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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第六章 Perfect Breaker
  強敵跋扈


今までのあらすじ


新たに召喚されたサーヴァント。
その戦いは各々が佳境へと入りつつある。


三つの魔女戦
一つの究極
天空でぶつかり合う二つの最強


その中で、ついに攻撃の完全・オフィナが暴走状態へと陥った。


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「ガァッ!!」

『な、ゴゥッ!!!』

吼えるオフィナ。
大地に倒れ伏すハクオロ。

決して滅びぬはずの肉体が今、次々に打ち砕かれていっている。


だがそのすべてが直撃したわけではない。
むしろ、その全ては回避しているのだ。出来ているのだ。

だと言うのに


(掠りもしないほどに回避しているのに、あの体が動くだけで―――――)

『ガぁォッ!?』


ブンッ!!と、オフィナから向けられる正拳突き。
それを回避することはあまりにも容易だ。そもそも、拳の範囲にハクオロはいない。


しかし





ドンッッ!!!

『ゲは・・・・』

その攻撃は、ハクオロの胴を叩く。
再生させるも、相手の攻撃力が高すぎる。


オフィナは腹を押さえてバックステップで下がるハクオロに、足払いの追撃を放った。
それも何とか回避するハクオロだが、振るった後の風圧にひっくり返されてしまう。

仰向けに倒れるハクオロ。
痛みは切れているが、精神的な摩耗が激しすぎる。少しでも力を抜けば、この肉体を維持できなく――――


「シャァッ!!!」

『イっ・・・・!!!』

だがその思考をする余裕もない。
倒れたハクオロが次に見たのは、ジャンプして自分へと肘を向けながら落下してくるオフィナだったのだから。

このままでは直撃だ。ハクオロの顔面はつぶされ、頭蓋は砕け、脳漿が飛び散るだろう。
無論、頭部の損壊もこの身であるならば問題はないはず。だが今の状態では、無事に再生されるかどうか。


「ッ!!」

そこで、ハクオロは力を抜く。
痛みが戻り、身体をさらに激痛が走る事になるが、ウィツァルネミテアの状態を解除したのだ。

身体は縮み、さっきまで頭部があったところがただの地面になる。


だが、ハクオロは即座に身体を丸めて出来るだけ防御の体勢をとった。
全身が軋むように痛み、この痛みでも死ねそうなものだが、それでも無事だったのはきっとそれよりも大きな脅威があるからだろう。



そうしているうちに、オフィナが地面へと到達した。

オフィナの肘打ちは一瞬にして地面をめくり上げていく。
その一撃の余りの威力に、中心部に近い地面は吹き飛ぶどころかより中心へと深く深くもぐりこんでいく。めくり上がったのは、周囲の地面だ。

中心部に集められたそれらは凄まじい一撃による圧縮を受け、さらに発熱して爆発する。

発せられたエネルギーは地面を真っ赤に溶かして煮え滾らせ、ドロリと周囲に流れていった。
煙はもうもうと巻き上がり、一定まで上がるとまるでキノコのような形を作る。


「ガッ・・・・は・・・・」

その爆発の中、ハクオロは何とか生きていた。
全身ボロボロだが、まだ何とか生きている。

そのハクオロのもとに、近づく者が一人。


「は・・・なかなかしぶてぇじゃねえか」

「ハッ、ハッ、ハッ・・・グッ・・・ぉ」

短い単発の荒い呼吸をしながら、ハクオロが何かを言おうとするが喉がうまく機能しない。かすれたうめき声だけが漏れ出てくる。
オフィナは時間もないと言うのに笑うだけの余裕を見せ、そして称賛しながらハクオロへと手を伸ばす。


「どうやら、巻き添えはお前ひとりみたいだな・・・あんた、流石だぜ」

そういって腕が伸びて行く。
だがその腕は三体の巨躯の襲撃によって、別の目的に動き出す。


「ガルァッッ!!」

「キュロォァッッ!!」

「フシュル・・・!!!」


襲い掛かってくる怪物。
だがそれらをオフィナは全く問題なくあしらった。


最初に来た上空からの迦楼羅はアッパーを打ち上げただけで、届きもしない上空で撃ち落とされる。
次のサラマンドラは、いきなり二足歩行の断罪モード。だがそれもアッパーからの流れる動きで放つ後ろ回し蹴りで吹き飛んだ。

最後のケルベロスは、噛みついてきたその牙の一つを掴んで止めた。
噛みつき腕をそぎ落とそうとするケルベロスだが、牙を折られて怯んだところに砲撃を一発喰らう。土を握って投げただけだが、この男のそれがどれだけの威力かはすでに知っているだろう。暴走状態なら、それ以上だ。
口からそれを投げ込まれたケルベロスは、身体に穴が開いてそのまま倒れ伏す。


だがその隙にその怪物の主はハクオロを回収することに成功していた。


「ショウ・・・か」

「しゃべんな。死ぬぞ」

ハクオロに肩を貸す形で抱え、支えながらオフィナを睨み付ける。


「サンキューだ。よくあいつを暴走させたな」

そう言っていると、あらかじめ連絡しておいたフェイトとティアナがやってきた。ショウはハクオロを彼女らに託した。




その間。オフィナもまた、近くに寄ってきたフォンと話をしている。

「オフィナ・・・・」

「どうしたい、昔みたいに。いつもの明るいクンはどこいった?」

「あんたまで消えるのか・・・・?やっと見つけたのに、コールも加々宮もアライアもいなくなって、あんたまで消えたらどうするんだ」



自分は人とのコミュニケーションが苦手だ。

両親は幼いころに死んだ。
引き取ってくれた親戚も、かなり遠縁で自分のことを邪険にしてくる。

人との間隔、付き合い方が全く分からないまま、このフォンという少年は育っていった。

誰も自分のことをわかってくれない。わかろうとしてくれない。
自分も、他の人のことがわからない。わかろうとしても、拒絶される。否定される。

一人だった。家族なんていない。
引き取ってくれた親戚は、ただ最低限の生活費(それも支援金だか何だかの3分の1くらいしかない)と、住むところを提供しているだけだと考えていたし、事実そう言われた。


世界には自分一人だ。
所詮、血のつながりがあってもそんなのは儚い物。

みんなひとりだし、いざという時に助けてくれるはずがない。

そう、考えていた。



だが、彼等に出会った。

アーヴ・セルトマン
自分に力をくれた。見極の完全を。そのおかげで、人との接し方を知った。

加々宮
粗暴だが、頼りになる兄貴と言った感じ。

コール
おチャラけた奴だが、彼のおかげでかなり人間不信がなくなった。

アライア
自分にいろんなことを教えてくれた。先輩、と呼ぶなら彼だろう。

オフィナ
年長者である彼は、自分たちを見守っていた(気がする)
歳も近く、対等の立場だったが、父親のような感じがした。



「あんたは・・・あんたたちは僕が手に入れた家族だ。いなくなったら、困る」

「はっはっはっは!!なに、お前は一人じゃねぇ。あの人がいる。まあ、あの人は悪だ。そりゃぁ悪い人だ。だがな、俺たちはそれを踏まえてなお、あの人に惚れた。自分になかったものをくれた。その一番スッゲェのをくれた」

「・・・・・」

「お前が来たとき、俺は思ったさ。こんな軟弱そうな奴が一体俺たちの戦力にホントになるのか?とかな。だが見てみろ。お前は最後まで残ってる。暴走もしてねぇ。一番すげえの、実はお前だったりするんだぜ?」

「オフィナ」

「俺らって言うお前の「家族」がいなくなり、最後の一人のあの人にまだついていくかは・・・まあお前の自由意思だ。実は俺らもそうだった。だが、これだけは言える。お前は、俺らの中で一番すげぇ。それは自信を持っていい。お前は、俺らの自慢の弟だったさ」

「それは・・・・・・クッ!!!」

いま失われるものを目の前にしたフォンが、そこで目を見開く。
それを見て、オフィナが苦笑いする。

「おー、解るか。そろそろ限界だ。暴走もクライマックスだな―――――お前、死のうなんて考えんなよ?」

「・・・・・わかった」

「よっしゃ。じゃーここから逃げろ。あいつは俺が」

そういって、ハクオロを託したショウへとオフィナが向く。
そのショウが掌を振るうと、剣に戻ってしまい飛ばされていた三本が集まってくる。



「覚悟はできたか。攻撃の完全よ」

「暴走がわかって向かってくるたぁ、考えていた以上の命知らずだな。喰世者」

向き合う二人。
駆け出し、そして――――――




そして数秒後に、オフィナは暴走を起こして消えた。
その強大なパワーが時空を歪め、ブラックホールのような空間を生み出したのだ。

ブラックホールはオフィナ自身をも吸い込み、その肉体をバラバラに砕く。
だがその瞬間にも、オフィナは実に楽しそうに笑っていた。


他の所でこれを発動されぬよう立ちふさがったショウは、真っ向からそれに向かって剣を振り下ろす。

ショウの一撃もまた、圧倒的。
彼の体内には世界一つ分丸々還元したエネルギーがある。それをすべて世界を歪ませる力に変換してブラックホールを叩き斬る。


結果、ぶつかり合った力は反応しあい、しかし思惑通りに相殺されることなく



ズッ、ズン・・・・

「ショウ!?」

「フェイトさん、あれ!!」

ハクオロを抱えた二人が振り返ると、真っ黒な爆発が起こっていた。
ドーム状の爆発が、漆黒のエネルギーで膨れ上がる。

果たして、ショウは




------------------------------------------------------------


「ごゥッ!?」

「翼刀!!!」

唸る剛拳。
曲がる身体。


横っ腹にクウガの一撃を喰らった翼刀の身体が飛ぶ。
真横に回り込まれ、クウガにとっては正面からの攻撃だ。横っ腹を地苦肉の字に曲がり、その身体は容易に跳ねる。


ディケイド、ディエンドの二人は思わず翼刀の名を叫ぶが、思ったよりも翼刀の吹っ飛んだ距離が短い。

すると、ザザッ!と翼刀は脚でしっかり着地してみせているではないか。そしてそのまま、ゲホッと息を吐き出してから尚、翼刀はクウガを見据えた。



あの瞬間、翼刀は防御のため拳の当たる部位に刃を展開させたのだ。
クウガを突き刺す為、ではなく、面を使って盾にするために。

その刃は乱雑に組まれたように見えるものの、噛みあう刃はギシィ!と金属の擦れる音を立ててながらも摩擦で止まる。

それによって、あの強大な拳の一撃を防ぐことができたのだ。


「まるで一ページずつかみ合わせた雑誌みたいだな・・・・」

「もう彼一人でいいんじゃないかな」

(んなこたーないっての)


二人の気の抜ける会話を聞きながら、翼刀は内心舌打ちする。
そんな会話をしている二人に――――ではなく


こうして翼刀はクウガを相手にしているものの、この二人が何もしようとしていないわけではない。
一瞬でも隙が出来れば、こいつをアルティメットクウガゴウラムにファイナルフォームライドさせて無力化させるつもりなのだから。


しかし、恐ろしきかなクウガの闘争本能。
翼刀が相手にできるようになったとはいえ、その実力はいまだあの二人の方へと気を配るほどの余裕がある。

それでも二人を潰しに行かないのは「戦いを求める生物兵器」という破壊、戦闘を楽しむと言う闇に堕ちたからか。



(確かに、こいつの動きはだんだんわかってきた。俺でも何とか相手にはできる――――)

能力は途方もないし、基本スペックだって怪物だ。
だが、それがどのようなものかわかれば翼刀には対処の仕様があった。


肩などの突起から発せられる斬撃は、こちらもそれ相応の刃をばら撒けばいい。斬られはするが数はこちらが上だ。まだ防げる。
パイロキネシスは掌が向いた瞬間に渡航力で炎を何処かへ流すことができる。

格闘戦に至っては言うまでもない。
こと、それに関して翼刀が遅れをとることはもはやなく、真正面から受けるようなことは決してないからだ。

(まあ受けてもさっきみたいに受ければなんとかなることが分かった。けど)


だが、決定打にはならない。

パイロキネシスを流せると言ってもやはり発生した瞬間の炎は喰らうし、斬撃波も刃を越える数を出されたら防ぎきれない。
更に格闘戦においていえば、躱せる、防げるがこちらの攻撃が効くと言うことはない。


さらには、先の戦いのこともある。


(ちっくしょ・・・・腕が鈍くなってきたか)

先刻の戦い。
鉄翔剣との戦いで放った星拳「星の息吹」の反動が、いまさら鈍くやってきたのだ。

戦いに支障があるかないかと問われれば、一応無いと言えるレベル。
だが、今このクウガとの戦いはそのわずかな支障すら命取りだ。しかも、このような相手の隙を探すための戦いは長期になりやすい。


如何に修得した翼刀と言え、星の重量を受けて何ともないわけがない。
通常ならば全く問題のない反動だが、このような強敵との戦いが続くなど、普通思い至りもしないだろう。



何回か目の攻撃を回避し、翼刀がバックステップで下がる。
それをクウガは追うこともなく、静かにこちらを見据えて待つ。


「くっそ、あいつ舐めてやがる・・・・」

「おい翼刀」

「なんすか?」


汗を流しながらディケイドの言葉に反応する翼刀。
その翼刀に肩を駆け、小声で話しかける。


「さっきあっちで爆発があった」

「え!?」

その爆発は暴走したオフィナとショウのぶつかり合ったものだが、翼刀はクウガの相手をしていて気づかなかったらしい。
音はともかく、振動と規模は大きかったのだが、それを気づかせないクウガだった、ということか。


「しかもこのままだとヤバい。「EARTH」が巻き添えになるかもしれないからね」

そういって、ディエンドが「EARTH」(仮)へと視線を移す。


今戦っているここは、最初からあまり変わらず「EARTH」(仮)の近くだ。もしこれ以上戦いが長引けば、無事でいられるかわからない。



「翼刀、お前は爆発の方調べてこい」

「あとは僕らがやるから、さ」

「は!?」


二人の言葉に驚く翼刀。
こういってはなんだが、二人ではあのクウガに勝てるとは思えない。

三人がかりでもまだ、カードを装填、発動させるだけの隙も出来ないのだから。



「問題ねぇよ。俺達にはこれがある」

「それに、あいつの動きはもう見切ったしね。君のおかげで」

これ、と言って取り出したのは二人のケータッチ。
そしてディエンドは尊大そうに翼刀の肩を叩く。


「あいつは俺たちが連れていく。どっかの海岸にでもな」

「君も早くいきたまえ」

「っていわれてもな・・・・・」

「腕、ヤバいんだろ」

「・・・バレました?」

「大したことないみたいだが、あいつ相手にはもう無理だろ」

「これ以上続けるにしろなんにしろ、いったん引いてその剣で反動分は回復しとくべきだね」

「あー・・・・おっけ、わかりました。じゃあこの場はお任せしますよ」


降参、負けましたよ、というように両手を上げて苦笑いをする翼刀。
そしてジリジリと下がりながら、一気に爆発のあった「EARTH」ビルの方へと駆け出した。




「さて、テメェはいったん」

「僕らと来てもらおうか!!」

駆けだした翼刀を追って、クウガが三人に向かって突っ込んできた。
しかしクウガにしてみれば見えているのは翼刀のみ。この二人は撥ね飛ばせばいい程度に考えている。


だがディケイドとディエンドの背後に、突如として灰色のオーロラが現れる。
クウガは止まりきれず、そのままそこに突っ込み二人も後を追う。

そして、オーロラが消えて三人はここから消えた。







その行き先は、二人の言うとおり海岸だ。
黒い砂浜で、少し向こうには波の打ち付ける岩場がある。




「さて、行くぞ。海東!!」

「それ、僕が言おうとしたんだけど?」

指図するな、という感じでそう反論する海東。


同時にディケイドはカードを装填。
クウガのパイロキネシスが向けられるが、ディケイドは発動させたクロックアップですでにそこにはいない。

そうなると、クウガには消えたようにしか見えない。
だがそれでも察知はしているのか、その方向へと腕を伸ばしディケイドの首根っこを掴まえた。

「見切ったって言ったろ!!」

《ATTACK RIDE―――INVISIBLE》

だがその腕が届くより早く、ディケイドがインビジブルのカードで姿を消した。不可視ではなく透過するカードの効力に、クウガも一瞬戸惑った。



その隙にディエンドがコンプリートフォームへと移ろうとするが、それを即座に移動したクウガが首を掴み上げる。

そして同時に過剰な封印エネルギーが流し込まれ、ディエンドの全身から火花が爆ぜ散った。
ダラリと落ちるディエンドの腕。だが、すでに装填は成されている。


《FINAL FOAM RIDE――――》

「海東!!」

「グッ・・・・」


だが、ディエンドライバーの引き金を引くだけの力がないのだ。
ダメージもあるが、それ以上に封印エネルギーによって力を発揮できないというのもある。

姿を現し、クウガに向かってハイキックを当てるディケイド。
そのだが効くはずもなく、空いている左腕で殴り飛ばされ変身解除。士の身体が海に落ちる。


そこから立ちあがろうとする士だが、グラグラと一歩二歩進んでまた海に顔から突っ込んでしまう。


「ふふ・・・・」

だが、それを見てディエンドは力なく笑った。
見ると、彼の手からディエンドライバーが消えている。

ハッとしてクウガが海に倒れる士を見ると、俯せから上半身を起こした士が、これを見ろ、と言わんばかりにディエンドライバーを構えていた。


「ガァア!!」

もう遅い。
如何な能力であろうとも、引き金を引く方が早い


「ちょっとくすぐったいぞ!!!」

そして、引かれた。

《―――KU KU KU KUUGA!!!》



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「舜くんが!?」

「ど、どうしたのシャマルさん・・・・って、まさか!?」

「舜くん、いないのよ!!少し治ったと思ったらすぐにこれなんだから!!!」

「「「あのバカ・・・・」」」




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「はぁ、はぁ・・・・っと、確か爆発はこっちだったかなぁ・・・・」

「おい」

「ッ!?」


爆発があったとされる位置へと走る翼刀。

その位置は、自分たちが戦言っていた場所から「EARTH」を見てちょうど右側だったらしい。
途中すれ違ったフェイトから正確な位置を聞き、ショウがいるとい聞いて急いできたのだ。





彼のいる場所や、爆発のあった場所を簡単に確認しておくと、こうだ。

「EARTH」(仮)が「EARTH」の正面の延長線上にあり、翼刀はそこからまっすぐビルへと向かった。

ショウが最初に戦っていたのは「EARTH」ビル正面。そこで一度、セルトマンに負けた。

そしてハクオロたちは、戦っているうちに右側(「EARTH」ビルから見ると左側)に移ったのだ。
それを追ってショウも移動した、ということである。


だがここで勘違いが生まれた。
時間もなく急いでいたため、フェイトから右側しか聞いていなかった翼刀は、「EARTH」ビルから見て右側へと向かって行ってしまったのだ。


つまり、反対側である。




「しまった!もしかして左右間違えたか!?」

今更である。
すでに翼刀は、「EARTH」ビルの真横に来てしまっていたのだから。

ちなみに、ここからビルに背を向けると少し離れて正面に「EARTH」内の学校がある。



「くっそぉ・・・逆かい・・・・」

「おい!!」

「ん?あれ、舜さん!!!」

「無事だったか?」

反対側だやばいなぁ、と焦る翼刀に、蒔風が背中から声を掛けていた。

クウガとの戦いで負傷していた彼だったが、恐らくシャマル達の治癒魔法で治り、一足先に飛び出してきたのだろう。




「俺、爆発跡に行きたいんすけど・・・・」

「反対側か・・・まあいいや。こっち来てくれ。手伝ってもらいたいことがある」


そういって、蒔風が翼刀を手招きする。



連れて行かれた先は、学校の体育館だ。
そこに入ったところで、翼刀が口を開く。



「あの、ここで何するんです?」

「あの大聖杯を何とかするのさ」

ニッ、と笑いながら、翼刀の質問に答える蒔風。
そしてその為にはお前の力が、どうしても必要だと彼は言う。



「?・・・・・あ、もしかしてこっからあの内部に入る秘密の通路とかあったり!?」

この学校は、この世界が結合されたときに他の世界から様変わりした(恋姫無双などの世界から来た)人たちでも入れるよう設置されたものだ。
「EARTH」ビルは何度か崩れたことはあるが、恐らくそういう通路は地下だ。もしかしたらそこから反撃をするのでは?


「いや?そんなものはないさね」

だが蒔風はそれを軽く否定する。
じゃあなんで?と翼刀は首をかしげると、蒔風が体育館の内部に腕を広げてそこら辺一帯を指し示しながら言う。


「ここにみんなを集めてほしい」

「なんでですか?」

「ん?そりゃぁお前さ――――――」




------------------------------------------------------------


「全く、舜君ったらどこに・・・・・」

「アーチャー!!もっとだ!!」

「まったく、呼び出されたと思ったらこれかね君は!!」

「天道も津上さんも、めぼしい人たちやられちゃったからお前しか料理作れる人いないんだもん!!」


「EARTH」内でなのはがシャマルに頼まれて蒔風を捜索していると、食堂から声が聞こえてくる。
ひょこっ、と覗き込むなのは。そこにいたのは


「あ、主・・・・そんなに急いで食べては・・・・体に悪い・・・・」

「のんびりできるかっての!!早く回復しにゃあならんのに」

アーチャーの料理を、モグモグと勢いよく食べている蒔風であった。そして、それを諌める青龍もいた。



「な、なにやってんの?」

「お、なのは!!昨日の戦闘の怪我は大丈夫か?」

「うん。魔力も戻って来たし。で、なにやってんの?」

「え?シャマルにあらかた治してもらったから、飯食って体力回復中だけど?」

「そ、そっか・・・もう!!舜君、急にいなくなったって言うから、焦って探しちゃったよ!!」

「んえ?まさかお前、俺が傷だらけの身体押して飛び出すとでも思ったの!?」

「え・・・だって今までそうだったし。てへ」

「あんなぁ・・・・もう死ぬのは嫌だし、しっかりと回復してから行くっての。昔みたいな俺だと思わないでくれよぅ」

「ごめんねぇ・・・・うふふ」

「ん、なんだなのは」

「ううん。舜君が自分を大切にしてくれてよかった、って思って」

「当たり前だ。もうバカみたいなことはしないさ」



そういって、蒔風はまだ食べる。
「EARTH」(仮)内の食堂で、バクバクと勢いよく。

予感があった。
セルトマンとはそろそろ決着を付けなくてはならない。




では、翼刀が出会ったあれは――――――



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そんなもん―――――大聖杯をコイツでぶっとばすからだよ」

「は!?」

「EARTH」敷地内学校の体育館。
そこで蒔風の答えを聞いた翼刀は素っ頓狂な声を上げた。

蒔風がコイツ、と言っているのは十五天帝だ。
この男は、この剣の最大一撃で大聖杯を破壊しようと言っているのだ。


「だ、だけどンなことしたらここら一帯の町とかみんなが魔力で・・・・大災害になるんじゃなかったんすか!?」

「だからみんなを集めるんだろ。早く「EARTH」の奴ら集めてこい」

「・・・・・街の人たちはどうするんすか」

「おまえな・・・・これは世界破壊の危機なんだぜ?そんなこと一々―――――言ってられるか」

「―――――――!!!」


蒔風の言葉。
そして、その眼差し。

聞き、そして見ればわかる。
この男は本気だ。本気でここ一帯を丸々犠牲にしてでも大聖杯を破壊し、セルトマンを止めると言っているのだ。


その決断に、翼刀は絶句する。
この事件が始まってから、まだ二日と数十時間しかない。周囲の住民の避難にはまだ一日かかるとされている。

しかも、大聖杯の破壊に伴う大災害の範囲がどれだけの者になるのかは予想の域を出ていない。
最悪の場合、冬木とは比べ物にならない被害が出る可能性もあるのだ。


とはいえ、確かに彼の言うことは正しい。
世界が破壊されるのと、ここら一帯の犠牲ならば、どう考えたって世界の破壊を防ぐ方が重要だ。

だからと言って、それをあっさりと見捨てるような男ではないはずだ。
だから今までも、サーヴァントとの戦いだってしてきたのではないか。

だが、それでもこの男はあっさりという



「知ってる。だが言っただろう。世界の危機と、お前はどっちを取るんだ」

「ッッ!!!」

ジャカッッ!!と、翼刀がヴァルクヴェインを蒔風に切っ先を向けた。
話の途中で蒔風はこちらに背を向けており、その後頭部に切っ先を向けている形だ。



この男は「悪」だ。
考える方向性は秩序や正義だが、その行動に倫理や道徳が全く入り込んでいない――――

もしもこの男の目の前にウイルス感染者が百人いたら、きっと他の人々を救うためにその百人を簡単に焼き払うのだろう。



冷や汗を流す翼刀に切っ先を向けられた蒔風は、一切取り乱さない。それどころか、さらに冷たい口調になっていく。


「・・・・何のつもりだ」

「あんた、何者だ」

「俺?俺は蒔風舜だっての。見て分かるだろ?」

「違う!!あんたは舜さんじゃ・・・・」

ドンッッ!!

瞬間、蒔風の背から何かが噴き出した。
その勢いにバックステップしながらも切っ先を向ける翼刀。

その時、見えた。
蒔風の顔が、邪悪にも見える笑みに染まっているのを。



「俺は間違いなく蒔風舜さ・・・・そう。間違いなく、だ」

その背には、間違いようのない銀白の翼。

最初は、姿を真似る敵なのかと思った。
だが違う。この威圧感と、銀白の翼は、間違いなく本物の蒔風舜だった。



「そこを退け。別にこれは令呪で縛られているわけでもねェしな。俺は大聖杯を破壊する」

「ンなことさせるか!!・・・って、え?」

今、こいつは令呪と言った。
ならばこいつはサーヴァント?

しかし、蒔風はまだ生きている。
まさかそっちの人物にも手を出し始めたのか?


「―――――違う」

先ほど、クウガたちが召喚されたときのアリスと蒔風の会話を思い出す。

今ここに存在するはずのない者。
本来の者とは違う、別の可能性。

二年程前の事件―――――話には聞いていた。
まさか、この男は




「あんた、仲間を消してたって言う昔の蒔風さんか?」

「ほう。新米のくせによく知っている。ふふ・・・さて、自己紹介だ。俺のクラスはアサシン」

悪戯をするかのような、そしてその奥の邪悪さを――――悪であると言う蓋で心を追い、その役に徹したかつての蒔風が名乗った。



「アーカイヴになぞらえてもらうとだな・・・・蒔風舜 Ver第二章、ってところか」

悪としての存在。
秩序に向かいながらも、悪としての在り方で考える。

かつての悪――――失われたはずの存在。


アサシン・蒔風舜が、鉄翼刀の前に立つ。



「いやだと言うなら、止めて見せろ!!・・・・鉄、翼刀ォッ!!」

翼人はどちらにも転ぶ。






『翼人、救世主にして破滅の者』
 「アルハザードの物とされる遺跡の碑文より抜粋」





to be continued
 
 

 
後書き

ついに登場、蒔風舜(第二章)!!!
彼は第二章時点での蒔風ですので、翼刀のことは良く知りません。知ってるとしても、大聖杯から与えられた情報で「コイツは鉄翼刀という男」という程度。だから名前も最後以外呼びませんでした。



そしてクウガVSディケイド組!!
二人がやられるシーンは、ディケイド関連のある映像を元にしています。たった二シーンですが、わかる人はいるのか!!

それにしてもアルティメットクウガゴウラム手に入れたらもうこいつら最強だろ。
しかもスペックは“あの”クウガ。

多分ユウスケのとは比べ物にならないんじゃね?とか思ってます。


消滅したオフィナ。
その強大な力故に、ブラックホール状態になって消滅。

オフィナ
「私が完成してしまった、みたいなかんじだな!!」


そして口調の変わった・・・というか戻ったフォンはどこに行ったのか!!
ショウは無事なのか!!


翼刀VS蒔風はどっちが勝つんだ!?



翼刀
「次回。一回戦ったことあるから、まだ余裕だと思うけど・・・・?」

ではまた次回
 
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