世界をめぐる、銀白の翼
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第七章 C.D.の計略
新コアメダルと実験と謎の男
『おい!なんで俺だけこっちの部屋なんだよ!!』
「気を悪くしないでくれたまえアンク君。ポセイドンという前例がある以上、既存のコアメダルは近づけたくはないのだ」
『チッ!!』
鴻上コーポレーション。
そこの所有する、とあるコアメダル研究所の一つ。
そこを歩く集団の先頭に立つ会長である鴻上光生と、廊下の上部に点々と設置されている小さなモニターに映るアンクとが、なかなかやかましく会話している。
その後をついて行っているのは、仮面ライダーオーズ/火野映司と、その協力者であった泉比奈。
それと、鴻上の秘書である里中エリカが最後尾についていた。
「それにしても、なんだか複雑だなぁ・・・・」
「そうですよね。敵になるってわかってるのに、メダルを作らないといけないんだなんて」
「うむ。しかし、それがなければ現代にオーズのコアメダルは還ってこなかったし、アンク君とのあの再会もなかったことになる」
「もしこれを行わなければ、時間に矛盾が生まれてしまいます。その結果がどうなるかはっきりとわからない以上、手出しはできませんからね」
う~ん、と唸る映司と比奈。
それにこたえる、鴻上と里中。
今日、彼らが呼ばれたのは鴻上コーポレーションが新たに開発したコアメダルのお披露目である。
純粋な欲望エネルギーのみを得、グリードのような怪物を誕生させない「安全なコアメダル」。
それが鴻上が考案し、そして開発にまでこぎつけた「新世代コアメダル」である。
モデルとなった生物はかつての物とは違う物が選ばれ、合わせて15種が一枚ずつ製造されたそうだ。
その中には当然、「あの」海洋系三種―――サメ、クジラ、オオカミウオも存在する。
「でも、まあ逆に40年後までは大丈夫ってことですよね」
「その通りだよ!!これで我々は、新たなるエネルギーを手にすることが可能となった!!素晴らしいッ」
コアメダルのエネルギーは、それだけを見れば凄まじいものがある。
それは過去のグリード完全態や、オーズのコンボの力を見れば明らかだろう。
太古の昔、各属性10枚ずつあったところから一枚を抜いたところでグリードが誕生し大変なことになったわけだが、今回の鴻上の物は一枚ずつ。
グリードの発生不可能を大前提としたものだ。
だが、一度意思を得た経験のあるオーズのコアメダルはそれらのコアメダルにとってある種の「スイッチ」になってしまう。
やはり、自我を得て何かを求め暴れる怪物となってしまうのだ。
故に、アンクのみは別室で、モニター越しので見学になる。
当然ながら、映司もコアメダルは一切持ち出していない。
「さて、到着した!これこそが!!我が鴻上コーポレーションの誇る、新たなる、そして完全にクリーンな新エネルギーとなるコア・バンクだよ!!」
案内され、通された部屋。
そこの扉がガチャリと開かれ、鴻上の尊大な叫び声とともに映司たちはそれを目にした。
「凄い!!!」
「うわ、すっごい大きさですね!!」
火野たちが通された部屋は、その装置がある場所ではなく、ガラス越しにその装置の見えるコントロール室のようだ。
「EARTH」地下闘技場にも負けていない大きさの部屋―――というか、もはやエリアだ。
その中に、巨大な装置は鎮座されていた。
平たい円柱型をしており、聞くとその大きさは直径にして20メートル。高さは5メートルもある巨大なリアクターであるらしい。
円柱、とはいっても箇所によって太さは異なり、特に上部と下部のほうの太さは一回り大きい。
下部のほうは支えるためであるが、上部の太さには別の理由がある。
「あそこに埋め込んであるのがですか?」
「その通りだよ!!あそこをグルリと一周、コアメダルが均等に埋め込まれている!!そしてそのエネルギーは、欲望と同じく・・・無限大だよッッ!!!」
ゴゥゥン!!と、試運転開始のための準備がせわしなく行われ、ガラスの向こう側で荷物を積んだフォークリフトや、バインダーの書類を手にチェックを進めていく職員が走り回っている。
装置のある部屋はとてつもなく巨大なエリアだ。
この中を走り回るだけでも大変な労力。それを案じてか、職員によってはセグウェイに乗って移動している。
そして映司たちのいる制御室の高さ(床)は、このコア・バンクのある部屋の床と同じである。
そこから見て装置の全容が見えるのだから、かなり余裕をもってコア・バンクの部屋は作られている。
「まあ当然と言えば当然だよ。グリードは生まれないとしても、そのエネルギーは莫大なものだ。万が一のことがあっては、決してならない」
「研究所からこの装置のある場所までも、かなり歩きましたもんね」
そう、このコア・バンクは研究所からさらにまた離れた場所のエリアに作られている。
アンクがいるのは研究所のほう。そこから同じ敷地内とはいえ離れた建物で見ていろと言われれば、彼のイラつきもわかるというものだ。
「会長。準備できました!!」
「うむ。では、エリア内の職員は全員離れたまえ!!これより、試運転を開始する!!!」
職員の報告を聞き、鴻上がアナウンスを入れて胸ポケットから起動キーを取り出した。
USBメモリにも見えるそれを制御室のコンソールに挿し入れ、キーボードに手を当てる。
そして全職員の安全確保の証明である青いランプが点くと、それを操作してキーワードを入力。
パチリとカバーを外し、その起動ボタンに指を掛けた。
「さあ、誕生したまえ!!新たなる時代!!」
グッ!!
「カモン!!!」
バチンっ!!!
押し込まれるボタン。
グゥゥーーーーンと唸り声のような音が響き、思わず職員や火野たちが周囲を見回した。
だが、それが響いたと思ったら、急にそれが静かになっていき「――――ゥウン・・・」と何もならなくなってしまう。
おかしいな
失敗かな
そんな空気が漂いはじめ、映司も鴻上の顔をチラ見し始めた。
対して、ボタンを押したままの鴻上はしばらくそのまま固まって待っていたが、あれ?と首をかしげてもう一度ボタンを押そうと手放した。
と、そこで
『グゥゥゥゥウウウウウウウウウウウ―――――――!!!!!』
「おぉう!?」
いきなり、腹の底から響くような重々しいそんな音がした。
そしてその後に聞こえてきたのは無機質な機械音声。
《全コアメダル・エネルギー供給開始。リアクター起動。回転数毎秒3万回転。安定状態に入りました。現状を維持します》
「――――――ぉお・・・!!」
《エネルギー生産開始。コア・バンク正常起動しました》
「素晴らしいッッ!!ハッ―――――ピィィイイ、バァースディッッ!!!」
わぁっ!!と、鴻上の叫びに続いて、職員らの歓喜の声が上がる。
その中で、映司と比奈は「何もなくてよかった・・・・」と安堵しながらも鴻上や里中とその成功を喜んだ。
こうして、新たなる「モノ」は誕生する。
そう、間違いなく。
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歓声に沸く研究所内コア・バンク施設。
誰もいないはずの装置のある大部屋のバンクルーム。
そのコア・バンクの上。
そこに、いつの間にか人影が現れていた。
コア・バンクから出てくる煙や、バチバチとたまに爆ぜる火花や電気に紛れてその姿ははっきりとは見えない。
当然、この部屋には誰もいないためにそれに気付くものはなく、管制室もそれを見つけることはできなかった。
男はコートを払いしゃがみ込み、手の平を当てた。
その真下に設置されていたのは「グリズリー」のコアメダル。
そして
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ヴィーヴィーヴィー!!!
《コアメダルに異常発生。エネルギーの膨張、および収束を確認》
「なにごとかね!!!」
歓喜に沸く部屋が、一瞬にして警報の音によってその空気もろともかき消されてしまった。
叫び、現状報告を求める鴻上。
職員は即座にコンソールをいじり始めたが、それより先に機械音声の返答がやってきた。
《グリズリーコアメダルよりエネルギー感知。特殊電場発生》
「ほう・・・なんということだ!!!」
その音声を聞き、一瞬感心したような声を出してから、それでもどこか嬉しそうに叫ぶ鴻上。
彼からすれば、それが大変なことであろうとも「誕生」というものは祝福すべきことなのだろう。
と、そこで一同は見た。
コア・バンクの上に、煙に紛れてはいるが何者かが立っているのを。
それを見て、鴻上は即座に全職員の避難撤退を命令。
非常事態のブザーと、撤退命令のアラームとが重なり、より一層研究所内に響き渡った。
「クッ・・・って、あ!!そうだった!!」
一方、映司はというととっさに腰をまさぐってオーズドライバーを取り出そうとするものの、それら一式をアンクに預けていたことを思い出してから頭を抱えた。
と、そこに
「火野君!!これを!!」
そう言われ、振り向くと鴻上が小さな黒い何かを映司に投げてよこした。
それは小さなインカムであり、とっさに耳につけながら鴻上の声を聴く。
「それでアンク君と連絡を取りたまえ!!」
「会長、そろそろ避難を。比奈さんも早く!!」
「うむ。その前に―――――コアメダル収容!!会長権限コード「443」を発動!!」
《鴻上光生の声音を認識しました。コアメダルの収容を開始します》
エネルギーの暴走か、コア・バンクは回転数を上げていき煙と火花と電撃を挙げながら、がたがたと震動し始めた。
しかし、鴻上のとっさの操作によってそのコア・バンクに取り付けられているコアメダルが、次々に内部に取り込まれ、各経路を通って完全にリアクターから切り離される。
そうして地下の何重にも保護されたシェルター内に送り込まれ、厳重に保護される。
そうなる前に、リアクター上の男はその上を走り回っていた。
「フンっ・・・判断はいいが、少しばかり遅かったな」
取り込まれてすでに手が出せないメダルはいくつかあるものの、それでも時間はかかっていた。
その時間のうちに、男は最初の一つに加えて、さらに二つのメダルへと接触することに成功。
そのメダルは一瞬内部に回収されていくものの、自らを掴む回収装置を引きちぎって脱出。
リアクターの真上で集結しクルクルと回転を始めていた。
「アンク!!!今どこだ!!」
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「おい映司!!いったい何が起きた!!!」
映司が叫ぶのと同時、アンクは研究所内から飛び出してバンク施設のほうへと走り出していた。
周囲では研究員が書類やデータを載せた台車や段ボールを抱えて避難するが、それとは反対方向へと走るアンク。
途中職員から手渡されたインカムを耳に当て、それでも怒声を上げて走る。
『知らないって!!ただ、コアメダルが急に暴走して』
「ンなことあるか!!何もしないのにコアメダルが勝手に動くわけねぇだろうが!!!」
『だから俺に言われてもしょうがないだろって!!いいから早くベルトとメダル!!』
「チッッ!!くたばんじゃねーぞ!!」
周囲を見渡しても、ライドベンダーはない。
ことさら大きな舌打ちをして、一気に走りに加速をつけるアンク。
そして一気に飛び出したのち、背に生やした翼で飛翔し研究所へと飛んで向かった。
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「早く逃げてください!!」
「は、はい!!」
まだ逃げられていない職員の避難誘導をしながら、奥へと進む映司。
だが、廊下には人がごった返しておりそれを逆走していくのは難しそうだ。
彼としては、一刻も早く彼らを避難させたい。
だが、リアクター上の男も気になるところ。
悩んでいると、その背中に比奈からの叫び声が聞こえた。
「映司君!!こっちは私たちが何とかするから!!」
「なんとかって、どうするつもりだね!!」
ピョンピョンと跳ねてそう告げる比奈に、鴻上が大声で尋ねる。
これが素の声なのか、それともこの状況だからの大声なのか判別しにくい人である。
と、比奈が崩れて倒れていたコンクリートに覆われた鉄骨を手にする。
ほぼ抱き付くようにそれを掴むと「ふにゅ~!!」といつも通りの気合いを一発。
すると、それをぶん回し壁にぶつけ、ガラガラと崩して新しい通路を作り出してしまったではないか。
ポカーンとする鴻上と里中だが、すぐに「新しい道の誕生だよ!!」とか何とか言って、その穴から避難していってしまった。
この調子なら、いろんなところから逃げられるな。
そう判断し、映司はまだすぐ近くだった制御室に駆け込み、椅子を掴むとガラスに向かって投げつけた。
そうして粉々に砕けたガラスの穴から装置部屋内に入り、リアクターに向かって駆けだした。
無論、それが見えないリアクター上の男ではない。
「ふぅむ、よく来る・・・しかし、今、邪魔をされるわけには、いかないのでな」
そういって、バラバラと何かをばらまいた。
それは、セルメダルの欠片。
それらをばらまくと、男はこれだけ十分だと思ったのか、その場から姿を消してしまった。
「あっ!!待て!!―――――っと!?屑ヤミー!?」
ばらまかれたセルメダルの欠片から、ワラワラと発生し始めた屑ヤミー。
ううう、と唸り声をあげながら、何かに掴まろうとするその動作も相まって、どこからどう見てもミイラである。
それらを見て一瞬ひるむ映司だが、すぐに駆け出し徒手空拳で数体を吹き飛ばし撃破していく。
だが
「数が多い!!」
それなりに戦闘力のあるのならば、一般人であろうとも倒すことのできる屑ヤミーだが、こう一面にわらわらと出現されてはキリがない。
そのうち、まだ逃げている所員へと襲い掛かる屑ヤミーも出てきて、それらのほうへと足を向けざるを得ない映司。
その対処には問題がないのだが、このままではあのリアクター上で回転し渦巻く三枚のコアメダルまでは届かな――――
ドンッッ!!
「ッッ!!?」
と、そこで
リアクター上のコアメダルから衝撃が走った。
ビリビリと大気を叩き、リアクター近くにいた屑ヤミーの何体かはそれだけで倒れてしまった。
フヨフヨと浮き、緩く上下しながら地面に降りてくる光。
そして地上にそれが降り立ち、光が薄れて行きその姿が現れ始める。
それと同時に、ついにリアクターに限界が訪れた。
カッ!!と光を一気に発し、断続的に、様々な部分から小爆発を起こしていくリアクター。
そして次第にそれは、数は少なく、しかし一つ一つが大きな爆発になり、ついにそのリアクターそのものが大きな火の玉となって崩れ落ち――――
「くそッ!!!」
映司は、即座に背を向けて走り出した。
だが湧き出る屑ヤミーが邪魔でうまく先に進めない。
ついに爆発は映司の近くまで迫り、さらには誘爆した別の爆発までもが周囲で起こり始め、映司の身体が宙に浮き
「映司!!!」
そこで部屋に飛び込んできた宙に浮く右腕が、映司に向かってメダルのはめ込まれたドライバーを投げつけた。
そこから先は、まるでスローモーションのように感じた。
背や肩に熱を感じながら、飛んでくるドライバーを手にし、腰に装着する映司。
ベルトが腰に巻きつき、固定され、馴れた手つきで腰に現れたオースキャナーを、出現と同時に掠め取る。
そして爆発にもまれ宙で錐もみ回転しながら、ベルトとメダルにスキャナーを通した。
「変身!!!」
《ライオン!トラ!!チーター!!》
ザシッッ!!と、変身完了と同時に両足をつけるオーズ。
そしてそのコンボソングとともに、一気に加速してその場からの脱出を図る。
《ラッタラッタ・ラトラーターッ!!》《スキャニングチャージ!!》
「ァアアアッ、セィ――――」
オーズが向かったのは、降り立った光の方向。
新たに現れたあれの撃破と同時に、この建物から脱出する。
加速に秀でたこのコンボなら、それくらいは造作もないはず。
だったのだが
「ィヤ――――」
バン
「ゴゥッ!?」
ドォンッッ!!!
その降り立った光が、人型になっていたそれが、フイと。
まるでハエを払うかのような動作で、オーズを払った。
その結果が「バン」と「ドォンッッ!!!」である。
バン、程度の音にオーズは直角にコースを変えられ、その後凄まじい衝突音とともに壁に激突。施設外にまで弾き飛ばされたのだ。
ガラガラと崩れる瓦礫。
飛び出してきたオーズの脇に、いつの間にか脱出していたアンクが右腕状態で近寄ってきた。
「おい、どうした映司!!」
「いや、もうなにがなんだか・・・・」
パシンと頬を叩きながら聞くアンクに、頭を振って手を着き起き上がるオーズ。
すると、ついに施設は完全に崩壊してしまい、爆発を起こして粉々に散ってしまった。
そして、その炎の中から現れたのは
「グリードか?」
「いや、でも・・・・なんか仮面ライダーっぽい?」
現れたのは、オーズの言う通り仮面ライダーのような外見のモノだった。
黄色い頭部、茶色い腕部、黒い脚部。それに合わせた、胸のサークルの意匠。
三色に分かれたカラーリングは、オーズに酷似している。
その頭部には、少ししなった角が一対。
枝分かれのない鹿かなにかの角のようだ。
腕は太い。筋肉質と言っていいだろう。
前腕部がまるで毛のような意匠のアーマーに覆われている。その点は「ゴリラ」のゴリバゴーンに近いだろう。
そして足は黒かった。
同じ色なのでわかりにくいが、脚の裏側―――ちょうどふくらはぎに沿って「チーター」の排気孔にも似た穴が見える。
その眼はライダー特色の複眼ではなく、鋭い眼光のそれに似ていた。
だが、ベルトだけは違う。グリードのものだ。
そう、あの真っ黒で、中心に円が一個だけのあの簡素なベルトと同じ形だ。
ただ色だけは、全体が銀で真ん中が金だったが。
「俺は・・・・」
「?」
その謎のライダー(のようなもの)が、ついに口を開いた。
そして自分の手をグーパーと握り開き、そして息を吐き出すように肩を下ろす。
「あ、あのー・・・・」
「ん?何だ貴様」
「俺、火野映司って言います!!もしかして・・・仮面ライダー?」
(この馬鹿・・・・・)
やれやれ、とアンクの腕が揺れる。
一度倒そうとした相手なのに、またこうやって語り掛けなおすとは、さすがは火野映司といったところか。
そもそも彼は旅人である。
そんな人見知りをしていたら、世界中を旅などはできない。
「あの、ごめんなさい。俺、いきなり突っ込んじゃって」
「いや、構わない。時に・・・仮面ライダー?」
「あ、はい!!おれ、オーズで、仮面ライダーって言われてます!!」
そしてまた自己紹介。
ホントにこの男は何を考えているのか。
そんなことを想いながら、今は腕だけながらも頭を痛めるという器用なことをしてアンクがさらに呆れた。
一方、聞かれた方はというと、クックと肩を震わせて笑いをこらえていた。
「なるほど。貴様がオーズか」
「え、はい」
「全てのコアメダルを総べるもの・・・・・」
「え?」
その彼の気が大きく膨らんでいく。
知っている。この類の感情を火野映司は知っている。
これは、この感覚は――――――
「なるほど、確かにその力には納得だ。だがしかし」
――――殺気だ
「総べるのは俺だ」
ガギン!!という音がして、彼のベルトの中心部にコアメダルが一枚出現した。
すると胸のサークルの、腕部に当たる部位が輝くと、アーマーの中から鋭利な爪が飛び出してきた。それは手の甲の上に乗る形で飛び出し、彼の胸に当たるコアメダルの固有武装であることが見て取れた。
「ッッ!!!」
いきなり切りかかってきたそれを、とっさにトラクローで受け止めるオーズ。
ギャリギャリと火花を散らして鍔競り合う両者だが、次第に彼のほうが力でオーズを押し始めた。
「クッ・・・この力・・・・!!」
「ハハハハハ!!仮面ライダーが何だか知らんが、貴様がオーズで仮面ライダーとかいうのならば、さしずめ俺はッッ!!」
ドカァッ!!と、思い切りオーズの腹を蹴り飛ばし、その彼は腕を広げてその名を叫んだ。
これから、お前の敵になる男だと。
「俺は、仮面ライダートーチといったところであろうかな!?」
ハハハハハハハハと大笑いするトーチに対し、映司は焦りを覚えていた。
(こいつ、強い・・・・)
あくまでもパワータイプではないラトラーターだが、相手の攻撃に対して押し負けてしまった事実。
過去、各コンボでパワーを使った時の感覚から言って、力勝負に持ち込まれたら勝ち目があるのはプトティラかサゴーゾくらいか。
だがあのスピード。
それに対応もとなると、あれに太刀打ちできるコンボがあるのかどうか―――――
『回避したまえ、オーズ!!!』
「!!!」
思考を回していたオーズに、スピーカーからの声が身体を叩いた。
考えるより先に身体がその場を転がり、トーチの真正面から退くと、即座にいくつもの光弾が、連続で途切れることなく叩き込まれていった。
振り返ると、20数名の武装した人間が、オーズの後ろからバースバスターでトーチに向かって休みなく引き金を引き続けていた。
「これは・・・・・」
『新たに新設したライドベンダー隊だよ!!前回の二の轍は踏まないのだ!!さて、仮面ライダーともグリードともつかない君!!その誕生を祝福しよう!!!』
「このッ、手厚い歓迎で・・・よく・・・いうな・・・・!!!」
スピーカーからする鴻上の声に、トーチの声が振動しながら答えた。
衝撃はあるものの、ダメージが通ってるとはいいがたい。そんな感じだ。
『そして私から、生まれたばかりの君へのささやかなプレゼントだ!!』
「なにを・・・くれるのかな・・・・?」
『終わりを』
ジャコン!!!
一斉掃射をしていたライドベンダー隊が、打ち切ったのかポッドを銃口に装着。
バースバスターはセルバーストモードへと移行し、その銃口の前にメダルを模したエネルギーが高速回転して充填されていき
《セル・バースト》
「撃てッッ!!」
リーダーとして一番前に出ていた里中が号令を掛けると、20を超えるそれが次々にトーチへと襲い掛かった。
一発で放つ場合と、超強化されたものを連続発射する場合とがあるが、今回は後者のようだ。
先ほどのものを超える強力な弾幕の中、それでもトーチはそれが何だと歩を進めていこうと足を踏み出す。
身体が衝撃に震動し、なかなか前に出れないがそれだけだ。
真正面からあたったモノは爆発し、肩に当たった者は少しだけ体を揺らし弾きとび、地面に当たった者は粉塵を上げてコンクリートを粉砕する。
だがその中で、何か違和感を感じてトーチが自らの足を見る。
おかしいな、と思っていたのもそのはず。
度重なる衝撃に、脚がメダルになって少しだけ波打っていたのだ。
「チッ。誕生したばかりで、まだ不安定だったか」
その状態でこれだけの猛攻。
なるほど、崩れるのも仕方がない。
「今回は引くとするか・・・・・・フンッ!!!」
そうして、トーチは飛んできた最後の光弾を爪で切り裂き爆破。
その爆破に紛れてその場から逃走し、その後をライドベンダー隊がタカカンなどを駆使して追っていった。
「大丈夫ですか?火野さん」
「は、はい・・・・助かりました、里中さん」
膝を着き、オーズの肩に手を置いて身を案じる里中。
まさかこのオーズが、あの火野映司が一瞬でここまで苦戦させられるとは。
一方、鴻上は無事だった研究所の電話をとって、あるところに連絡を取っていた。
「ああ。あの二人をよこしてほしい」
こうなれば、事態は急を要する。
早急に解決しなければならない。
現れたのは、コアメダルの怪物。
仮面ライダートーチ
オーズの戦いが始まる。
仮面ライダーオーズ
~Greed of Quality~
to be continued
後書き
始まりました!!ますはオーズ編!!!
現れた敵ライダーは、仮面ライダートーチです!!!
蒔風
「今回現れたのは、コアメダルのライダーか?」
そうですね。
コアメダルに自我が生まれてしまったので、経緯はポセイドンを同じ感じをイメージしてもらえれば。
ただ、直でメダルから生まれたので分類上はライダーよりもグリードよりです。
ショウ
「爪とか出てきたな」
ああ、あれはトーチを構成するコアメダルの内の一つ、グリズリーコアメダルの力です。
トーチの腕を構成してます。
作中説明があるように、爪が飛び出してきます。
ゴリバゴーンのあの腕のわっか。
あれが茶色で毛の意匠になってると言うことで。
ショウ
「意匠ってことは、毛ではないんだな」
ラトラーターのひまわりが毛じゃないのと一緒です。
それっぽい形、ということで。
んで、その中からジャキンと爪が。
出所が違うだけで、ウルヴァリンみたいな感じです。
ちなみにラトラーターの爪が若干引っ掛ける感じの爪に対して、グリズリーの爪は
翼刀
「スパッと行く感じ?」
その通り。鋭利な爪ですね。
それこそ、ウルヴァリンさんのような。コアメダル掴むのには向いてなさそう。
前回も言いましたが、今回のコンセプトはMOVIE大戦です。
基本的にほかのライダーは絡みません。
あ、バースとかは出ますよ?
オーズ系、ということです。
では次回予告!!
アンク
「次回。んで?あいつのコアは何なんだ?」
ではまた次回
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