ハイスクールD×D ~赤と紅と緋~
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第2章
戦闘校舎のフェニックス
第21話 絶賛、決戦中です!
「・・・・・・す、すっげぇ・・・・・・!」
部長の作戦で消し飛んだ体育館とそれをやった朱乃さんを見て、思わず唖然としてしまう。
「・・・・・・朱乃さんの通り名は『雷の巫女』。その名前と力は知る人ぞ知る存在だそうです」
『雷の巫女』、かぁ・・・・・・。あんなのでお仕置きされたら確実に死ぬな。小猫ちゃん共々 、絶対に怒らせないようにしよう。
なんて思っていると、部長から通信が入った。
『まだ相手のほうが数は上よ。朱乃が二撃目を放てるようになるまで時間を要するわ。朱乃の魔力が回復しだい、私たちも前に出るから、それまで各自、次の作戦に向けて行動を開始して』
次の作戦は陸上競技のグランド付近で木場と合流し、その場の敵を殲滅することであった。
にしても、木場の奴、大丈夫か? ま、あいつのことだから、爽やかな顔をしてちゃんとやってんだろうけど。
「小猫ちゃん、俺たちも行こうぜ」
そう言って、肩に触れようとしたら、さらりと避けられた。
「・・・・・・触れないでください・・・・・・」
蔑んだ声と顔でジトーとにらまれる。
どうやら、『洋服崩壊』を警戒されているようだ。
「だ、大丈夫だよ。味方に使うわけないだろ」
「・・・・・・それでも最低な技です」
どうやら、本格的に嫌われたような・・・・・・無理もないか。
「あ、待ってよ、小猫ちゃん!?」
俺を置いて行ってしまう小猫ちゃんを急いで追いかける。
ドォンッ!
「うわぁぁぁっ!?」
いきなり目の前で爆発が起き、俺は爆風で吹っ飛ばされてしまった!
「・・・・・・ぐぅぅ・・・・・・っ、小猫ちゃん!?」
小猫ちゃんがいたところを見ると、爆発によってボロボロになった小猫ちゃんが横たわっていた!
俺は急いで小猫ちゃんに駆け寄り、抱き抱える!
「撃破」
謎の声が聞こえ、声がした方を見ると、部室でライザーとキスをしていた女がいた。
「クッソォ! ライザーの『女王か!?」
「ふふふ」
確か、あいつがライザーの『女王』だったはずだ。俺は相手を睨みつけるが、ライザーの『女王』は不敵に笑うだけであった。
「・・・・・・・・・・・・すみません・・・・・・」
「小猫ちゃん!?」
「・・・・・・もっと・・・・・・部長のお役に・・・・・・」
「大丈夫だ! アーシアがこんな傷、すぐに回復して──小猫ちゃん! 小猫ちゃんッ!?」
俺の呼び掛けも虚しく、小猫ちゃんは光の粒子となって消えてしまった。
『リアスさまの「戦車」一名、リタイヤ』
グレイフィアさんの無情なアナウンスが聞こえてきた。
「クッソォ! よくも小猫ちゃんを!」
「ふふふ。獲物を狩るときは、何かをやり遂げた瞬間が一番やりやすい。こちらは多少の駒を『犠牲』にしてもあなたたちの一人でも倒せれば、人数の少ないあなたたちには十分大打撃ですもの。いくら足掻こうと、あなたたちにライザーさまは倒せないわ」
愉快そうに笑うライザーの『女王』に俺は怒りで体を震えさせる。
「降りて来やがれぇぇッ!? 俺が相手だ!」
『・・・・・・落ち着きなさい、イッセー』
冷静じゃなくなる俺を諌めるように部長から通信が入る。
『戦闘不能になった者はしかるべき場所に転送されて、治療を施されるわ。小猫は死んだわけじゃないの・・・・・・冷静になりなさい・・・・・・!』
顔は見えないし、冷静そうだけど、明らかに部長の声が震えていた。
「でもッ!?」
「諦めなさい坊や。いくら足掻いても私たちには勝てないわよ」
「ッ!」
ライザーの『女王』が手に持つ杖を構えたのを見て、身構える。
「あらあら」
「あ、朱乃さん!」
そこへ、俺とライザー『女王』の間に朱乃さんが降り立った。
「イッセーくん。ここは私に任せて、先をお急ぎなさい。うふ、心配には及びませんわ。私が全身全霊をもって、小猫ちゃんの仇を討ちますもの」
「わかりました、朱乃さん!」
朱乃さんの言葉でようやく冷静さを取り戻した俺は、その場を朱乃さんに任せ、グラウンドに向けて駆け出した。
直後、背後で爆発音が鳴り響いた。
―○●○―
『ライザーさまの「兵士」三名、リタイヤ』
グランド付近まで来たところでグレイフィアさんのアナウンスが聞こえた。
「三人!? ──って、うわぁ!?」
いきなり誰かに引っ張られ、体育用具を入れる小屋の中に連れ込まれた!
「やあ」
引っ張った犯人は木場だった。
「おまえかよ! あっ、いまの三人って?」
「朱乃さんの結界のおかげでだいぶ楽できたよ」
やっぱり、いまのアナウンスは木場がやったことだったのか。
「・・・・・・木場、悪い。小猫ちゃんが・・・・・・」
「聞いたよ。・・・・・・あまり表に出さない子だけど、今日は張り切っていたよ。・・・・・・無念だったろうね」
俺はそれを聞き、木場の前に拳を突き出す。
「勝とうぜ、絶対!」
「ふ、もちろんだよ!」
俺が差し出した拳に、木場が自分の拳を当てる。普段は癪に障るイケメンだが、戦闘になれば頼りになる味方だ。
『祐斗、イッセー、聞こえる?』
そこへ、部長から通信が入る。
『私はアーシアと本陣に奇襲を掛けるから、できる限り敵を引き付けて、時間を稼いでちょうだい』
「奇襲!」
『やむを得ないわ。朱乃の回復を待って、各個撃破する予定だったけど、敵が直接「女王」をぶつけてきてわね』
「しかし部長、『王』が本陣を出るのは、リスクが大きすぎますよ!」
『敵だってそう思うでしょう。そこが狙い目よ。いくらフェニックスの肉体が不死身だといっても、心まではそうじゃない。戦意を失わすほどの攻撃を加えれば、ライザーに勝つことができる。この私が直接ライザーの心をへし折ってあげるわ!』
部長の力強い宣言と共に、通信が途絶える。
部長の決意に満ちた言葉に、俺は腹を決めた。木場も同じ様子だ。
「そうと決まれば、オカルト研究部悪魔男子コンビで──」
「派手に行くかい!」
俺たちは小屋から一気に飛び出て、グラウンドの真ん中に立つと、大声で叫んだ。
「やい! どうせ隠れてるんだろ! 正々堂々勝負しやがれ!」
「ふふふ・・・・・・」
「「!」」
俺の声に応えるように、誰かの笑い声がグラウンドに流れる。声の方向へ首を向けると、土煙の向こうに、甲冑を着込んだ女が立っている。
「私はライザーさまに仕える『騎士』カーラマインだ。堂々と真っ正面から出てくるなど、正気の沙汰とは思えんな。だが、私はおまえらのようなバカが大好きだ!」
そう言うと、剣を抜き、炎を纏わせた。そして、こちらからは木場が前に出た。
「僕はリアスさまに仕える『騎士』木場祐斗。『騎士』同士の戦い、待ち望んでいたよ!」
「よくぞ言った。リアス・グレモリーの『騎士よ!」
直後、二人は一直線に突っ込むと、真正面から切り結び、すぐに離れ、火花散る凄まじい剣戟を繰り広げる。しだいに二人の戦いは段々とヒートアップしていき、俺の目では追えない位の速さによる戦いになっていった。
「・・・・・・すっげぇ・・・・・・つか、俺の出番なくね・・・・・・?」
「そうとも限らないぞ」
「ッ!?」
背後から声をかけられ、振り返ると、顔の半分に仮面を着けている女がいた。
「・・・・・・カーラマインったら、頭の中まで剣、剣、剣で埋め尽くされているんですもの」
そこへもう一人、金髪のお嬢様風の子が現れた。
「駒を犠牲にするのも渋い顔をしてましたし。まったく、泥臭いったら。しかも、せっかくかわいい子を見つけたと思ったら、そちらも剣バカだなんて。まったく、ついてませんわ」
さらに、その子の後ろに三人、別の方向からも一人現れて、俺は完全に囲まれていた。ていうか、残りの駒が全員現れた。
これで本陣はライザーだけになるから、部長の読みは当たったということか。
「それにしても、リアスさま──」
「ん?」
金髪の子が俺を品定めするように見ていた。
「殿方の趣味が悪いのかしら?」
「っ、かわいい顔をして、毒舌キャラかよ! 『赤龍帝の籠手』ッ!」
『Boost!!』
俺は籠手を出し、金髪の子に対して構えた。
「あら、ごめんあそばせ。私は戦いませんの」
「はぁあ!?」
「イザベラ」
金髪の子が呼ぶと、仮面を着けた女が近づいてきた。
「私はイザベラ。ライザーさまにお仕えする『戦車』だ。では行くぞ、リアス・グレモリーの『兵士』よ!」
そう言うと、殴りかかってきた!
「うわッ!?」
俺は相手の攻撃を避けながら、思わず疑問に思ったことを訊いた。
「お、おい! あいつなんなんだよ!? 戦わないってどういうことだ!?」
「『僧侶』として参加はしているが、ほとんど観戦しているだけだ」
「なんだそりゃ!?」
これ、おたくらにとっても大事なゲームなんだろ! なんでそんなことになってんの!?
「彼女は──いや、あの方は、レイヴェル・フェニックス」
「フェニックス!?」
「眷属悪魔とされているが、ライザーさまの実の妹君だよ」
「妹ッ!?」
その子のほうを見ると、にこやかにして、手を振っていた。
「ライザーさま曰く『ほら、妹萌えって言うの? 憧れたり、羨ましがる奴、多いじゃん。まぁ、俺は妹萌えじゃないから、形として眷属悪魔ってことで』なのだそうだ」
あの鳥野郎、本当に変態でバカだったのか!? ・・・・・・でも、妹をハーレムにいれたいっていうのは十分に理解できるぜ。
「って、おわっ!」
などと考えている間に、『戦車』のイザベラの拳の一撃をすんでのところで避ける。
「思ったよりはやるようだな?」
「そりゃあ──おっと! 俺だって、伊達に小猫ちゃんや木場、明日夏と修行してたわけじゃねぇからな! って、あぶねッ!」
攻撃の合間に蹴りを放ってきたが、後ろに思いっきり飛んでかわした。
うん、明日夏との修行で回避能力が格段とアップしているな。
「ほぉ、以前とはまったく違う。リアス・グレモリーはよく鍛えこんだようだな」
「そうだ、俺は部長にとことん鍛えられた、リアス部長の下僕だ! だから、負けられねぇ! 俺は部長のためにもあんたを倒すッ!」
とはいえ、一定以上パワーアップするまでは逃げの一手しかねえけどな。
『Boost!!』
これで五回目のパワーアップ! 『兵士』相手なら十分かもしれねぇが、『戦車』相手じゃまだ心もとない。
ここはまだまだ耐えるしかない!
―○●○―
イッセーと木場がグラウンドでライザーの眷属たちを引き付けている間に、部長はアーシアを連れて本陣に奇襲を仕掛けるため、新校舎に侵入していた。
『待っていたぜぇ』
『『っ!?』』
そんな部長に声をかける存在がいた。いま、新校舎内でアーシア以外に声をかける人物は一人しかいない。
『ふふふ、ははは、愛しのリ~ア~ス♪』
そこには部長が来ることがわかっていたかのように、余裕の表情見せながら、新校舎玄関ホールの二階の手摺に腰掛けながら見下ろしているライザーがいた。
『私が来るのはお見通しだったわけね?』
『初心者が経験者を舐めちゃいけないよ、リ~ア~ス♪』
『・・・・・・相変わらず品のない人ね』
『女王』の配置といい、やっぱり部長の手は読まれていたか。
「・・・・・・読んでいたのなら、なんで眷属を全員、イッセー兄たちのほうに・・・・・・?」
「簡単だ千秋。部長のプライドをへし折るためだ。部長を手のひらで踊らせたうえで、真っ向から部長の作戦を潰すことで──」
「部長に圧倒的な実力差を見せつける・・・・・・そうすることで──」
「ああ。部長の意思を挫くには効果的でもある。奴にはそれをやるだけの実力があるってことだ」
今回の出来レースを組んだだけはあるってわけか。
『ここじゃなんだぁ、もっと見晴らしのいいところでデートと洒落こもうぜ、リ~ア~ス♪』
『ふざけないで! いいわ、あなたを消し飛ばしてあげるわ!』
ライザーの挑発に乗ってしまった部長はアーシアと共にライザーのあとについて行った。
「・・・・・・見晴らしのいい場所って?」
「部長の様子がイッセーたちによく見える場所だろう。そうすることで、イッセーたちを煽る気なんだろ」
完全に部長たちを潰す気だな。
バキィィィン!
突然、何かが砕け散る音が響いたため、そちらの映像を見ると、木場の剣が相手の『騎士』によって砕かれていた。
『光喰剣が!?』
『残念ながら、その攻撃は私に通用しない』
あの剣は光を喰らう特性があった。そのため、光力を扱うフリードやはぐれ悪魔払い相手には有効だったが、いまの相手が扱うのは炎。その特性がまったく活きないのであった。
だが、そんな状況にも関わらず、木場は不敵に笑んでいた。
『ならこれはどう? 凍えよ!』
次の瞬間、柄から氷が生成され、氷が砕けると、新たな刀身が現れた。
『っ!? 貴様、神器をふたつも!』
相手の『騎士』は剣を振るうが、木場の剣の刀身に当たった瞬間、纏っていた炎ごと刀身が凍り、砕け散った。
『ッ! なんの、我ら誇り高きフェニックス眷属は炎と風と命を司る!』
そう言うと、短剣を取り出し、炎と風を纏わせる。
『貴様の負けだぁ!』
そして、短剣の一振りで木場の氷の魔剣が容易に砕かれた。
『フッ』
だが、木場は未だに笑みを崩さなかった。
また柄から刀身が現れ、今度は先端に穴が開いた剣が現れた。
『っ!?』
『ハッ!』
木場の掛け声と同時に魔剣の穴に短剣の風が炎ごと吸い込まれていった。
『貴様、一体いくつ神器を持っている!?』
相手の問いを木場は笑みを浮かべながら否定する。
『僕は複数の神器を持っているわけじゃない。ただ作っただけだ』
喋りながら振るわれた剣を相手は後ろに跳んでかわすが、木場は構わず地面に手を着ける。
『「魔剣創造」。すなわち、意思通りに魔剣を作り出せる』
相手が何かを察したのか、その場から跳び上がると同時に相手のいた地面から複数の魔剣が飛び出てきた。
駿足の足と多彩な魔剣──あれが木場の本領か。
木場はあの調子なら、なんとかなるか。
さて、イッセーのほうは──。
―○●○―
すっげぇ・・・・・・あいつ、あんな力を・・・・・・。
木場の戦いぶりを見て、思わず呆気に取られてしまった。
「おまえ! 戦闘中によそ見をするなッ!」
「しまっ──ぐあぁっ!?」
木場のほうに意識を向けていたから、反応が遅れて初めて相手の攻撃をもろにくらってしまい、後ろに吹っ飛ばされてしまった。
くっそぉ・・・・・・明日夏に散々注意されたってのに、やらかしちまった。
けど、そろそろなんだけどな・・・・・・。
『Boost!!』
「っ、来たぁぁッ!」
待ちに待った十五回目のパワーアップ! これで最大回数だぜ!
『Explosion!!』
倍加を止めると同時に俺は腕を前に突き出す。
「ドラゴン波ならぬドラゴンショット!」
そして、魔力の塊を向かって来るイザベラに向けて撃ち出した。
グオォォォォォォオオオンッ!
「ッ!?」
イザベラは驚愕しながらもすんでのところで俺の一撃をかわす。
避けられたドラゴンショットはテニスコートまで向かっていった。
ゴォォォォォォォォンッッ!
次の瞬間、地を響かせる轟音が鳴り響き、巻き上がる突風と共に赤い閃光が俺たちを襲う!
爆風が止み、テニスコートのほうを見ると、テニスコートが跡形もなくなっており、巨大なクレーターができあがっていた!
だいぶセーブしたつもりだったのに・・・・・・。
にも関わらず、この威力である。
「・・・・・・危険だ・・・・・・! あの神器は! ここで私が倒しておかねばッ!」
俺のドラゴンショットの威力を見て、危険だと判断して焦ったのか、イザベラが一気に攻めてきた。
だが、焦っていたのか、攻撃が単調になっていた。
「しめた!」
俺はイザベラの拳を避け、逆に俺の拳を当てる。
「・・・・・・それで当てたつもりか?」
たいしたダメージになっていなかったからか、イザベラは訝しげな表情を作る。
けど、当たれば十分であった。
「弾けろ! 『洋服崩壊』!」
パチン。
俺が指を鳴らすと、イザベラの服が弾けとんだ。
「なっ、なんだこれは!?」
イザベラは自分の身に起こったことに驚愕し、大事な部分を隠す。
その裸体はさっきの『兵士』の三人とは違い、見事なプロポーションであった。
速攻でその光景を脳内の新種ホルダーに名前を付けて保存した!
「よし行くぜ!」
そしてすかさず、大事な部分を隠して動きが止まったイザベラに向けて、もう一度ドラゴンショットを撃ち込んだ!
「っ!?」
俺の魔力がイザベラを包み込み、イザベラは光の粒子となって消えた。
「イザベラが!?」
『ライザーさまの「戦車」一名、リタイア』
ライザーの妹の驚きの声とグレイフィアさんのアナウンスが俺の耳に届いた。
「勝ったぁっ!」
俺は自分の勝利に歓喜した。
「・・・・・・しかし酷い技だ。いや、女にとって恐ろしい技と言うべきか・・・・・・」
「・・・・・・僕も初めて見たんだけど・・・・・・なんと言うか──うちのイッセーくんがスケベでゴメンなさい」
「って、こらぁ! 見も蓋もない謝り方するなぁ、木場ぁっ!?」
「だけど・・・・・・」
だけどじゃねぇよ、イケメン!
「しかし、魔剣使い・・・・・・数奇なものだ。私は特殊な剣を使う剣士と戦い合う運命なのかもしれない」
「へぇ、僕以外の魔剣使いと戦ったことがあるのかい?」
「いや、魔剣ではない。──聖剣だ」
「──っ」
その言葉を聞いた瞬間、木場の雰囲気ががらりと変わった!
「その聖剣使いについて訊かせてもらおうか?」
「ほう、どうやらあの剣士は貴様に縁があるのか? だが、剣士同士、ここは剣にて語ろう!」
「・・・・・・そうかい。・・・・・・口が動ければ、瀕死でも問題ないか」
二人の間の殺気がドンドン強くなっていく! ていうか、木場の迫力がとんでもなかった!
一体どうしたってんだよ、木場!?
「そこの『兵士』さん」
「ん?」
木場の変化に戸惑う俺に、ライザーの妹が声をかけてきた。
「あれ、なんだかわかりますかしら?」
「え? はっ!? 部長ぉぉっ!」
彼女が指差す先を見てみると、新校舎の屋上に、部長とアーシアがいる! 対峙しているのはライザーだ!
直接仕掛けるっていっても早すぎるだろ!
確かに、俺たちが敵を惹き付けているところを部長がライザーに奇襲する手筈だった。でも、俺たちが戦いを始めてから数分しか経っていないのに、いくらなんでも早すぎる! ましてや、あんな正面で向き合って対峙しているんじゃ、奇襲もなにもない。
ああなってるってことはつまり──。
「・・・・・・こちらの手を読まれていたのか・・・・・・!?」
木場が俺の考えていたことを代弁した。
やっぱりそうなるのかよ!
「『|滅殺姫《ルイン・プリンセス』、『聖母の微笑』、『雷の巫女』に『魔剣創造』、『赤龍帝の籠手』。御大層な名前が並んでいますけれど、こちらは『不死鳥』、不死なのですわ」
「っ!?」
いつの間にか、残りのライザーの眷属全員に囲まれていた!
「おわかりになります? これがあなた方にとって、どれだけ絶望的であるか? ニィ! リィ!」
「「にゃ」」
その名が呼ばれると、獣耳を生やした女の子二人が構えを取った。
「この『兵士』たち、見た目以上にやりますわよ」
「「にゃー!」」
獣娘二人が同時に飛び込んできた!
「っ!? ブ、『赤龍帝の籠手』ッ!」
『Boost!!』
慌てて倍加を開始して回避に専念しようとしたが、さっきの戦いの疲れで若干動きが鈍くなっているうえ、相手の動きがトリッキーで動きを追えないせいか攻撃を避けれないでいた。
「最低な技にゃ!」
「下半身でものを考えるなんて!」
「「愚劣にゃ!」」
「ぐはっ!?」
言いたい放題言われてもの申したかったが、攻撃をモロにもらってしまっていて、そんな余裕はなかった。
「・・・・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」
「決めなさい、シーリス!」
「っ!?」
「ハァァァッ!」
ライザーの妹の指示で上からシーリスと呼ばれた女性が大剣を振り下ろしてきた!
俺はなんとか避けるが、たて続けに大剣を振り回してきた!
木場や明日夏、カーラマインに比べれば直線的だったが、威力は確実に上であった。
「マジヤバい!?」
ドゴォォォォン!
そんな中、新校舎のほう──部長とライザーが戦っている場所から爆発音が聞こえてきた!
「っ、部長ぉぉっ!?」
俺は通信機で部長に呼び掛ける。
『私は大丈夫。私のことよりも、いまは目の前の敵を』
「でもっ!」
『私はあなたを信じているわ、イッセー! このリアス・グレモリーの下僕の力を見せつけておやりなさい!』
そうだ、俺は部長の下僕なんだ。
ガキィィィィン!
俺は籠手で相手の剣を止めてやった。
「シーリスの剣をっ!?」
「腕でっ!?」
何も考えることなんてねえ! 部長のためだけに俺はおまえらを──。
「ぶっ倒すッ!」
バキィッ!
そのまま剣を掴み、握り砕いてやった!
「何っ──きゃっ!?」
怯んだところをさらに蹴り飛ばし、俺は籠手に語りかけた。
「赤い龍帝さんよ、聞こえてんなら応えろ! 俺に力を貸しやがれ!」
『Doragon booster!!』
籠手から力が流れ込んでくるが、こんなんじゃ足りない!
「もっとだ! もっと俺の想いに応えろ! 『赤龍帝の籠手』ァァァッ!!」
『Doragon booster secondo Liberation!!』
初めて聞く音声が発せられた瞬間、籠手から膨大な量のオーラが吹き溢れ、籠手の形が変化した。
「か、変わった!?」
そして、籠手から脳内に情報が流れ込んできた。
そうか、これが俺の新しい力か。なら!
「木場ぁっ! おまえの神器を解放しろ!」
「解放!?」
「早くしろ!」
木場は当惑しながらも頷き、剣を地面に突き刺した。
「『魔剣創造』ッ!」
木場の神器の波動が俺に向かって来た。
「うおぉりゃぁぁぁっ!」
『Transfer!!』
俺はその波動に俺の新しい力を使った瞬間、俺を中心に無数の剣が出現した!
そして、ライザーの眷属たちは皆、出現した剣によって貫かれていた。
そのまま、ライザーの眷属たちは光の粒子となって消えていった。
『ライザーさまの「兵士」二名、「騎士」二名、「僧侶」一名、リタイア」』
「『赤龍帝からの贈り物』だぁぁっ!」
グレイフィアさんのアナウンスを聞くと同時に、俺は新しい力の名称を勝利の雄叫びのように叫んだ。
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