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蓮根で見通しの良い年に・2
さて、レンコンを食材として考えた時の魅力とは何か?と聞かれれば俺は『切り方の違いによる食感の多彩な変化』だと答えるだろう。
薄い輪切りならパリパリ、厚く輪切りにすればシャキシャキと。
繊維を断ち切るように乱切りすればホクホクに。
細かく刻んだりすりおろして加熱すれば、その特有の粘り気とでんぷん質が、もっちりとした食感を作り出す。
切り方を変えるだけでこれだけ食感の変化する野菜というのは、あまりない。お次はレンコンのホクホク感を楽しんでもらうとしようか。
《ご飯のお伴に!スペアリブとレンコンのピリ辛煮込み》※分量2人前
・レンコン:300g
・豚骨付きバラ肉(スペアリブ):300g
・酒:大さじ2
・みりん:大さじ1/2
・砂糖:小さじ1
・醤油:大さじ1
・にんにく(すりおろし):小さじ1
・コチュジャン:大さじ1
・水:300cc
さて、作っていこう。レンコンは皮を剥き、5cm位の長さの乱切りに。切ったレンコンは水に浸して軽くアク抜きして水気を切っておく。
鍋にお湯を沸かし(分量外)、スペアリブをサッと湯通しする。こうする事で余計な臭みや表面の血合いを取ったり、煮込み時間を短縮する効果がある。骨や肉から旨味が逃げてしまうので、茹ですぎ注意。
厚手の鍋にレンコン、スペアリブ、調味料を入れて強火にかける。沸騰してきたらアク取りをして落し蓋をし、鍋の蓋をずらして中火~弱火位に火を落として30分程煮込む。途中、スペアリブやレンコンを2~3回引っくり返すのを忘れずに。片面だけ味が染み込んで、もう片方は色も着いてないなんて見た目の悪いのはイヤだろ?
30分程煮込んだら蓋を取り、レンコンとスペアリブがちゃんと煮えている事を確認する。煮汁がまだ残っていたら火を強火にして蓋を取った状態で煮汁が無くなるまで煮詰める。器に盛り付けて、仕上げに白髪ネギなんかを散らしたら完成……なんだが、煮込むのにはしばらく時間が掛かるんでな。その間に別の作業だ。
「それにしても……司令官は小さい娘が嫌い?」
「なんだよ、藪から棒に」
「だって、今ケッコンしてる娘達って戦艦に空母、巡洋艦の娘達でさえ少数で駆逐艦の娘はーー…」
「この間夕立と時雨とケッコンしたぞ?」
「だって、夕立ちゃんと時雨ちゃんは1軍メンバーじゃない」
ウチは良くも悪くもブルネイ周辺の鎮守府を束ねる大型の鎮守府だ。俺も本土での作戦会議等はサボりがちだが大将という立場上、一定以上の戦果を求められる。となれば、必然的に戦闘能力の高い艦や戦艦・空母等の大型艦の運用が主になるわけで。艦娘達の中では1軍や2軍といった区分けが出来ているらしい、という話は聞いていた。
「……と言っても、普段は主戦力メンバーの方が仕事してねぇがな」
1軍・2軍という区分けが出来ていたとしても、1軍と呼ばれている連中が2軍の連中を侮る事はしない。何しろ、自分達がいざ全力で戦う時に消費する燃料や弾薬等の資材は平素からコツコツ2軍メンバー達が集めている物だからだ。その辺りをちゃんと理解している為、むしろ1軍と呼ばれている面子は2軍メンバーを敬っている。勿論俺もその辺はちゃんと理解しており、給料等の部分で反映させているがその辺の話はまた別の機会に。
「それでもやっぱり、アナタを好いている娘達は1軍で活躍して錬度を上げて、ケッコンしたいと思っているもの。……私を含めて、ね?」
そう言ってこちらをジッと見つめてくる如月の眼差しは真剣だ。
「そうは言ったって、如月の錬度は今97まで上がってるじゃねぇか。もうじきだろ?」
「残り2つと言っても、ここからが長いじゃない?」
艦娘の錬度は上がれば上がるだけ必要な経験値が増加し、特にケッコン間近に必要な経験値は膨大だ。特に如月のように遠征に従事している艦娘にとっては長過ぎる道程かもしれん。
「それになぁ……俺も大将としての体面って奴があるからよぉ」
過去にもそういう事例があったりするんだ、実際。駆逐艦とケッコンして街中でデートしてたら、不審者と間違われたりして危うく通報されかけたりな。ウチの連中のほとんどは外見はどうあれ、中身はほとんど成熟した女性だってのは解ってはいる……が、どうしても世間の反応って奴は駆逐艦や海防艦みたいな幼い見た目の艦娘が嫁艦の連中には冷たい。ロリコン扱いされるからな。俺より歳上のジジィ位の歳になれば、孫と祖父位に見えるから反応も弱くなるが、流石に俺の印象が悪くなるのは避けたい。
「まぁ、確かにアナタが悪く思われるのは私も嫌ね」
「だろ?別に駆逐艦の連中とのケッコンが嫌だ、って訳じゃねぇのさ」
それに、ケッコンによる燃費の改善は必要不可欠だ。デカい鎮守府だけに、資源の総消費量はバカにならんからな。世知辛い話だ。
「……っと。出来たぞ」
如月と生々しい会話を交わしている間に、スペアリブとレンコンのピリ辛煮込みが煮上がっていた。俺はそれを器に盛り付けて、如月に出してやる。如月はそれを受け取ると、スペアリブの骨の部分を持って小さくかじりついた。
「熱っ……かなり熱いわね」
「そりゃ出来立てだからな」
ふぅふぅと息を吹き掛け、今度はさっきより大きくかぶりつく如月。手掴みでかぶりつくなんてはしたなく思えるが、骨付き肉はやっぱり手掴みが一番美味く感じるよな。よく煮込まれたスペアリブは、骨離れもよくて柔らかい。
「んっ……お肉とお醤油がよくあってるわ。それにこの辛味を出してるのは何かしら?」
「コチュジャンだな、韓国の唐辛子味噌」
「それで辛いだけじゃなくてコクがあったのね……勉強になるわ」
如月も料理をするとは聞いていたので、その手の会話を楽しむ。その間に如月は指や唇に付いた肉の脂を舐め取っていた。一々その姿が艶かしく、こちらを誘っているように見える。
「どうしました?如月の顔に何か付いてます?」
「っ!いや……何でもない」
蠱惑げにクスリと微笑まれた。その幼い見た目にそぐわない妙な色気にドキリとしてしまう。目を逸らし、気を紛らわす為にも他の料理に集中するとしよう。
《みぞれあんでサッパリ!揚げ出しレンコン餅!》※分量4人前
・レンコン:450g
・片栗粉:小さじ2
・薄口醤油:小さじ1
・塩:少々
(みぞれあん)
・大根:200g
・出汁:250cc
・薄口醤油:25ml
・みりん:25ml
・水溶き片栗粉:適量
・青ネギ:2本
・おろし生姜:適量
さて、作っていこう。レンコン餅ってのはレンコンの含んでいる成分を活かして作る料理だ。実はレンコンってのは根菜だからかでんぷん質が多く、独特の粘り成分も含んでいる。すりおろして熱を加えてやるとまるで餅のようなモチモチとした食感に変化する。今回はそいつを揚げて揚げ出しで頂こうってワケさ。
まずは野菜の下拵えから。レンコンは50gを取り分けて5mm角のみじん切りにする。全部をすりおろさないのは食感に違いを出すためだ。残りの400gはすりおろして軽く水気を絞っておく。大根も大根おろしにしてよく水気を切っておく。
ボウルにレンコン、醤油、塩、片栗粉を入れてよく練る。粘りが出て纏まってきたら、8等分にして火の通りが良くなるように楕円形に成形する。
フライパンに油を張り、170℃に熱する。成形したレンコン餅のタネを入れて、油はねや破裂に注意しながら5~6分揚げていく。
その間にみぞれあんを作るぞ。鍋に出汁、醤油、みりんを入れて火にかける。沸騰したら水溶き片栗粉で自分の好みの固さにとろみを付け、そこに大根おろしを加えてよく混ぜ、ひと煮立ちしたら火を止める。
器にレンコン餅を盛り付け、みぞれあんをかける。仕上げに刻んだ青ネギとおろし生姜を添えたら完成だ。
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