提督はBarにいる。
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時期外れの餅リメイクレシピ特集・その1
前書き
半月前にやるべきだった。by作者
「提督、助けてぇ!」
照月に泣き付かれたのは、1月も終わりを告げようとしていた頃の事だった。
「え~と、秋月の奴が他の駆逐艦達の所から余った餅を貰って来ていて、毎日食わされて飽きてきた……だったか?」
「そうなの!毎日3食お餅ばっかり!……心なしか、全体的にお肉が付いてきた様な気が」
「いや、肉付きが良かったのは元からだろ?お前の場合」
秋月型は駆逐艦の中でも巨大な船体をしていた影響もあってか、今いる4人が4人、全員大人びた姿をしている。身長も高めで、他の駆逐艦達と比べても頭ひとつ抜きん出て大きい。その割にはスレンダーな体型で、むしろちゃんと食べてるか?と心配になる程だ……目の前にいる照月を除いては、だが。
「あっ、酷い!それはちょっと傷付いたよ提督!?」
照月は抗議するように頬を膨らませて真っ赤になっているが、身体を揺する度に大きく揺れる胸やムチムチの太股、形のいいヒップなんかを見せ付けられて『肉付きが悪い』とは口が裂けても言えない。別にデブだと言っている訳じゃない……実に抱き心地の良さそうな、豊満な肉体だと言っているだけだ。おっと、話が逸れた。今は照月のスケベボディの話ではなく、秋月の餅責めの話だ。
「朝は毎日お雑煮、お昼に磯辺巻き、晩ご飯には納豆餅……これでおやつまでお餅なんだよ!?辛いよぅ!」
「そりゃいくらなんでもやり過ぎだな、確かに」
「違う味付けとかならいいんだけど、毎日同じメニューが続くから初月も涼月も参っちゃって……」
しかもそれが1週間も続いているらしい。そりゃ地獄だわ。
「……照月、飯の支度は秋月が一人でやってるのか?」
「え?う、うん。それがどうかした?」
成る程、なら解決方法は簡単な話だ。
「今晩、初月と涼月も連れて店に来な。餅のアレンジレシピを教えてやる」
同じ味付けでしか作らない相手なら、それを取り上げて自分等で作ればいい。秋月なら無くなるまで食べ続けようとするだろうから、方法はそれしかねぇだろう。
そして、その夜。
「よう、待ってたぜ」
開店したばかりの『Bar Admiral』には秋月を除く秋月型の3人が顔を揃えていた。その顔には疲労の色が隠せない。
「司令、なんでも僕達に餅の料理の仕方を教えてくれるらしいけど……本当かい?」
初月の目には、僅かな希望に縋り付くような……そんな雰囲気が漂っていた。
「あぁ。一応レシピを纏めたノートも準備したが、まずは作り方を目で見て、舌で確かめな」
「あの……私、あまりお料理に自信が」
「涼月、それを言ったら僕だって自信が無いさ」
料理の腕前に不安を見せる妹2人。
「安心しろ、いざって時はお前らの食いしん坊な姉ちゃんが何とかすっから」
「それはどういう意味かなぁ?提督」
照月はニコニコ笑っているが、目が笑っていない。
「でも、美味いものが食いたけりゃ何とかするんだろ?」
「うっ、それは……そうだけど?」
「じゃあ問題ねぇな」
言い澱む照月を見て、思わず鼻で笑ってしまう。膨れるその顔を横目に見つつ、一品目の調理に入るとしよう。
※今回、餅の分量に関しては〇個と表示しますが、1つ50gで計算してあります。
《10分で出来る!?葱チーズ餅》※分量2人前
・切り餅:3~5個
・長ネギ:1/2本
・スライスベーコン:1枚
・ピザ用チーズ:50g~お好みで
・油:適量
・水:50~100cc
さぁ、作っていこう。まずはネギとベーコンから。ベーコンは細切りにしておき、長ネギは食べやすいように好きな形に切っておく。ネギの食感を楽しみたいなら鍋に入れるように斜め切りに、香ばしさが欲しいなら小口切りにするといいだろう。個人的には厚みを持たせた輪切りが食べやすいし、オススメだ。
ネギとベーコンが刻めたらフライパンで油を熱して、ネギとベーコンを炒めていく。炒めている間に、今度は餅の下準備をしていくぞ。
餅を耐熱容器に入れて、水を入れる。水の量は餅の個数に合わせて加減してくれ。それを600wのレンジで2分位チンして柔らかくする。餅は少し溶けたりしても大丈夫……というより、溶けて餅同士がくっついてる位が理想だ。レンチンが終わったら、容器の中に残っている水を捨てる。
ネギとベーコンが炒まったら、チンした餅とピザ用チーズを加えて全体を偏らないように混ぜる。よく混ざったら蓋をして、蒸し焼きに。両面がカリカリになるまで焼いたら完成だ。
「あいよ、まずは一品『葱チーズ餅』だ。そのまま食ってもチーズとベーコンの塩気でイケるが、お好みでおろしポン酢とか、お好み焼きっぽく味付けしてどうぞ」
ジュウジュウと湯気を上げる葱チーズ餅を目の前にして、ゴクリと喉を鳴らす3人。
「な、なんでだろう……」
「お餅は食べ飽きてるハズなのに……」
「すごく、美味しそう……!」
「なら遠慮せずに食えよ。冷めると固くなって美味しくなくなるぞ?」
お好み焼きやたこ焼きなんかの粉物は、熱々の奴をハフハフ言いながら食うのが鉄則だ、ってのが俺の持論だ。ましてやこの料理は餅がベース……冷えて固まると目も当てられない。食べやすいようにカットしてある葱チーズ餅を、まずは何も付けずに一口。
「「「あふい!」」」
「そりゃな。焼き立てだもの」
うっすら涙を浮かべつつも、ハフハフ言いながらがっつく3人。長女の秋月のせいか、欠食児童に見えて来ちまうんだよなぁ、こいつら。
「焦らなくても、餅は逃げやしねぇよ」
そんな姿に苦笑しつつも、ハイボールを準備する俺と早霜。ビールが良いかとも思ったんだが、前にビールの苦味が苦手だと言っていたのを思い出したからだ。
「だってぇ、美味しいんだもん!」
プクッと頬を膨らませて拗ねているのは照月。照月は濃い目の味が好みなのか、おかかに青海苔、ソースとマヨネーズをかけてお好み焼き風に味付けをして頬張っている。
「それに、熱い内に食べろと言ったのは提督、お前じゃないか」
おろしポン酢を絡ませて食べていた初月の反論だ。涼月は頷きながらもハイボールをゴクゴクやっている。最近着任した割にはイケる口らしく、自分の口に合う酒を模索中だとか。
「いやまぁ、そりゃそうなんだがよ」
食い飽きた、と言ってた奴等があんな欠食児童みたいに食い付くとは思わねぇよ。
「……にしても、今年はかなり餅が余ってたんだな」
少しでも余っている餅の消費に貢献してやろうと、餅は照月達にコッソリ持ってこさせた物を使っている。が、まだまだ十分過ぎる量が残っている……キロ単位であるんじゃねぇのかコレ。
「あ~……提督が撞いた奴の他にも、海外組の人達が『餅つきしたい!』って騒いで大量に撞いたって聞いたよ?」
「あ、そうなのか。全然そんな話聞いてないぞ?」
「年末年始は忙しそうだったからな、提督。心配かけまいと金剛さんが気を遣ったんじゃないか?」
まぁ、そんなトコだろう。とりあえずその話は置いといて、次の料理に移るとしよう。
《材料2つで簡単調理!餅の肉巻き》※分量1人前
・切り餅:2個
・豚バラ肉4枚~適量
・砂糖:小さじ1
・醤油:小さじ1
・酒:小さじ1
お次は簡単に出来てアレンジもしやすく、しかも美味いお手軽レシピ。餅を縦半分に切り、豚バラ肉を巻いて焼く。
肉に火が通り、餅が柔らかくなってきたら砂糖をフライパンに直接入れて溶かす。砂糖が溶けたら醤油と酒を入れて蓋をして蒸し焼きに。
水分が飛んでバチバチという音からジュウジュウという音に変化したら、蓋を取ってフライパンに残ったタレと絡める。皿に盛り、お好みで刻んだネギなんかを散らせば完成だ。
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