| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

インフィニット・ゲスエロス

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

5話→高校と宇宙

 
前書き
意図も容易く行われるゲスい行為←主人公のラブコメ 

 
「もしもーし、タローちゃん聞こえる?」

「大丈夫だ。バッチリ聞こえるぜ」

真空の闇に包まれながら、耳元から聞こえる声に太郎はそう返した。

空を見上げれば、満点の星空。

足下を見ると、青い地球。

もう100回を越えて行っているせいか、ある程度慣れた形で、太郎は宇宙を漂っていた。

重力から解き放たれ、前後左右、上下すら常人では分からなくなる空間。

だが、シュミレーター時代も含め、四桁を越える宇宙遊泳経験を持つ太郎にとっては慣れたもの。

「で、今回は何処へ行こうか?」

「とりあえず、月にゴー!」

相変わらずの能天気な声を聞き取りながら、太郎は自らのISに己の意思をリンクさせる。

テストモデル、脳波リンクシステム。

言葉や操作を行わなくても、頭部パーツの特殊な受動器を介して己の意思を反映させるというシステム。

束が、宇宙空間にて活動する際に動き易くするために作ったシステムを、太郎はここしばらくの使用でものにしていた。

束の声を受信すると同時に、太郎の思考を頭部の脳波システムがトレース。

加速の指示を受けた太郎のISは、背中に移動用のカスタムウイング、と呼ばれるスラスターを顕現し、それに答える。

(とりあえず月までは時短できるな)

対して、太郎は現れた背中のスラスターに、更に操作を加える。

スラスターから出るエネルギー体をただ放出するのではなく、一度溜め込むことで、直線方向という限定はつくが、一時的に更なる加速を生み出す技術。

ここ数年で習得したISの応用技術。

身体能力に差のある千冬から逃げる時に編み出した、後に瞬時加速(イグニッション・ブースト)と呼ばれるそれを用いて、太郎は月の方向に向かって自身の体を打ち出した。


その直後に、体全体にかかる爆発的な加速が、吸い込まれるように月と太郎の距離を縮める。

大して時間もかけずに、その身は『月』まで移動していた。

「月に着いたぜ。束。今日はどうする?」

『そーだね、送ったポイントに『基地』のパーツを嵌めて!』

通信と共にバイザーに光点が灯る。

今回は、大して苦労なく帰れそうだ。

月面に基地を作りたい。

彼女のそのわがままに付き合い、作り始めたのは確か中学を卒業した直後か。

慣性を利用しながら徐々に加速していく体。

ある程度進むと、『それ』はやってきた。

砂嵐。いや、塊の岩も含まれたそれは、『土砂崩れ』か。

初めて食らった時に、不覚にも巻き込まれた上に、意識飛ばしたのも、今となっては良い思い出か。

いや、流石に当時は全身に怪我を負って、一部は痕が残る傷もつくなど大変ではあったんだよ。

珍しく焦った千冬が迎えに来るレベルだから。

(そう、でけえ怪我したのは確かに焦った。だが、俺は只では転ばない)

束はほとんどの人間には冷淡だし、自分のやることで何が起きても大概の事には心が痛まないが、どんなものにも例外は存在する。

俺と千冬が負傷する。というのもそれにあたる。

千冬に怒られるまでもなく、束が涙目で詫びた上で、甲斐甲斐しく新妻のように手当てをし初めた時、俺の心には感謝と同時に、この立場をどうやって上手くつかってやるかという思考が頭をよぎった。

(しかも、あの千冬さえもと当時は気をつかってたからな)

古今東西、事故などの負傷を伴う突発的なイベント系は女性と距離を縮めるのにピッタリなシチュエーションである。

当時の俺は思ったね。これ、チャンスじゃね。

鉄の女、千冬と、科学キチ束が今、この瞬間は、心に負い目を抱きながら、心配して『俺』を見ている。

こいつは使える、と。

これでも、中学では100人切りレベルで女を落とした経験を持つ俺である。

気心のしれた二人を、怪我を利用して二人きりのシチュエーションであったり、リハビリがてらデートしたり、看病してもらったり。

戦闘力の高さに相反して、コミュ力の低かった当時の二人をじっくりと料理していった。

機会があれば、詳しく話してやりたい。

あの二人が、ベッドの上でどう乱れるかも。

そう、宇宙空間での事故は、体には傷を残したが、個人的にはプラスの結果で終了できたのである。

報酬があれば、人は努力を進んでできるというのは本当だな。

怪我の後、正確に言うと、二人との粘膜的な付き合いの後、俺のISの技術は劇的に向上した。

自身のためのIS修行に、予期せぬ報酬が入ったからだ。

だが、まだ足りない。

転生して持ち越した学力を使って、本来勉強をしなければならない時間をIS操作に当てる日々。

そのハンデを背負ってなお、白いISを纏った千冬は、俺に勝ち越す。

当時はショックだったよ。流石に。

天才に挑む凡人の歩く道の過酷さに震えたもんさ。

だが、千冬を閨で抱きながら思った。

俺と同条件でISを操る千冬にもし勝ち越せたら。

その時俺は、IS使いの中で『最強』となるのではないか。

そう、俺はそこに劣等感だけでなく、希望を見た。

それからはある意味シンプルな日々だ。

女を抱き、ISで文句を言われにくい宇宙で破壊活動に勤しむ日々。

ああ、勿論、家族サービスという名の偽善活動もしてるぜ。

なんせ、一夏も、最近会った束の妹の箒、だっけか、実の姉よりも俺になついてるくらいだからな。はっはっは。

とと、ヤバイヤバイ。

迫る岩に慌てて現実に戻る。

別にMじゃねーから、痛いのは嫌いなんだよ。

『破砕用トンファー、起動』

両手に顕現する硬い感触と共に、体の動きとバーニアの動きを合わせる。

瞬間、全ての『俺』以外の物の動きは緩慢になる。

自身の急加速により得られたその感覚で、太郎はその身を前に動かすと同時に、自分に当たる岩のみを叩き落としていく。

5分後、彼の前には、三人で作った基地があった。

着けば話は簡単だ。先程使用したトンファーのように、量子化したパーツを基地に組み込むだけ。

数分後、無事に作業を終えると、束に終了の報告をして、地球へ降下する。

『俺を隠せ』

『yes、sir!』

了解の返答と共に、自身とISはレーダーからも目視からも消える。

追加アタッチメント、インビジブル。

悪用が山ほど考えられるこのシステムをポンッとくれるなんて、なんて俺は罪な男なんだ(棒)

なんの警告アラートもなく、一時間後には無事に到着する。

さて、新しい『獲物』も来ることだし、学校で優等生でも演じますか。

最近、親戚から預けられた二歳下の女の子、『山田麻耶』の写メールを携帯から呼び出しながら。

山田太郎は、人知れずニヤリと笑った。





 
 

 
後書き
『俺はこの巨大な力を、俺の為に使う!』←主人公のヒーロームーブの内心 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧