世界をめぐる、銀白の翼
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第六章 Perfect Breaker
魔女の終わり 究極の最期
今までのあらすじ
アーカイヴに接続された大聖杯によって、次々に召喚されていたサーヴァント。
しかし、ここからは毛色が変わる。
死者から別人へ。
過去にあった者ではなく、現在存在しながらも今ここにはいない者の召喚。
該当する数は少ないが、強さは比較にならぬものばかり。
究極・クウガ
銀白・蒔風
そして、そのころ三体の魔女は――――
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「行きますよ、サヤカ!!」
「オッケイ、ですッ!!!」
セイバーの打ち出す突風の弾丸。
だが、魔女への攻撃にしてはその威力はあまりにも弱い。
当然である。
それは攻撃のためではなく、小さな少女を打ち出すための発射台だからだ。
「おォォおおおおお!!!」
勇ましい叫び声と共にさやかのマントが翻り、そこからサーベルが次々に現れてくる。
それを休む暇なく手に取っていき、直線上の使い魔を斬り捨てていく。
周囲の使い魔は、この突風によって勝手に吹き飛ぶ。
本当に直線上の数体を風に乗り引き裂いていき、ついに到達する人魚の魔女。
「キャァァアアアアアアア―――――!!!!」
打ち払おうと、下から振り上げられてきた巨大な刃。
さやかはそれをクロスしたサーベルで受け止める。
さやかを覆っていた突風の弾丸は彼女の身体を押し込み、しかし物量差にそこで止まろうとする。
「いっくぞぉ!!!」
と、そこでさやかが身体を捻る。
敵の剣との接地点を軸に、右側に脚を回し込む。
今、突風は彼女のそこを支えている形だ。
ならば、指向性を変えて反転、剣を回り込んでさやかは脚からオクタヴィアへと突っ込んでいく。
「う、りゃぁ!!」
元気のいい声を上げながら、突風に乗ったさやかの蹴りは魔女の腹部へと命中する。
そしてそこを足場にして、さらに上部へと跳躍。顎を蹴り上げそのまま頭上へと飛び上がる。
「これで終わりだよ!!」
そして、振り下ろされるサーベル。
あふれ出た魔力が刃を包み、それが水のようにしなりながら伸び
青い刃となったそれを、さやかは渾身の力で魔女へと振り下ろす。
「ギ――――――」
魔女があげた断末魔はそれだけだった。
脳天から綺麗に左右へ真っ二つにされたオクタヴィアは、下半身をビチビチと撥ねさせながら暴れて消える。
この空間を形作っていた結界がほどけ、魔力が水へと変わり、雨のようになって降り注ぐ。
全身水浸しになるさやかだが、その姿がとても自然に見えた。
見えてくるのは空。
秋に差し掛かるとはいえ、まだ強い日差しならすぐに乾くだろう。
さやかは実に爽快そうに空を見上げ、髪をかき上げてからセイバーに向かって笑顔でVサインを送る。
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結界の中を、それが覆い尽くすのは容易だった。
敵は極小。
魔女というには、あまりにも小さなな体躯。
故に、キャンデロロを相手にしていた観鈴はすぐにその隅々にまで薄い膜を張り巡らせた。
その過程で邪魔をしてくる使い魔は、巴マミの正確な射撃が撃墜する。
その状況下で、よもや翼人が遅れをとるはずもなく
「見つけた!!あそこだよ!」
「わかりました!!」
そう言うと、マミがその手にリボンを握る。その先端にはいつものマスケット銃。
そんなリボンを30。それらを一気に振り回して、全方位に向かって砲撃を開始した。
観鈴に察知されたからか、なりふり構わず一斉に襲い掛かってきていた使い魔は、逆に一匹残らず一斉に駆逐された。
更にリボンの先端からマスケット銃を切り離し、放った先で爆破させる。
その爆発で完全に障害物は吹き飛び、ファンシーなもので詰まっていた結界内は完全な更地となり
「さあ、掴まえたわよ!!」
ようやく姿を現したキャンデロロの身体を、リボンによって拘束するマミ。
両手両足を縛り上げ、大の字に広げて宙へと浮かす。
それを引き裂くキャンデロロだが、更に観鈴の衝撃波が彼女の身体を覆って逃がさない。
「キィィィイイイイイ!!!」
癇癪のような甲高い音で、キャンデロロが怨嗟にも似た声を上げる。
巴マミにとって、その叫びが何を意味するかはなんとなくわかる。
だがそれを受け入れはしない。それは間違っていると知っているからだ。
それの答えは、すでに友人たちが教えてくれているから。
「今だよ!!」
「ティロッ・・・・フィナーレッ!!!」
ガチンッ、ドゥッ!!!
撃鉄が火花を散らし、巨大な砲台となったそこから黄色い魔力が打ち出される。
その一撃はキャンデロロにしてみればどれだけ大きく映ったのだろうか。だがこの魔女にその脅威から逃れるすべなどありはせず―――
「キィァ」
ただそれだけ言って、砲撃が命中した魔女はバラバラになって吹き飛んだ。
まるで、その在り方―――「招待」の行く先を表すかのように、粉微塵に。
「やった!!」
「いえーい!!だね!」
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交差する穂先。
槍と槍の先端がぶつかり合い、微妙な力の違いに擦れてから互いの敵へと伸びていく。
鳥肌の立ちそうな金属の擦れる音がするが、それが彼女の耳に届くことはなかった。
「フィォオオオオオオオオオ!!!」
「は、啼いてろ!!」
槍を掠めながら紙一重で回避した杏子が突き出した槍を本格的に魔女オフィーリアへと届かせようと飛び出していく。
管楽器のような声を上げるオフィーリアは、いまだ馬の上。
杏子が攻撃を当てるには、飛び出していく必要がどうしてもある。
その杏子を、オフィーリアは外した槍を振るって打ち払う。
だが当たらない。当たるはずがない。そこに見えている杏子は、そこにいるが実体のない虚像なのだから――――
「!?」
驚愕する魔女。
だが即座に馬が後ろ脚を振り上げて背後の杏子を蹴り上げる。
しかし
「ハズレだ。間抜け」
ドンッッ!!!
小さな、呟くような声。
それと同時に、馬の身体を鎖が貫いた。
防壁に使う鎖を、地面と水平に、馬を巻き込んで全く同じ組み上げ方をしたのだ。
前後左右に身体を貫かれた馬はその場で崩れ落ち、オフィーリアが着地する。
だが止まらない。舞うように槍を構え、現れた杏子を突き殺そうと刃が襲い掛かる。
一突き。
だがその一つの動作で、この魔女は二、三撃の刺突を繰り出している。
連続した突きが早いのではない。この魔女は槍の穂先を分身させて、三つの攻撃を同時に行っているのだ。
対し、杏子は宙でありながらも即座に槍を多節坤へと変化させ、槍に巻きつけてそれを防ぐ。こうしてしまえば分身しようが関係ない。
それどころか無理矢理一つにまとめた結果、オフィーリアの槍は分身した部分からバキリと砕けてしまう。
「へへ!!ってうぁ!!」
だがこの魔女は武旦の魔女。
たとえ折れようとも、槍はまだ回せる。
まだ先端に杏子の鎖が絡みついたそれを振り回す。
当然、その先の杏子も共に回る。
そしてまるでモーニングスターでも扱うように、杏子の身体を思い切り地面へと叩きつけたのだ。
たとえ彼女でも、この一撃では骨がひしゃげてしまう。
内臓に突き刺さり、少女がすべきではない死に様を晒す。
しかし、確かに叩きつけたはずのそこに彼女の死体はなく
「こっちだ!!」
声に振り返る。
だがすでに遅く、オフィーリアの首に先ほどの鎖璧が、ロックするかのように串刺しにして展開される。
「フィ・・・ォ・・・・」
喉を潰され、声にならない声を漏らす。
だがそれだけでは終わらず、更に胸、腹、両脚、両腕を次々に捕縛されていくオフィーリア。
その計七か所の鎖璧は、一つの鎖で形作られている。
全部がつながっているのだ。そしてその先端は今、魔女の頭上から落ちてきて――――!!!
ズンッッ!!
槍を真下に構えた杏子が、オフィーリアの脳天にそれを投げ、突き刺して足元へと着地。
余りの勢いに、槍は一気に体内を貫き股間から抜け出してくる。
ビクン!と身体を震わせたオフィーリア。
着地した杏子の手には、まだ何かが握られている。
その手に握られているのは、鎖の繋がった槍の石突――――
そして杏子はオフィーリアへと背を向け、それを引いた。
すると、まるで毛糸のセーターをほぐすかのように、オフィーリアの身体を縛っていた鎖璧がほどけていく。
抜けていく鎖に、ブルブルと身体を振るわせるオフィーリア。
縫い止められた順で解放されていく身体。そして、最後に槍が頭から抜け落ちてすべてが終わる。
頭部を形作っていた炎が消え、魔女の身体が燃えカスのようにチリチリと消滅していく。
すると、少し離れてアリスと戦っていたその分身体十数体が、まるで映し出された投影であったかのように消えて行った。
「やりましたね、杏子さん!」
「ふ、ふん・・・あれくらいとーぜんだ!!」
「あらかわいい」
そんなことを言いながら、杏子の頭を撫でるアリス。
魔女三体は撃破される。
そして、また他の強敵たちは――――――
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発動するファイナルフォームライド。
灰色の海岸で、ゴクリと固唾をのむ士とディエンド。
ライダー・クウガの動きは、とりあえず止まった。
持ち上げられているディエンドの身体は解放されて砂の上に落ち、ザブザブと士は重い足取りながらも彼の元へと向かう。
「はぁ・・・ッ。おい、どうだ?」
「ゲホッ・・・さあ?」
肩で呼吸しながら聞く士と、彼に近寄りながら喉を抑えてよろよろと返すディエンド。
ディエンドも変身を解除し、腕を上げたまま止まるクウガを眺めている。
ファイナルフォームライドは間違いなく発動している。
だと言うのに、このクウガは一切変形しない。
もしかして―――――効いていないというのか。
「なあ士」
「なんだ、海東」
と、何を思いついたのか海東が口を開く。
何だか嫌な予感がしながらも、視線をクウガから逸らさずに士が聞き返す。
「あれを確かめてこい、なんて話ならお断りだぜ」
「いや、そうじゃなくてね・・・・あれ、古代の戦士クウガ・・・なんだよね?」
「? だからどうした?」
「イヤぁ・・・・つまりあれ・・・・僕らの言う“仮面ライダー”クウガにあてはまるのかなぁ・・・って」
「・・・・おいまさか」
仮面ライダーである以上、このライドカードシステムの凶悪な強制力が働く。
しかし、このクウガを仮面ライダーと言えるのか。そう海東は言うのだ。
確かにこのクウガは後の「仮面ライダークウガ」の原点と言える存在だ。
だが仮面ライダークウガがあくまでも「五代雄介」から始まるものである以上、このクウガはまだ「古代リントの戦士」であって「仮面ライダー」ではない。
「おいおい・・・じゃあこいつ」
「ファイナルフォームライドなんて聞いてないのかも・・・!!」
と、戦慄する二人だが、その目の前でクウガが動いた。
ビクゥッ!!と下がる二人だが、その目の前でクウガはアルティメットクウガゴウラムへと見事にファイナルフォームライドした。
ゥウン・・・と、鈍い起動音のようなものを鳴らしながらこちらに尻を向けて滞空していた。
それを見てハァッ!と息を吐きだし、やっと呼吸らしい呼吸を取り戻す二人。
「は・・・驚かすな、海東!!この俺の寿命がかなり縮んだぞ!」
「僕だってそうさ。でもまあ」
杞憂に終わったね。
そんなことを言おうとした海東。
だが、それより早く士の視線に気づき、同時にクウガへと振り返る。
クウガゴウラムは・・・・こちらに尻を向けていたはずのそれは、こちらに向かってその顎を向けていた。
ゆっくりと回転していたのだろう。
だから気づかなかったし、その動作が恐ろしい。
それを見て
「おいまさか」
「もっとやばかったりする?」
二人の予感。
その最悪の予感に青ざめる。そして今度は、青ざめ損にはならなかった。
ゴゥッ!!
「うぉ!!」
「クッ!!」
静から動へ。
一気に加速したアルティメットクウガゴウラムは、二人をそれぞれのハサミで突き刺そうと猛烈な勢いでこちらへと突っ込んできたのだ。
咄嗟に転がり、左右に別れてそれを回避する二人。
全身ずぶ濡れだが、かまうものか。そうでなければ、海水どころか自分の血でずぶ濡れになるところだったのだから。
「暴走か!?変身といたからか!?」
「いや違うと思うよ・・・多分、あれはあれの意思で動いているんだ!!」
標的を外し、海上を滑る様に沖へと進むゴウラム。
沖、と言えるところまで勢い余って突っ込んでしまうあたり、こいつのスピードがわかるだろう。
海上にはゴウラムの通過した跡に白いラインが出来て波に消える。
ヴゥン・・・と遠くで音がすると、勢いと止めたところでゆっくりと反転して来る。
反転した地点では、まるで海上でヘリコプターが滞空してる時のような円が出来上がっていた。
海東が言っていたことは、半分が正解だ。
このクウガは仮面ライダー以前の存在だ。
故に、ファイナルフォームライドは効かない。その推測は正しいが、大ショッカーの技術はその無茶を実行できてしまっていた。
だがそれは「効く」と「効かない」が混在した状態であり、クウガが「なにこれ?」と思えば効かないし、「やばい」とでも思えば効く。
ようはクウガがどう思うかどうかだった。
では、今回はどうだったのか。
実は――――恐ろしいことに、クウガは自分の身に何が起こるかを、ハッキリと自覚していたのだ。
重ねて言うが、闇に堕ちたクウガは暴走するだけのバーサーカーではない。
無論、その側面はあるが「ただ暴れまり破壊する」のではなく「見境なく戦い続け、それを楽しむ悪魔」と言った方が近いか。
つまり、楽しむためには我慢もするし、選択もする、ということ。
考えなしの暴走特急ではないのだ。
そして、クウガは考えた。
あのカードの発動は避け続けてきたが、さて発動してしまった。どうやらこれは自分の身体を武器へと変形させるものらしい。これはいい。戦いの選択肢が増えると言う物。
問題は、果たしてその先で自分の意思で動くことは可能か。
そして考え、あの二人の力量からして――――大丈夫だと判断したのだ。
あの停止時間は、ただ単にその思考のためだった。
「はは、マズイね。僕らはあれの戦闘の幅を広げ与えてしまったみたいだ」
「あー、くっそ。ただえさえ厄介だってのに」
そう言いながら、ザバァ!と海から顔を上げて立ち上がる二人。
足元はまだ海に浸かっているが、浜辺に向かったら背中からグサリだろう。
50メートルほど沖のゴウラムは、まるで自分の力を試すかのように様々な能力を発揮していた。
海面に炎を上げ、バチバチと雷を動体から発して海に打ち付け、身体を傾経て飛行すると海がスパァ、と30センチほどの深さできれいに斬れる。
どうやら、いつも使える能力は以前として使用可能のようだ。
そしてゆらりとこちらへと向き直り、海面を爆発させて一気にトップスピードでこちらへと突っ込んでくる!!
「「舐めるな!!」」
二人が即座にケータッチを取り出す。
そのボタンを押し、二人同時にコンプリートフォームへと変身を完了する。
《《FINAL ATTACK RIDE―――》》
《DE DE DE DECADE!!!》
《DI DI DI DIEND!!!》
強化された状態で放たれるファイナルフォームライド。
展開されたカードが接近するゴウラムへと向かい、そこに向かって砲撃と砲弾が飛び出していく。
先にホログラムカードへと到達したゴウラムはそれを次々に砕きながら直進し、そして二つの攻撃に到達し――――
ドォンッッ―――――ゴォッ!!
―――ながらもそれすら砕いてさらに突き進んできた。
流石に直撃だ。浮いているゴウラムは衝撃に揺らぐが、それでも勢いに微塵も衰えはなく。標的を見失うこともなく、一直線に向かってくる。
「クソッ!!」
再び転がって回避する二人。
だが今度は、バックル部分のケータッチに触れながら。
どれを押したかなどと聞くのは野暮だ。二人ともそんな暇はない。
どのライダーを押したかなど、掌で撫で、全部のボタンを押したに決まっている。
《KUUGA》《AGITO》《RYUKI》《BLADE》《KABUTO》《KIVA》《FAIZ》《HIBIKI》《DEN-O》
《G4》《RYUGA》《ORGA》《KABUKI》《ARC》《GLAIVE》《CAUCASUS》《ETERNAL》
《《KAMEN RIDE―――》》
「行くぞ!!」
最後の音声は、ディケイドの声に遮られる。
同時に、それ以上の声で更に掻き消されてしまった。
召喚されたのは、それぞれが最強フォームのライダーたち。
彼等は次々に駆けだしていくが、回転しながら突っ込んでくるクウガゴウラムに弾き飛ばされ火花を散らす。
だが十分だ。その隙に彼等は、手元に残した三人のライダーをファイナルフォームライドさせた。
《FINAL FOAM RIDE―――FA FA FA FAIZ!》
《―――RYU RYU RYU RYUKI!》
《―――KI KI KI KIVA!》
ガシュウ!!という音と共に変形した三体は、それぞれがディケイド、ディエンドが構える。
さらに後方からリュウキドラグレッダーにリュウガのストライクベント、G4のギガントミサイルまでもが並び立ち、それらを一斉に発射する――――
ゴウラムを囲んでいたライダーたちは、即座にその場から離脱した。
その直後、クウガゴウラムが回避する相まもなく撃ち込まれていく砲撃、炎弾、砲弾。
もはやそれは攻撃というのには生易しく、爆撃だと言うのがもっとも正しい。
ゴウラム状態の装甲がいくら硬いとはいえ、ファイズ、龍騎、キバも最強フォームでのフォームライドだ。
その威力は通常のものとは比べ物にならない上、それに匹敵するだけの威力を持ったリュウガとG4の攻撃まである。
襲いくる爆撃の中、耐久に限界が来たのかクウガがファイナルフォームライドを解除してその腕でミサイルを掴んで後ろへ抛り、砲撃を殴り飛ばして防衛に入る。
だが圧倒的な砲撃の前には、いくらアルティメットクウガと言えども上体を撃たれ、脚を弾かれ、身体が砂浜を後退させられていく。
その肉体は砕けないものの、確実にダメージは通っている。
我々でいうなれば、鉄球でゴツゴツと殴られている様なものだ。貫通はしないが、その圧倒的物量にクウガは為す術も――――
バガァッッ!!
だが、クウガは終わらなかった。
全身から炎を吹き出し、砲撃が自身へと到達する前に燃やす尽くして消滅させてきたのだ。
だがそのタイミングを待っていたと言わんばかりに、ディケイドとディエンドはファイナルアタックライドを発動させていた。
発動させたカードは、ディケイドがカブト、アギト、電王、キバ。
そしてディエンドがリュウガ、コーカサス、エターナル、アーク。
発動させるのは、皆一様にライダーキック。
その先頭を行くのはカブトとリュウガだ。
リュウガの炎はクウガの発する炎を巻き込み、ハイパーカブトに至ってはその炎そのものを別時空へと消し去っている。
そして先ほどの爆撃以上の威力を纏った計8体のライダーによるキックがクウガへと到達する。
クウガはというと、リュウガを右裏拳で弾き、カブトを同じように左裏拳で吹き飛ばす。
だが右拳はリュウガの炎で縛られ、左腕はグシャリと雑巾絞りのようにひしゃげてしまった。
そうなれば後は喰らうだけだが、キバのダークネスエンペラーブレイクを蹴り上げ砕き、コーカサスのハイパーキックを、ショルダーからの斬撃波で切り刻んで消滅させるあたりが、やはり究極の闇。
更には右拳をエターナルへと突き伸ばす。
リュウガの炎で固められた拳は、恐らく衝撃に耐えられず砕け散るだろう。これは硬化させるものではなく、砕きやすくするための侵食の炎。
だがその右拳の粉砕をもいとわず放つあたり、本格的に生物兵器らしくなってきた。
しかし、仮面ライダーエターナルの放ったエターナルレクイエムを撃墜することはかなわない。
エターナルは宙で身を翻し、その拳を回避してそのマキシマムドライブを命中させたのだ。
そして、そこに続いてシャイニングライダーキック、超ボイスターキックが叩き込まれ、そして最後にはアークの巨大な体躯が突っ込んでいく。
キックを放ち終わったライダーたちはそのまま消えていくが、一発限りだからこそ高威力だ。
クウガの身体が易々と吹き飛び、両肩の装甲と左頭部の角が破損しているあたり、そのすさまじさが伺える。
しかし仰け反っていた上半身をグラリと起こし、クウガがひしゃげているにもかかわらず左掌をこちらへと向ける。
だがそれをグレイブがカードを発動、必殺技を放ち、重力の力を加えて叩き斬ろうと剣を降ろす。
そのグレイブへと開いた右掌が向けられ、彼の身体が爆散させられる。
クウガはグレイブを見もしない。
だがそれが失敗だ。伸ばされた左上腕を貫き、更にそちらを向いたままだった右掌を、ブレイラウザーに貫かれてしまったのだから。
左腕と右掌を縫いとめられ、クウガの動きが一瞬止まる。
直後、グレイブの背後から跳び上がったキングフォームのブレイドがキングラウザーにカードを装填し、ロイヤルストレートフラッシュでその腕を切り落とす。
「ゴォォォオォオオオおオオオオオオ!!」
流石に両腕を落され、クウガがその激痛に雄叫びを上げる。
反撃しようにも、それを追えるとブレイドは役目を終えてその場から消えてしまった。
よってクウガの怒りが込められた、命中すればそのブレイドをバラバラにできる程の蹴りは外れ、しかもさらなる隙を生み出してしまう。
《Exceed Charge》
無機質な機械音声が響き、オーガストラッシュが発動。
縦に構えられたそれをオーガがまっすぐにクウガへと突き出し、二又の先端の内、上の一本がクウガの胸部を貫いた。もはやこれだけで致命的。だと言うのに、クウガは暴れるのをやめようとしない。
とはいえ、いくら暴れようとも盾に突き出されたオーガストラッシュの先端は、上が胸を貫き、下が股の間を通過しているため逃れようとも逃れられない。
そしてそのまま上へと持ち上げられ、クウガが無防備にさらされたところに、歌舞鬼と装甲響鬼の音撃鼓が左右からセットされた。
さらに身動きの取れなくなるクウガ。
それへと向かって飛び上がっていった二体の音撃戦士は、空中で交差する瞬間にその身の総てを振り絞った渾身の一撃を叩き込む。
音撃鼓から発せられた音撃は左右から響き渡り、反響して何倍にも威力を増して彼の体内を破壊する。
役目を終え、三体のライダーがまた消える。
地面に落ちたクウガは吐血し、両腕を失い、足がふらつき、しかしそれでも今だその眼光は標的を睨み付けていた。
そしてこの状態でも、立ち上がる。
なんという戦闘へと執念。まるで死ぬのならば、相手とぶつかり合ったその瞬間だと言わんばかりの妄執。闘争という行為への、ある種の妄信。
そして、この肉体はさらに動く。
地面に伏したクウガは、左足で地面を蹴りだし、頭から飛び出していく。
そして宙で身体を起こし、左足で着地すると同時に右足の蹴りを放つ。右足である理由は、こちらがの方がまだ無事な足だから―――ではなく、単純にこちらの方が威力があるからだ。
そしてその先には、自らの同じ――――否、少しだけ違った、また別の究極の姿が、まったく同じ攻撃を放ってきていた。
ドォンッッ!!
凄まじい音がして、アルティメットクウガとライジングアルティメットクウガが激突する。
両者とも、放つは右の蹴り。
左足を地につけ、押し込むような右足の蹴りだ。
その瞬間に電火が空に向かって走り、パリィ!と円を描いて消失する。
同時に――――力負けをしたアルティメットクウガが、右足から血肉を噴出させて吹き飛ばされる。
砂浜を黒く地で染めながら転がるクウガ。
もはや死に体と言うその身体に、止めだと言わんばかりにディケイドとディエンドが最後の攻撃を放つ。
展開されるホログラムカード。
ディケイドもディエンドも、放つ技は同じ。
そのホログラムカードを通過するごとにライダーキックの威力は増し、そしてもはやクウガにそれを回避するだけの術はなく―――――
ゴゥッ―――――――!!!!
命中し、爆発する。
砂浜に大きなクレーターを作り、ディケイドとディエンドが着地する。
と、同時に身体を支えきれずにズシャリとその場に倒れ込んでしまう。
そして、意識を失った。
相手はひたすらに圧倒的だった。
その勝利の代償は、この二人の脱落。
それが果たして、この戦いの中で大きいのか小さいのか。
それは誰にもわからない。
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「オフィナがやられ・・・・クウガも砕け。残る召喚候補は、あと十騎」
その召喚さえすれば、自分の求めていた「あれ」を召喚することができる。
その為のデータが集まる。
それは自分の「完全」を照明する為の存在。
そいつは世界を破壊する。そしてその後そいつを倒し、自分は人類を越える。
その「王」は、人類には決して打倒し得ない。
だからこそ、自分が挑むだけの価値がある。
「さて、いよいよ大詰めに近い。お前達、頼んだぜ」
召喚されるサーヴァント。
セイバー、ブレイカー、ランサー、キャスター。そして、もう一体ブレイカー。
「まあとりあえず・・・わかっていたとはいえオフィナを失ったのは大きい。あの野郎をブチのめしてくれよ?」
「ふふ。久々の人斬り・・・斬り応えのあるクズだと良いね・・・」
「あらあら。楽しいことになりそうねェ」
「何もかも・・・壊すんだ・・・」
「グルルルルル―――――」
命じる、というほど強制のないセルトマンの言葉に、四騎のサーヴァントが外へと赴く。
彼の言葉からして、標的は「EARTH」副局長ほかならない。
そして、残る一騎――――ブレイカーは
「勝手にして。私の標的は変わらないから」
そういって、四体とは別の行動をとり始める。
それに対し、セルトマンは面白そうに笑う。
「一向に構わない。俺の目的から外れてないし、何より見ていて面白そうだしな」
「・・・最初から結末なんてわかってるくせに」
「そうだ。だがお前も、他のメディア体で発表された作品って言うのは楽しみだろう?」
「反吐が出るけど、例えだけは納得だわ」
ありがとう、と、嫌味なセリフに、皮肉笑いで返してセルトマンがロビーの椅子に腰を掛ける。
上階まで行かないのは、すぐにまた降りることになるからか。
新たにサーヴァントが出陣する。
彼等は、一体何者なのだろうか?
to be continued
後書き
いやはや、とりあえず一気に終わらせてみましたサーヴァント四騎!!
魔女三体はいきなりやられましたねー
蒔風
「というかアシストにセイバーと観鈴とアリスだろ?そりゃあ勝てるだろ」
マミ
「加えて、あれは昔の私たち」
杏子
「絶望に負けた奴に、負けるわけにはいかねーからな」
さやか
「ええそりゃそーよ。あんな恥ずかしいの、速攻で片づけるにきまってるもんね!」
マミ・杏子
「「え」」
さやか
「え?」
そうですよねー
自分の中身さらけ出してましたもんねー、さやかさんは
二人
「そこ、くわしく」
さやか
「いやー!!」
小劇場
書こうかと思ったけど、空気がぶっ壊れるからやめた
グレイブがクウガに襲い掛かるところで、見向きもしないでクウガが炎でバーン!!
海東
「兄さァーーーーーーんッッ!!!」
士
「グぉ、うっせェ!!!(ゲシッ)」
海東
「イタイッ!?」
そしてブレイドがその背後から飛び出して
海東
「に、兄さんを足蹴にしたァ!?」
士
「いいかげんにしろ。そもそもあれ、お前の兄さん設定のグレイブじゃねーだろ」
VSクウガは書いてて楽しかった。
拮抗する戦いよりも、こうやってボコボコにする方が楽しい。
ボロボロの身体に、直接コンプリート変身はきつかったのか。
それとも、あれだけのライダーを使役するのに力尽きたのか。
二人は仲良くダウン。
これでほとんどのライダーは脱落したかな?
ショウ
「あとは電王とキバだな」
うむうむ。
あの二人、まだ東京に置き去られちゃってるからね。もう到着するでしょう。
そして、最後の召喚されたサーヴァントは一体!?
ショウ
「次回。俺の前に現れたこいつらは・・・・まさか!?」
ではまた次回
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