魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Epica8-E邂逅~Team Nakajima~
†††Sideフォルセティ†††
ヴィヴィオとアインハルトさんの試合から数日。いつも通り学院前で「ごきげんよう♪」と、リオやイクスと合流した僕とヴィヴィオとコロナ。喋りながら初等科の校舎へ向かっていると、ヴィヴィオが「あ・・・!」って声を上げた。
「アインハルトさんだ・・・!」
「挨拶しに行く?」
アインハルトさんに気付いたヴィヴィオに僕がそう聞くと、ヴィヴィオが答えるより早く「行きましょう」ってイクスが前を歩くアインハルトさんの元へ駆け出した。
「アインハルト、ごきげんよう!」
「陛――ではなく、イクスさん。ごきげんよう」
イクスの挨拶に続いて僕たちも「ごきげんよう!」って挨拶すると、アインハルトさんも「ヴィヴィオさん、フォルセティさん、コロナさん、リオさん。ごきげんよう」って挨拶をし返してくれたから、ヴィヴィオ達の表情がパァっと輝いた。
「あの、そこまで一緒して良いですか?」
「・・・ええ。どうぞ」
アインハルトさんをイクスとヴィヴィオが挟むような立ち位置で歩いて、僕とコロナとリオはその後ろを歩く。さすがに6人が横一列に歩くのは邪魔すぎるから。ヴィヴィオは何か話しかけようとしてるようで、口をパクパクさせてる。
「ヴィヴィオ、金魚みたいだね♪」
「挙動不審なのは間違いないけど・・・」
リオは楽しそうに、コロナは不安そうにヴィヴィオを見てそんな感想を抱いた。そこに助け船を出したのはイクスで、「アインハルト。次の練習日ですが・・・」って、次の合同練習日の予定について切り出した。あの試合の後、アインハルトさんも僕たちと一緒に、ノーヴェの指導を受けることになった。
・―・―・回想だよ・―・―・
ノーヴェとの試合を終えた後に休憩を30分挟んで、「ありがとうございます、ほぼ回復しました」ってアインハルトさんが立ち上った。ノーヴェも「そうか。んじゃ、ちょいとストレッチしてから始めっか」って言って立ち上った。
「うんっ」
ヴィヴィオや僕、コロナとリオも続いて立ち上がって、ヴィヴィオとアインハルトさんがストレッチするのを見守る。そしてお互いに準備が整うと、アインハルトさんが「武装形態」の掛け声と一緒に大人の姿へ変身。
「レイジングハート、お願い♪」
ヴィヴィオは、なのはさんの愛機“レイジングハート”の力を借りて大人モードへと変身した。ヴィヴィオは時々、ああして大人モードに変身した状態でストライクアーツの練習をすることがある。大人モードは、ヴィヴィオにとってある種の思い出したくないトラウマのようなものって思ってた。
(プライソンに操られて、なのはさんやフェイトさんと戦った時の姿だから・・・)
でもヴィヴィオは、“レイジングハート”をなのはさんから借りられた時は必ずと言っていいほど、練習時間の半分を大人モードで過ごす。
――だって魔法や武術の練習って、どっちかっていうと大人モードの方が便利なんだよ。リーチとかあるし。インターミドルも、この大人モードで参加する予定だし――
どうして大人モードなんて、リソースを割いてまで使うの?っていう僕の問いに、ヴィヴィオはそう答えてくれた。ストライクアーツや魔法の練習している時の大人モード・ヴィヴィオは、格好良くて綺麗で・・・すごくドキドキする。
「それじゃあさっきと同じ、射砲撃・バインド無しの魔力運用アリで、だ。いいな?」
「「はいっ!」」
ヴィヴィオとアインハルトさんが向かい合って、それぞれ構えた。そしてノーヴェが高く掲げていた右腕を、「レディー・・・ゴーッ!」っていう号令と共に振り下ろした。それと同時、ヴィヴィオが一足飛びでアインハルトさんへ向かって突っ込んで行った。
「ヴィヴィオ、初めから全速だね」
「午前中のスパーリングで見せちゃったからね、ギアチェンジ」
「うん。アインハルトさんはもうヴィヴィオのハイギアの速度を知ってるし慣れてるから、スパーリングの時みたくローギアから攻めるとかえって危ない」
徐々に攻撃の速度を上げて行くギアチェンジ。ヴィヴィオにも危険な賭けのような戦術は、元はお父さんがヴィヴィオに修業を付ける際に見せた技術だ。相手の実力を測ると同時に、相手の力量を引っ張り上げる技。それを実戦に取り入れたのはヴィヴィオだ。
「やっぱりアインハルトさん、強いね・・・」
「模擬戦とはいえ実践を続けてるヴィヴィオなのに、器具でのトレーニングしかしてないっていうアインハルトさんが押してる」
午前のスパーリングじゃアインハルトさんは後半にしか攻めてこなかったけど、今回は積極的にヴィヴィオに攻撃を仕掛けていってる。これが覇王イングヴァルトの記憶とカイザーアーツを承継した、その恩恵ってわけなんだ・・・。
「うぅ~、あたしもアインハルトさんと闘ってみた~い!」
リオって、シグナムお姉ちゃんみたいに戦う事が結構好きだったりする。まぁシグナムお姉ちゃんほど末期症状じゃないけどさ。そんなリオが白熱するほどの闘いが僕たちの目の前で繰り広げられる。殴っては殴られて、避けては避けられて、防いでは防がれて、だ。
――フォルセティ。わたしね、大好きで大切な、守りたい人がいるの――
「ヴィヴィオ・・・」
――小さなわたしに、強さと勇気を教えてくれた――
「負けないで・・・」
――世界中の誰よりわたしを幸せにしてくれた――
「勝って・・・」
――その人たちに強くなるって約束したから。だから強くなるためにわたしは頑張るんだよ。どこまでだってずぅ~っと高みを目指す!――
「頑張れぇーーー!」
ヴィヴィオが以前言ってた、ストライクアーツを始めた理由を思い返した。だから思わず大声で声援を送っちゃったけど、コロナとリオも「ファイトぉー!」って続いてくれた。でもイクスはどっちかに付くってことはしないみたいで無言だった。ヴィヴィオは僕たちの声援に応えるかのように、さらに攻める頻度を上げていった。だけど・・・
「覇王・・・断空拳!!」
「っ! きゃぁぁぁぁぁ!」
ヴィヴィオの強烈な右の一撃をガードした状態で、アインハルトさんは本気の断空、覇王断空拳を打ち込んだ。まともにお腹に受けたヴィヴィオは大きく殴り飛ばされて、倉庫に壁際に設けられていた資材置き場に突っ込んだ。
「「「ヴィヴィオ・・・!」」」
「1本! そこまで!」
ノーヴェが勝敗が決したことを宣言した直後、アインハルトさんが「ぅあ・・・?」って前のめりに倒れ込んだ。ノーヴェが「フォルセティとイクスはヴィヴィオを!」って指示を出した後、アインハルトさんの元へと駆け寄った。
「「はいっ!」」
僕とイクス、コロナとリオも一緒にヴィヴィオの元へ駆け寄った。ヴィヴィオの大人モードは解除されちゃってて、「はぅ~」目を回してた。断空拳と資材置き場に突っ込んだ衝撃での気絶だけで、ヴィヴィオ自身にはダメージが入ってないっぽい。
「うん、大丈夫。アインハルトさんはちゃんと気を付けて打ってくれたおかげかな。防護服を貫かれてないから、ヴィヴィオに怪我は無いよ」
僕がある程度診た後にそう判断を下したら、コロナとリオ、それにイクスも「良かった」って安堵した。ノーヴェとアインハルトさんの方を見ると、「こっちも大丈夫だ!」って手を振ってくれた。アインハルトさんも大人モードを解除したうえで立ち上がって、ノーヴェに付き添われるようにこちらに歩いてきた。
「アインハルトさんも、僕・・・よりはイクスが診た方が良いかな・・・?」
「いえ、平気です、ありがとうございます」
「一応診てもらえ、アインハルト。軽度とは言え脳震盪を起こしてんだ。お前、ヴィヴィオを殴り飛ばす直前に顎にカウンターを食らってんだしな」
「あ、はい・・・では、お願いします」
イクスがアイリお姉ちゃんやシャマルお姉ちゃん(ウチに遊びに来てもらう時、シャマルお姉ちゃんからも医療を教わるようになった)から、教わった知識を用いてアインハルトさんを診察。その結果、「問題はありません。が、しばらく安静です」とのことだ。
「迎えを呼ぶので、今日は一緒に帰りましょう」
「いえ、まだ練習があ――」
「今日は、か、え、り、ま、しょう?」
イクスがアインハルトさんに顔を近付けてそう言うと、アインハルトさんはイクスの迫力に圧されたみたいで「は、はい」と小さく頷いた。するとイクスは「はい♪」って満足そうに頷くと、アインハルトさんを横に寝かせた後にルーツィアさんに迎えに来てもらえるように手配した。
「んで、だ。アインハルト、どうだ? ヴィヴィオ達と一緒にやってみねぇか?」
ノーヴェが改めて誘うとアインハルトさんは、隣に眠るヴィヴィオを見て少し黙った後、「私は、ヴィヴィオさんやノーヴェさんとの試合を楽しんでしまったんです」って、自分を責めるような事を言った。
「もっとヴィヴィオさん達と闘いたいと・・・。いけない事なのに・・・」
「いけない事なんかではありません。アインハルト。貴女は見つけたんですよ」
「見つけた・・・?」
「ええ。貴女の闘うべき場所を見つけたんです」
イクスの言葉にアインハルトさんが「闘うべき場所」って繰り返したら、ノーヴェが「だな。お前はやっぱりこっち派だよ」って優しく微笑んだ。
「最強を示して覇王流の名を轟かすんだろ? あたしがステージを用意してやるよ。お前はあれだろ。ベルカ戦乱時代のように、命の削り合いをする殺し合いをしたいわけじゃないんだろ」
「それは・・・。正直、これまではクラウスの悲願を果たすためには、私も命の削り合いくらいはしなければならない、と考えていました。でも今日、ノーヴェさんやヴィヴィオさんとルールの下に闘って、楽しいと思ったんです。もっと闘いたいと・・・」
「そうか。なら、それでいいじゃねぇか。イクスの言うとおり、こっちで闘え。んで頂点を目指せ。練習を重ねて自分を高めて、公正なルールの中で相手と競い合う。アスリートに向いてるよ。で、だ。ヴィヴィオ達も目指してる、インターミドルチャンピオンシップ。お前も目指してみねぇか? 今年の大会はもう終わっちまったが、来年までに地力を伸ばす期間が生まれたと考えればいい」
「インターミドルチャンピオンシップ・・・?」
格闘家に挑戦すると言ってた割に、結構大きな競技会の事は知らないんだ。インターミドルについて説明する。スポーツ競技の運営団体DSAAが開催するの競技会の1つ。10歳から19歳までが参加できる、制限なしの無差別級の魔法戦競技会。ヴィヴィオやリオ、アインハルトさんのような格闘型は少ないみたい。
「まずは1つの世界で何回戦もの試合を繰り返して最強の代表を決め、そのあとに全管理世界から集まった数居る代表からさらに最強を決める。それに優勝することが出来れば・・・」
「間違いなく、世界最強の10代、というわけです」
ノーヴェの話を遮ってそう言ったのは「ヴィヴィオ!」だった。上半身を起こしたヴィヴィオが「アインハルトさん。わたし、アインハルトさんとも一緒に頑張りたいです」って思いを伝えた。
「わたし、もっと強くなります。そしてインターミドルで、公式試合のステージで、アインハルトさんと闘いたいです!」
僕たちの視線がアインハルトさんに集まる。アインハルトさんは少し目を伏せた後、スッと右手を自分の胸に添えた。
「ありがとうございます。ノーヴェさん、ヴィヴィオさん、そして陛下。皆さんからのお誘い、お受けしようと思います。インターミドル、私も挑戦させていただきます」
・―・―・終わりです・―・―・
ノーヴェにもいろいろと予定があるから、ノーヴェとの練習が無い日はヴィヴィオ達は貰ったトレーニングメニューの通りに練習をする。そして今日は週一の休みの日。この日だけはトレーニングを行わないように言われてる。
「あ、あの! 明日の練習なんですが!」
「はい。確か・・・」
「プールですよ、アインハルト」
「プっ、プールですか!?」
アインハルトさんのリアクションに僕たちは小首を傾げた。だってアインハルトさんにもスケジュール表が渡ってるはずなのに。コロナが「アインハルトさん。もう一度見てみてください」って促した。アインハルトさんが携帯端末を鞄から取り出して、スケジュール表を立ち上げた。
「「「「・・・」」」」
「確かにプールって書いてありますよね・・・?」
ポカンとしてるアインハルトさんやヴィヴィオ達に僕がそう言うと、イクスが「反応を見る限り、無意識にスルーしたのでしょうか?」ってアインハルトさんをチラリと見た。アインハルトさん、プールが苦手とかそういう感じなのかな~・・・。
「あの、私が参加する理由は練習のためであって、プールで遊ぶためではありませんので・・・」
端末を鞄の中に入れ直しながらアインハルトさんがそう言い捨てた。それに対して「それは違います。プールで体を動かすことがトレーニングなのですよ♪」ってイクスが反論した。それを聞いてもアインハルトさんは納得できない雰囲気だ。
「口で説明しても良いですけど、実際に体験するのが一番ですよ」
「それでは納得できません。説明を求めます」
そう食い下がるアインハルトさんの後ろで、「そんなにプールが嫌なのかな・・・?」ってリオ達がコソコソ話してる。それから校舎に入ってアインハルトさんと別れるまで、イクスがプールで・・・というよりは水中で体を動かすことで柔らかくしなやか、んで持久力のある筋肉が付くなどのメリットを説明することになった。
†††Sideフォルセティ⇒ヴィヴィオ†††
水の抵抗を受けるプールで遊――コホン、練習することがアスリートとしての体作りに重要なんだって話をアインハルトさんとした朝。授業も終わっての放課後、わたし、フォルセティ、コロナ、リオ、イクス、それにアインハルトさんと一緒にデパートにやってきた。
「この季節に水着なんて売っているのでしょうか・・・?」
「大丈夫ですよ、アインハルトさん。ここの水着コーナーは年中あるので」
デパートに来た理由は、アインハルトさんの水着を買うため。アインハルトさんは水着を持ってないってことだったから、一緒に買いに行こうって誘ってみたらOKを貰えてちょっとビックリ、そして嬉しかった。
「あのさ、女の子であるアインハルトさんの水着を買うのに、僕が一緒ってあまり意味ないような・・・」
一番後ろを歩いてついて来るフォルセティがそう漏らした。するとリオが「フォルセティも女の子っぽい外見だし変じゃないよ♪」って笑った。しーんと静まり返るわたし達。
「お父さんも、昔はそれでからかわれてたって言ってた・・・」
「あー、ルシルさんは格好いいけど、どちらかと言えば綺麗って感じがするかな~」
ルシルさんが髪を伸ばしてた時期はなのはママのアルバムでしか見たことがないけど、長い銀色の髪を靡かせて戦場を翔けるルシルさんは格好いいより綺麗だったし。だからリオの感想を真っ向から否定は出来ないんだよね。
「う~ん、もっと鍛えてみようかなぁ。ザフィーラみたいになれば、女の子みたいなんて言われないだろうし」
フォルセティはそう言いながら力こぶを作るように掲げた右腕をグイッと曲げた。ザフィーラの姿を思い浮かべて、その顔をフォルセティのものにするイメージ。次の瞬間、わたしとコロナは「本気でやめて」って懇願したし、イクスも「はい。さすがにそれは酷いです」って俯いた。
「そう? 格闘型じゃなくて魔導師型を目指してる僕だけど、ガッツリ鍛えると格好良くない?」
「「良くない!」」
「鍛えるにしても、ザフィーラほどまで鍛える必要はありません」
たとえ鍛えるにしてもルシルさんのような、細い体を維持した感じで筋肉を付けてほしい。さすがにザフィーラレベルはキツイよ・・・。フォルセティが「そっか。ダメか~」が残念がってる中でデパートに入って、寄り道しないで水着売り場へ向かう。
「ところで、フォルセティさんはインターミドルには参加しないのですか? 女子の部と男子の部があるのですから、フォルセティさんも参加してはどうですか?」
フォルセティが参加しない理由を知らないアインハルトさんがそう聞いた。
「ヴィヴィオ達を支えることが僕の希望なんです。あと他に、男子の部も女子の部と同時期の開催なので、みんなの応援に行けないのが嫌なんです。みんなが頑張っているのを見届けたい、応援したい。だから出場はしないんです」
「そうですか。ちゃんとした理由があったのですね」
とっても優しい微笑みを浮かべたアインハルトさんにドキッとした。話は綺麗なままで終わりそうだったのに、「大丈夫ですよ、アインハルトさん! フォルセティも女子の部に参加しますから!」ってリオがおかしな事を言いだした。
「はい?」
「実はですね~。フォルセティって実は女の子なんですよ♪ 男の子の格好をしているのは、お父さんに憧れているからなんですよ♪」
よく即興でそんなイタズラを思いつくな~、って逆に感心したよ。魔神オーディンは男の人だ。そのクローンということは自然と性別は男になる。だからアインハルトさんが、そんな嘘に引っかかるわけないよ。
「あ、そういう事なのですね。通りで可愛らしい方だと。インターミドルの会場はいくつかに分かれることもあるらしいので、確かに参加すれば皆さんの応援は難しいですね」
「「「「・・・え?」」」」
サラッと受け入れたアインハルトさんにわたし達や、嘘を吐いたリオ自身も「ん?」って小首を傾げた。アインハルトさんはそれ以上話を続けることなく歩を進める。
「ねえ、まさか本気にしちゃった・・・?」
「いや~、さすがにそれはないと思うんだけど・・・」
「もしかしてジョーク返しなのかも・・・?」
前を往くイクスとアインハルトさんの背中を眺めながら、わたしとコロナとリオでひそひそ話す。フォルセティが「どうすんの?」ってリオをジトッとした目で見たら、「うーん、ジョークで~す♪って?」ってリオが軽いノリで言った。
「仮にも先輩相手にそれは・・・。たぶん、アインハルトさんなりのジョークなんだと思う、と思いたい」
「そ、そうだよね? アインハルトさんは優しい人だから、リオのくだらないジョークに付き合ってるんだよね?」
「く、くだらない・・・。じゃあネタばれは早い方が良いかな・・・?」
「う~ん・・・」
そうこうしている内に水着売り場に到着。イクスが「何か希望などはありますか?」って質問すると、アインハルトさんは「あまり明るい色は好みませんが、白や薄い緑などは好きです」って答えた。バリアジャケットがそういった色だし、似合いそうだけど・・・。
「アインハルトさんはクールだから、黒も似合うと思いますよ」
コロナがイクスとアインハルトさんの側に寄ってそう提案した。リオのジョークに悩むより、あっちの方が楽しそう。というわけで、「わたしも黒、良いと思います!」ってコロナの意見に賛成。後ろから「ヴィヴィオ!?」って驚くリオの声が。
「まぁどうするかはリオに任せるよ~」
「あぅ~。フォルセティ~・・・」
「僕も知らな~い。僕は女の子の水着選びには役に立たないと思うから、店の外で待ってるよ」
リオには、ジョークは良いけど相手を選んでね、っていう罰を与えておく。それからアインハルトさんの意見を元に水着を選んで、試着をお願いしてはなんか違うを繰り返す。そして「これが一番似合ってます!」と断言できる水着を発見した。
「セパレートタイプのビキニです!」
「か、掲げないでください・・・!」
「色はシックな黒ですよ!」
「高らかに言わないでいいですから・・・!」
アインハルトさんが赤面する。失礼だって思いながらも、可愛いな~、なんて思ってしまう。ともかく、「判りました。この水着に決めます」ってアインハルトさんが決めてくれて、「やった!」ってわたし達は喜び合った。
「そういえばフォルセティさんはどうしました?」
「女の子の水着を選ぶのは恥ずかしいから外で待ってるって」
「同姓なのですから恥ずかしがることはないと思うのですが」
アインハルトさんが真顔でそう言った。ずっとリオのジョークに付き合ってるだけだって考えていたから、「まさかの素!?」ってわたし達は本気で驚いた。
「あ、あの! アインハルトさん!」
「ごめんなさい! フォルセティが女の子というのは、ちょっとした冗談だったんです!」
リオが前屈レベルに頭を下げて、アインハルトさんをからかった事を謝った。すると「はい。知っていました。私も冗談です」ってアインハルトさんがこれまた真顔でそう言ったから、わたし達はポカンと呆けちゃった。
「リオさんが冗談を言っているのはすぐに判りましたが、そこでそれが嘘だと指摘するのはどうなのか、と思いまして、引っかかったフリをすることにしたのです。驚きましたか?」
逆にからかわれてた事に「そうだったんだ~」って安堵した。ホッとしたまま店の外へ出ようとしたところで、フォルセティが見知らぬ女の子と楽しそうにしている光景がバーンと視界に入った。
「お待たせしました、フォルセティさん」
アインハルトさんがそれに構わずフォルセティの元へと向かったから、わたし達も遅れて続く。フォルセティが「友人と話していたのであっという間でした」って返した後・・・
「ヴィヴィオ達は初めてだよね? 2週間ほど前から八神道場に通ってる、僕たちより2つ年上の・・・」
「ミウラ・リナルディです! ヴィヴィオさん達のお話しは師匠たちから聞いてます! ボクも来年のインターミドルに挑戦する予定なので、その時はどうぞよろしくお願いします!」
すごい元気な声で自己紹介された。女の子の正体がヴィータさん達の弟子だってことが判って一安心。わたし達も自己紹介をした後、「家族を待たせてるので、これで失礼します!」って勢いよくお辞儀した後、わたし達の元から走り去っていった。
「あの、八神道場というのは・・・?」
「僕の家族が開いてる、ストライクアーツを子供に教えるっていう教室です。基本的にヴィータお姉ちゃんとザフィーラの2人が教えるんですが、時にはお父さんやシグナムお姉ちゃんも参加します」
アインハルトさんにフォルセティがそう答えると、アインハルトさんの目が輝いた。アインハルトさんがチームナカジマに入った理由の中に、カルナージ合宿がある。引率として一緒に行ってくれるなのはママ達、高ランクの魔導師・騎士との本気の魔法戦に参加できるからだ。わたしも楽しみの反面、ちょっと恐かったりする。自分が生き残るだけで精一杯かもだし。
「なるほどです。ではミウラさんは、ヴィヴィオやリオ、そしてアインハルトにとって将来、手強いライバルになるわけですね」
「うん」
「だね」
「はい」
わたし達は改めてインターミドルへの挑戦、そして勝利を決意した。
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