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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

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第六十六話 さらば理屈倒れ・また会う日まで


明日は出張なのでUP出来ないかも知れません。
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第六十六話 さらば理屈倒れ・また会う日まで

帝国暦480年3月15日 午後5時

■オーデイン ブラウンシュヴァイク邸

 夕方。フレーゲル男爵がテレーゼ皇女主催のピクニックから帰宅時、
男爵は非常にご機嫌であった。
「ヨヒアム、首尾は如何であった?」待っていたとばかりに質問するブラウンシュヴァイク公。

「伯父上、テレーゼ様を士官学校でエスコートすることになりましたぞ」
「ヨアヒムでかした!流石は儂の甥だ。其処から順次話を進めていくのだ」
「はい伯父上、頑張りますぞ」

「思えば儂がアマーリエと初めて会ったのも、お前と同じ年頃であったな。
あれは陛下の晩餐会の時であった。あの頃儂は未だ士官学校生でな、
アマーリエをエスコートして踊ったものだ」

昔の思い出に浸るブラウンシュヴァイク公を見て、
フレーゲルも自分も何れ、今日のことを懐かしむ時が来るのだなと思うのであった。

しかし時間が経つにつれて、フレーゲルの脳裏にテレーゼの言葉が蘇ってきた。
『そうですわね、しかし士官学校へ視察が出来ないのは残念ですわ』
『ぜひお越し下さい。私がエスコートいたします』
『ええ、けど反対する方がいるそうです』

そうだ反対する奴が居る!
誰なのだいったい、このブラウンシュヴァイク公爵の甥である、
ヨアヒム・フォン・フレーゲル栄光の日々を邪魔する輩は!

士官学校では私のテレーゼを信奉するファンクラブが存在するが、
心の広い私はその者達を許しているのだ。
しかし私はその様なクラブは所詮下賤な者が偶像崇拝で造るモノだと無視していたからか、
私のテレーゼに対する何者かの妨害情報が入らなかったのだ。

フレーゲル一生の不覚、取り巻きをスパイとして入会させておくのであった。
うむ、今から入会させるか。

「ヨアヒム、どうした?」思い出から我に帰ったブラウンシュヴァイク公が、ブツブツ言っているフレーゲルを見て心配そうに問いかけてきた。

「あっ、伯父上。いえ、テレーゼ様のお言葉を思い出しまして」
勘違いしたのか、ブラウンシュヴァイク公がにこやかに話してくる。
「テレーゼ様から良いお言葉を賜ったのかな」

フレーゲルが真剣な眼差しで話し始める。
「伯父上、テレーゼ様の士官学校視察を邪魔する輩が居るそうです!」
「なんと、テレーゼ様の邪魔をするとは。何たる不敬な奴だ!」
伯父と甥、真剣に話し合う2人。

「伯父上。我がブラウンシュヴァイク一門に対する挑戦としか思えません!」
「確かにそうだな。リッテンハイムの手の者であろうか?」
「詳しくは判りません」

「ふむ、調べる必要があるようだな」
「伯父上、実は士官学校内にテレーゼ様ファンクラブが存在しまして」
「なんと、それほどまでにテレーゼ様は慕われておられるのか」

「なんと言っても、あの愛らしさです。仕方なき事です」
「お前にテレーゼ様が降嫁為されば、
その支持が全て我がブラウンシュヴァイク一門へ来る訳だな。
ヨヒアムよ益々励むのだ」

「はい伯父上。必ずや果たして見せましょうぞ」
「それで、ファンクラブがどうしたのか」
「はい、テレーゼ様の視察を邪魔する輩の情報が有るようでして」

「お前は入っておらなんだか?」
「下賤の者共と共にはその様な事出来ません故」
「そうだな、其れが正しかろう」

「ファンクラブから情報を貰うのもあれですから」
「そうだの、誰か士官学校で情報通はおらんかな?」
「伯父上、此処はアンスバッハとシュトライトを呼びますか」

「そうだな、あの2人なら良い知恵を出してくれよう。
アンスバッハ、シュトライト応接室へ来るのじゃ」

暫くするとアンスバッハとシュトライトが応接室へ現れた。
フレーゲルにしては先ほど世話になったばかりである。
「「ブラウンシュヴァイク公、お呼びでございましょうか」」

「おお良く来た、2人とも聞いてくれ。
ヨアヒムがテレーゼ様を士官学校でエスコートすることになったのだが、
士官学校視察を邪魔する輩が居るそうだ。
その輩を調べることは出来るか?」

暫く考える二人、そしてシュトライトが頷いた。
「公爵閣下、小官の遠縁にあたる者が今士官学校の3年に居ります。
その者は冷静沈着で諸事に詳しいので、その者に連絡を入れてみます」

「うむ。シュトライト頼むぞ」
「シュトライト、どの程度かかるか?」
「本日は休日ですので、連絡を入れてみます」

シュトライトは電話室へ移動する為、応接室を出て行った。

フレーゲルが犯人をどうしてくれようかと思いながら待つと、
僅か10分もかからずにシュトライトが帰ってきた。

「シュトライトどうであった?」ブラウンシュヴァイク公が待ちきれないように聞く。
シュトライトは深刻に困った顔をしている。
「シュトライト、どうした判らなかったのか?」

シュトライトが意を決したように話し始めた。
「小官の縁者によりますと、皇女殿下視察を反対しているのは、
士官学校校長フライエンフェルフ中将と」

話が終わる前にフレーゲルが激高する。
 「何!校長が邪魔をするだと、身の程知らずが!!
  伯父上、目に物見せてくれましょう!!」

「男爵。落ち着いて下さい」
「此が落ち着いて居られるか!我が妻を奪うがごとき仕儀なのだぞ!!」
「男爵。校長は単に流されているだけです。主に動いている者が居るのです」

落ち着かないフレーゲルに変わってブラウンシュヴァイク公が訊ねる。
「シュトライト、その煽っている者とは誰なのだ?」
言いにくそうなシュトライトだが、遂に口を開いた。

「実は教官のシュターデン大佐が視察反対の急先鋒で、
校長もその勢いに贖えずに反対の立場を示しているようです」
その言葉を聞いた途端、フレーゲルがさらに激高した。

「なんだとシュターデンだと。奴はブラウンシュヴァイク一門末席ではないか!!」
フレーゲルは、頭から湯気が出そうなぐらい真っ赤になっていて血圧が大変心配である。
「うむ、まさかシュターデンが邪魔をしているとは」考え込むブラウンシュヴァイク公。

「おのれ!シュターデンめ、目にモノ見せてやる!!」
「うーむ」
「伯父上、こうなればシュターデンを追放して頂きたい」

アンスバッハもシュトライトも会話に参加できずに見守るだけで、
シュターデンを気の毒に思っていた。

「うむ。ブラウンシュヴァイク一門でありながら、
一門の行動の邪魔をするのでは仕方が無かろう」
「では早速呼び出しましょう!」

「うむ。アンスバッハ、シュターデンを呼び出すのだ」
「御意」
アンスバッハは短く返事をすると連絡を行いに行った。

シュターデンが来るまで、フレーゲルはイライラしながら酒を飲み時間を潰していた。
ブラウンシュヴァイク公はその姿を見ながら、シュターデンをどうするか考えていた。

帝国暦480年3月15日 午後7時

■オーディン   シュターデン邸    アウグスト・フォン・シュターデン

夕食後にリビングで寛いでいると、ブラウンシュヴァイク公爵邸から電話が来たと、妻が呼びに来た。
このような時間に何であろうと電話に出たら、アンスバッハ中佐であった。

何用かと訊ねたら、公爵が緊急の用で公爵邸に早急に参上せよとの事であった。
公爵様がお呼びと有れば、参上せねば成るまい。
妻に話して早急に地上車で公爵邸に向かった。

しかし何であろうか?
この所フレーゲル男爵を士官学校で成績を有利になるように調整をしているが、
その事であろうか。まあ悪いことでは無かろう。

到着するとアンスバッハ中佐が迎えてくれた、
中佐はなにやら私を見る目が変である。
何か有るのかと思うが、直ぐに応接室へ通されたので聞けなかった。


帝国暦480年3月15日 午後8時

■オーディン   ブラウンシュヴァイク邸 応接室

 シュターデンが応接室に現れる同時に、フレーゲルが大きな声で叫んだ。
「シュターデン!貴様、我が妻との時間を潰すとは何様のつもりだ!!!!」

はっ?シュターデンは何のことか判らなかった。
フレーゲル男爵に奥方は居ないはずだが?
ましてや居たとしても会ったこともないのに何のことだと思った。
その態度がさらに、フレーゲルの怒りに油を注ぐ。

「貴様わからんのか!!お前がテレーゼ様が士官学校視察を為さるのを、
邪魔しているのは判っているんだ!!!!」
なぜ皇女殿下の視察が出来ないのがフレーゲル男爵の怒りになるのか判らなかった。
 
「シュターデン!貴様は我が一門の恥さらしだ!!」
そこまで言われるとシュターデンとしても頭に来る。
「フレーゲル男爵、皇女殿下御視察が、その様に大変な事でありましょうか?」

その言葉がぶっきらぼうに言われた為、さらにヒートアップするフレーゲル。
「えいえいえいえい黙れ黙れ!!貴様は要らん!!!」
ブラウンシュヴァイク公もアンスバッハもシュトライトも只見つめるだけである。

あまりのキレ具合にブラウンシュヴァイク公が話しかける。
「フレーゲル、そのくらいで良かろう」
「伯父上、この件は私に任せて頂きます!」

フレーゲルが伯父に反対意見を言う、普段ならあり得ないことである。
そしてフレーゲルの鬼気迫る勢いに、思わずブラウンシュヴァイク公も頷く。

「シュターデン!二度とこの屋敷の敷居を跨ぐこと許さん!!」

「我が一門からも追放する!!!」

「どこぞなりとも行くいい!!!」

凄まじい勢いである。
シュターデンもブラウンシュヴァイク公もアンスバッハもシュトライトも唯々聞いているだけである。

「命を取られないだけありがたいと思え!!」
「アンスバッハ、シュトライト!
此奴をたたき出せ!!」

その言葉に、シュターデンに悪いなと思いながら、
2人は呆然としているシュターデンを連れて外へ出て行った。
流石にたたき出すわけにもいかず、地上車に乗せてオートモードで家に帰るようにして帰宅させた。

応接室ではブラウンシュヴァイク公とフレーゲルが話していた。
「伯父上、取り乱して申し訳ございません」
「うむ、ヨアヒム驚いたぞ。まあ良い、過ぎたことを悔やんでも仕方があるまえ。
シュターデンごとき一門から追放したところで、如何ほどのことがあるか」

「伯父上、ありがとうございます」
「そうなるとシュターデンを士官学校からも追放せねばならんな」
「どこぞの田舎にでも送ってしまいましょう」

「そうだな、校長の罪を見逃して奴を飛ばさせよう。
校長もこの事を知れば反対はするまえ」
「伯父上本当にありがとうございます」
「明日にでも行うようにしようぞ」


帝国暦480年3月15日 午後10時

■オーディン   シュターデン邸 

 自動操縦で地上車が帰ってきた。其処から出てきたシュターデンは放心した様子で、
妻の問いかけにも答えず、そのまま倒れるように眠りに就いてしまった。
その夜は、凄まじい罵声の寝言が聞こえたと後に妻は回想している。



帝国暦480年3月15日

■オーディン 帝国軍士官学校寄宿舎   アントン・フェルナーの日記

 昼間ギュンターとナンパに出かけて遊んできたが、
ナイトハルトは彼女の所へ行っていたようだ。

その疲れを癒して風呂に入った後、
遠縁の伯父さんから、久しぶりに電話があった。
伯父さんはブラウンシュヴァイク公に使えているんだが、
なにやら士官学校の噂を聞きたいらしかった。

伯父さんも噂好きなのかと思ったが、
至急調べて貰いたいと事だから此は何か有るなと思い用件を聞いた。
内容はあの噂の皇女殿下視察拒否事件の当事者を教えてくれとのことだった。

あれは校長も賛同したが、主に引っ張っていたのはシュターデン教官だと教えてあげたら、ありがとうと言われ話が終わった。
何なのだろうねあれは?

帝国暦480年3月16日

■オーディン 帝国軍士官学校寄宿舎   アントン・フェルナーの日記

 本日シュターデンが授業に来なかった。
昨日の電話が関係有るのか調べてみたい気がするな。


帝国暦480年3月20日

■オーディン 帝国軍士官学校寄宿舎   アントン・フェルナーの日記


 いきなりだがシュターデン教官が転勤した、
しかも転勤先は超弩級土田舎のフェーゲフォイアー星系らしい、
彼処は常時50度以上の沙漠の星だが、なんかしたのか教官?
判らん。伯父さんも教えてくれないし、何なのだろう?

生徒達は陰険な理屈倒れが消えてすっきりしたと喜んでいるがね。
何故か校長も最近髪の毛が異常なほど抜けてきているし白髪も超増えている。
不思議なこともあるモノだ。
 
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