ジョジョの奇みょんな幻想郷
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第一部 ケイオスクルセイダーズ
名状しがたい幕間の物語のようなもの
18.お酒曰わく酔えよカオス(後編)
「それにしても、ラッシュはやはりロマンですね」
「それで顔合わせるたびにする必要性を見いだせないのは俺だけか?」
「楽しいしい良じゃないですか」
確かに、と心の中で同意してしまった。
彼女こそが古明地こいしの姉、古明地さとりだ。早苗の親友でもあるらしい。と、言うよりも早苗の被害者と言っても過言ではないが。みんなも経験がないだろうか。知人にアニメや漫画小説を勧められ、いざ視聴したらドップリ浸かってしまう経験が。おわかりいただけただろうか。そう。彼女は重度のオタクなのだ。強いて言うならジョジョラーである。
「しかし、やはり勝てませんね。丞一さんには」
「いや、こっちもかなり危なかった。やっぱスタプラの火力はヤバいわ。うちの『ダークワン』が非力に感じるわ」
『ちょ!?それ本人がいる前で言います!?』
「家で特撮鑑賞やゲームばかりしてないで、少しは運動したり筋トレでもしたらどうだ?という婉曲なのだが?」
『うぅ、久々のセリフなのに。この扱いはひどいですよ。丞一さん』
「そもそも、スタンドに筋トレさせて意味があるでしょうか?」
※ありません。多分。
「ないだろうけどおもしろそうじゃん?」
『今すぐにでも他の人のスタンドになりたいですよ』
そんなことを言ってみるもののなんやかんや言って丞一といるのも面白いと思っているのは本人談である。その理由はこのシリーズがもう少し話が進めば話せることだろう。
「んじゃ、俺行くわ」
「はい。早苗さんにもよろしくお伝えください」
「で来てみたが、やっぱりこのメンツなのね」
丞一が、早苗のところに行くとさらに霊夢、魔理沙、迅、咲夜に、さらにもう一人金髪の女性がいた。
「何よ。悪いの」
「いやいや、そうじゃないんだよ。霊夢」
「きっと丞一は早苗と二人っきりで、」
「オイ、ソコノフタリ?」
「「すいませんでした調子に乗ってましたはい」」
「てか、姉さんはここにいていいのかよ?レミリアのとこにいなくていいのかよ?」
「いいのよ。お嬢様やパチュリー様が「折角の祭りなのだから休みなさい」と仰ってくたのよ」
「つまり無礼講ってわけね。で、そちらの金髪さんは?」
「あら、そう言えば初めましてだったわね。私はアリス・マーガトロイド。魔理沙の婚ya」
「マスター、スパアァァァァァァァク!!」
イヤアァァァァ!と、変な断末魔を上げ魔理沙によって言いきる前に消された。
しかし、魔理沙の八卦炉を使うのは遅かった。
「『ほうほう。婚約者とな』」(・∀・)ニヤニヤ
「ファイナル、」
「『すいません調子のりましたはい』」
この現状。デジャブである。
「つーわけで丞一。あいつはアリス。変態だ」
「いやね、魔理沙。ほめても何も出ないのよ」
「まだ、叩き足りないようだな」ゴゴゴゴ
「もう、ご褒美くれるなんて」
「だめだこいつ何とかしないと」
もはや末期である。もはやどうすることもできない。それでも、魔女友なのは変わりない。たとえ変態でも、切っても切れないものがあるのだ。変な気を起こせば即マスパだが。
「まあ、あそこらへんのバカはほっといて、こっちはこっちで飲みましょうか」
「おい!霊夢!私とアリスを一緒にしないで欲しいんだぜ!」
「もう、魔理沙ったら、恥ずかしがっちゃって♥」
「なあ、神便鬼毒酒って知ってるか?」
「すんませんマジ勘弁してください」
十分後、
「そう言えば、紅魔館って外っ面から見たときより中広いよな」
「私の能力の応用で空間を広げてるのよ。お嬢さまの要望でね」
「お掃除大変そうですね」
「掃除、宴会後、うっ!頭がっ!」
どうやら霊夢の中では宴会後の掃除などはトラウマものでめんどくさいらしい。しかし、それでも咲夜と丞一が時を止めて空いた皿などを洗っているのを二人以外は知る由もなかった。
二十分後
「メイド妖精が全然役に立たなくて……」
「嗚呼、金が欲しい……」
「まあ、お二人とも大変ですね~ヒック、家も家計が大変でしてヒック」
「なあ、頼むから。酒の場でグチるの止めようぜ。みんな萎えるパターンだろ?これ」
酒のせいで言いたいことがあふれ出るのは分かるが(未成年の偏見)。物事には限度というものが存在するのだ。
「まぁぁりぃさぁぁぁぁぁぁ!!」
「だぁぁ!!もう!いい加減消し炭にしたあげくに残機五個くらい減らすぞ!」
「え?残機?何言ってるのこの子。うわー」
その言葉で堪忍袋の緒が切れるどころかペース状になったらしく、魔理沙が無言でマスパを叩き込んでいた。
イエアアアア!!と言う断末魔を上げ消えていた。
「なあ、酒の場で、もういいや」
丞一は諦めた。
三十分後、
宴会会場になっている博麗神社では阿鼻叫喚となっていた。あるものは酒に呑まれ、またあるものは寝ていたりと、バカ騒ぎをしてる輩が大半だ。そして、ここ丞一がいるこの一角もその例に沿っていた。
「……………」
「オルァ!もっと酒もってこいやぁ!酒ぇ!!」
「うわぁぁぁぁん!れいむがぁ、れいむがわらひのおしゃけとったぁぁ!」
「………スー」
霊夢がタチの悪い酔っ払いとかし、魔理沙は泣き上戸、咲夜は夢の世界へ帰還なされた。
そして、極めつけに
「りょうしき(常識)にとらわれちゃぁぁ、いけにゃいんでしよぉぁ!」
ある意味まだ常識人が泥酔していた。頬を朱色に染め瓶をラッパ飲みをしている。もはや、おっさんと何ら変わりなかった。
「………酔って忘れられないのが悲しいぜ」
そう言いながら、杯に酒を注ぎ仰いだ。
『そう言えば、全然酔ってませんよね?お酒強いなんて初めて知りましたよ。私』
「そりゃ、俺も初めて知ったしな。ところで、物凄くいやな予感が」
「ジョォジョォォォォォォ!」
グボォア!と呻き声をだし早苗の突進を受けてしまった。
「えへへへ♪じょぉじょぉ」
「ダメだこいつもうベロンベロンになるまで飲んでやがる」
「じょぉじょぉ、いっしょにのもーよー」
「ええい、喧しい!抱きつくな!頬をすりすりするな!てか俺も飲んどるわ!」
丞一は藁にもすがる思いでニャル子をみた。
ニャル子はにやにやと笑みを浮かべていた。ひとまずニャル子にはフォークを刺しておいた。
早苗にも同じようにしておきたかったが、早苗は悪意があるわけではない。ただ酔っているだけなのだ。それだけに丞一はフォークを出すことを躊躇われた。さらにフォークを刺すことができない理由がもう一つあった。今、早苗は丞一に抱きついている。それはもう背骨を折る勢いで。そう、当たっているのだ。撓わに実ったその胸が。丞一の腕に。
丞一は次に迅をみた。
「ちょっとぉ、じん~。あんたもいっしょに飲みなさいよぉ」
「じんー!れいむがいじめるぅ!!」
ゲッ!という顔をし真っ青にしていた。
丞一はなおも迅を見て助けを求めた。
しかし、迅は気づかない。
迅は丞一を見つけて希望を持つも、一瞬で絶望に満ちあふれた顔をし顔をゆっくり背けた。背けるほどだっただろうか。そう疑問に思っていると、寒気がした。
「って、ちょっ、うおぉ!!」
丞一は早苗に押し倒された。逆に押し倒された。
「ちちちちちょっ!ななななななな何してんだよ!」
「ん~?じょじょをたべようかと」
ひっ!と小さく悲鳴を上げた丞一は間違っていないはず。何時もの攻めと受けの立場が逆転していた。そんなことよりも丞一の貞操の危機である。
ただ勘違いはして欲しくないが、丞一は早苗が嫌いだから危機を感じているのではなく。ただ場所と時をわきまえて欲しいばかりなのだ。
(理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能!ヤバいヤバいヤバいヤバい!どうする!?)
自らの無力さをのろい、貞操を諦めかけたそのとき。
ドォォーーーーン!カチコチ……
「『ザ・ワールド』。時は止まった。ほら、もう動けるでしょ。後は何とかしなさい」
丞一は目の前で止まっている早苗から目線をずらし斜め上を見上げる。
「姉さん」
咲夜が立っていた。角度的に中が見えないのだろうか。見えないのである。瀟洒だから。
「サンキュー。助かったぜ」
「当然のことをしたまでよ。─────お嬢様が仰っていたわ。『男と女は時として化学反応を起こす。何があってもおかしくない』とね」
「何それ!?何語録!?」
丞一のツッコミを受け流し、これは貸しね、と付け加え終わった食器などを下げていた。
「手伝うよ。姉さん」
「いいわよ。そのまま隠れてなさい」
「大丈夫。しっかりフォークの砲門を余すことなくセットしてあるから」
そう言いくるめ。丞一は咲夜共に食器洗いなどを始めた。
「何も聞かないのね」
「何が?」
黙々と二人で皿を洗いまくって数分。流れていた沈黙を咲夜が破ってきた。
「ほら。私、あなたのことを置いてこっちに来ちゃってたじゃない。まあ、だから、その」
しかし、咲夜は言葉が纏まらないのか詰まらせてしまった。
「何?俺がそんなのを気にしてるなんて言いたいの?」
目を伏せてしまった。どうやら図星らしい。
「俺は何も気にしてないよ。言ったろ?あれは俺の罪だ。それに今はこうして会えて、皿洗いなんてできるんだからさ。それに、俺過去を振り返らない人間なんで」
そう言いサムズアップした丞一に咲夜は一瞬驚いたような顔をしてから、ポンっと丞一の頭に手を置いて撫でていた。
「ありがとうね。あと、ただいま」
「どういたしまして。英語で言うとYou'er welcome。おかえり、姉さん」
「てか、俺が幻想郷に来たんだから、言葉的には俺がただいまでもおかしくなくね?」
「それを言っちゃダメよ」
「本当にありがとうね。ジョジョ」
「いやいや、俺も助けてもらったからね。それに暇だったし。さて、そろそろ動かした方がいいな」
「それよりもあなた、今度紅魔館にバイトに来なさいよ。執事の。弾むわよ」
咲夜は親指と人差し指で丸を作る。チャリーンと言う音が鳴った気がした。
「………考えとくわ」
「良い返事を待ってるわ。………そして時は動き出す」
世界に色彩が戻った。
「インテグラぁあぁぁあぁ!!」
早苗は倒れていた。全身フォークだらけで。何でクレイジーダイヤモンドを出していたかは疑問である。が、それがスピンオフでの伏線になることは誰も知らない。
「楽しんでるかしら」
「………ええ、楽しませていただいてますよ」
『ささ、もう一杯。ほれ!あんたも飲みなさい!駆けつけ一杯って奴ですよ!』
丞一は今、博麗神社の屋根の上で飲んでいた。一番目立ちそうなのにだれも注目していないというセーフティープライスを見つけた丞一はそこで一人で飲むことにしたのだ。そして、その数分後、一人の来客があった。
「(出番が)ひさしぶりすね
────────紫さん」
「ほんと、初回依頼出番がなくてお姉さん悲しいわ」
『ハイハイ、乙』
腰までくる金髪に紫色をあしらった独特の服装はその人物を八雲紫であることを示していた。そして、その一歩後ろにもう一人侍らせていた。
「久しぶりだな。丞一」
「お久しぶりです、藍さん」
八雲藍。紫の式神で秘書ポジションの九尾の狐である。九尾の狐とは数々の伝説にあるようにそれ自体がトップクラスの力を持つ強力な妖怪であり、幻想郷においてもそれは同じだ。それが式神の身に甘んじているのは、ひとえに八雲紫の強大さを推して知べしだろう。能力は『式神を操る程度の能力』。式神が式神を使役するとはこれ如何に。
「で、この幻想郷に来て一カ月たったわけだけれどどうかしら?」
「……………紫さん。あんた、早苗が俺の幼なじみであることも姉さん、十六夜咲夜がここにいることも分かっていたな」
早苗の話は前々から、紫は丞一から聞いていたし咲夜の件も知っていた。知っていたからこそ、まだ幼かった丞一を紫はある程度の子育てはしたのだから。地味に三者面談も紫が出席していたのだ。だが、
「決して俺のためには動かないものかと思ったよ。自分が欲しいものは自分で手に入れる。そう言う約束だったしな」
「利害の一致って奴よ」
「そうか」
丞一がそう言うと会話がとぎれ、互いの杯とお猪口に酒を注ぐ。
風が丞一たちの頬をなでた。空っとしすぎていない、まるで冬の到来を告げるような風だった。
「───────幻想郷は、良い風が吹くな」
幻想郷に来て本当によかった。丞一は改めてそう思えた。
そう思いながら。丞一は襲ってきた眠気にそのまま身を任せた。どうか二日酔にならないよう祈りながら。
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