レーヴァティン
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第三十八話 オーロラの下でその七
「やれやれだな」
「まあ武器持った人間よりも楽だしな」
「襲って餌にするにはな」
「それに狼だしな」
このことをここでも言った久志だった。
「人間は襲わないか」
「アーコルはまだ家畜化されていないけれど」
淳二も言う。
「出来そうだね」
「狼から犬になったからな」
「翼がある以外は狼だし」
その外見も習性もというのだ、見れば森の木々の枝の間で群れを為して一行を囲んでいる。所謂群狼戦術の形だ。
「それが可能な筈だよ」
「じゃあやがて捕まえてか」
「そしてね」
そのうえでというのだ。
「家畜化してもいいね」
「そうだよな」
「そしてね」
そのうえでというのだ。
「軍用犬みたいにも使えるよ」
「色々出来るんだな」
「まあ襲い掛かってこないし」
レーヴァティンの火を見てだ、だが視線は今も馬や驢馬達にある。
「いいんじゃないかな」
「馬や驢馬達を守ってでござる」
最後に進太が言ってきた。
「進むべきでござる」
「そうするか」
「先程のヤカーとは違うでござる」
両肩にそれぞれ山羊の頭が生えている大男だ、邪悪な魔族だとも言われ術も使う怪力の魔人であり子の島でも恐れられている。
「ああした連中は倒すしかないでござるが」
「こうした獣はな」
「戦わないことも出来るでござる」
今の様にというのだ。
「その点が違うでござる」
「じゃあ今からな」
「先に進むでござる」
北北西にというのだ。
「この島の果てに」
「そうしようか、じゃあな」
「アーコル達から馬を驢馬を守る為にでござる」
進太はまた久志に話した。
「拙者達で馬や驢馬達を囲むでござる」
「狼に対して護送船団か」
「そうなるでござるな」
「そういえばドイツ軍の潜水艦は海の狼って呼ばれてたな」
一次大戦でも二次大戦でもだ、連合軍は両方の世界大戦でドイツ軍の潜水艦であるUボートに苦しめられてきたのだ。
「それで俺達は駆逐艦か」
「輸送船を護衛する」
「そのままだな」
「そしてこれがでござる」
「凄い役立ったんだよな」
「潜水艦からの損害は飛躍的に減少したでござる」
一次大戦でも二次大戦でもそうだった、二次大戦では護衛空母という小型の空母まで護衛についてその効果は尚更上がった。空からの護衛はそれだけの効果があったのだ。
「だからでござる」
「俺達もか」
「馬や驢馬達の周りにいて」
進太は様子を窺い続けているアーコル達を見つつ久志に話していく。
「先に進むでござる」
「それで難を逃れるか」
「これでどうでござるか」
「いいんじゃねえか?」
少し考えてからだ、久志は進太に答えた。
「実際によさそうだしな」
「ではでござる」
「ああ、先に進もうな」
「このまま北北西に」
「餌でも投げてそっちに注意を向かわせたいけれど」
淳二は上を見上げつつ話した。
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