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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第六章 Perfect Breaker
  父へと送る氷華

挿入歌
仮面ライダーガールズ「咲いて」



★☆★☆★



今までのあらすじ


エスティアにおいて、敵を撃破していく戦士たち。


オーガをまどかが
サソードをカブトが
エターナルをガタックが

しかし、新たなサーヴァント。
バーサーカー・仮面ライダーサソードがカブトとフォーゼの二人を追い詰める。

更にはキャスター・闇の書の闇をも召喚。
エスティアの管制プログラムを乗っ取り、アルカンシェル発射を承認する。


その発射まで、残り―――――



------------------------------------------------------------



《チャージ完了、及び再発射まで残り20秒。19、18、17――――》


すでに残り時間は15―――いや、もうすでに十秒を切ろうとしている。


しかし、クロノは黙って動かない。
諦めたのか。


・・・・・否
クライドから見えるクロノの表情に、焦りも落胆も、そして敗北の色も見えはしない。

そのクライドの心境を察したのか、振り向くことなくクロノが呟いた。


「失敗したと言いますが、それは違います。この作戦は、成功しているんです」

「?」


クロノの自信満々の笑みに、クライドは疑問を浮かべる。
瞬間、その時間がやってきた。



カウントダウン終了。
アルカンシェルの発射時間だ。


だが、発射の閃光もなければ、その反動もない。
戦艦に通じて聞こえるはずの、発射音すらない。


代わりに聞こえてきたのは・・・・・


《ターゲットをモニターに入れてください。指示されている地点は、砲撃範囲外です》

《エンジントラブル、及び動力炉の凍結により、エスティアの旋回が不可能です》

《ターゲットをモニターに入れてください。指示されている地点は、砲撃範囲外です》

《エンジントラブル、及び動力炉の凍結により、エスティアの旋回が不可能です》

《ターゲットをモニターに入れてください。指示されている地点は―――――



「これ・・・・は・・・・・」


「なんだこれ?床つめてぇ・・・・」

「く・・ぅ・・・?これは」


下階で床に倒れ伏せる弦太朗が、頬に触れる床に冷感を
頭を振って何とか立とうと膝立ちになる天道が、掌に同じものを感じていた。


瞬間


ビキィ!!

「GORRRR!!!」

ユラリと二人へと迫っていたサソードの足が、動かなくなった。
正確には、脚が張り付いて先に進めなくなる。

見ると、そこには氷が。
凍結した水蒸気が、床と脚をしっかりと縛り付けてその動きを止めていたのだ。



「一体・・・・」

「気付かなかったかもしれないですが、動力炉へと続くパイプにこいつを突き立てました」


クロノが壁へと歩いていき、それを小突くとガラスのように砕けてその向こうに本当の壁が見えた。

氷によって作られたガラスに映し出された壁。
その向こうにあった本当の壁は、すでに凍気によって完全に凍りつかされている。

その壁だけ、まるで雪山の氷壁のようだ。
ガラスの壁を崩した瞬間、冷気が一気に流れ込んでくる。


氷壁の中。
そこには穴があけられた壁と、突き立てられたデュランダル。

そこから伸びる動力パイプ。その終点部にある動力炉。
温度にして数千度もするその動力炉が、完全に凍結していたのだ。



「アルカンシェルを撃てたとして、何もない宇宙空間に無駄撃ちでは意味がない。この艦は砲台と艦が一体となっているタイプ。艦そのものの方向が変えられなければ、目標に向けることなどできない」

エスティアは最初の砲撃の後の冷却と再チャージのために艦の向きを水平に変えている。
つまり、このままアルカンシェルを放ったとしてその先には何もない宇宙空間。

消え去るのはせいぜい人工衛星だったガラクタか、そこらに散らばる名もない岩石くらいだろう。


そうしている間にもサソードの全身は凍りつき、ついにその身動きの一切が取れなくなってしまう。
そのまま氷は床を侵食し、弦太朗と天道は階段からクロノのいる上階へと逃げる。



「凄いな・・・・」

「すげぇ・・・・こんなにできるのかよ、あんた!!」


驚愕する二人だが、クロノは特に感動することもない。


クロノは表立った活躍こそないものの、いまだになのはやフェイトたちが敵わないだけの実力を持っている魔導師。
それに加え、凍結の魔力を最大限に発揮する、その系統最強のデバイス「デュランダル」だ。


戦艦の一つ凍らせるのは、彼にとって不可能ではない―――――!!!


「この部屋に行いた時点で、僕の勝ちだった。もうアルカンシェルは撃たせない」

「撃っても無駄」から「撃たせない」へ。
凍結は艦内を次々に踏破し、ついには砲台部の根幹へと至り砲台そのものを停止させる。

ガタックは長門をまどかに任せ、その凍結が足に及ぶ一瞬前にガタックエクステンダーに跨りその場を離脱する。
そして砲台部城に残ったエターナルは再生が間に合わず、なすすべもなく全身を氷に覆われた。



ゴゥン―――――


「これが今の僕の力です。僕がこの部屋に入った瞬間から、僕らの勝利は決定していた」

「ならば、私とのやり取りは・・・・気付かれないためか」

コクリ、と頷く。

クライドはバインドの状態ながらも立ち上がり、クロノに向き合う。
静かにその顔を見、そして壁に突き立てられたデュランダルを見る。


「あれは」

「あの事件の後、グレアム提督とローゼロッテ、リーゼロッテがあの悲劇を二度と繰り返さないために作り上げた杖です」

「そうか・・・・しかし、これほどのことができるとは・・・・」


ビキビキと氷がだんだんとエスティア全体を覆っていく。
内部、外部に関わらず、その全てを侵食していくスピードは加速度的だ。


その中でクロノと、彼の認識している天道と弦太朗だけは氷に覆われなかった。
床はすべて凍ったが、氷は三人を持ち上げてその体を冷やすことはない。

だが、その冷気は艦内の温度を急激に冷やしていく。

吐く息は白くなり、頬と鼻の先が赤く染まる。



そのクロノ達の目の前で、クライドの身体も足元から徐々に凍り付き縛られる。
膝までそれが覆うと、バインドが解かれた。

込められた魔力が切れたのだ。
だが、今のクライドにこれ以上できることはない。


「クロノ・・・・・」

「はい」

「お前は・・・・・」


親子の会話。
天道と弦太朗は、少し下がってその様子を眺めている。


だが、それを遮る声が

《ガ・・・ザッ・・・・オノ・・・レ・・・・ェェェエエ・・・・》

「これは・・・・」


機械音声。
エスティアを乗っ取った、闇の書の闇によるものだ。

自我があるだけで驚きだが、それは明確な意思を以って殺意を向ける。


《キサマラ・・・・コレデコノ「ヤミノショ」ガオワッタトオモウナヨォォォ・・・・・》

すでに恨み言。
呪いを呟くように、その音声はそれだけ呟いて止まる。

そして瞬間、エスティア全体がガクンと揺れた。



「な・・・・」

何が起きたのかと周囲を見渡す三人。
すると通信機から声がした。

『天道!!聞こえているか!!?』

「加賀美!」

それはクラウディアへと帰還していた加賀美の物だった。

どうやら戦艦エスティアは、その動力が完全にストップしていたわけではないらしい。
艦をこの位置に停止させておくだけの動力は、まだ生きていたらしいのだ。

ここは大気圏外とはいえ、まだ地球の重力圏内。
動力無しでは、落下するだけ。

クロノはその部分だけは残していたのだが、エスティアは自らそれを切ったらしい。


「落下する!?」

「しかもこのままじゃ「EARTH」の真上じゃねーか!!」


ゴンゴン、と音を上げながら、大気圏へとゆっくり突入するエスティア。
摩擦により熱が生まれ、覆っている氷を多少溶かす。

しかし、それはすべてを溶かすには至らず、クロノが再びすべて氷結させる。



「その程度か?」

《コノォ・・・・・ダガマダダ。コノミヲモッテ、ワガハカイノイシヲカンスイスルノミヨ・・・・》


エスティアの落下は止まらない。
溶かすことは考えていたらしいが、もともと最初から落下する気だったのだ。

エスティアはその物量を利用し、もっとも直接的な破壊を行うことにしたらしい。



「クロノ、脱出しろ」

「・・・・・・・」

腰まで凍ったクライドの言葉に、クロノが無言で振り返る。
何秒過ぎたか。それだけして、クロノは振り向かずに二人に声をかける。


「脱出するぞ」

「ああ」

「よっしゃ!!・・・ッ痛~~~~!!」

「左腕が折れているんだ無理をするな」

元気な足取り、とはいえないが、二人が出口に向かう。
しかし、満身創痍。このままでは脱出は間に合わないかもしれない。

クロノはスッ、と小さなリモコンのような端末を取りだし、それのスイッチを入れるとそれを二人に向ける。
そこから出た光は二人を包み、そしてその姿を一瞬で消し去った。

二人はその「次軸転換装置」によって、簡単に言えばクラウディアへと転送されていったのだ。


これで残るは、クロノ一人。
その彼に、クライドが聞く。

「何故残った?」


その質問に、クロノは淡々と答える。
しかし、その表情はなぜか嬉しそうにも見えた。


「この戦艦をどうにかしなくちゃいけない」

「・・・・死ぬ気か?」

かつての父がそうしたように、自らを犠牲にしてこの艦を破壊する気か。
その質問に

「・・・・・・それは」


クロノは壁のデュランダルを引き抜き、艦長席の位置に向かう。
正面に向かい、父に背を向け、腕を広げて杖を構える。


そして



「そこで、見ていてください。父さん!!!」

「ああ・・・・息子よ」




------------------------------------------------------------



「な、なんですかあれは・・・・・」


地上。
エスティアがどうなったか。その報告をハラハラしながら待っていたアリスが、空を見上げて唖然とした。



見えたのは、巨大な戦艦。
しかも、それは異常なことにすべてが凍り付いていたのだ。

同時、街の向こうから太陽が顔を見せる。
空が白み、日光が射し、世界を照らす。



「EARTH」(仮)で待機していたメンバーは、空から来るその巨氷を見上げ、指差し何があったのかと頭を抱える。
この場所にいて大丈夫か、迎え撃ち破壊しなくていいのか。


それを聞き、空にそれを確認したショウは、医務室の窓から飛び出していこうとする。
さらに、動かない体を無理やり起こそうとする翼刀。


だが蒔風はのんびりと腕を頭の後ろに回し、起こされたベッドの背もたれに寄りかかる。



「まあ待て、二人とも」

落ち着いた彼に、ショウと翼刀が振り返る。
そして、まるで自分のことのように自信を持って蒔風が空を見上げた。

「クロノに任せろ。あいつは、やると言ったらやる男だ」



落下する氷塊。
それの表面は大気とのぶつかり合いに削り取られていっており、周囲に氷の粒子をまき散らしながらやってくる。


もうすでにその形がはっきりと見える位置までやって来る。
すると、一気にその塊は形を変えて崩壊を始める―――――







「そうか・・・・氷の塊が落ちないよう、その全てを・・・・・」

「原子レベルで氷結!!見せ場だ、デュランダル!!!」

《YES.BOSS》

エスティア艦内で、唯一氷におおわれていない彼が、両手をかざし、横になってその前に浮く杖に叫びかける。
次々に凍り付き、そのレベルを上げていくクロノ・ハラオウン。


エスティアはその機体を崩壊させていく。
氷と氷が擦れるような音が、まるで断末魔のような悲鳴を上げながら。


だが、それもほどなく終わる。
この巨大な船が、まるで自転車のようにガタガタと大きく連続的に揺れ始めると、その断末魔は終わった。


代わりに、それを操る存在からの怨嗟の声が


《キサマ・・・ヨクモコンナ・・・・コンナコトヲォォォオオオ!!!》

恐らく、エスティアの人工知能を得ての自我だったのだろう。
その終焉に、悲鳴を上げていく「闇の書の闇」。

それに、クロノの代わりにクライドが応える。

「どうした。これくらい予測できなかったか?」

《センカンヲ、ゲンシレベルデ、ヒョウケツホウカイ!?ソンナコトガデキルナド・・・・》

自らの存在。
自我がなかったが故、それを再び手放すこと、その消滅に恐怖に似た声を上げる。


《ワレハヤミノショ!!エイエンヲタビスル、フメツノ、フメツノォォォオオオオ!!!》

「騙るなよ偽物」

しかし、その叫ぶ機械音声に、クロノが断罪する様に言い放つ。



「この世に闇の書なんてものは存在しない。貴様は偽物だ。歪み、濁り、自らの存在を忘れて暴走するだけの悪魔だ」

そう、この書は闇の書。
その闇を乗り越えた少女たちを知っている彼からすれば、今更そんなものに、彼が臆することなどない。


「永遠?不滅?なんだお前・・・・その程度か」

《ナニィ!?》

「この書の名は、夜天の魔導書!!その知を未来へと残し、その希望を託した先達の意志を継承するためのもの!!それを、現世にしがみ付く悪霊がその身を使って騙っていいものではない!!!」



そして、ついにそのすべてが凍結する。

「終わりだ!!」


《ギギ・・・オノ・・・レ・・・・ハラオウン・・・・》

音声すら止まる。
その最後の言葉に、クライドは首まで凍ってなお、息子の姿を真っ直ぐ見据えながら天井を見上げて言う。

「当然だ。私の息子だぞ」



「エターナルコフィン――――」

「クロノ・・・・」

顎まで氷が迫り、全身が氷結していくクライド。
クロノがそれを発動させれば、その肉体は氷の粒子となって崩壊するだけだ。

そして、その一瞬前に


「アブソリュート・・・・・ゼロ!!!」

「大きくなったなぁ・・・・」

ザ―――――ァッ


「ッ――――――!ぁぁぁぁぁアアアアアアアアアアアアアア!!!」

クロノが叫ぶ。
その顔は―――――





空を覆い、エスティアがいくつもの氷塊へとバラバラに崩れていく。
砲台部はもちろん、機体部もガラガラと岩の塊のように。

そして、それがビルの上空になって一気に爆ぜた。

まるで空に咲く氷の華。
日光の光を浴び、そしてその氷の冷気は周囲の水分をも巻き込み凍らせ、そのカタチを成していく。


砕けた氷は空に幾つもの華を咲かせる。
艦にいた総ての物は氷となって砕け散り、その華を形作る一部となる。



華の型は多種多様。
それは――――偶然か、雪の結晶と同じ形をした物だった。

その形は一瞬で砕けて消えてしまうも、ハッキリとわかる形になっていた。



朝日を受けて、煌めく空の氷の華。
日光は七色の光を一瞬のみ映し出し、それが花弁を彩っていく。


いまこの状況は戦闘状態にもかかわらず・・・・敵味方問わず、感嘆の声を上げるばかりだった。

エスティアを追って降下していたクラウディアからはまどかと弦太朗が感動の声を上げ、地上では多くのメンバーが言葉を失う。



この数分に決着のついたプレシアも、地面に倒れ、消えゆく身体でそれを見上げる。
その身体を、二人の娘に支えられ、囲まれて。



砕け散る氷は、またその先で別の塊とぶつかり華を咲かせる。

その氷の中に、デュランダルを握ったクロノが立っていた。
バリアジャケットの裾には氷が張りつき、頬は赤く染まりきっていた。

だがそれがただ冷気だけによるものではないのは、顔に着いた氷の微粒子の中にある二本のラインが証明している。


衝突と開花を繰り返すことでだんだんと華は小さくなって行き、そして最後には完全に消滅していく。
最後に残るのは、キラキラと光り降り注ぐ氷の粒子のみ。



「すげぇ・・・・・」

「やったな、クロノ」


氷に合わせて落下し、そして数百メートル上空から飛行、ゆっくりと地上へと着地するクロノ。
キラキラと光る粒子だけが降りしきる中、静かに立ち尽くす。

そして襟をビッ!と正し、裾に着いた氷を落す。
顔に手を当て、そこから髪をかき上げるように這い上げ、顔を振って一息。

空に向かって敬礼。
そして頭を下げ、「EARTH」(仮)へと向かっていく。

その先で「EARTH」のメンバーたちが、自分の名を呼んで手招きしているのが見えた。

キャスター:クライド・ハラオウン以下、数名のサーヴァントを撃破。



戦いはまだ続く。
しかし、ひとまずクロノは


「魔力使いすぎたな・・・・疲れた」

首をさすりながら、溜息をもらすのだった。




to be continued
 
 

 
後書き
エスティア編、完結!!!

蒔風
「なんか六章最終回みたいな感じに盛り上がってるぞおい!?」

ヤバいね。
でもこれ書きたかったシーンだし。

仮面ライダーガールズ「咲いて」を聞きながらイメージしたらヤバかった。
故の挿入歌提供。

ぴったり合うかどうかはわからないですが・・・・・


そして、やはりいつの間にか終わっていたプレシア戦。
しかし二人の娘に囲まれてなら、彼女も幸せでしたでしょう。

ちなみにプレシアの身体に真っ直ぐになるようにアリシアが膝枕、フェイトが横からその手を握って笑っているシーンなんかイメージしたらなんか泣けた。



蒔風
「でも俺らまだ動けないと言う」

ですね~
夜も明けましたが、セルトマンは早速動いてくるのか?

それとも、まだサーヴァント小出しで時間稼ぎか!?



アリス
「次回。今度召喚されるのは――――え?まだですか?」

ではまた次回
 
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