足のある幽霊
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第四章
「しかもうちのお店に来るとか」
「想像してなかったわね」
「夢にも」
「私もよ、あの人絶対にね」
千尋は大学生に自分の読みを話した。
「バブル期の頃に死んだ若い女の人の幽霊よ」
「やっぱりそうですか」
「だからね」
それでと言うのだった。
「ここはどうしようかしら」
「お祓いのお塩は」
「用意しておいて、何かしてきたら」
その幽霊がだ。
「速攻でお塩かける用意しておいて、ただ普通にものを買うのなら」
「幽霊がですか?」
「そうするかも知れないから」
可能性としての言葉だ、店に入ったなら誰もが客だからだ。
「その時はね」
「ちゃんと売るんですね」
「そうするわよ」
こう言ってだ、千尋はその明らかに幽霊である客を大学生と共に見守っていた。すると客は店のお菓子を幾つか買ってだった。
レジに来てだ、千尋に言ってきた。
「下さい」
「はい」
千尋はマニュアル通りの対応を笑顔でした、そうしてだった。
勘定を受け取るとそれは夏目漱石の懐かしい千円札だった、大学生はその旧札を見ても驚いたが千尋が目で止めた。
客はおつりも受け取ってだった、店を無言で出たが。
大学生は彼女が去った後でふと店の入り口の敷きものを見て千尋に話した。
「あの、足形あるんですが」
「あるわね、確かに」
千穂もそれを見て頷いた。
「幽霊の足形ね」
「あの、あの幽霊素足ですが足あったんですが」
「足ある幽霊もあるわよ」
千尋は大学生にあっさりと答えた。
「実際にね」
「そうなんですか」
「そうよ、大阪に幽霊の足跡あってね」
「それでなんですか」
「ええ、あの敷きものにもね」
「足跡が付いたんですか」
「そうよ、ひょっとしたら」
大学生が一ヶ月前に言ったことを思い出して言う千尋だった、同時に彼女の店の売り上げの目標も思い出した。
「これはいいかも」
「いいかもって」
「防犯カメラチェックして」
大学生にすぐに言った。
「足跡と、あと旧札のお勘定もね」
「お勘定もですか」
「そう、それもね」
勘定の方は千尋の手にあった。
「残しておくから」
「一体何するんですか」
「看板、宣伝にするのよ」
「宣伝?」
「お店のね、幽霊が来るなんて思わなかったけれど」
それでもというのだ。
「ここはね」
「それを活かしてですか」
「お店の看板にするわ」
こう言ってだ、千尋は早速その敷きものと旧札を店の目立つ場所に飾ってだった。
防犯カメラには映っていた幽霊のその動画を保存してだった、客達に紹介して自分も上司と相談し許可を得てからツイッター等で情報を拡散した。するとだった。
店のこの話は瞬く間に広まった、それで近所だけでなくあちこちから心霊マニアが店に来る様になってだ。
客足が増えそれと共に店の売り上げの目標も千尋が求めていたまでになった、千尋はこのことに喜んで上司にも報告した。
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