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逆襲のアムロ

作者:norakuro2015
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45話 生きたい想い 3.14

* ラー・カイラム 艦橋 3.14

ララァとユニコーンを収容したラー・カイラムの中はその女史の発言待ちとなっていた。
出迎えたアストナージはコックピットから出てきた女史に手を差し伸べたが一向に出てこない為、
覗き込むと気絶していた。

急ぎ医務室へ運び込んだ。医師の診断によると過労だという。
そこまでの話をブリッジでアストナージが話すと、クワトロことシャアがアムロの下へ寄って行った。

「少し一緒に席を外さないか?」

アムロは急な呼びかけに少し驚いた。

「何処へ行こうと。ララァの所か?」

「いや、彼女が乗ってきた乗り物の方だ」

シャアがそう言うと、アムロは少し考えてから頷いた。

「分かった」

ブリッジ内の空気感からバラバラの談話状態だった。よってここで誰に断らず退出しようとも特別気にもしないだろうとアムロは思い、2人ですーっとブリッジを後にした。

それをシュナイダーが見ていた。近場に居たミハイルに顎で合図して、彼らを尾行させた。ガルシアがそれについてシュナイダーに少し意見した。

「別にこの中で何か起こるわけでないし、ましてや白き英雄ですぜ?」

シュナイダーは少し笑ってから答えた。

「万が一だ。秘書官を護衛命じた主からの要望だからな」

「ゴップ議長ですか?ですが、もういないでしょうに・・・」

シュナイダーはそれ以上は答えなかった。この7年間シャアの傍に居て、彼の動くことで事態が動いてきたことを一番近場で肌で感じていた。シュナイダーは培ってきた感に従って敢えて付けさせた。

ガルシアは出ていく2人とそれをひっそり付けるミーシャを目で見送った。

通路にて歩きながら、アムロがシャアに話し掛けた。

「確かにあのモビルスーツは異質な気がする。そこに何かの手掛かりがあるのか?」

シャアはアムロに小出しながら知っていることを伝えた。

「アレは私も関わった乗り物だ」

「何だと?」

アムロは驚いた。シャアは構わず続けた。

「この事態は大いなる意思によって動かされていることはこの間伝えたな」

「ああ、フロンタルとパンドラボックスを何とかすればいいのだろう?」

「それはこの世界の表向きな問題だ」

アムロは眉を潜めた。

「・・・裏があるのか?」

「裏というよりも本質だ」

「本質だと?」

「この問題の一番の要点がこの世界の者達には押さえることができない。それを我々がやるのだ」

シャアはアムロを見ることなく歩き、話していた。アムロは時にシャアの表情を見ては前を向いていた。シャアは何か決意したような顔だった。

「表向きな問題の要因は全て私とお前、そしてララァというイレギュラーの存在がある。特にララァという存在が大きい。彼女自身が勘違いする程大きな力を手にしまっている」

「勘違いとは?」

「桁違い大金を持った普通の人がその日から人が変わったのように狂ってしまうようにな。<理>とはそれぐらいの力なのだ」

「オレらがそんな力にどのように対抗しようと?」

「アムロ、お前は実感しているかは知らないが、お前にも2人のお前が住んでいる。一つはこの世界のお前でもう一つがお前だ」

アムロは複雑な顔をした。特別内なる声も聞こえたことがないので、何とも答えようがなかった。

「お前と共に意識を<理>の領域へダイブさせる」

アムロはより複雑な顔をした。

「何だそこは?」

「恐らくはララァがいるだろう領域だ。意識が肉体より離れたところがそこだ」

アムロは少し笑う。

「意識が肉体より離れるって、ようは死ぬということじゃないか」

「一般的にはな。<理>の領域とは実世界の外側なのだ。そこは死という概念で括ることで実世界が平常に保たれていた。それにアクセスすることがどれだけ危険か。この世界のお偉方は理解が足らなかった」

「しかしそれもお前が撒いた種だろう」

「フフ・・・違いない」

シャアも少し笑う。アムロは鼻を鳴らした。

「フン、で、その目的は?」

「この間話した通りだ。私ですら、<理>について知ったのは後でだ。その予測が早かったのは、サイアムだったのかもしれん」

「あの老人か。長生きでもしたかったのか、そんな<理>の壁に挑戦など」

「あの老人には生への執着はそれほどない。それよりもより面白いものを生きている間に見たいという渇望の方が強いように思えた」

アムロは表情を戻していた。

「それは何故だ?」

「きっとあらゆる物語を読みつくしては見たことないドラマを見たいという想いだけだったのかもな」

「ただ、それだけか?」

「予想でしかないが、例えばそんな動機で誰かを傷つけることなど何も珍しい話ではない。まあ、聞いた事ないが多角的に想像しても、得たいものも得て、生きたいだけ生きた。これ以上望むことは物理的にはない。精神的に満たされたいだけだろう」

アムロは話を聞いて思考していた。サイアムと仕掛けた人類の進化への挑戦。そしてララァという超越した存在。ダカールの砂嵐を一掃した力は世界を変えることが出来る力だとアムロは思った。

シャアは理の領域へ行く手段を知っている。しかし仮にそこへ行ったところで・・・

「シャア、オレたちがそんなところへいったところでララァに、何ができるのだ?」

相手は超越者だ。助けるにしても戦うにしても何の足しにもならないとアムロは思った。
シャアは無言だった。アムロはシャアがあれだけ饒舌だったのに何故急に黙り答えないのだろうかと疑問に思った。

モビルスーツデッキに着くと入って来た2人を見て、メカニックは不信に思わず課せられた作業を引き続き行っていた。アムロとシャアは難なくユニコーンへ張り付く。

メカニックの1人がその後に続いて入って来たミーシャを見た。メカニックはその視線がアムロとシャアに向いていたのが分かった。が、当人は興味をもつことなく仕事へ戻った。

アムロはユニコーンのコックピットハッチが開いていることに気付き、中を覗き込んだ。
シャアがアムロに勧めた。

「アムロ、コックピットに座ってあるデータを探してくれないか?あればだが・・・」

アムロは言われるがまま従った。このモビルスーツについてはシャアの方が詳しい。サイアムとシャアが携わったものだからだ。

アムロはコンソールパネルだけを起動して、言われたデータを探した。
すると意図も簡単に見つかった。

「これか・・・シャア、あったが」

シャアの口元が少し緩む、が、すぐ締めた。

「アムロ、それを起動してくれ」

アムロはそれを起動かけた。すると、アムロの目の前が真っ暗になった。
表現がそうだ。何もない。真っ暗だ。

「どういうことだ、シャア!」

そう言う言葉すら届かない漆黒の闇。すると目の前に1つの鏡が現れた。それを見ると自分が映っていた。しかし、違うのはその映る自分が自分に語り掛けてきた。

「やあ、違う世界の僕」

アムロは驚いた。姿形、声は自分だった。

「あ・・・ああ」

これがこの世界の自分だと気が付く。自分の置かれた状況を鏡の向こうの自分に尋ねてみた。

「これは一体・・・。何が起こっているか知っているか?」

「ああ、知っている」

「教えてくれ」

「僕・・・オレが表に出ただけで、君は裏に下がった。そしてどうやらシャアに嵌められたようだ」

アムロは舌打ちした。

「・・・何だと」

「今はオレもこの空間でいるということは、現実では気絶しているのだろう」

鏡のアムロがそう言った。アムロは何故それ程状況を詳しく知っているかを尋ねた。

「それはオレがこの空間に7年間ずーっといたからだ。最初は表立って出るにしても現実に嫌気が刺していたからな」

アムロは7年前の・・・15歳の頃を思い起こした。確かにただの根暗であまり良い思いがなかった。

「そこでとても強引な力で貴方がオレに入って来た。抵抗するにもあながえない。だが、映画を見るようにオレの活躍を見ることができ、体験し、それはオレにフィードバックした」

アムロは黙って聞いていた。

「だからオレも貴方と同じような力がある程度備わった。違うことは貴方には世界を改変出来る力がある」

「改変?」

鏡のアムロは頷く。

「ああ、ア・バオア・クーを押し返す力。あれは尋常じゃない。その異常が世界に作用すれば、事態が打開できるかもしれないし、悪化してしまうかもしれない」

アムロは自分の手を見つめて、鏡のアムロの答えた。

「要は使い方次第か」

そう言うと、後ろから知った声が聞こえた。

「そう言うことだ」

アムロが振り向くとそこには1年戦争時の仮面、軍服をつけたシャアがいた。

「シャア・・・」

アムロが振り向きそう口にすると、シャアは笑顔だった。

「久しいなアムロ」

アムロは体をシャアに向けた。

「どういうことだ」

「ここまで来たのだ。ようやくな」

アムロはシャアを睨んでいた。この目の前のシャアは決して味方ではないように感じた。

「お前の成長が必要だった。全ては・・・」

「・・・」

「私のララァの為に」

アムロは苦い顔をした。

「どこからだ・・・何を欺いていた」

「お前の力がどうしても必要だった。しかも成長した驚異的な力がな」

シャアはアムロを囲うように歩く。

「そして仕上げがお前を捉えて、ララァと私の昇華の為にお前の力をブースター使うことだ」

「ブースターだと?」

「そうだ。別次元な私たちが未練を持ってこの次元にいることは世界に不都合だと知っているな」

アムロは黙って頷く。

「我々は消えなければならない。その為に理の力が必要となる。その力を優位的に使えるのはお前と私だ」

「・・・オレがやれば、ララァもお前もオレもこの世界から消えるのだな」

シャアは真顔になり頷く。

「そうだ」

アムロは手をシャアの方へ差し出そうとした。その時、アムロの右肩を強く掴み体をシャアの方へ行くことを拒絶する力が働いた。誰かが自分の袖を掴んだのだ。

「アムロ・・・そちらはダメです」

アムロが振り向くと、そこにはノーマルスーツを着たララァが居た。

「ララァ・・・」

ララァは少し笑い、答えた。

「私は貴方がたが知るララァではありません。そして・・・」

ララァはシャアの方へ眼を向けた。そして睨む。

「あれも貴方が知るシャアではないのです」

アムロは混乱した。シャアがシャアでない?あれだけ鮮明に語ったオレが知る前世界の情報。信じるに足るとアムロは思った。

「ララァ、あのシャアは何者だ」

「ただの瓜二つの人間です。しかし誰かに強化されたようですね」

シャアは口を歪ませていた。しかしすぐに表情を真顔に戻す。

「ほう、私がシャアでないという証拠はあるのですか?」

「貴方にはそのような動機がそもそもないのです」

アムロは疑問に思った。どういうことなのか。シャアはララァの質問に答えた。

「動機?私はララァを救いたいだけだが」

ララァは首を振った。

「私の中にいたあの者ならばそれはララァではありません。貴方とこのアムロが作り上げた幻想」

アムロはその昔、インドでの話を思い出していた。ララァは話し続けた。

「貴方はそれを知っているはずです。何故なら、貴方は全てを知っているからです」

シャアの表情はそのままだった。そしてララァの話に耳を傾けていた。

「幻想を救うことができません。元々在りもしないものなのですから。救うのであればその幻想が貴方達を救うのです。貴方と幻想を昇華させるためにアムロを使うなど不可能です」

アムロはララァの話についていけず、ララァに説明を求めた。

「ちょっと待ってくれ。ララァ、どういうことだ」

「このシャアは貴方の魂が欲しいだけなのです。既にシャアの魂は穢され、アムロのように本来の器であるものから離されていい様に使われているの」

「インドの時と違って具体的だな。もう少しいいかな」

「ええ」

アムロはララァの下へ寄り添った。ララァは銃口をシャアに定めたままだった。鏡の中のアムロも腕を組んで、それを見守っている。

「シロッコが封じていたメシアという貴方達2人が産んだ幻想は、理の地平へ歩む世界を正しい方向へ戻そうと努力していたの。その要因は2つあった。1つはアムロ、貴方とシャアという異世界の存在。もう一つはそれを利用して理に触れようとした野心家の存在」

皆が黙ってララァの話を聞いていた。

「既にその者の手にシャアとそして幻想が落ちた。あとアムロ、貴方が捕らえられたら・・・。この世界が事象の向こう側で摺りつぶされる」

「何故オレを捕まえたい?」

「この世界をより正確に問題なく理へ通ずる鍵は貴方とシャアの2人で開けたドアにあるのです。それを開ける力、放大なエネルギー。彼にとってメシアはただ邪魔なだけな存在。私、彼女の仕事は目の前の均衡を揺るがす存在を消すこと。その為に彼は私から離れてドアの解放に向かったのです」

鏡の中のアムロが顎に手をやってララァの話を頷き聞いていた。彼はララァに一つ疑問を呈した。

「シロッコはそれを感覚で読み、何故メシアを封じたのだ?かの者に加担するような」

「シロッコは敢えて、この世界のものだけで事態の解決を図りたいと思っていたようですね。驕っても、現状を見ればその気持ちも分かります。次元調和な話です」

地球圏の宇宙潮流による各サイドの機能不全がシロッコの危惧を物語っているとララァは言っていた。
アムロはシャアに目を向けて質問を投げかけた。

「何故、お前は理の力を欲するのだ」

シャアは表情を変えず答えた。

「・・・全てはマスターの為だ。マスターは人類にチャレンジを求めてそれを鑑賞している。そして見たことの無い光景を見ることに欲した。たとえ結果がどうであれ、マスターは世界の事象の向こう側を見ると決めた」

アムロの顔に怒りがにじみ出ていた。

「そんな・・・そんな身勝手な理由で。。。世界がメチャクチャに!」

シャアはクスリと笑う。

「人はどうでもいい些細な理由で過ちを犯す。ただそれだけのことだ」

そうシャアが言うと、ララァはシャアに向けて引き金を引いた。その銃弾はシャアの脇を掠めた。シャア自身も当たるとも思わなかったので避けもしなかった。

「君のような戦いを知らないものに私を仕留めることはできんよ」

そうシャアが言った時、シャアの体に異変が起きた。

「・・・ん、外で何か起きたか?」

その隙をアムロは逃さなかった。ララァの手を取り、シャアを狙撃した。その銃弾はシャアを貫き、顔を歪めてその場から溶ける様に消えた。

アムロは自分の体が薄くなっていくことが分かった。ララァがアムロに向けて話し掛けてきた。

「また外で会いましょう」

するとアムロよりララァの方が早く消えた。アムロは鏡の中のアムロを見た。そのアムロが答えた。

「まだ君にはやることがあるようだ。それまで体を貸してあげるよ」

それを聞いたアムロは頷いて答えた。

「済まない。全てはオレのエゴだ」

そう言うと目の前が白くなり、気が付いたときはユニコーンのコックピットの中だった。

アムロは急ぎその場から出るとシャアことクワトロを探した。すると下に人だかりができていた。
周りにはシュナイダー、ミハイル、そしてララァとメカニックが沢山居た。その中央にクワトロが倒れていた。

アムロはアストナージに気が付き、状況を尋ねた。

「どういうことになっている?」

「あ、アムロ中佐。実は・・・」

話を聞くと、アムロとクワトロがユニコーンに近付いた時、ユニコーンが突然起動した。それに驚いたメカニックたちが駆け寄るとクワトロが近寄られることを嫌がり発砲したそうだ。その動きをみたミハイルがクワトロを狙撃して、今に至るらしい。ララァは遅れてやってきていた。

アムロはミハイルの狙撃に関してシュナイダーに説明を求めた。

「何故?貴方たちはシャアの親衛隊じゃないのか?」

シュナイダーは腕を組み、アムロに自分らの職務について説明をした。

「我々はゴップ議長に職務を与えられたが率先は実はギレン閣下だ」

「ギレン・ザビ?また何でここでそんな名前が?」

アムロは予想もしない名前が出てきて驚く。シュナイダーは話し続けた。

「ゴップ議長とギレン閣下は水面下で通じていた。戦争はやり過ぎては困るからな。互いに落としどころを求める為に秘密裏にな。そこでビスト財団の暗躍とクワトロ・バジーナという存在が互いに喉に刺さった魚の骨様に思えたところで私ら彼の下へ派遣されたのだ」

「それではこのような状況になることも・・・」

シュナイダーは顎に手をやり言葉を選び話した。

「想定は・・・していたかな?取りあえずは彼の行動は世界を導く上で公平さはあった。決してビスト財団にプラスになるような動きはしなかったのだ。だから2人の閣下の考えは杞憂にも思えたが・・・」

「が?」

シュナイダーは照れたような顔をして、連邦の英雄に笑顔を見せた。

「この歳になると様々な経験をするもんでな。勘だよ。嫌な予感ほど結構あてになるもんだ。ミハイルに付けさせて今に至った訳だ」

「・・・成程な」

アムロはクワトロを見た。外傷的には大したことはないように見受けられたが瀕死だった。
騒ぎを聞いたか、ブライト、カイ、ハヤトと駆けつけてきた。ララァがユニコーンより降り立ったアムロへ歩み寄ってきた。

「またすぐ会いましたね」

ララァがニコリと語り掛けてきた。アムロはそれに応える。

「ああ、良く分からなかったが助かった。ありがとう」

すると瀕死のクワトロが声を漏らし出した。

「ああ・・・」

それに気付く皆がクワトロを見た。

「・・・っフフ・・・アムロ・・・私は・・・シャア・・・一部に・・・過ぎん・・・」

そしてクワトロは絶命した。
ララァはアムロに密かに語り掛けた。

「(この艦の中から少数で話が分かる方を選んで1室に集めてくださいませんか?)」

ララァの提案はアムロにとって理解できた。理解できないような異次元な話を理解できる限られた時間で理解してもらう必要があるためだった。

* ラー・カイラム 艦長室

ララァを取り巻き、ブライト、カイ、ハヤト、シャア、シロッコ、シュナイダー、アムロ、カミーユと室内にいた。

「さて、話してくれるかな」

ブライトがララァに促した。ララァはソファーに座った。

「もはや一刻の猶予はありません。というのは皆が承知しているでしょう」

一同頷いた。

「フロンタルを止めなければなりません」

ブライトが代表して尋ねた。

「どうすればよいでしょうか?ララァさんは知っていらっしゃるのですか?」

ララァは目を瞑り、次に見開くとアムロを見た。

「アムロ、貴方の力がまず必要です」

アムロは少し間をおいてから理由を聞いた。

「・・・何故ですか?」

「この世界の歪みを修正するに異次元の要因、つまり貴方の存在が必要です」

アムロは両手を挙げて不明瞭だとアピールした。

「オレに何の力があるのかが分からない。第一、ここにいるカミーユやシロッコ、シャアにだってそれなりの力があるはずだ。異世界から来たといえ、オレに何の力がある?」

「ユニコーンで貴方は意識の空間へダイブした。あれはそれなりのコツが必要です」

「だがララァ、貴方はその空間へ意図も容易く来ていた」

「それは私がかの幻想と共にいた為です。異次元な力の使い方を多少知ることができました。しかし、それはこの世界の如何なるニュータイプでも容易でない芸当です」

「そうなのか・・・」

アムロが少し俯くと、シロッコがアムロに話し掛けた。

「ララァさんの話はあながち合っていると思う」

アムロはシロッコを見た。シロッコは構わず話続けた。

「かくも私も軽くであるがそのユニコーンに触りしてみたが、そのような兆候は一切感じることができなかった」

シロッコの発言で皆の視線がアムロへ向けられた。アムロはため息を付いた。

「全く持って自覚症状がないことがオレにとって不満なんだが・・・」

アムロが自虐的に言うとララァが笑った。

「フフ、取りあえず貴方の力が必要です。貴方が意識の世界でフロンタルと対決し勝たねばなりません」

「その世界でもフロンタルが居るのか?」

ララァは少し悩んでから答えた。

「事はとても抽象的です。この事態を引き起こしている要因の1つとしてフロンタルが居るのです。意識の世界にメシアがいます。そこにフロンタルという現象起きているのです」

その話にカイが要約した。

「ふむ。要はその昔の大国がハリケーンに名前を付けていた。それと同様という訳か、フロンタルは」

ララァは頷く。

「そうです。具体的な対処法はメシアの方が詳しいので・・・」

アムロはため息を付く。

「行き当たりばったり・・・か・・・」

「すみません」

ララァは申し訳なさそうに謝った。そして次にする事をブライトらに告げる。

「そして、他の皆さまには・・・」

その時、艦内が人が立っていられない程の揺れが起きた。シロッコは地面に這いつくばり、ブライト、カイ、ハヤトは壁に打ち付けられ、シャア、アムロ、シュナイダーは傍の動かなさそうな調度品にしがみついた。

「な・・・なんだ!」

ブライトが慌てて立ち上がり、痛みをこらえてブリッジへ連絡を入れる。それと同時にサイレンが鳴った。そのサイレンに皆が戦慄した。

「退艦の警報だ・・・」

ハヤトがそう呟く。ブライトは状況を把握し、部屋にいる皆に伝えた。

「確かに一刻の猶予もないようだ。機関部が亀裂が走り、艦が航行不能となった。理由は不明だが、後この艦がどれぐらい持つかも分からないそうだ」

「確かにまずい。艦の心臓部がやられたとなったらこの艦がいつ四散してもおかしくはない」

シロッコがそう言うと、皆の行動は素早かった。部屋の中があっという間にアムロとカミーユ、ララァのみとなった。

その3人も立ち上がり、モビルスーツデッキへと向かった。ブライトらにアムロとカミーユがララァに同行して欲しい旨承ったため3人で行動していた。他にも時間がないので、残りの情報をその過程で聞いて欲しいとのことでもあった。

その道中・・・

「ララァさん、もう一つの対策を聞かせて頂けますか?」

カミーユがララァに聞くと、ララァは話した。

「物理的な問題です。原因である見えるフロンタルを倒すことです」

かくも単純明快だったが、それが難しいらしいことをララァは話し続けた。

「彼は世の怨念の中心にいます。既に人の理を外れた人外の物と言っていいでしょう。それに対抗するには同等の力を用いねばなりません」

「サイコミュか」

アムロがそう言うと、ララァは頷く。

「ええ、諸刃の剣ですが、やるしかないのです。それも物量で」

次にカミーユが尋ねる。

「物量とは?」

「今のところ人類は多く生き残っております。ここにいる兵士たちにしてもそうです。個の力では彼の強大な力には跳ね返されてしまいます。彼はそれ程のサイコフィールドを持ち合わせております。シロッコやカミーユ、貴方でも立ち向かえません」

「どうすればいいのですか?」

「アムロが起こしたア・バオア・クーの奇蹟を起すのです」

それを聞いたアムロが尋ねた。

「オレの?」

ララァが頷く。

「そうです、あの時は皆の想いを貴方が集約して出力した結果です。それができる存在はそういません。その力で彼の能力を中和し続けるのです」

「打ち消す事はできないのか?」

ララァが厳しい表情を見せた。

「未だメシアができていません。つまり現状ではそれが精いっぱいでしょう」

カミーユが悪態ついた。

「くそっ。パンドラボックスはそこまでの力が・・・」

ララァがそれについて答えた。

「だからこそなのです。メシアですら凌げない放大な力は人の想い。ならば多くの人の想いで当たることで対抗できるのです」

そう3人が急ぎ走りながら話をしているとモビルスーツデッキに辿り着いた。辺りはノーマルスーツを着込んだクルーで溢れかえっていた。

3人共νガンダム、Ζガンダム、ユニコーンと乗り込み、宇宙へ飛び出した。続々と脱出艇でラー・カイラムから出てきている状況が見て取れた。脱出して数分後、ラー・カイラムは眩い光と共に轟沈した。

アムロの傍にジェガンが1機寄ってきた。

「ふう、危なかったぜ」

声の主がカイだと分かった。通信回線を開くとカイのコックピットにミハルとベルトーチカが乗っているのが分かった。

「とりあえずお前の嫁さんも乗ってるからよろしくな」

「ああ、ありがとうカイ」

アムロが素直にお礼を言うと、今度は隣にZⅡが1機寄ってきた。そこからはアレンの声が聞こえた。

「アムロ中佐、ご無事でしたか」

アレンがそう言うと、アムロは答えた。

「ああ、無事だ。そちらも誰か一緒に搭乗しているのか?」

「私だ、アムロ。ハヤトくんと一緒におる」

テムの声が聞こえた。どうやらハヤトが一緒に搭乗しているらしい。次にハヤトが話し始めた。

「手狭だが仕方ない。艦隊の状況を把握したが、半数ほど航行不能に陥ったらしい」

するとアムロの傍にユニコーンとZが寄ってきていた。アムロが他の状況をハヤトに尋ねた。

「シャアは?ネオジオンは?」

「あちらもおおよそ同じ被害だとシャアから受けている。これでおおよそわかったことがある」

「なんだ?」

「被害に遭うものはサイコフレームでない物体だということだ」

アムロも大体現状を把握した。全てはサイコミュによって呼び起こされた事。呼応されたものはサイコミュでしか対応できない事。それ以外が淘汰されること。

そしてベルトーチカがコックピット内で情報収集に務めていると、アムロへ叫びながら凶報を伝えた。

「アムロ!大変です」

「どうした」

「あ・・ああ!各サイドが次々と、コロニーが壊れ、崩壊しています。逃げきれないひとが。。。」

周りのモビルスーツらが個々で報道の映像を確認していた。アムロもそれを見た。
全てのサイドのコロニーが無惨にも中央部より割れて壊れていった。

「あ・・・アムロ!このままでは・・・」

「もういい!・・・言うな」

アムロはベルトーチカの慟哭、報告を止めた。するとジ・Oのシロッコもアムロへ寄ってきた。

「アムロ、この辺宙域の避難は終わった。皆、より迅速に動いてくれた」

アムロは出現したモニターワイプでシロッコを見た。シロッコの表情は険しい。

「将軍はこれよりどうするのですか?」

「無論、フロンタルを迎撃する。それしかあるまい」

シロッコはユニコーンのララァを見た。

「ララァさん、貴方が水先案内人になってくれるな」

「ええ、そうするより他ないでしょう。メシアの意識を感じ取れるのは私です」

「誰かが旗頭にならんとどうにもならないからな。アムロ、君が私たちを先導してくれ」

シロッコに言われ、アムロが唸った。

「オレが・・・ですか」

「そうだ。バックアップは全てやる。大丈夫だ。ある一定のバリアを抜ければ私も活躍できる」

「バリア?」

アムロは首を傾げた。シロッコが軽く頷く。

「私がフロンタルに対抗しようにもできないのが、パンドラボックスの力だ。アレを止めることができれば後は火力がものを言う」

「パンドラボックスの何が邪魔なのですか?」

「アレはサイドの住人をすべて催眠状態におけるほどの感応波を放ち、地球圏内の宙域を狂わす程のサイコフィールドを展開し影響を及ぼす。それは物理的に干渉不能な程だ」

要するに圧倒的火力に無敵なことを言っていた。それを自分が中和、食い破るなど本当にできるのかと思った。それを読み取ったかの様にシロッコとララァがアムロに語り掛けた。

「大丈夫だ。私が何の為にア・バオア・クー落としをしたのか。お前の力を期待したからだ」

「私の知識も役立ちますわ。こんなに強力なメンバーシップですもの」

アムロはシロッコの発言に複雑さを覚えつつも、ララァの言に周りを見渡した。
今まで一緒に戦ってきた敵味方が全て一つの想いで集まっている。連邦、エゥーゴ、ティターンズ、カラバ、ネオジオン、旧ジオン・・・。

「・・・そうだな。そんな気がする」

窮地を打破する、生き残る為に集まったその意思がνガンダムの機構を通じアムロ自身を包みこんでいた。

アムロは素直にそれを汲み取ると知らないうちに周囲が緑白い光の波が現れていた。アムロ含めて、皆が驚いていた。シロッコとララァを除いて。ララァは笑った。

「フフ・・・ほらね」

ララァの呟きにアムロが天井を見上げてため息を付く。自分の心配など杞憂だった。

「過小評価だったのかな」

そうアムロがぼやくとカミーユが同意した。

「そうですよ。中佐の実力は誰もが認めているんですから、これぐらい当然ですよ」

そのおだてにアムロは皮肉った。

「お前の方が実力は上だよ、カミーユ」

カミーユの天性の才能はアムロが肌で感じていた。アムロ自身も実力的に上の者はいると思っている。パンドラボックスの無効化が物理的に事態解決に導くともようやく思えるようになってきた。

「それじゃあ案内を頼む、ララァ」

アムロがそう告げると、ユニコーンはゆっくりとフロンタルの居る宙域へ方向を向けた。皆もそれに倣った。

「皆さま、このオーラに包まれた中、この宙域は移動します。それから離れない様に」

ララァはオープンスピーカーで喚起した。それを聞いたパイロットたちや艦艇は意味を汲み取り密集した隊形でフロンタルの居る宙域へと移動していった。

* ゼウス 要塞内 19番ハッチ 同時刻

ジュドーのZZとハマーンのキュベレイは球体の要塞に接弦していた。ジュドー、ハマーンは前方のおぞましい力の奔流と暖かな力の奔流を感じていた。

「良く分からないが、すごいエネルギーだ」

ジュドーがそう呟くとハマーンも同意した。

「ああ、あの力が私らの存在を薄め些細なものにしてくれたおかげでこのデカブツに取りつくことができた」

そしてお前の力がなとハマーンは心の中だけで呟いた。ZZの操作で球体の入口のハッチを開けた。するとモビルスーツが普通に通れる空間、通路が現れた。キュベレイがゆっくりとその通路に入る。

「この通路を使って機関部までいく」

「このままZZで内部からぶっ壊せないかな?」

ジュドーが面倒くさそうにいうとハマーンは否定した。

「やめておけ。サイコフレームの結晶体だ。それで壊せたならば、我々が来る必要性がない」

「やっぱり、機能を止めて壊すしかないか」

「そうだ。いくぞジュドー」

「ああ」

ハマーンはジュドーと共にゼウス攻略の為に要塞内へ進入していった。






 
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