ハイスクールD×D ~赤と紅と緋~
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第2章
戦闘校舎のフェニックス
第22話 決戦、終了です!
新しい力、『赤龍帝からの贈り物』。籠手で高めた力を他の者、もしくはものに譲渡し、力を爆発的に向上させることができる。この力で木場の神器の力を高め、ライザーの眷属たちを一網打尽にできた。
この力があれば、部長や朱乃さん、いまみたいに木場、もしくはアーシアの回復能力を強化してもいい。皆の力を高めることができる。この力があればライザーに勝てる!
ドォォォォォオオオオンッッ!
心の内で俺たちの勝利を確信した刹那、聞き覚えのある爆発音が響き渡った!
「えっ?」
爆発が起こったと思しき場所に視線を向けると、空中に爆煙ができていた。
そして、爆煙から何かが飛び出てきた。
「っ!?」
それは、光の粒子となって消えていくボロボロになった朱乃さんだった!
『リアスさまの「女王」一名、リタイア』
朱乃さんが消える光景とグレイフィアさんのアナウンスに、俺は我が目と耳を疑った。当然だろう! 信じられるか!
朱乃さんがやられちまうなんて!?
ドォォォオオオオンッッ!
「っ!?」
再び起こった爆発音! しかも、今度は近く!
慌てて視線をそちらに向ければ、ボロボロになった木場がいた!
「木場ッ!? 木場ぁぁぁッ!」
俺の叫びも虚しく、木場は小猫ちゃんや朱乃さん同様、光の粒子となって消えていった。
『リアスさまの「騎士」一名、リタイア』
再び流れたアナウンスに俺は呆然と立ち尽くしてしまう。
「撃破」
悲嘆に浸っていた俺の頭上から聞き覚えのある声が聞こえてきた!
「またおまえか!」
見上げると、ライザーの『女王』がいた!
しかも、朱乃さんと戦っていたはずなのに、相手はダメージを負っているようには見えなかった。
朱乃さんと戦って無傷なんてありえねぇ! どうなってやがる!?
「遅かったですわね、ユーベルーナ」
そこへ、ライザーの妹がライザーの『女王』の傍らに現れた。
さっきの攻撃でやられなかったのか?
そういえば、アナウンスでも、『僧侶』一名、てしか言ってなかったな。
飛んで逃げた? いや、ライザーの妹ってことは、この子も不死身だから助かったのか?
「あの『女王、噂通りの強さでした。やはりこれの力を借りることに」
ライザーの『女王』がそう言うと、懐から空になった小さい瓶を取り出した。
「勝ちは勝ちですもの。やはりあなたが一番頼りになりますわ」
「では」
ライザーの『女王』は新校舎のほうに飛んでいった。
クソッ、部長とアーシアのところに行く気か!
慌てて追いかけようとしたところに、ライザーの妹から声をかけられる。
「まだ戦いますの?」
「うるせぇ! 俺も部長もまだ倒れてねぇぞ! それよりも、さっきの瓶はなんだよ!?」
さっきから小瓶の正体が気になって仕方がなかった俺はさっきの小瓶のことをライザーの妹に尋ねる。
「フェニックスの涙。いかなる傷も一瞬で完治する我が一族の秘宝ですわ」
「そんなのありかよ!」
「あら、ゲームでの使用もちゃんとふたつまでは許されてますのよ。そちらだって『聖母の微笑』を持つ『僧侶がいらっしゃるでしょう?」
クソッ、戦闘中に回復されたんじゃ、いくら朱乃さんでも・・・・・・!
いや、悲嘆にくれている場合じゃない! いまは部長が最優先だ!
「うふふ。これはわたくしの一族にしか作れないので、高値で取り引きをされておりますのよ。不死身に涙、レーティングゲームが始まってから、フェニックス家はいいこと尽くめなのですわ。おほほほほほ──ちょ、ちょっと、無視っ!?」
ライザーの妹がなんか自慢げにペラペラと喋っていたが、放っておいて新校舎に向けて走り出した。
―○●○―
新校舎に入ると、俺の中の駒が脈動する。敵本陣に来たことで条件が揃ったのだ。
「・・・・・・プロモーションだ! 俺に『女王』の力を・・・・・・!」
プロモーションが完了し、体に力がみなぎってきた俺は、屋上を目指して廊下を走る。目指すは部長のもと。
脳内に、部長とのある会話を思い出す。
あれは、合宿で明日夏との一騎打ちが終わった後のことだ。その後、俺は部長と二人きりで会話をする機会があり、俺はあることを尋ねた。
『どうして部長は今回の縁談を拒否しているんですか?』
すると、部長はこう答えた。
『私はグレモリー家の娘よ。どこまでいっても、個人のリアスではなく、あくまでもリアス・グレモリー。常にグレモリーの名が付きまとってしまう。そのことは誇りではあるけど・・・・・・やはり、せめて添い遂げる相手くらいは、グレモリー家の娘としてではなく、リアスとして私を愛してくれる人と一緒になりたいのよ。矛盾した想いだけど、それでも、私はこの小さな夢を持っていたいわ。だから、勝つわ。相手が不死身のフェニックスだろうと、この小さな夢を守るために、そして、代々に培ってきたグレモリー一族の力を受け継いだ娘として勝つわ。勝つしかないのよ』
そんな些細な一人の女の子として望みを、そして、ライザーとの対決に対する覚悟を口にした部長に俺はこう言った。
『俺、そんなの関係なく、部長のこと好きです。グレモリー家のこととか、悪魔の社会とか、正直さっぱりですけど、いまここに、こうして目の前にいるリアス先輩が俺にとって一番ですから!』
ぶっちゃけ、そんな気の利いたことを言えなかったたけど、正直な想いを口にした。
『だから、絶対にライザーに勝ちましょう!』
そうだ、絶対に勝つんだ!
待っててください! 俺は必ず部長を勝たせてみせます!
―○●○―
『部長! 兵藤一誠、ただいま参上しました!』
『イッセー!』
『イッセーさん!』
屋上に現れたイッセーの姿を見て、部長とアーシアが歓喜の声をあげる。
『「兵士」の坊やと『僧侶』のお嬢さんは私が──』
『いや、俺がまとめて相手をしてやろう。そのほうがこいつらも納得するだろう』
一歩前に出る『女王』をライザーは手で制し、大胆不敵に告げる。
『ふざけないで! それはまず、私を倒してからの話よ!』
ライザーの不敵な態度に激昂した部長が魔力を飛ばし、ライザーの腕を吹き飛ばした。
『ふふふ。投了しろ、リアス! キミはもう詰まれている。こうなることは読んでいた。チェックメイトだ』
だが、吹き飛ばされた箇所から炎が出て形を成していき、ライザーの腕は元に戻ってしまった。
さっきから部長とライザーの戦いはこれの繰り返しだ。ただ、いたずらに部長の魔力と体力が消耗するだけだった。
『黙りなさい、ライザー! 詰まれた? 読んでいた? 笑わせないで! 「王」である私は健在なのよ!』
それでも、部長は闘志を緩めることはなかった。
『やむを得ないな。あれをやれ』
ライザーは『女王』に目配せをすると、ライザーの『女王』は何かをしようと飛び上がる。
いっぽうそのころ、イッセーはアーシアに傷の治療をしてもらっていた。
『・・・・・・あんなに激しい戦いだったのに、ここまで来てくださったんですね・・・・・・』
アーシアは沈痛な面持ちでイッセーの傷の手当てを行っていく。
『約束しただろ?』
『・・・・・・はい』
『・・・・・・ありがとう。アーシアは俺たちの命綱だ。下がっててくれ──』
ドゴォォォオオンッ!
「ッ!?」
突如、イッセーとアーシアを爆発が包み込んだ!
『アーシアッ!? イッセーッ!?』
「イッセー兄ッ!?」
「イッセーくんッ!?」
「イッセーッ!?」
爆煙がはれると、アーシアを庇うように抱き抱えているイッセーがいた。
『悪いな。長引かせてもかわいそうなんで、回復を封じさせてもらおうと思ったんだが──』
『すみません。まさかあの坊やが体で受けるとは』
爆撃を行ったのは、やはりライザーの『女王』であった。
庇ったことで、ダメージを受けたのはイッセーだけで、アーシアはとりあえず無傷だった。だが、爆発のショックのせいで、意識を失ってしまっていた。
『まぁいい。とりあえず、「聖母の微笑」は封じた』
『てめぇ!』
『私の直撃を受けたのに!?』
アーシアを狙ったライザーにイッセーは激昴して起き上がり、自身の攻撃の直撃を受けたにも関わらず立ち上がったイッセーにライザーの『女王』は驚愕する。
『「女王」の防御力だな。プロモーションに救われたな」』
ライザーは冷静に、その防御力が『女王』になったことによる防御力の底上げだと分析する。
『部長! 勝負は続行ですよね!』
『ええ!』
貴重な回復役のアーシアが封じられても、イッセーと部長の闘志は衰えない。
『俺、バカだから、読みとか詰んだとか、わからないけど・・・・・・俺はまだ戦えます! 拳が握れるかぎり戦います!』
『よく言ったわ、イッセー。一緒にライザーを倒しましょう!』
『はい! 部長!』
イッセーは少し離れたところにアーシアを寝かせると、ライザーに向かって走り出した。
『Boost!!』
『うおぉりゃぁぁ──』
『Burst』
それは発せられてはいけない音声だった。
その音声が発せられた瞬間、イッセーは糸が切れた人形のように崩れ落ち、屋根から転げ落ちた。
幸い、その先も屋根だったため、地面に落ちることはなかった。
いまの音声は宿主の肉体の限界を知らせ、機能を停止することを告げるものであった。
そもそも、元からある力を強引に強化する『赤龍帝の籠手』は宿主への負担は計り知れない。たとえ、なるべくダメージを避けていたとしても、体力の消耗は激しいはずだった。むしろ、あそこまで何回も倍加を繰り返して戦えたあたり大したものである。
だがそれも、限界に近づいていたところをライザーの『女王』の一撃で完全に臨海点に達したのであろう。
千秋たちのほうを見ると、三人ともどこか安堵の表情を浮かべていた。
これ以上、イッセーに傷ついてほしくないし、戦ってほしくないのだろう。イッセーが戦闘するたびに心配そうに表情を曇らせていたからな。
『・・・・・・・・・・・・ぐっ・・・・・・かはっ・・・・・・』
「っ、イッセー・・・・・・」
イッセーは立ち上がろとするが、血を吐いてまた倒れ伏してしまう。
「・・・・・・・・・・・・イッセー兄・・・・・・もういいよ・・・・・・」
千秋は目元に涙を溜めながらイッセーに懇願していた。鶇や燕もこれ以上イッセーの苦しむ姿を見たくないと訴えかけるように顔を背けていた。
『終わったな』
『ライザー!』
部長は魔力でライザーの腕を再び吹き飛ばすが、ライザーの腕はすぐに再生した。
『リアス、キミだってこの程度の魔力しか残っていない! 素直に負けを認め、さっさと投了したらどうだ?』
『・・・・・・誰が・・・・・・!』
部長はまだ諦めていないが、事実上の下僕の全滅に心が折れかけていた。
『・・・・・・大丈夫っスよ・・・・・・部長・・・・・・』
「なっ、イッセー!?」
さっきまで倒れ伏していたイッセーがふらふらになりながらも立ち上がっていた!
『・・・・・・俺・・・・・・どんなことをしてでも、勝ちますから・・・・・・。・・・・・・俺・・・・・・最強の「兵士」になるんです・・・・・・! そう、部長と約束、したんです・・・・・・! ・・・・・・部長が鍛えてくれたんだし・・・・・・』
うわ言のように言葉を発するイッセー。
『チッ。死に損ないが!』
『・・・・・・まだ・・・・・・戦えます・・・・・・約束、守りますから──があっ!?』
「っ、イッセー!?」
『イッセーっ!?』
「イッセー兄っ!?」
「イッセーくんっ!?」
「イッセーっ!?」
未だに倒れないイッセーにライザーは追い討ちをかけ始めやがった!
『・・・・・・・・・・・・俺・・・・・・戦います・・・・・・。・・・・・・·俺・・・・・・部長の「|兵士「ポーン」ですから・・・・・・。・・・・・・まだ戦います・・・・・・。・・・・・・勝ちますから──ぐっ!?』
ライザーは容赦なくイッセーを攻撃するが、イッセーは決して倒れなかった!
「イッセー兄っ! お願いだから倒れてっ!?」
「もうやめてよっ! イッセーくんっ!?」
「バカっ! 死んじゃうわよっ!?」
千秋たちは聞こえもしないにも関わらず、映像の中のイッセーに必死にやめろと呼び掛ける。
『イッセー、下がりなさい! 下がって!?』
『・・・・・・・・・・・・俺・・・・・・俺・・・・・・』
部長がいくら命令しても、イッセーはいっこうに下がろうとしない。
『・・・・・・イッセー・・・・・・! なぜ私の命令が──っ!?』
すると、部長は突然絶句してしまった。なぜなら、イッセーはすでに意識がほとんどないことに気づいたからだ。
『・・・・・・・・・・・・部長・・・・・・が・・・・・・笑ってくれる・・・・・・の・・・・・・なら・・・・・・』
それでも、イッセーは言葉を発し、ライザーに向かっていく。
「・・・・・・イッセー、おまえ・・・・・・!」
『・・・・・・·イッセー・・・・・・あなた・・・・・・!』
イッセーの覚悟を垣間見た俺は息をのみ、部長は涙を流し始める。
「・・・・・・倒れて・・・・・・! お願いだから、倒れてよ・・・・・・!? イッセー兄・・・・・・!?」
千秋はもう、傷ついていくイッセーの姿に、いまにも錯乱してしまいそうな勢いだった!
『不愉快だ! たかが下僕の分際で、あくまでこのライザー・フェニックスにたてつくか!』
すると、ライザーがイッセーの髪を鷲掴みにし、もう片方の手から炎の塊を作り出していた!
あの大きさはやばい! どう見ても、いまのイッセーがくらえば確実に死ぬ威力はある!
『ライザー! なんのつもり!?』
『なぁに! この男の意を汲んで、焼き尽くしてやるだけだ! 治療などを意味を成さないほどに・・・・・・ゲーム中の死亡は事故として認められるからな!』
野郎、本気でイッセーを殺す気か!
「・・・・・・・・・・・・死ぬ・・・・・・イッセー兄が・・・・・・」
イッセーが死ぬという状況を察し、千秋から表情が失われていく!
『・・・・・・・・・・・・ッ・・・・・・!』
そんな中、もう意識なんてないはずのイッセーの瞳が開いた!
「っ!?」
その視線から俺は強烈なプレッシャーを感じてしまい、思わず萎縮してしまう!
見ると、ライザーも同様にプレッシャーを感じたのか、表情を強ばらせていた。
『・・・・・・貴様・・・・・・貴様ぁぁっ!』
そのことにライザーが激昂し、イッセーに炎の塊を当てようとする!
「っ!? やめ──」
『イッセェェェェッ!? お願い! やめて! ライザァァァッ!?』
千秋の叫びを遮り、部長の叫びが響いた。
部長はライザーに抱きつき、ライザーの攻撃を止めたのだった。
『・・・・・・私の負けよ・・・・・・投了します・・・・・・!』
・・・・・・そして、部長の口から降参の言葉が出る。
『チェックメイトだ』
『リアスさまの投了を確認。このゲームはライザー・フェニックスさまの勝利です』
そして、ライザーのチェックメイトの言葉とグレイフィアさんのアナウンスが告げられ、部長の敗北が決定した。
バタッ。
その瞬間、イッセーが今度こそ糸が切れた人形のように倒れ込んだ。
『イッセー!? イッセーッ!』
倒れたイッセーに部長は慌てて駆け寄り、抱き起こす。
『・・・・・・・・・・・・部長・・・・・・俺・・・・・・負けませんから・・・・・・』
イッセーはうわ言を呟きながら、まだ動こうとしていた。
そんなイッセーの頬に部長は手を添える。
『・・・・・・まだ魔力の使い方をろくに覚えていないというのに・・・・・・。実戦経験だって皆無に等しいのに。私のために全力で駆け回って・・・・・・バカね、こんなになるまで・・・・・・。ううん、バカなのは私ね・・・・・・。もう少しで、この子を失うところだった。私のかわいい、大切な、そう、とても大切な・・・・・・』
部長は愛おしそうにイッセーの頬を撫でる。
『イッセー、よくやったわ。もう、いいわ、よくやったわ。お疲れさま、イッセー』
その言葉が聞こえたからなのか、とうとうイッセーは意識を手放した。
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