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足のある幽霊

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第三章

「あそこ柴田勝家さんがいたんですが」
「あれでしょ、北ノ庄城が攻め落とされて」
「あの人の命日か何かに出るらしいんですよ」
「首無しの騎馬武者が団体で夜道に出るのよね」
「見たら死ぬとか」
「橋だったかしら、出て来るのよね」
 千尋もその話をある程度知っていて言う。
「そういうのもあるから」
「あまり見に行かないことですか」
「憑かれたら厄介でしょ」
 その怨霊にというのだ。
「だからね」
「そんなところは行かないことですか」
「最初からね、ただ人が集まるなら」
 ここで職業病を出した千尋だった、この辺り生粋のコンビニ社員だ。
「そこにお店を出したらね」
「人が集まって」
「売り上げ伸びるかも」
 こう言うのだった、そんな話をして一ヶ月程してだった。
 千尋はまたこの大学生と一緒に夜勤に入ったがここでだった。
 夜の二時にだ、不意にだった。客の来店を知らせる音楽が鳴ってだった。二人でレジからその客を見たが。
 何かが明らかに違っていた、大学生はまずその客の服装を見て千尋に囁いた。
「何ですかあのやたら短いミニのワンピースの服」
「あれボディコンよ」
 千尋は大学生に小声で答えた。
「バブルの頃に流行った服らしいわよ」
「そんな頃ですか」
「私が赤ちゃんの頃の服よ」
「大昔じゃないですか」
「そうよ、今あんな服着てる娘なんて」
 それこそと言う千尋だった。
「はじめて見たわ、大阪派手な服の娘多いけれど」
「ミニスカも多いですが」
「それでも今時ボディコンって」
「ないですよね」
「髪型もメイクもね」 
 千尋はそうしたものも見た。
「写真で見るその頃のよ」
「バブル期ですか」
「その時のものよ」
 そちらもというのだ。
「まさか今リアルで見るなんて」
「コスプレとかじゃなくて」
「思わなかったわ、しかもね」
「はい、あのお客さん何か」
 今度は客の雰囲気を見て言う大学生だった。
「おかしいですよ」
「俯いていて少し猫背でお顔も真っ青でね」
「生気ないですね」
「暗い感じね、いや」
「いや?」
「ちょっと見て」
 千尋はその客を見つつ大学生に囁いた。
「あのお客さんの足元」
「足元って」
「よくね」
「えっ・・・・・・」
 大学生も客の足元を見た、するとだった。
 客は靴を履いておらずしかも影がない、彼はその影がないのを見て自分も蒼白になって千尋にあらためて囁いた。
「影、ないですよ」
「わかるわよね」
「見たら映ってないですし」
 コンビニの飲料コーナーのガラスのところに姿がだ。
「つまりは」
「あのお客さんね」
「生きてない人ですね」
「幽霊よ」
 千尋は単刀直入に言った。
「わかるわよね」
「はい、完全に」
「私はじめて見たわよ」
 幽霊、それをというのだ。
「生まれてからね」
「そうですよね、俺も地元の話は聞いてましたけれど」
 福井のそれをだ。
「ただそれでもですよ」
「リアルではよね」
「なかったです」
 自分に囁く千尋に囁き返した、その客に声をかけられない様に声を必死に小さくしてそのうえで話をしている。 
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