魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Epica8-C邂逅~Heiliger Prinzessin unt Kaiser~
†††Sideアインハルト†††
物心がついた頃から私の中にあった、知りえないはずの記憶の数々。最初は訳も判らず、両親に言っても気の所為だと、夢を見たのだと、そう言い聞かされ続けた私は、そうゆうものなのだと思い聞かせることにした。
(ですが記憶を見る頻度が増えて、私は少しずつ塞ぎ込んでいってしまって・・・)
見かねた両親が私を病院へと連れて行き、そこで私の夢は前世の記憶だということが判明した。それから病院から連絡を受けた、St.オルフェンを管理するフライハイト家と、それに連なる6つの家柄――六家の自治領評議会から、私の記憶について尋ねたいという役員の方々が来て追加調査。そして私が承継しているのは古代ベルカの諸王の1人、覇王イングヴァルトその人のものだと断定されました。
(この碧銀の髪も、紺と青の光彩異色も、すべてイングヴァルト王家の身体特徴と一致している、と)
そして記憶承継のための通院をお願いされ、その費用は全額評議会持ちになり、今後の進学や学費も3割ほど評議会が支払ってくれることになり、St.ヒルデ魔法学院への入学も勧誘という形で受けた。
(そして3年前に起こったプライソン戦役。そこで私は、聖王の復活を目の当たりにしました)
聖王家の中でも特に同調率が高い者でなければ、動かすこともままならないと云われる“聖王のゆりかご”が、このミッドチルダに出現しました。ソレを、以前からニュースなどで知っていた魔神オーディン(というよりは、セインテスト本家の末裔らしいお方)と守護騎士ヴォルケンリッターのお方たちを含めた、管理局や聖王教会騎士団の方々が撃沈させました。
(その1年後に学院に入学してきたのは・・・オリヴィエ王女殿下とオーディンさんのクローンであるというヴィヴィオさんとフォルセティさんだった)
入学式前に校舎見学という旨で、初等部の校舎にやって来ましたお2人を見かけた私のあの時の衝撃と言ったら今でも忘れもしません。後日、通院時に同行して頂けるシスターに駄目元でお2人の事を伺ってみると・・・
――そうですね・・・。覇王と聖王と魔神の関係は、聖王教会所属の関係者なら知っていることですし、貴女もいずれ知ることだと思うので話しますが、一応他言無用でお願いしますね――
そう注意されたのちに聴かされたのは、ヴィヴィオさんとフォルセティさんは、聖王教会本部より盗まれたオリヴィエ殿下とオーディンさんの聖遺物から採取された遺伝子データを基に、プライソンによって生み出されたクローンである事。ヴィヴィオさんは“聖王のゆりかご”を動かすためだけの生体部品。フォルセティさんはヴィヴィオさんを護るための防衛機構。この話を聴いた瞬間、私の内に生まれたのは純粋な怒り・・・。
(オリヴィエ殿下は世界のためにその身を犠牲にして、オーディンさんもまた、自分の成すべき事を後回しにしてまでイリュリアと戦ってくれました。2人は決して兵器ではありませんでした・・・)
それを兵器として利用するためにクローンとして現代に蘇らせた。クラウスの記憶の影響以上に、私の個人的な感情でも怒りしか湧き出てこなかった。ですから校舎で見かけるたび、いえ自らお2人の姿を捜すようになっていた。
(ですが声は掛けられなかった。お2人は私の知るオリヴィエでもオーディンさんでもないのだから・・・。私の、クラウスの一方的な思いをぶつけてしまわないように・・・)
その3年後の今年、今度は冥府の炎王イクスヴェリア陛下の固有戦力、マリアージュが各管理世界に出現し、そして殺人事件を起こし続けるという事件が発生。マリンガーデンでその事件は解決したとされたのですが・・・。
(今度はヴィヴィオさん達の側に、イクスヴェリア陛下と同じ名を有する少女が現れた)
私の知る限りイクスヴェリア陛下は大人の男性でした。が、例によってシスターに話を伺ったところ、イクスヴェリア陛下ご本人ということで。そんな陛下が私に会いに来て下さるとは思いもしませんでした。
――この姿でこうして普通に言葉を交わすのは初めてですね、覇王クラウス――
陛下はすでに私の記憶の事を知っているようでした。名字がフライハイトとなっていましたので、St.オルフェンと聖王教会のトップであられるフライハイト家の一員になったのは間違いありません。ご家族から私の事を聞いていてもおかしくないです。
(そんな陛下から、ヴィヴィオさん達と会うように提案されましたが・・・)
私はそれを拒否した。恐ろしかったから。私の背負っているものを、ヴィヴィオさん達にも背負わせてしまいそうで。それが嫌で、もうヴィヴィオさん達の元へと向かわないようにしていたのですが・・・。
「また来たのですか・・・。今日は一体なんの御用ですか、イクスヴェリア陛下?」
「はい。改めて貴女をヴィヴィオとフォルセティと会わせようと思いまして」
「それは以前にお断りしました。覇王は聖王女さんとは会うつもりはありません。話がそれだけでしたら、私はこれにて失礼させていただきます」
陛下に一礼をして、立ち去るために脇を通り過ぎようとしたところで、「待ちなさい、アインハルト・ストラトス」と、有無を言わさないような語気で制止されてしまった。
「貴女の・・・覇王の悲願は、天地に覇を成すこと、でしたね。ならばいつか必ずヴィヴィオ達と顔を合わせることになります。では今から顔を合わせたところで何が問題です?」
「・・・問題は・・・」
答えられない。こうしてまた言葉を交わさないように、ヴィヴィオさん達から距離を取っていたから、言い訳も何も考えていなかった。陛下は「あなたがヴィヴィオ達に会わない理由を考えてみました」と言い、再び私の前に立ちはだかりました。
「考えられたのは2つでした。1つは今のヴィヴィオ達が倒すに相応しくない弱さだからです。オリヴィエのクローンとは言え、ヴィヴィオが受け継いでいるのは金の髪と紅と翠の光彩異色、そして虹色の魔力光。その圧倒的な戦闘能力は見る影もなし。だから仕掛けない。もう1つは・・・貴女が迷っているから」
「・・・! なにを・・・。ありえません。私が何に迷っていると・・・?」
陛下の瞳が、私の瞳を真っ直ぐ射抜く。見透かされている。陛下は「あなたの感情は表情に出にくいのですね。が、その綺麗な紺と青の瞳は感情に揺れています」と、自身の瞳を指差しました。
「確信しました。迷いと恐れ、ですね。以前あなたは言っていましたね。その後悔をぶつける相手ももう居ません、と。ならばぶつけなさい、ヴィヴィオに。彼女には貴女の事は話してあります。それでもなお貴女と会ってみたいと言いましたよ。わたしに出来る事ならやります、と」
「・・・優しさだけでは覇王は救われませんし、私の拳はヴィヴィオさんをかえって苦しめる結果になるだけです。ですので、お誘いは丁重にお断りさせていただきます」
改めて一礼したところで、「それではいつまで経ってもアインハルトは救われません」と陛下が私の両肩に手を置きました。
「クラウスは自分ひとりで背負い込まず、周囲に助けを求めたようですよ?」
イリュリアとの戦争で、クラウスはすぐにオーディンさんに助けを求めた。あのお方が自らの目的のためにベルカへ来たと知っていながら。それでもオーディンさんは応え、グラオベン・オルデンを率いてすごい功績を上げてくれました。
「いくら覇王の記憶を承継していても、貴女はまだ11歳の子供です。まだまだ幼い。すべてを背負って苦しむ必要はありません。頼りなさい、周囲を。弱音を吐いたっていいのです」
子供を諭す大人のような事を言う陛下。事実、私は子供で、陛下は数千年を生き永らえている正真正銘の王。私より少し背の低い方なのに、なんと堂々とした御姿なのでしょうか。ですが、それでもまだ踏ん切りがつきません・・・。
「(とはいえ、これ以上断りを入れたとしても、おそらく誘いは後日にまで続くのでしょう・・・)判りました。お誘いをお受けします」
「そうですか! では早速これから!」
満面の笑顔を浮かべる陛下ですが、残念ながら「行けません」と私は断った。すると陛下は「はい?」と心底不思議そうに小首を傾げて、「あれ? 今、お受けします・・・って」と、大変ショックを受けていられるようで・・・。
「今日は記憶承継のための通院日ですので」
「・・・あ! そうですよね! 貴女にも予定はありますよね! これはうっかりでした、申し訳ありません!」
「いえ。通院日は3ヵ月に一度ですので、明日からまた時間が生まれます。ですが私個人的にも鍛錬の時間がありますから、そう長くはお付き合い出来ませんが」
鍛えて、鍛えて、鍛え抜いて、この体を如何なる者と戦っても負けないほどに屈強に鍛える。そのための鍛錬の時間を削るわけにはいかない。
「それで構いません。では後日改めてお誘いします」
「判りました。ごきげんよう、イクスヴェリア陛下」
「ごきげんよう、アインハルト」
陛下と別れ、一路校舎のエントランスへ。そして校舎を出たところで、「アインハルトさん!」そう名前を呼ばれた。そちらへと目を向けて、「今日もよろしくお願いします。シスター・トルーデ」と頭を下げる。あのシスターが、私の通院にいつも一緒に来ていただいてる方だ。
「うん。よろしくね」
†††Sideアインハルト⇒ヴィヴィオ†††
当初の予定だったアインハルトさんとの顔合わせは、アインハルトさん個人の予定で流れちゃった。それから2週間後の今日、ノーヴェの予定もキッチリ合って、アインハルトさんと会えることになった。
「うぅ~、なんか緊張する~」
「大丈夫だよ、ヴィヴィオ。僕たちがちゃんと見守ってるから」
「うんっ! 精いっぱい応援するね!」
「ルシルさんとの特訓を思い出せ~♪」
ストライクアーツ練習場にやって来たわたし、フォルセティ、コロナ、リオ、そしてノーヴェ。みんなトレーニングウェアを着て、イクスとアインハルトさんを待ってる中、緊張するわたしへのフォルセティ達の声援に、「うん!」って頷く。
(合計4週間の特訓期間。ルシルさんは仕事で忙しい中でも時間を割いてまでミッドに帰って来て、わたしの特訓に付き合ってくれた)
付き合ってくれたルシルさんのためにも、ただ何も得られないで負けるわけにはいかない。
・―・―・回想~♪・―・―・
ルシルさんが休みだっていう土曜日に、わたしとコロナとリオとイクスは、フォルセティのお家にやって来た。八神家のお家は海辺にあるから、さざ波の音と潮の香りがなんだか心地良い。八神邸の前にある砂浜はプライベートビーチで、毎年の夏にはよく海水浴してる。
「「「「こんにちはー!」」」」
「いらっしゃーい!」
「よく来たね。ルシルももう少ししたら帰って来るそうだから、中に入って待っていると良い」
出迎えてくれたのはフォルセティとアインスさん。2人ともとっても綺麗な銀色の髪をしてるから、本当の姉弟にも見えちゃう。銀髪って実はかなり珍しいらしいんだけど、知り合いにはもう何人も居たりする。フォルセティ、ルシルさん、アインスさん、リイン、チンクの5人。不思議な縁だよね。
「「「「はーい!」」」」
アインスさんに誘われるままに家に上がって、案内されたリビングで冷たいジュースをいただく。それからちょっとお喋りした後、「じゃあそろそろ着替えて、浜辺で準備運動しておこうっか」って、フォルセティが席を立った。
「あ、うん、そうだね。えっと・・・」
わたし達も席を立って、どこで着替えようかなって辺りをキョロキョロ。するとアインスさんが「フォルセティ。男子はお前だけだ」ってフォルセティに伝えたら、「うん。自分の部屋で着替えて来る!」ってフォルセティがリビングから出て行った。
「風呂は沸かしておくから、存分にルシルに鍛えてもらうと良い」
「「「「ありがとうございます!」」」」
外から見えないようにカーテンを閉めてくれたアインスさんにお礼を言って、私服からトレーニングウェアに着替えた後は砂浜へゴー。わたしとフォルセティ、コロナとリオの2人1組で準備運動。イクスは、イクスくらいの身長にまで変身したアインスさんとだ。それからランニング。砂に足を取られるから、これがかなり足腰に来る。
「あ、この音・・・!」
3往復目に入ろうかっていうところに、バイクのエンジン音が遠くから聞こえてきた。道路の方へ眼を向けると、“マクティーラ”を運転する「ルシルさん!」が帰って来た。フォルセティと一緒に「おかえりなさい!」って大きく手を振って挨拶をすると、「ただいまー!」って返してくれた。
「待たせてすまない! すぐ用意するから!」
「あ、大丈夫でーす!」
八神家の駐車場に消えて行ったルシルさん。ちょっとクールダウンしてたら、「よしっ。始めようか!」ってルシルさんも砂浜にやって来た。格好はわたし達と同じようにトレーニングウェアだ。
「アインハルト・ストラトスと試合をするのは、ヴィヴィオだけで良いんだよな?」
「はいっ!」
「以前にも言ったが、現在のアインハルトの扱う覇王流と、今から俺がヴィヴィオに見せる覇王流は、その完成度が違うと考えてくれ」
「はい。判ってます」
この前見せてもらった断空っていう技。モニター越しでもすごい威力だって判った。最初の試合は魔法無しってことになってるけど、アインハルトさんに魔法あり試合でも良い?って確認とって、OKが出たらそのままか、後日に再試合に誘おうって話になってる。
(わたしだけアインハルトさんの技を知るのは、ちょっと卑怯な気もするけど・・・)
――大事な試合の時は、相手の事を調べるのは当たり前だ。無策で場当たり的に突っ込むのは素人だ。いいか? 遊びや趣味なら勝ちに拘らなくて良い。そいつは本人の問題だ。が、本気で勝ちたい、って思うんなら情報を得ろ。相手だってお前に勝ちたいから研究するだろう――
ノーヴェに以前そう言われた。今回も、アインハルトさんはわたしの技とか知らないし。でもアインハルトさんの事情を聞く限り、今出せる全力で戦わないといけないって思った。だから・・・。
「でも知っておきたいです!」
「だよな。そのために今日来たのだから」
ルシルさんの足元にサファイアブルーのベルカ魔法陣が展開されると、ルシルさんの姿が光に包まれた。光が治まると、わたし達の前に小さくなっちゃったルシルさんが居た。みんなでポカンとしてると、ルシルさんは「現在のアインハルトの体格に似せてみた」って屈伸や伸脚しながら教えてくれた。
「準備運動はこんなものだろう。じゃあヴィヴィオ。準備はいいかい?」
「いつでもOKです!」
離れてくフォルセティ達を余所にわたしとルシルさんは砂浜に残って、一定の距離を保ったうえで構えを取った。そう言えばルシルさんとの1対1で闘いって初めてかも。身長も低くなってるからフォルセティと被るけど、こうやって対峙してみると受ける空気が違う。一切の隙が無い。こっちから攻め込めない。
「あの、その隙の無さも覇王流と関係してますか?」
「ん? あー、ごめん。違う。わざと隙を作るというのは難しいんだよな~・・・。ま、とりあえず拳を交えてみよう、ヴィヴィオ」
「あ、はい! お願いします!」
グッと腰を落として、そして地面を蹴って一気に距離を詰める。砂に足を取られてスピードが乗らないけど、それでもルシルさんの懐には入れた。右ストレートを打ち込むと、ルシルさんは顔を逸らして避けた後、伸びきったわたしの右腕を取って、「あわわ・・・!」わたしを後方へ放り投げた。
「っとと」
着地してたたらを踏んでたわたしに、ルシルさんの左ストレートが繰り出されるんだけど、なんか遅い気がする。上半身を後ろに少し反って半歩分だけ後退して、ルシルさんの拳を回避。わたしの鼻先ギリギリで止まったルシルさんの左腕を掻い潜って懐に入る。
「せいっ!」
右と左のコンビネーション。ルシルさんは右手の平だけでパシンパシン!と受け止める。すぐにわたしは後退して上段蹴り。そしてルシルさんは上段回し蹴り。わたしの脛とルシルさんのふくらはぎが激突。そして距離をお互いにとって、攻防を繰り返す。
(なんだろう・・・。ルシルさんの動き、どんどん速くなっていってる気がする・・・?)
最初のストレートに比べて、ルシルさんの攻撃のスピードが上がってるかもしれない。それに始めはわたしの攻撃を防御していたのに、今じゃ掠りもしなくなってきた。
「っく・・・!」
さらに言えば、わたしが攻撃に移れる頻度も少なくなってきた。そんな中、「ふむ。これが今のヴィヴィオのレベルなんだな」ってルシルさんが呟いたのが微かに聞こえた。するとルシルさんの動きの速さの上昇具合が止まった気が・・・。
「このまま引っ張っていく。付いて来い」
「え?・・・あ、はいっ!」
今のルシルさんは、わたしよりちょっと強いレベル。この動きに慣れたその時、わたしはレベルアップしてるってことになるんだ。明確に強くなったっていう実感を得られるその瞬間を迎えたい。そう強く思った。
「ふんっ!」
ルシルさんのジャブ3連打からの強烈な跳び蹴り。ギリギリで両腕のガードで防御できた。2mくらい後退させられちゃったけど、変に体勢を崩されることなく着地したところにルシルさんが突っ込んで来た。繰り出されたのは右ストレート。頬を掠ったけど避けることは出来た。間髪入れずにわたしも左のストレートを繰り出す。ルシルさんの右腕は伸びきってるし、わたしの左の一撃は魔法くらいじゃないと防御できないはず。
「ぐっ・・・!」
(浅いけど入った!)
ルシルさんの右頬にわたしの拳が当たったんだけど、ルシルさんは咄嗟に上半身を反らしたことで、威力を軽減してきた。でもわたしから逃れるように後退したから、これはきっと追撃のチャンス。一足飛びで突進した瞬間、直感的に、やっちゃった、って言葉が脳裏を過ぎった。
「はッ!」
「くふっ・・・!」
ルシルさんのカウンター、掌底がわたしのお腹にクリーンヒット。わたしは後ろに向かって吹っ飛んだけど、「おっと」アインスさんがわたしを抱き止めてくれた。
「あ、ありがとうございます、アインスさん」
「ああ」
魔法無しのスパーリングはいったん終了。本命の魔法ありの魔導格闘戦前に反省会ということに。ルシルさんから、「あの泣き虫だったヴィヴィオがよくぞここまで強く・・・」って、わたしの今現在の実力の評価が下された。
「だがまぁ、無駄な動きやミスが割と目立つな。特に最後の突進。今回のスパーリングの中で何度か見たが・・・」
ルシルさんが、わたしのよくやる間合いを詰めるためのステップをやって見せた。
「初見や格下相手には通用するが、それ以外には先ほどみたくカウンターの餌食だ。君の一足飛びのステップは確かに速いが、跳んでから着地までの僅かな時間は宙に浮いていると同義だ。その間は方向転換も急停止も出来ないからな」
「なるほど~」
ルシルさんからいろいろなアドバイスを頂いた後は、いよいよ本題の「さぁ、魔導格闘戦を始めようか」だ。
・―・―・終わり~♪・―・―・
「来たな」
ノーヴェの言葉にハッとして顔を上げる。出入り口の方からイクスと、「あの人が、アインハルトさん・・・」の2人が競技場に入って来た。
「お待たせしてすみませんでした。イクスヴェリア、到着しました」
「アインハルト・ストラトス、参りました」
碧銀の髪に青と紺の光彩異色のアインハルトさんに、「はじめまして! 高町ヴィヴィオです! ストライクアーツをやってます!」握手のために右手を差し出すと、アインハルトさんは少しわたしの手を見た後、「今日はよろしくお願いします」って応じてくれた。それから他のみんなも自己紹介。アインハルトさんは淡々と受け答えした後、更衣室へ向かった。
「なんか、ちょっと恐いね・・・」
「うん、だね・・・」
コロナとリオが更衣室に消えて行ったアインハルトさんの指してそう言った。でもなんだろう。わたしは恐いっていうより、気を張り過ぎて余裕が無いって感じがする・・・ような。やっぱり覇王と聖王女の関係からなのかな・・・。
「お待たせしました」
トレーニングウェアに着替えたアインハルトさんが戻って来た。
「んじゃ、すでにイクスから話を聞いてると思うが、今日はアインハルトとヴィヴィオのスパーリングが主目的だ」
「ヴィヴィオ、お願いします」
「うん、イクス。よろしくお願いします、アインハルトさん!」
「はい。よろしくお願いします」
わたしとアインハルトさんだけでコートに入って対峙する。そして・・・
「スパーリング、4分1ラウンドだ。射砲撃やバインド無しでの格闘オンリーな。・・・レディ・・・ゴー!」
わたしとアインハルトさんの試合は始まった。
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