遊戯王GX-音速の機械戦士-
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―挑戦状リターンズ―
カードが見えない。
それが、今回エドに敗れた十代を襲った奇病だった。
もちろん、あの後すぐに――消灯時間直前に行ったのは悪かったが――鮎川先生のいる保健室に十代と駆け込んで、保健室で1日ゆっくり休んだものの、十代に回復の兆しは見えなかった。
鮎川先生にも原因もまったく分からず、俺や十代も「デュエルに負けた」程度のことしか言えなかったため、今の十代の症状は、『デュエルに負けたショックによる一時的な異変』としか診断することは出来なかった。
十代には依然として精霊は見えないようで、俺はぼんやりと、万丈目ははっきりとハネクリボーの姿は十代の横にいることが見えるのだが……
そして、カードが見えなくなった十代が選んだ選択は……この学園から去ることだった。
このデュエルアカデミアは、ただの遊びではなくあくまでデュエリストの養成校。
つまりはスポーツの専門校などと同じ扱いであり、十代の状態をサッカーで例えるならば、両足を失ってしまった選手のようなものだ。
……そんな選手に、学園に残ってる意味はない……自分として、辛いだけだろう。
十代は、ナポレオン教頭に停学届けを出し――ナポレオン教頭は当然受け取った――このデュエルアカデミアから、人知れず本土との連絡船で去ったのだった。
しかし遊城十代のデュエルアカデミアに残した影響は、俺やナポレオン教頭が思っていたよりも大きかった。
オシリス・レッドではあるが、実技に限れば成績トップの三沢大地にも勝るとも劣らない十代に、所属している寮などは関係なく、一目置いている人物は多い為だ。
十代のお膝元であったオシリス・レッド寮では、十代を希望として扱っている者すらいたため、もはやお通夜のような状態である。
お通夜のような状態と言えば……十代をアニキと慕う、翔と剣山か。
特に翔の方は深刻であり、一日中机に突っ伏している日もあるぐらいだ……流石にそれはどうなんだ、翔。
そして、逆に苛立っている人物は……俺と万丈目だった。
万丈目は十代のライバルという立ち位置であり――本人は否定するだろうが――苛立っているのも当然のことであろう。
俺はまあ……当然だろう、その場にいたのだから。
その場にいた自分ならなんとか出来たのではないかと、無謀なことを考えてしまう。
故に、俺は毎晩毎晩エドを求めて、デュエルアカデミアの森林を歩き回るのであった。
「……くそッ……」
毒づきながら、今夜も空振りとなった森林を歩き回っていく。
自分がどうにかしたところで、あのデュエルがどうにもならないことは分かっているが……いや、何か出来た筈だという考えが頭から離れない。
自分が友人を見捨てた男だと認めたくないという、つまらない虚栄心から来るものかと思うと、余計に苛立ちが強くなるというものだ。
……一息ため息をつき、今日は寝るかとオベリスク・ブルー寮へと続く道から帰ろうとしたのだが、その時。
木々の間から、途切れ途切れに声が聞こえてくる……いや、これは声というよりは悲鳴と言った方が正しいだろう。
そして、どこかで聞いたことのあるこの悲鳴の正体は……
「……万丈目!?」
耳に自信がある方ではないが、今のは間違いなくオシリス・レッドの友人の一人、万丈目準の声。
あいつも俺と同様に苛立っていた為に、夜に森林の散歩をしていてもおかしくはないだろう。
そして、何らかの事故があったとすれば……?
「――ッ!」
出来るだけ急ぎ、声が聞こえた方へ走りだす。
闇のデュエルを体験するようになってからは少しは身体を鍛えているものの、あくまで一般人な自分には万丈目の正確な位置など分からないが、ほうっておくわけにはいかない。
それに、声が聞こえたということはあまり遠くない筈だ。
ならば自分の足でも間に合うかも……
だが、そんな俺を妨害するように目の前に男が立ちふさがった。
「お前は……五階堂!?」
俺の目の前に現れたのは、この前に三沢に挑んで敗れた万丈目を慕う中等部の首席、五階堂宝山だった。
ただし、自らの誇りのように着ていたオベリスク・ブルーの制服は俺と同じ蒼色ではなく、何故か純白であったが……
「斎王様から聞いたぞ黒崎遊矢! 万丈目先輩を学園から追いだしたのは、元はと言えば貴様のせいだそうだな!」
斎王様? ……誰だか知らないが、五階堂に事実ではあるが、余計なことを吹き込んでくれたものだ……!
しかし、今は知らない人相手に恨み言をを言っている場合ではない。
「その万丈目の悲鳴が聞こえたんだよ! さっさとそこをどけ!」
しかし、俺の心から万丈目を案じる言葉にも五階堂は動じず、せせら笑ってその場を離れない。
「馬鹿を言うな。今ごろ、万丈目先輩は洗礼を受けているところ。その場を貴様に邪魔されぬよう、貴様をここから通すなとの命令だ!」
洗礼? 五階堂が何を言っているのかはまったく分からないが、いきなり付けていたデュエルディスクを構えだした。
今の話から分かるのは、五階堂は万丈目を追いだした件で俺を恨んでいることと、その恨みをデュエルで返そうとしていること、万丈目のところに行かせないように誰かに命令されているということだ。
「なら、俺が勝ったらそこを通したもらう!」
「良いだろう! 俺が負けることなど有り得ないからな!」
デュエルディスクとデッキは、この深夜の散歩の本来の目的であるエドとのこともあって、万全な状態で持ってきている。
こちらもデュエルディスクを構え、五階堂と同じくデュエルの準備が完了する。
『デュエル!!』
遊矢LP4000
五階堂LP4000
目的の人物とは違えど、出番となったデュエルディスクは『後攻』と示した。
「俺の先攻だな! ドロー!」
つまり、五階堂の先攻でターンが始まった。
「俺は《切り込み隊長》を召喚! 効果により、更にもう一体の《切り込み隊長》を召喚するぜ!」
切り込み隊長
ATK1200
DEF400
五階堂のフィールドに現れる、二体の隊長……隊長が二体というのもおかしな話だが……を見て、五階堂のデッキは、三沢と戦った【戦士族軸装備ビート】から恐らくは変わっていないだろう、と当たりをつける。
どちらかに特化しているわけではなく、両方にスイッチ出来る柔軟性を持っていた。
「これで切り込みロックの完成だ! ターンエンド!」
「楽しんで勝たせてもらうぜ! 俺のターン、ドロー!」
そうは言うが、楽しんでばかりもいられない。
万丈目の為にも、出来るだけ速攻で終わらせたい……のだが、あまり速攻で攻撃に転ずることが出来る手札ではなく、五階堂のフィールドには切り込みロックが形成されている……仕方がない。
「俺は《ガントレット・ウォリアー》を守備表示で召喚!」
ガントレット・ウォリアー
ATK500
DEF1600
ガントレットの機械戦士が守備の態勢をとって、切り込み隊長の前に立ちふさがった。
「カードを一枚伏せ、ターンエンドだ」
「俺のターン! ドロー!」
五階堂は勢いよくカードを引き、それをそのままデュエルディスクに叩きつけた。
「そんなザコシリーズ蹴散らしてやるぜ! 俺は《重装武者−ベン・ケイ》を召喚!」
ATK500
DEF800
歴史上の有名な人物、『武蔵坊弁慶』をモチーフにした戦士族が現れる。
その逸話通り、真の力を発揮するのは武器を装備した時……!
「俺はベン・ケイに《デーモンの斧》と《ビッグバン・シュート》を装備! 合計で攻撃力を1400ポイントアップするぜ!」
ベン・ケイに、ビッグバン・シュートのオーラが漲るデーモンの斧が装備される。
ここで大事なのは、ベン・ケイの攻撃力が上がったことなどではなく、ベン・ケイの厄介な効果の方だ。
「バトル! 重装武者−ベン・ケイで、ガントレット・ウォリアーに攻撃!」
ガントレット・ウォリアーがベン・ケイに、珍しく使われたデーモンの斧によって切り払われる。
ビッグバン・シュートを自分のモンスターに装備するのは、本来あまり褒められたことではないが、ベン・ケイの効果と併せると厄介だった……しかも運悪く、《サイクロン》が手札に無い。
「くっ……」
遊矢LP4000→3700
「ベン・ケイは、自分に装備されているカードの数だけ攻撃出来るんだぜ! ベン・ケイで黒崎遊矢にダイレクトアタック!」
「手札から《速攻のかかし》を捨て、バトルフェイズを終了させる!」
俺の手札から飛び出た速攻のかかしが、ベン・ケイに斬られる代わりに……いつもすまない……バトルフェイズを終了させる。
「フン! そんな小細工で、俺のこの布陣が突破出来るのか!? ターンエンドだ!」
「俺のターン、ドロー!」
引いたカードを見て、思わず少し笑う。
このカードならば、切り込みロックを突破出来る!
「俺は通常魔法《ブラック・コア》を発動! 手札を一枚捨てることで、相手のモンスター一体を除外する! 俺は、切り込み隊長を除外!」
俺の手札一枚を犠牲に、切り込み隊長を久々に登場した黒い穴が飲み込んだ。
それに、このカードがもたらすものはこれだけではない。
「更に、墓地に送られた《リミッター・ブレイク》の効果を発動! デッキ・手札・墓地から《スピード・ウォリアー》を特殊召喚する! 守備表示で来い、マイフェイバリットカード!」
『トアアアッ!』
スピード・ウォリアー
ATK900
DEF400
俺の呼びかけに応え、デッキから即座に馳せ参ずるスピード・ウォリアー。
それを見て、五階堂は誰が見ても明らかな嘲笑を見せた。
「ブラック・コアでベン・ケイを除外しないプレミといい、その貧弱なモンスターといい……次のターン、ベン・ケイが蹴散らしてやる!」
「……プレミも貧弱かどうかも、今からやることで判断するんだな! 更に《ミスティック・バイパー》を守備表示で召喚!」
ミスティック・バイパー
ATK0
DEF0
笛を持つ機械戦士の登場により、俺のフィールドには守備表示モンスターが二体並ぶ。
そうなれば当然、その状況で特殊召喚出来るこのモンスターが出る!
「俺のフィールドに守備表示モンスターが二体のみのため、《バックアップ・ウォリアー》を特殊召喚する!」
バックアップ・ウォリアー
ATK2100
DEF0
召喚される重火器の機械戦士。
シンクロ召喚の素材にするのは難しいものの、単体での戦闘力なら機械戦士の中でも強い方だ。
「ミスティック・バイパーの効果を発動! このカードをリリースすることで、デッキからカードを一枚ドローする!」
……残念ながらレベル1モンスターは引けなかったが、カードを一枚ドロー出来ただけで良しとする。
「そんなモンスターを出したところで、切り込み隊長がいる限りベン・ケイに攻撃は届かないんだぜ!」
「知ってるさ。バックアップ・ウォリアーに装備魔法《ヘル・ガントレット》を装備する!」
バックアップ・ウォリアーの腕に、先程破壊されたガントレット・ウォリアーとは違ったガントレットが付く。
だが、特にステータスは変わらない。
「バトル! バックアップ・ウォリアーで、切り込み隊長に攻撃! サポート・アタック!」
重火器による、まったくサポートではない攻撃が切り込み隊長を撃ち抜く。
切り込み隊長は攻撃表示のまま……切り込みロックに頼りすぎだろう、お前。
五階堂LP4000→3100
「ぐ……だが、ベン・ケイさえ無事ならまだ立ち直せるぜ!」
「……悪いがベン・ケイは破壊させてもらう! バックアップ・ウォリアーに装備されたヘル・ガントレットの効果を発動! 自分フィールド場のモンスターをリリースし、このターンのダイレクトアタックを封印することで装備モンスターはもう一度バトル出来る! スピード・ウォリアーをリリース!」
スピード・ウォリアーがヘル・ガントレットの中に飛び込み輝きだし、バックアップ・ウォリアーが再び動き始める。
「バックアップ・ウォリアー、二度目の攻撃! ベン・ケイにサポート・アタック!」
二回目も同様に重火器が煌めき、ベン・ケイを蜂の巣にする。
「な、ベン・ケイがやられた……!?」
五階堂LP3100→2900
【戦士族軸装備ビート】の主力モンスターを、首尾良く倒せたのは良しとしよう。
「ターンエンドだ」
「俺のターン! ドロー!」
ベン・ケイに代わる新たなカードを引かんと、五階堂は気合い充分でカードをドローする。
「チッ……《荒野の女戦士》を守備表示で召喚!」
荒野の女戦士
ATK1100
DEF1200
しかし、出て来たのは戦士族のリクルーター。
《巨大ネズミ》の下位互換ではあるが、戦士族であるため五階堂のようなデッキには採用される。
「カードを一枚伏せ、ターンエンドだ!」
「俺のターン、ドロー!」
ベン・ケイが破壊されたことで、五階堂は方針を変えて守備を固める。
三沢とのデュエルの時もそう思ったが、攻撃と守備の態勢を変えるのが上手いな、こいつ。
「……バトル! バックアップ・ウォリアーで、荒野の女戦士に攻撃! サポート・アタック!」
新しいモンスターを召喚し、ヘル・ガントレットのコストやシンクロ召喚に繋げても良いのだが……《ならず者傭兵部隊が出た時に止める術は無い。
シンクロ召喚して除去されてしまったら、悲惨だ……
「荒野の女戦士が破壊されたことにより、荒野の女戦士をデッキから特殊召喚する!」
……予想に反し、リクルートされたのは同じく荒野の女戦士だった。
俺が警戒した《ならず者傭兵部隊》は、入っていない確率があることを頭に入れておく。
「メインフェイズ2、《シールド・ウォリアー》を守備表示で召喚」
シールド・ウォリアー
ATK800
DEF1600
まあしかし、念のために守備を固めておいても無駄ではない。
「ターンエンド」
「俺のターン! ドロー!
……《不死武士》を守備表示で召喚してターンエンド」
不死武士
ATK1200
DEF600
「俺のターン、ドロー!」
まだまだ、五階堂のフィールドは守りの態勢を崩さないか。
……仕方ない、若干無理をしてでも攻める!
「俺は《ニトロ・シンクロン》を守備表示で召喚!」
ニトロ・シンクロン
ATK300
DEF100
爆破するニトログリセリンの名前を冠しているくせに、その外見は消火器のようだ。
「レベル5のバックアップ・ウォリアーで、レベル2のニトロ・シンクロンをチューニング!」
ニトロ・シンクロンが二つの星になり、バックアップ・ウォリアーを囲む。
バックアップ・ウォリアーは、特殊召喚されたターンのシンクロ召喚を封じるだけで、別にシンクロ素材に出来ないわけじゃない……!
「集いし思いがここに新たな力となる。光さす道となれ! シンクロ召喚! 燃え上がれ、《ニトロ・ウォリアー》!」
ニトロ・ウォリアー
ATK2800
DEF1800
機械というより、むしろ悪魔のような形相をした機械戦士がフィールドに降り立つ。
機械戦士の中では、かなりの攻撃力を持つモンスターだ。
「ニトロ・シンクロンの効果によって一枚ドロー……そしてバトル! ニトロ・ウォリアーで、荒野の女戦士に攻撃! ダイナマイト・ナックル!」
ニトロ・ウォリアーの攻撃力ならば、なんなくリクルーター程度は片付けられる。
更に、五階堂のフィールドには表側守備表示が二体、ダイナマイト・インパクトが発動する……
「リバースカード、オープン! 《攻撃の無力化》を発動し、バトルを終了させる!」
……そんなに上手くはいかなかったようだ。
時空の渦に弾かれ、ニトロ・ウォリアーは俺のフィールドへ戻ってくる。
「……ターンエンドだ」
「俺のターン! ドロー!
……《強欲な壺》を発動し、二枚ドロー!」
通常のドローに加えて、強欲な壺が破壊されたことにより更に二枚ドローする。
「ククク……さあ行くぞ! まずは《サイクロン》を発動して貴様のリバースカードを破壊する!」
竜巻が、俺が1ターン目に伏せたものの、使う機会が訪れなかったリバースカードを破壊する。
ちなみに、《くず鉄のかかし》だ。
「続いて《死者蘇生》を発動! 蘇れ《重装武者-ベン・ケイ》!」
重装武者-ベン・ケイ
ATK500
DEF800
ここに来てのベン・ケイ蘇生……ベン・ケイに《団結の力》だろうか、それとも三沢戦に出した切り札、《ギルフォード・ザ・レジェンド》であろうか。
どちらにせよ、くず鉄のかかしが破壊された今、ニトロ・ウォリアーとシールド・ウォリアーは破壊されてしまうか……
しかし、結論から言うと。
五階堂が狙っていた戦術は、俺の予想を超えるものだった。
「俺のフィールドの戦士族を三体リリースし、現れろ! 《ギルフォード・ザ・ライトニング》ッ!」
ギルフォード・ザ・ライトニング
ATK2800
DEF1400
俺の予想を裏切りながらフィールドに現れたのは、伝説となる前の稲妻の戦士。
しかし、その力は劣っているわけではなく、むしろ全盛期と言っても過言ではない……!
「これが俺があの方から賜った、俺の新しい切り札だ! ギルフォード・ザ・ライトニングの効果を発動! 三体をリリースして召喚された時、相手フィールド場のモンスターを全て破壊する! ライトニング・サンダー!」
ギルフォード・ザ・ライトニングがかざした剣から放たれた稲妻が、俺のフィールドのニトロ・ウォリアーとシールド・ウォリアーを破壊する。
禁止カードの《サンダー・ボルト》を喰らった気分だ……!
「バトル! ギルフォード・ザ・ライトニングで、黒崎遊矢にダイレクトアタック! ライトニング・クラッシュ・ソード!」
サイクロンとギルフォード・ザ・ライトニングの効果でフィールドを丸裸にされ、速攻のかかしは使用済み……ギルフォード・ザ・ライトニングの攻撃を止める術は、今の俺にはなかった。
「ぐあああッ!」
遊矢LP3700→900
一気にかなりのラインが削られる。
ちょっと辛いか……!
「ハーハッハ! これで俺の勝ちは決まっても当然だぜ! ターンエンドだ!」
「俺のターン、ドロー!」
まだ勝利宣言するには早いだろう、と言おうとしたが、勝利宣言を言った当人である五階堂は聞いてはくれないだろうから、自分のプレイに集中する。
しかし、効果は優秀なのは分かるが【装備ビート】にギルフォード・ザ・ライトニングは重いんじゃないか?
人にもらった大事なカードなら、俺がとやかく言えることではないが……
それはともかく……ファイナルターンだ!
「俺は魔法カード《狂った召喚歯車》を発動! 相手フィールド場のモンスター一体を選択し、相手はそのモンスターと同じレベル・種族のモンスターを特殊召喚する!」
五階堂のフィールドで俺が選択出来るカードは、ギルフォード・ザ・ライトニング一体のみ。
当然、選択されるカードはギルフォード・ザ・ライトニングとなり、稲妻の戦士と同じレベル・種族のモンスター……つまり、レベル8の戦士族が五階堂のデッキから現れる。
「なに? ……ふん! 俺のフィールドにモンスターを特殊召喚するとはな! 《ギルフォード・ザ・ライトニング》をもう一体特殊召喚する!」
稲妻の戦士がもう一体特殊召喚された。
流石に三積みはしておらず、また、ギルフォード・ザ・レジェンドは自身の効果で特殊召喚が出来ないために現れない。
「更に、自分の墓地の攻撃力1500以下のモンスターの同名モンスターを三体、デッキ・手札・墓地から全て攻撃表示で特殊召喚する! 現れろ、《スピード・ウォリアー》!」
『トアアアッ!』
三つの歯車が、マイフェイバリットカード三体に変化する。
これならば、ギルフォード・ザ・ライトニングを倒せる。
「続いて、《ロード・シンクロン》を召喚!」
ロード・シンクロン
ATK1600
DEF800
そして現れる、ロードローラーを模した金色のチューナーモンスター。
専用のモンスターを出せる準備は、既に整っている……!
「レベル2のスピード・ウォリアー二体に、レベル4のロード・シンクロンをチューニング!」
ロード・シンクロンが四つの星となり、スピード・ウォリアー三体のうち二体を包む。
「集いし希望が、新たな地平へいざなう。光さす道となれ! シンクロ召喚! 駆け抜けろ、《ロード・ウォリアー》!」
ロード・ウォリアー
ATK3000
DEF1500
ロード・シンクロンがそのまま巨大化したような、機械戦士たちの皇。
その効果も機械戦士たちをサポートする効果であり、ロードという名前は伊達ではない。
「ロード・ウォリアーの効果により、デッキから《チューニング・サポーター》を特殊召喚する!」
チューニング・サポーター
ATK100
DEF300
ロード・ウォリアーがマント状のパーツから光の道を放ち、そこから中華鍋を逆に被ったようなモンスター、チューニング・サポーターが現れる。
「まだだ! 通常魔法《スターレベル・シャッフル》を発動! スピード・ウォリアーをリリースすることで、スピード・ウォリアーと同じレベルである墓地の《ニトロ・シンクロン》を特殊召喚する!」
再び現れる、消火器のチューナーモンスター。
……それにしても、シンクロ召喚を使ってからメインフェイズが長いな。
「レベルを2に変更したチューニング・サポーターと、レベル2のニトロ・シンクロンをチューニング!」
チューニング・サポーターの効果により、自身のレベルが2に上がる。
それによって、機械戦士唯一のレベル4シンクロモンスターの出番となる……!
「集いし願いが、勝利を掴む腕となる。光差す道となれ! シンクロ召喚! 《アームズ・エイド》!」
アームズ・エイド
ATK1800
DEF1200
機械戦士たちの補助兵装、アームズ・エイド。
名は体を示しまくりであるその名の通り、ロード・ウォリアーの補助兵装となる。
「チューニング・サポーターの効果で一枚ドローし、アームズ・エイドの効果によってロード・ウォリアーにアームズ・エイドを装備する!」
さあ、もういい加減メインフェイズを……いや、このデュエルを終わらせよう。
ロード・ウォリアーにアームズ・エイドが装備され、攻撃力が1000ポイントアップする。
「バトル! ロード・ウォリアーで、ギルフォード・ザ・ライトニングに攻撃! パワーギア・クロウ!」
元々、ロード・ウォリアーの攻撃はクロウ。
アームズ・エイドが装備されたことによって、更にその威力は跳ね上がる!
五階堂LP2900→1700
「ええい……! だがまだまだだ!」
「いや、終わりだ。アームズ・エイドの効果を発動! 装備モンスターが相手モンスターを破壊した時、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える!」
ギルフォード・ザ・ライトニングの元々の攻撃力は2800。
新しくもらったとかいうギルフォード・ザ・ライトニングが墓穴を掘ったな……!
ロード・ウォリアーによって裂かれたギルフォード・ザ・ライトニングが、主である五階堂の下へ倒れ込んでいく……
「う、うわあああっ!」
五階堂LP1700→0
デュエルが終了したことにより、ロード・ウォリアーと装備されたアームズ・エイドが消える。
いつもなら決着後のセリフが入るところだが、今はそんなことをしている場合ではない。
悲鳴を出した万丈目のところに行かなければ……!
「どけ五階堂! 万丈目のところに……」
「その必要は無い」
ザッザッと草を踏みしめながら、五階堂がいた方向から人が歩いてくる。……いや、人、などというぼかした言い方はすまい。
「……万丈目」
万丈目準が、いつも通りに傲岸不遜な感じで歩いてくる。
別に変なところは見当たらない……一つを除いて。
万丈目が今着ている制服は、ノース校の制服である漆黒の制服ではなく、純白のオベリスク・ブルーの制服。
今までデュエルしていた五階堂と同じ服……!
「……万丈目、何なんだその白い制服」
「フハハハ、やはり俺様には高貴な白色が似合う! つまり、そういうことだ」
……言葉のキャッチボールをしろ、万丈目。
そんな文句を言う前に、万丈目はその白い制服をマントのようにたなびかせて背後を向いた。
「さあ、行くぞ五階堂!」
「はい万丈目さん!」
万丈目は、そのまま自分の住処であるオシリス・レッド寮に歩いていき、倒れていた五階堂も起き上がってついて行った。
万丈目は嫌いな後輩として、五階堂は変わってしまった先輩として、あいつらは嫌いあってると思ったが……
「ああくそ、何なんだよいったい……!」
新学期すぐのエドとの来襲から、明らかにこのデュエルアカデミアはおかしい。
しかし、どうにも出来ない自分に歯噛みするのだった。
後書き
クリスマス企画とか、そんなことを考えられる作者さんは凄いですね。
感想・アドバイスを待ってます。
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