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提督はBarにいる。

作者:ごません
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蓮根で見通しの良い年に・3

「ホイお待たせ。『レンコン餅の揚げ出し』だ」

「レンコンがお餅になるの?」

 どうやら、如月はレンコン餅を初めて見たらしい。

「レンコンは実はでんぷん質を多く含んでてな。すりおろしてでんぷん質を抽出しやすくして練り、加熱すると餅のようになるんだ」

「へぇ……初めて知ったわ」

 興味深そうに椀の中のレンコン餅をつつく如月。たっぷりとみぞれあんを絡ませて箸で摘まみ上げ、小さくかじりつく。口に広がるのは揚げた事による表面のサクサクとした歯応え。中身はすりおろしたレンコンのモチモチとした生地と、細かく刻んだレンコンのシャキシャキ感がアクセントを加える。

「色んな食感が楽しめていいわねぇ、これ♪」

「味付けを変えれば飽きも来ないしな」

 普通の餅のように甘辛い醤油タレに海苔を巻いて磯辺巻きにしたり、ソースにマヨネーズ、おかかに青海苔でお好み焼き風。他にも中に海老やチーズ、ハムなんかを混ぜ込んでみたりとアレンジは多彩だ。

「ふぅ~ん……きゃっ!」

「おい、どうした!?」

「服の中にお餅が入っちゃった……司令官、取ってくれない?」

 見れば、如月の胸元がぐっしょりと濡れていた。どうやら、箸で餅を掴み損ねて落としてしまったらしい。それで服の中に……って。

「絶対わざとだろ、お前」

「あら、バレちゃった?」

 てへっ、と舌をぺろりと出す如月。

「司令官も誘惑したら釣れるかと思ったのに……残念だわ」

「やっぱりあの思わせぶりな仕草は演技かよ」

 何となくは気付いてたけどな。




「……もう、そんなに提督はすももはお嫌い?完熟桃の方がいいの?」

「身体の発達具合を桃にすり替えて、話を逸らすんじゃない」

 急遽洗濯要員の妖精さんを呼んで、如月の制服を持ってきて貰った。寝ている所を起こして済まんな、お詫びに後で甘い物を差し入れするから。わざと制服を汚した如月を一通り怒り、さっきの桃の話に戻った。ちなみに俺はすももも桃も大好きだ(フルーツとして)。

「そこまで駆逐艦とのケッコンを忌避するなんて、何か理由があるのよね?」

 如月の眼差しは真剣だ。男と女の事だ、俺も理解はしているし、好きな男に抱かれたいという願望も出来る限りは叶えてやりたい……しかしなぁ。

「あ~……如月。お前、俺とケッコンしたら当然そういう関係になりたいんだよな?」

「勿論よ、それが目標の1つだもの」

「あ~……だよなぁ、やっぱりなぁ」

 俺は頭をバリバリと掻き、覚悟を決める。

「本来はケッコンした奴だけに見せる事にしてるモンなんだが……如月の錬度からすればもうすぐだし、いいことにするか」

「何々?如月に何を見せてくれるの?」

 俺はカウンターの下に隠してあった1つのレポートを取り出し、如月に手渡す。表紙にはタイトルは無く、赤いインクで『部外秘』と判が押してある。この鎮守府の外には持ち出せない極秘資料ーー……如月もそれを察し、ゴクリと唾を飲み込む。

「見ても…………いいの?」

「ああ」

 如月がペラリと表紙を捲ると、そこには

『提督の夜戦(意味深)に関する聞き取り調査書』

 と、大きく書かれていた。タイトルを見て固まる如月。暫くの沈黙の後、絞り出された言葉は

「なぁに?コレ」

 だった。

「いや、物凄く生々しい話になるし、あんまり言いたかねぇんだがよ……俺のナニが普通の野郎よりもかなり大きいらしくてなぁ」

 ナニとはつまり、我が愚息の事である。『ケッコンしないと夜戦(意味深)はダメ』というルールが出来たのは鎮守府の創設から早い段階であり、元々は艦娘の抜け駆けを防止する為に当時の所属艦達が自主的に決めたルールだった。当然ながら俺も若く、溜まる物は溜まる。なので初のケッコンカッコカリを果たした金剛との初夜(カッコカリ)は燃えた。お互いに燃えまくって、金剛が大破しかけた。翌日明石には

「ナニをどうすればこんな事になるんですか!」

 とマジギレされ、金剛はメンタルケアも含めて一週間の入院生活を余儀無くされた。今でこそ俺も歳を重ねて手加減やその他のテクニックを覚えて滅多にそういう事は起きなくなったが、若い頃には何度かやり過ぎ……いや、ヤり過ぎて主戦力の奴を戦線離脱させてしまった事があった。その為、今では『ケッコンしないと夜戦はダメ』というルールは『抜け駆け禁止』の意味合いではなく、『ケッコン出来るレベルまで耐久力鍛えとけ、悪い事は言わないから』という意味合いで使われている。なお、これは駆逐艦には伝わっていない。駆逐艦に伝えると、逆に躍起になって俺と無理矢理ヤろうとする奴が現れそうだと俺を含めて嫁艦達と協議した結果だ。とりあえず、ケッコンした奴にはこのファイルを見せて、先達の声を聞き、それでも本当にしたいのか?と意思を確認してからするようになった。そこまでくれば自己責任だし、覚悟も決まっているので全力で相手させてもらう。

「な、中身を確認しても?」

「だから、良いって言ってんだろ?」





~以下、ファイルより抜粋~

Q.提督のアレを挿入されてどうだった?
※プライバシー保護の為、イニシャルは隠してあります。

・は、初めての時を思い出すと今でも震えが止まらないデース……(戦艦:K剛さん)

・慣れるまでは地獄ですが、慣れてくると段々あのサイズがクセになってきます。(空母:K賀さん)

・He is a monster.(戦艦:Iオワさん)

・金剛達に『覚悟してね?』と脅かされたけど、それ以上だったわ……(戦艦:Bスマルクさん)

・あのサイズで、しかも私達よりもスタミナあるでしょ?実際化け物だと思うわ。(空母:S龍さん)

・内臓の位置がズレるかと思ったよね、いやホント。デカいので押されちゃって。(空母:H龍さん)

・まさか、一撃で『死』を覚悟するとは思いませんでした……(軽巡:J通さん)

・まさか、私に釣り合わない主砲が存在するとはな。(戦艦:M蔵さん)

・幸福な時間だったけど……腰痛で不幸になったわ………(戦艦:Y城さん)

・ケッコンするまで待てないと思ってたけど、今はケッコンしてからで良かったと思ってるわ……(空母:U龍さん)

以下続く……




「あ~……如月、最近夕立と時雨が一週間ばかり戦線離脱したの覚えてるか?」

「えぇ、つい最近だったもの……って、もしかして」

「あぁ、あいつ等の戦線離脱が決まったの……初夜の翌朝なんだ」

 後はお察し、という奴である。ファイルを見ていた如月はそれを閉じると、

「……司令官」

「なんだ?」

「まだケッコンまで時間があるし、もう少し……冷静になって考えてみるわ」

「ああ、それがいいと思うぜ」

 どうしても、って言うなら相手になるさ……全力でな。 
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