと、彼女は迷うこともなく蹴打などを織り交ぜた連撃を打ち込んでくる。
(陛下は、あとのお楽しみに、と言っていましたが・・・。やはりこの程度・・・)
独特の足運びから移行する高機動の移動法。趣味と遊びの範囲である彼女や、それに対する相手ならばそれは素晴らしい武器になるでしょうが・・・。でも私や、私の目指す戦いの場では通用しません。
(すべてが真っ直ぐ。攻撃も、その瞳も、心も・・・。だから嫌だった。この子と顔を合わせて言葉や拳を交えても、どうにもならないと解っていたから・・・)
やはり彼女に因縁を背負わせるわけにはいかない。そう結論付けられるまで少し間様子を見てきたけれど、もうこれ以上は無意味と判断。一切反撃せず、ヴィヴィオさんの攻撃を防いでは捌き、躱しましたが、ようやくこちらも攻撃に転じようと拳を強く握ったところで・・・
「えいっ!」
「っぐ・・・!?」
ヴィヴィオさんの拳を一瞬、見失ってしまった。私の左わき腹に打ち込まれる鋭い拳打に思わず、「くっ・・・!」後退してしまう。追撃の左拳打を右手の甲で払い、私も反撃の左拳打を繰り出す。
「っと!」
私の拳打を左掌で受け止めようとヴィヴィオさんでしたが、私の拳が彼女の掌に当たるかどうかという刹那に、彼女は左腕を引いた。私の拳は空を切り、腕を伸ばし切ってしまった。
「てやっ!」
ヴィヴィオさんは左腕を引いた勢いのまま反時計回りに回転し、遠心力の乗せられた裏拳を繰り出してきた。私は左腕を顔の横にまで上げ、前腕部でその一撃を防御。そして戻し終えたばかりの右拳を間髪いれずに打ち出す。
「っ!」
その瞬発力で私の拳が届く範囲より離脱したヴィヴィオさんでしたが、また同じ速度で彼女の攻撃範囲に再突入してきた。彼女は小さく構え、左右の連撃を小刻みに繰り出す。ほとんど威力が無いですが、手数と速度が厄介で反撃の機会を潰してくる。
「えいやっ!」
「(ようやく理解できた。これが陛下の言っていた、お楽しみ、ということですか・・・!)くぅ・・・!」
ヴィヴィオさんの速度に慣れたところで、さらに拳打の速度が上がった。これは完全に術中に嵌まってしまったと考えていい。最初は速度を落とし、私がそれに慣れた時、一段階速度を上げて私を翻弄する。
(前言撤回です。真っ直ぐでも、実に巧妙です・・・!)
自宅で器具を使っての練習では得られない経験に、私はダメなのに高揚感を覚えてしまった。だからすぐに自制する。その感情は覚えてはいけないものだと。私はただ、覇王流が最高の武術であり、覇王こそが最強であることを示すのみ。
「はッ!」
こちらも全力を以て迎撃に当たる。ヴィヴィオさんの速度以上の速さで拳を繰り出し、「きゃぅ・・・!」両前腕で防御した彼女ごと後退させた。ですが・・・。
(浅い・・・!)
拳が当たるとほぼ同時、ヴィヴィオさんは自ら後退することで威力を半減しました。着地したばかりの彼女は即座にあの歩法で距離を詰めて来て、また一段階速度の上がった右の上段蹴打を繰り出し、それを私は腰を落として躱す。
「せーい!」
足を引き戻している最中にヴィヴィオさんは跳んで、半回転しての左の中段突き蹴りを打った。ちょうど足の裏が私の顔面に当たる軌道。両前腕で顔面を護るものの、しゃがみ込んでいた所為もあって、「ぅく!」踏ん張りきれずに後転することに。立ち上がりざまの私に向かって彼女は正拳を繰り出して来た。容赦のない追撃ですが、不安定な体勢ながらもその大ぶりな一撃は回避しきることは可能なもの。即座に後退して彼女の追撃を回避。
「すぅ・・・っ!」
覇王流の基本は断空と呼ばれる技術にある。足先から練り上げた力を拳足に乗せて撃ち出す、というもの。ヴィヴィオさんに重傷を負わせることなく、この一撃で終わりにします。断空拳を打つ際の構えを取り、即座に力を練り上げたその時・・・
「っと・・・!」
(追撃をやめて後退・・・!?)
怒涛の攻撃を繰り返していたヴィヴィオさんが突如として私から距離を取った。せっかく練り上げた力が解放されることなく霧散したその瞬間、彼女の「やぁーっ!」攻撃が再開された。しかもさらに速さを増して・・・。
(速度は厄介ですが、威力は大きくはない。ヴィヴィオさんは威力を犠牲にして手数で攻めるスタイル・・・!)
速度が増す分だけで威力が少し下がっているような気がする。なら多少の攻撃を受けたうえでカウンターを入れるだけです。ヴィヴィオさんが繰り出した突進からの右の拳打を左頬にわざと受けつつ、再度練り上げた力を右拳に乗せる。
「はぁぁぁぁぁッ!」
――断空拳――
「かふっ・・・!?」
攻撃を仕掛けたと同時の反撃に、さすがのヴィヴィオさんも防御も回避も出来ずに私の断空を利用した掌打を受け、コート外にまで吹っ飛びました。彼女は本当に軽く、正直あれほど吹き飛ぶとは思いませんでしたが、これで一応に勝利ですね。
「す、すごーい! 今のが本物の断空なんだ!」
「本物の・・・?」
ノーヴェさんに受け止めてもらえているヴィヴィオさんから気になる言葉が出た。それを無視して立ち去るわけにはいかず、彼女たちの元へ歩み寄る。気付いたヴィヴィオさんが居住まいを直すと「ありがとうございました!」とお辞儀をした。
「あ、いえ・・。こちらこそありがとうございました」
「アインハルト。ヴィヴィオと拳を交えた感想を聞かせていただいても?」
陛下から話を振られる。顔を上げたヴィヴィオさんの瞳は期待と不安に揺れていた。彼女の師だというノーヴェさんが「遠慮のない感想でいいぞ」と言いますと、「う、うん! お願いします!」とヴィヴィオさんも強く首肯する。
「最初は、所詮は趣味と遊び程度の実力、と思いました。ですがすぐにその考えを訂正しました。ヴィヴィオさん、あなたは強いです。結果は私の勝利だったとはいえ・・・」
私がそこで口を噤んだことで、陛下が「どうかしました?」と聞いてきたので、首を横に振りながら「いえ。今日は良い体験をさせていただきました。ありがとうございました」と伝えた。やはり誰かと拳を交える実戦の方が、より高みへと登れるのだと認識できた良い経験だった。
「そうか。まぁそこまで言ってもらえたんなら御の字だろう。な、ヴィヴィオ?」
「うんっ! 負けちゃったけど、ルシルさんとの特訓が無駄にならなくて良かった♪」
「ルシルさん・・・?(ルシルさん・・・。っ、ルシリオン・セインテスト・・・一等空尉・・・!)」
オーディンさんとエリーゼ卿の間に生まれた双子の末裔はシュテルンベルク家として、現代に生きています。そしてセインテスト一尉は、セインテスト家の直系であると伺っています。
「あ、僕のお父さ――父です。ルシリオン・セインテスト。この4週間・・・というか、そのうちの1週間くらいだけど、父がアインハルトさん役としてヴィヴィオと猛特訓をしていたんです」
フォルセティさんの話に私はすべてを理解した。管理局の中でも10本の指に入るであろう空戦SS+の魔導騎士。そんな方と実践すれば、あの幼さであれ程までに強くなってもおかしくない。悔しいという感情より真っ先に羨ましいと思ってしまう。私もセインテスト一尉と拳を交えれば、さらなる高みへと行けるはず。そしていつかは超えたい。
「そうですか・・・。ところで――」
そこまで言いかけた時、ノーヴェさんが「ちょい待ち。もう良い時間だ。続きは昼を食いながらにしようぜ」そう提案しました。
†††Sideアインハルト⇒ヴィヴィオ†††
最初は断っていたけどイクスからの熱烈?なお昼ご飯のお誘いに、アインハルトさんもとうとう折れてお誘いに応じてくれた。というわけで、わたし達はストライクアーツ練習場内にある休憩スペースへとやって来た。空いてるテーブル席に就いて、わたしとフォルセティは「じゃーん♪」とお弁当箱を広げた。コロナ達が「わぁ!」って歓声を上げてくれた。
「なのはママと♪」
「お母さんの♪」
「「特製弁当~♪」」
なのはママとはやてさんお手製のお弁当・・・と言っても3段重ねの重箱(計6箱だ)で、アインハルトさんを入れても十分すぎるほどの量が入ってる。取り皿をみんなに渡して、「どうぞ、アインハルトさん♪」にも渡す。
「あ・・・ありがとうございます」
「よし。みんなに皿は渡ったな。んじゃ、いただきます!」
ノーヴェに続いて「いただきます!」ってわたし達も手を合わせて、思い思いに料理を取り皿に料理を乗せてく中、アインハルトさんが困った風にフォークを彷徨わせているのが判った。
「アインハルトさん、何か苦手なものとかありますか?」
「え・・・あ、いえ。特には・・・」
「それじゃあお勧めを♪」
なのはママの料理はどれも絶品だから迷っちゃうけど、変に凝ったものじゃない料理を選ぶ。
「どうぞ♪」
「あ、はい。いただきます。・・・っ! 美味しいです」
アインハルトさんの表情が少しだけだけど緩んだ気がする。今日顔を合わせてからずっと硬かったから。だからなのはママには最大の感謝だ。お昼ご飯が進む中、「あの・・・」ってアインハルトさんが口を開いた。
「先ほどの話の続きなんですが。本物の覇王流とは一体、どういうことなのでしょうか・・・?」
「あ、それはですね」
「父の固有スキル・複製によって複製されていた覇王流の原型を、父がヴィヴィオとの特訓に発動していたんですよ。歴代のセインテスト当主は、過去からの複製物が継承されるようなので。まぁ僕は、クローンとして生み出されたので複製スキルも複製物も継承してないですけど・・・」
フォルセティがアインハルトさんの疑問にそう答えると、「あぁ、そういうことですか」って納得したように小さく頷いたので、「それも記憶にあるんですか?」って聞いてみた。
「はい。クラウスもオーディンさんより複製の件は伺っていましたし、 断空も見せたことがあるようです」
覇王イングヴァルトの記憶を承継してるアインハルトさんは、その記憶に苦しめられてるってイクスから聞いてるから、これ以上記憶について話をしていいのか判らない。少し沈黙が流れる中、ノーヴェが「なあ、アインハルト」て話を振った。
「はい、なんでしょう」
「お前の戦い方を見せてもらった感じ、やっぱストライクアーツ側だわ。どうだろう、お前さえ良ければヴィヴィオ達と一緒にやらねぇか、ストライクアーツ」
「え・・・?」
ノーヴェがアインハルトさんをストライクアーツに誘ってくれたから、ここで追撃だって思ってわたしも「一緒にやりましょう!」って誘うと、コロナとリオも「ぜひぜひ!」って続いた。
「私は・・・」
「アインハルト。あなたは強くなりたいのでしょう? たった1人で鍛えるにも限界はあるはずです。それとも何か方法でもありました?」
イクスも続いた後にそう尋ねると、アインハルトさんは「格闘家の方に挑戦しようかと」って答えた。みんなで「挑戦・・・?」って小首を傾げる。
「挑戦たって一体どこで? やっぱり所属してるジムとかにか?」
「あまり人目に付きたくはなかったので、夜間に路上で挑戦しようかと・・・」
道場破り見たくジムへ挑戦しに行くんだと思ってたから、まさかの返答にわたし達は食事の手を止めて口をあんぐり。わたしは「それってまずくない・・・ですか?」ってアインハルトさんとノーヴェに視線を送ると、アインハルトさんも「まずいですか・・・?」ってノーヴェを見た。ノーヴェの家族は管理局員だって話をしたからちょっと不安そう・・・。
「んー・・・、同意の上であってもストリートファイトはあんまし良くないと思うぞ? 試合前に同意しました、って言っても負けた方が負け惜しみや逆恨みなんかで被害届を出したら、そしたらお前は晴れて犯罪者だ。覇王の威を示す前に失墜するぞ」
「それは・・・困ります」
「だろ? だからさ、ヴィヴィオ達と一緒にやらねぇ?って話だ」
改めてノーヴェがアインハルトさんを誘ったけど、アインハルトさんは即答することなく少し黙った後、「私は強くなりたいんです」ってポツリと漏らした。そして「ノーヴェさん。あなたに師事して本当に強くなりますか?」って、若干失礼なことを聞いた。
「なら試してみるか? あたしの実力とやらを」
「お願い出来ますか? 私はもっと強い相手と戦って戦って・・・もっと強く、強くならなくてはいけないのです」
なりたい、じゃなくて、ならなくてはいけない。イクスの言ってた強迫観念。ノーヴェが「いいだろう。魔法アリか無しか、どっちがいい?」って聞くと、「アリでお願いします」ってアインハルトさんが受けて立った。だからわたしは「あー! ノーヴェずるーい!」って抗議。
「ずるい・・・?」
「わたしも魔法アリでアインハルトさんと闘いたかったし、そのために特訓してきたのに~!」
「判ってる。アインハルト、連戦になるがヴィヴィオとも闘ってもらえるか?」
「はい、もちろんです」
「ありがとうございます!」
アインハルトさんとの再試合が決まってわたしは「ばんざーい!」した。それからお昼ご飯を食べ終えて、魔法戦の出来る場所だっていうアラル港湾埠頭へとやって来た。ここは救助隊の訓練に使用される場所だってことで、結構派手にやっちゃっても良いみたい。
「魔法は使ってもいいが格闘オンリーで、射砲撃とバインド無し。いいな?」
「承知しました。・・・武装形態」
アインハルトさんの足元にベルカ魔法陣が展開されて、発せられた光に呑まれた。そして光が治まると、そこには大人の女性に変身した「アインハルトさん・・・!?」が居た。わたしとコロナとリオは「大人モード!」って歓声を上げた。
「ほう。んじゃ、あたしも! ジェットエッジ!」
ノーヴェも変身を終えて、アインハルトさんと対峙した。ノーヴェが「誰か、合図を」って、アインハルトさんを見詰めたまま促してきたから、「じゃあわたしが!」って挙手。わたし1人で1歩だけ前に出て右腕を大きく上げると、ノーヴェとアインハルトさんが構えを取った。
「レディー・・・ゴーッ!」
腕を勢いよく振り下ろした瞬間、2人がものすごい勢いで突っ込んだ。そして繰り広げられる激しい攻防。ノーヴェってホントに強いのに、アインハルトさんも負けないくらい強い。
――魔法アリでのアインハルトの闘い方を見とけ。魔力で強化されてるはずだから、さっきより何もかもが違うと思っとけ――
ノーヴェから言われた通り、アインハルトさんの一挙手一投足を見つめる。さっきわたしとスパーリングした時のものより速く、鋭く、そして強い。ノーヴェが魔力で作る路ウイングロードを空中に張り巡らせて、“ジェットエッジ”で疾走する。
「おらぁぁぁぁッ!」
――リボルバースパイク――
高速滑走したうえでウイングロードから飛び降りたノーヴェの、打ち下ろしの強烈な蹴りがアインハルトさんを頭上から強襲。それを読んでみたいなアインハルトさんは断空の構えを取った。足元から風が渦巻いて、それは腰へ、そして右腕まで上がっていった。ノーヴェの右足とアインハルトさんの右拳が当たるかどうかっていうところで・・・
――ウイングロード――
2人の間にウイングロードが走った。ノーヴェはそれに乗ってアインハルトさんの背後へ瞬時に回ったことで、アインハルトさんの断空は空振る。ノーヴェは拳を突き出した状態のアインハルトさんの背中に「スタンナックル!」を打ち込んだ。
「っ・・・!」
「「「「直撃!?」」」」
打撃の威力と感電によってアインハルトさんが仰け反った。膝がゆっくりと折れて倒れこみそうになったけど、アインハルトさんはすぐに後ろ蹴りを繰り出した。ノーヴェはすぐに反撃が来るなんて思いもしなかったようで、咄嗟に腕でガードしたけど踏ん張りきれずに蹴り飛ばされちゃった。
「断空を見破られているというのが、これほどまでに厄介だとは思いませんでした。また良い経験をさせてもらいました」
「だろ? 自分の手の内を知られても、それを乗り越えるには独りっきりじゃダメなんだよ・・・!」
「そうですね・・・。確かに、私の立てていた予定では得られないものです」
仕切り直しっていう感じで、距離を取って対峙するノーヴェとアインハルトさんが微笑みあった。
(あぅ~。そうゆうのは、ノーヴェじゃなくてわたしがやりたかったのに~・・・)
改めて激しい攻防を繰り広げ始めたノーヴェとアインハルトさんを羨ましく眺める。2人の決着は、それからすぐついた。アインハルトさんは善戦したけど、ノーヴェの強烈な蹴りが胸に入ったことで、とうとう膝を付いた。
「はぁはぁはぁ・・・ふぅ。どうだ、アインハルト・・・?」
「っく・・・。ま、参りました・・・」
アインハルトさんの降参っていう形で、ノーヴェの勝利が決まった。ノーヴェが変身を解くと、アインハルトさんも変身魔法を解除して元の子供の姿に戻った。
「アインハルト。これから休憩を挟むが、その後にヴィヴィオとも闘えるか?」
もしこれで、ダメです、なんて言われたらショックで駄々捏ねちゃいそう。アインハルトさんはわたしをチラッと見た後、「しばらく休憩すれば、おそらくやれます」ってノーヴェに視線を戻して頷いた。
「よし。んじゃ、30分のインターバルを挟んだ後、改めてヴィヴィオとアインハルトの試合を始める!」
わたしとアインハルトさんは顔を見合わせて、「はいっ!」ってノーヴェに応えた。
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