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NARUTO日向ネジ短篇

作者:風亜
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【ただひたすらに偲ぶ】

 
前書き
 ヒナタとヒマワリのネジを偲ぶ気持ち。 

 
 ──ヒナタはほぼ毎日欠かさず、従兄のネジの遺影の前に熱いお茶を供えている。

お茶が冷めた頃合には、ヒナタ自身がそのお茶を飲んでいた。

普段仏頂面のネジにしては珍しく微笑している、上忍時の遺影──

……生前のネジは、夏の暑い時期でも熱い茶を好んでいて、ヒナタは修行の後や長期任務からの帰還したネジに美味しいお茶を飲んでもらおうと試行錯誤し、「あなたの淹れてくれるお茶はいつも美味しい」と微笑して言われるまでになった時はとても嬉しかったのを、今でもはっきりと覚えている。

ネジの誕生日やその他の祝い事の日には、ネジが好物だったニシン蕎麦を遺影の前に供えていて、冷めた頃合にはやはりヒナタ自身が頂く。

──母親が毎日、ボルトやヒマワリにとっては“おじさん”のネジの遺影に熱いお茶を供え手を合わせているのを見ていた二人の子供は自然とそれを真似、ヒナタがお茶を供えると一緒になって手を合わせるようになり、ナルトも家に居る時くらいは同じようにしている。


「お母さん、ネジおじさんのお墓参り行こ!」

 ボルトはアカデミーに入り、ナルトは火影になってからというものその機会は減りつつあるが、ヒナタは娘のヒマワリと共に定期的にネジの墓参りに訪れており、夏場は専ら向日葵の花を供えていた。

「……ボルトはアカデミーでお友達と楽しく学んでいるみたい。火影のお父さんがなかなか家に居ないのは、やっぱり寂しいみたいだけど……。ヒマワリはよく私のお手伝いをしてくれるのよ、とても助かっているの」

「えへへ、おじさんほめてくれてるかな?」

「ええ、きっと『偉いな、ヒマワリ』って、頭を撫でてくれるわ」

 ヒナタは身を屈め、“日向ネジ”と刻まれた墓にそっと片手で触れる。──その感触はやはり、ひんやりとしていて、ヒナタは心が締めつけられる思いだった。


「ねえ、ヒマワリ……聴いてくれるかしら。今のあなたになら、全部じゃなくても判ると思うの」

「なあに、お母さん?」

「私ね……、ボルトとヒマワリにとってはおじさん……私にとっては、ネジ兄さんを……傷つけてしまった事があるの」

「え……?」

「あなた達には、もう一人のおじい様が居るのは……知っているでしょう」

「うん、家族を命がけで守って、早くに死んじゃったっていう……ヒザシおじいちゃんのことだよね、ネジおじさんのお父さんの」

「それ以上の事は……まだ、話してなかったわね」

「うん……」

「ネジ兄さんのお父上は──私のせいで、亡くなったの。……本当はネジ兄さんの事だってそう、私が──死なせてしまった」

「お母、さん……?」

「ヒザシ様の死をきっかけに……ネジ兄さんとの仲が、悪くなってしまって──。ある時、中忍選抜試験の予選試合というのがあって、私はネジ兄さんと闘う事になったの。ネジ兄さんはその時、弱い私に気を使ってくれて何度も棄権……自分から負けを認める事を勧めてくれたのに、私は……ネジ兄さんに敵うはずないと判ってて、気になる男の子の見てる前でかっこ悪い所を見せたくないって自分勝手になって、ネジ兄さんを怒らせるような無神経な事を言ってしまって──結局、私は予選敗退したの」

「そのあと、どうしたの……? おじさんと仲直り、できた?」

「そうね……ある時から和解……つまり、仲直り……出来て、ネジ兄さんは──私の父からお父上の死の真相を知らされたらしくて、『父の死はあなたのせいじゃない』って言ってくれたんだけど……私はずっと、責任を感じているの」

「どうして? ネジおじさんは、許してくれたんでしょ?」

「そのネジ兄さんも私が……死なせてしまったから」

 ヒナタはネジの墓に手を添えたまま、涙をぐっと堪える。

「でもネジおじさんは、お母さんとお父さんを命をかけて守ってくれたって──」

「そう言えば聴こえはいいかもしれない……けど、綺麗事では済まされないの」

 ほとんど自分に言い聴かせるように述べるヒナタ。


「ねぇお母さん……そんなに自分を責めないで? おじさんだって、きっとそう思ってると思う……」

 ヒマワリが涙声になっているのに気づき、ヒナタはハッとなって振り返り、自分の代わりにはらはらと涙を流している娘をぎゅっと抱きしめる。

「ごめんなさいヒマワリ……結局うまく、伝えられてないね……。でもボルトとヒマワリにはちゃんと知っておいてもらいたいの。ボルトにはね……日向家に昔あった“呪印制度”の事はもう伝えてあるの。それによってネジ兄さんが苦しんできた事実も……。また今度、話すわね。あなたの心の準備もなしに急に話し始めてしまって、ごめんね」

「ううん……大丈夫だよ。わたし、おじさんのこと、もっと知りたいもん。とっても強くて優しい、ネジおじさんのこと」

「ヒマワリ……」

「──お母さん、“じゅうけん”……教えて。わたし、半分“びゃくがん”みたいなんでしょ?」

「ええ、そうみたいだけど……今の所とても怒った時にしか白眼にならないわね」

「お父さん言ってたよ、わたしネジおじさんみたいにきっと天才だって。だから……使いこなせるようになってみたいの。ネジおじさんみたいに、強くなりたい!」

 ヒマワリはひたむきな眼差しを母親のヒナタに向ける。

「──判った、私のネジ兄さん持込みの柔拳を、ヒマワリに教えてあげる。きっとヒマワリなら私を軽く超えて……ネジ兄さんみたいに日向の才に愛された子になるわ」

「うん! ……おじさん、見ててね。わたし、ネジおじさんの分まで強くなってみせるよ」

 ヒマワリはネジの墓に向け、無邪気な笑顔を見せた。



《終》

 
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