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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第六章 Perfect Breaker
  再砲撃、承認


これまでのあらすじ


仮面ライダーオーガ・木場勇治を撃破したまどかは、内部に侵入しようとエスティアを回り込む。
そこには、エターナルによって首を掴み上げられるガタックの姿が。


そしてかつての友、神代剣・仮面ライダーサソードを撃破したカブト。
クロノをブリッジへと送り込んだフォーゼ。

合流した二人の前に立つのは、カブトが撃破したはずの―――――


バーサーカーとして新たに召喚された、仮面ライダーサソードの姿であった。




------------------------------------------------------------


セイバーとして召喚された仮面ライダーサソード・神代剣。

その人物は知っての通り、すでにカブトに撃破されている。
では再びカブト、そしてフォーゼの前に現れたこのライダーは一体何者なのか。

それは、神代剣という男に関して、少し説明が必要になる。



仮面ライダーサソードに変身する青年・神代剣。
「神に代わって剣を振るう男」と自らを豪語する神代家頭首である彼は、サソードゼクターに選ばれたサソードの適合者だ。

この世の全てのワームを倒すと言い、自らの姉を殺したワームという種族を根絶やしにするとして、時には天道とも張り合ったことがあるほどにワームを憎んでいた。

しかし、その自らの正体こそが姉を殺したワーム・スコルピオワームであったことに気付かなかった。


スコルピオワーム。サソリの特性を持つワームだ。
そいつは神代剣の姉を殺害すると、次に弟である剣に襲い掛かり、殺した。

その後、ワームの特性として神代剣の姿に擬態したのだ。



ワームの擬態は姿かたちのみならず、その記憶すらも完全に引き継ぐ。
故に周囲にその変化を悟られることなく、擬態を完了して社会に溶け込むことが可能なのだ。


しかし、スコルピオワームには誤算があった。
目の前でワームによって姉を殺された彼の記憶は、すでに強靭な意志として胸に宿っていたのである。

そしてそれをコピーして擬態したスコルピオワームの自我は、神代剣の記憶に過ぎないものに完全に崩壊させられた。


それほどまでに強い意志によって、「スコルピオワーム」という存在を「神代剣」に塗りつぶしてしまったのだ。


そうして、神代剣は生きた。
ワームへの憎悪を失うことなく、自らの正体を知ることなく。

その後、彼は自らの正体を知り、ワーム総てを一か所に集めてその頂点に立ち――――その後の始末を天道に託して、自らを含むすべてのワームを消滅させたのである。


以上が、神代剣という男の人生。



つまり天道を知り、彼と頂点を競った彼は、セイバーとして召喚された彼で間違いない。
「あの彼」を召喚することは、たとえクラスを変えてもできることではない。


では、この眼前のバーサーカーは

サソードに変身し、怒りと憎悪の咆哮を上げて破壊を実行してくるこの敵の正体とは


つまり、簡単な話――――――スコルピオワームが殺した、正真正銘の「神代剣」だと言うことである。






《rider slash》

「WOOOOAAAAAAAAAARRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR――――――ッッッ!!!」


「躱せ如月ッッ!!」

「ウをォあ!!」


乱雑な動き。
太腿部に剣を叩きつけ、ライダースラッシュを発動させたバーサーカーが、咆哮と憎悪に身を任せて、フォームもへったくれもなくブチかましてきた。

真っ直ぐに振り降ろされる刃を、カブトとフォーゼは左右に分かれて回避し、その間を縦一文字に刃が通過していった。


本来は毒液と共に敵を切り裂く技であるライダースラッシュだが、バーサーカーとしての召喚にその特性は失われているらしく、その分すべてが破壊力・攻撃力へと変換されているようだ。


通路の床は一瞬その耐久を見せつけようと踏ん張るが、それは確かに一瞬のみだった。
床表面が波打ったようになったかと思うと、それに耐えきれず暴れ、爆発したかのように爆ぜた。


足場が崩れ、下層へと落ちるカブトとフォーゼ。

当然、サソード自身も落下しているが彼には特に関係ないだろう。
現に彼はその剣を振るいながら、落ちる瓦礫を蹴ってカブトへと向かってその刃を振り下ろしにかかっていたのだ。


落下と言っても、一階分下に落ちるだけ。時間にして二秒とないだろう。
しかし、その二秒に満たない中での攻防は凄まじかった。


瓦礫を蹴って飛び出すサソード。
受け切れるとは思えないが、何もしないよりはましと、カブトクナイガンを構えるカブト。

しかしそれが交差する一瞬先に、フォーゼの「ウィンチ」がカブトの身体を引く。
空中で身動きのきかないサソードは、それでもフォーゼの方へと無理矢理体の向きを変えて刃を横に薙いだ。

紫の斬撃が、ウィンチのワイヤーを切断、さらに空を切ってフォーゼへと衝突する。
フォーゼはウィンチのマシン部分で受けるが、もともとそう言った目的の物ではないそれは簡単に砕け、左腕に伝わる衝撃はその骨を完全に砕き散らせた。


当然、カブトは引かれた勢いのままフォーゼへと向かうが、フォーゼはそれ以上の速度で吹き飛んでいく。
カブトはそのまま落ち、床を滑って停止する。


一方、左腕に引っ張られるように乱回転しながら、フォーゼは逆さまの状態で背中から内側の壁に叩きつけられる。そのまま壁が崩れればブリッジ内に入れたのだが、そう軟な壁ではないらしい。
激しいダメージにウィンチは消え、カブトを捕まえていたワイヤーも消えた。




一瞬送れたガシャァ!!と装甲がぶつかる音を鳴らしながら瓦礫の中に落ちるバーサーカー。
しかし、落下程度で止まるような存在ではない。


フォーゼの方へと意識を向けるより早く、カブトは即座にサソードへと向き直った。
最初の一撃。召喚されて直ぐだったからか、あの一撃にはまだ毒液が仕込まれていた。

通常装甲すらも蝕まれた今、クロックアップはできない。
だが、それは相手も同じだ。「出来るがやるだけの理性がない」のか「そのスキルも狂化に振ってしまった」のかは定かではないが、今はそれはどうでもいい。



(確かバーサーカーになるとすべてのスペックが一段階上がる。すでにカブトのライダーシステムは凌駕されてしまっているだろう)


切り伏せる―――というよりは、もはや「剣の形をした棍棒を叩きつける」に近い動作で襲い掛かってくるサソードを、半身になって回避するカブト。


(だが、ならば通常よりも強い一撃で攻撃を当てればいいだけの話)

《1》


振り下ろされたそれを半身で回避し、それが身体の横を通過するよりも早く相手の懐へと飛び込むカブト。
それにより、紙一重であったにもかかわらず剣圧に巻き込まれることなく相手へと接近することに成功する。


《2》

(問題は――――俺がその衝撃と反動に耐えられるか)


カブトクナイガンの刃を腹に押し当て、そのまますれ違いざまに腹を切るカブト。
だが装甲からは少しばかりの火花が散るだけで、ダメージが通ったとは言い難い。


(一度、ハイパーフォームへの変身、ダメージ。さらにライダーフォームでのダメージ―――――つまり、これが最後になる)

《3》


これ以上のダメージは、装甲が耐えられない。
実質最後の攻撃に、サソードの背後に転がり出て立ち上がるカブト。

恐らく相手は振り返りながら剣を振るってくるだろう。

それをしゃがんで回避してカウンターで蹴りを入れる。
否、しゃがんでと言うよりは、崩れ落ちながら、だ。


ハイキックを入れる際の軸足を崩し、尻から落ちながら奴の顔面にライダーキックをブチかます。
それも一度のチャージでは足りない。タオキン粒子を、二度脚に送り込んでの一撃を。

軸足を崩す以上、蹴りはそれよりも先に放たねばならない。

振り返りと蹴りを同時。そして軸足を崩して身体を落とし、振り返りざまの剣を回避―――――!!!


《1、2、3(ガシュガシュッ!!)》

「《ライダーキック》!!!」

ゼクターからの再度の音声と共に、天道の声が被って技名を唱える。
しかし、蹴りを放とうと上げた脚はそこで止まった。


こちらに向かってくるかと想定されていたサソードは、視界からカブトが消えると同時にこともあろうか、新たに視界に入った、地面に倒れるフォーゼに向かって突進していっていたのだ―――!!


「な――――!!!」

今、フォーゼは左腕が完全に破壊されている状態だ。
回復用モジュールの「メディカル」も、左腕がこの状態ではマテリアライズだけでも危ない。

しかし、今となってはそれが出来たところで間に合わないだろう。


壁に叩きつけられたフォーゼは、脚をこちらに投げ出して大の字になって倒れている。
あの一撃を、左腕でガードできた(と言えるかどうかが疑問ではある物の)とはいえ、まともに喰らったのだ。

変身が解けていない以上意識はあるのだろうが、身体が動く状態かどうかと言えばそうでない可能性の方が高い。仮に動けて、四肢のどれか一つ。
その程度では、あの狂戦士の一撃を防げない。



「クッッ!!!」

走りながら思わず左腰に手を当てるカブトだが、クロックアップはできない。
右足に溜まった二度分のライダーキックのタオキン粒子をバチバチと爆ぜさせながら、サソードの背を追う。


だがいくらなんでも間に合わない。
一か八かの賭けに出るか―――と、カブトが覚悟を決めた、その瞬間。



《ウォー・ター》《ネッ・ト・オン》

「らァ!!」

ブシュッ、ブァッ!!!


フォーゼのウォーター、ネットスイッチが発動した。
蛇口型のモジュールから吹き出した水流が少し持ち上げられた左足から吹き出し、勢いを殺されたサソードに今度はネットによる電磁ネットが覆いかぶさって捕えたのだ。

暴れるサソードだが、覆いかぶさったネットは千切れてもまたすぐにフォーゼによって覆いかぶさられる。


瞬間、カブトの速度が上がる。

死中に活在り。
今この一瞬を逃せば、もはやこいつに太刀打ちできるかどうかわからない―――――!!



「いまだ!!先輩!!」

「フッ――――ォオオオ!!!」


右足をバタバタさせながら、電磁ネットを次々にサソードとかぶせながら、フォーゼがカブトの援護をする。
暴れるサソードのその一瞬の隙間。そこを狙い、タイミングを合わせて駆けてきたカブトが、その頭部へとハイキックをブチかましに脚を振り上げる―――――


そして


「オリャァぁあああああ!!!」

「喰らえ―――――!!!」

「AAARRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRMUUUUUUUUUUUUッッッッ!!!!」


三者、大きな複眼が一層の光を放つ。

気合と根性に
覚悟と一撃に
狂気と咆哮に

紅く、蒼く、碧く

その中で、一際強くその意思を示した色は―――――



------------------------------------------------------------




ドサッッ

「ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・・・・」

「ぐ・・・ぅ・・・・流石だ、クロノ」


エスティア・管制ブリッジ上階


下階に比べると狭いが、それでも十分に広く取られたそのスペースで、額から血を流しながらクロノが足元の人物を見下ろす。
バインドによって拘束されたその人物は、他ならぬクライド・ハラオウン。

一分と少しの攻防は、息子・クロノに軍配が上がったのだ。


「発射スイッチを押さなければ、アルカンシェルは発射されない――――スイッチを破壊すると言う手もあっただろうが、それでは電装系をいじれば発射は可能。なるほど、こっちを狙ったのはそう言うことか」

「こっちのスイッチを破壊しても、それじゃ意味がない。この艦には、あなたしかいない。ならば、抑えるのは貴方だけで十分だ」

「―――――そうかな?」

「え・・・・・」


クロノの考えは正しい。
確かに、アルカンシェルは発射スイッチを押させなければいいだけのこと。

スイッチ破壊の隙にクライドが別ルートからの発射を作動させては意味がない。
故に彼を捕えたのだが、クライドはそれだけでは終わらないと言う。


「思い出せクロノ。この艦には、一体何がいた」

思考を巡らせる。
後から追加される可能性はあるが、それを除いて考えると―――


カブトを襲った刃
砲台部でガタック達を抑えている敵
鹿目まどかを引き込んだ二又の刃


「敵はそれだけだったはず・・・ほかにもいると?」

「・・・・この艦の名は?」

「エスティア・・・・」

「そうだ。それは私が艦長だから顕現できたものだ。考えろ、クロノ。この艦には「私の物ではないもの」が存在していたはずだ」

「・・・・・まさか」


クロノが周囲を見回す。
正確には、このブリッジに入るための扉や通路を順番に。


そこから伸びているのは闇の書の闇。
その暴走プログラムが発していた、茨。


八神はやての時にはなかったものだが、これが父が相手をしたときの闇の書の所有者が蒐集させたものなのだろう。

これが管制プログラムを乗っ取り、エスティア全体に侵食。
ついにはクライドをも取り込み始め、脱出できなくなった彼は自身とエスティアごとこれをアルカンシェルで消滅させたのだ。



故に、勘違いをしていた。
その死に際の存在していたからこそ、部分的にそれが顕現されていたと。

しかし、決してそうではない。
大したことはないこの茨だが、その程度の関わりでスキルとし、そして使用するにしてはこの茨は良すぎる。

つまりこれはキャスターのスキルとしての顕現ではなく、別の存在による施行だと言うこと。



「闇の書の前所有者がいるのか――――――!?」

「正確には「闇の書に取り込まれた前所有者」だ。私が破れたとなれば、彼がすることは一つ」


ハッとして、クロノが背後を振り返る。

アルカンシェル発射スイッチのある艦長席。
そこに、ウニョウニョと動く植物のようなものが。


「くっ!!」

ストレージデバイスを振るい、その茨がスイッチに触れるよりも一瞬早く、魔力スフィアがスイッチの取り付けられた機会を土台ごと破壊する。



ゴゥン――――――

《全システム、掌握完了。アルカンシェルチャージ完了まで残り、120秒。119、118、117――――》


「なに!?」

「遅かったんだ、クロノ。もはや闇の書はこのエスティアを手中に収めた。もはやスイッチを押さなくったって、アルカンシェルの発射は可能だ」


プログラムの掌握。
つまり、スイッチによる外部からの入力がなくとも、その内部でOKサインを出すことが可能ということ。

アルカンシェルの発射だけでなく、その全てのシステムを完全に乗っ取られる。


もはや名も姿もなきキャスター。闇の書に取り込まれてしまった前所有者は、あの茨ではない。
この戦艦エスティアそのものを肉体としたサーヴァントとして存在を新たにしたのだ。


「なぜだ。なぜ最初からアルカンシェルでこの艦を沈めなかった。かつてこの艦が墜ちた原因で攻めれば、簡単に事は済んだはずだ」

サーヴァントは、伝承やその死に際の状況が致命的な弱点とされる。
故に真名を明かすことなくクラス名で呼び合い、宝具の開示も極力控える。

無論、宝具や伝承というのは英霊の座に接続され英霊をサーヴァントとして召喚する場合だが、死に様などが弱点とされるのは変わらない。

つまり、アルカンシェルによって消滅させられたこの艦はその攻撃に弱いと言うことになる。


あれから十年以上。
クロノの戦艦「クラウディア」にも、当然アルカンシェルは搭載されている。

だが、彼はそれをしなかった。


しなかったのに、合理的な理由があったわけではない。
やろうとしたが、できなかったわけでもない。
やむにやまれぬ事情など、どう考えてもどこにも存在しない。


ただ、一つだけの理由は、彼がクロノ・ハラオウンだから抱く感情。


「あなたに、見せたかった」

自分の姿を

「あなたを、知りたかった」

掠れてしまいそうな幼い記憶の中のあなたを

「あなたに、再び砲撃を向けることはできなかった」

二度も同じ死を送るなど、そんなことできるはずもない



その父が故の、子の想い。
それを「無責任だ」と言うことは簡単だ。

だが、それを侮蔑し、貶すことは誰にも許されない。


失敗の可能性を考えたとして、それでも我を押し通した彼の感情は、果たして「愚か」と言えるものなのか。




「愚かな・・・・・」

だが、それをクロノに言えるただ一人の人物がそれを言う。


「それで皆を危険にさらす?艦長、そして提督にまでなったお前が、よくもこんな無責任な決断をしたな」

「・・・・・」

「確かに、息子の成長は見たかった。嬉しかったさ。こんなに簡単に私を捕まえて無力化したのだから。だがそれだけなら、お前の顔を見ない方がまだマシだった」


《63、62、61――――アルカンシェルのチャージ完了まで、残り一分。再発射しますか?――――再発射を承認。砲撃準備。砲首旋回。目標を設定します》


アルカンシェルの発射で、残り数秒。
ここまで来ると、もはや砲台の破壊しか止める手立てはない。



今、その砲台部では―――――



「加賀美さん・・・・・・え?」




「―――――ガフゥッ!!!」

バチッ!!ドン!ドン!・・・・バァアン――――!!!


ガタックを掴み上げるエターナル。
しかし、その全身から火花と小爆発が起こりガクガクと膝が崩れていく。


ドシャァ!と投げ出されるガタック。
どうやら勝利はしたようだが、こちらも負傷の色が濃い。

装甲が光り、変身が解けそうになっているのがその証拠だ。
だがガタックはどうにか装甲をプットオンさせ、マスクドフォームに戻ることでそれを押しとどめる。



エターナルは倒した。しかし、完全にとはいかない。

しかも相手はNEVERだ。そう時間もかからず復活するだろう。
対し、こちらは手負いのライダーと無力化された長門。戦闘可能ではあるが距離のあるまどか。


砲台の破壊は絶望的だ。




ブリッジ内で、バインドされた状態でクライドが落胆の声を上げる。

「私情に動き、皆を危険にさらす提督など聞いたことがない・・・・・」



ドォゥンッッ!!

「なに!?」


アラームだけが鳴り響くブリッジ。
そこに、突如として衝突と瓦解音。そして狂戦士の咆哮が響き渡った。


「ガ・・・・」

「な・・・ン・・・・・」

「WOOOOOOOOOOOOOORRRRRRRRRRRRRR!!!!」


クロノが下を見ると、下階の壁が爆破、破砕され、その向こうからフォーゼとカブトがサソードによって吹き飛ばされてきたではないか。


身動きの封じられたあの状態からフォーゼのネットを引き千切り、カブトの二回分のチャージを溜めたライダーキックをこともあろうか真正面から握りとめたサソードは、フォーゼの叩きつけられた壁にカブトを投げつけ、そしてその剣の一撃でブチ破ってきたのだ。
壁に叩きつけられたカブトを狙った一撃は、床に滑り込むように倒れたカブトには当たらず、こうして壁に当たってブチ破ってきたらしい。


だが

「グァッ」

「うァ・・・グ・・・・」

その余波でも相当の威力があったようだ。
階下の床を転がる二人の変身は解けてしまい、倒れる二人の身体は立ち上がろうとも腕や足が身体を支えてくれない状態だ。。



「カブト、フォーゼ!!」


いきなりの乱入者と、傷ついた仲間に身を乗り出して声をかけるクロノ。

そのクロノに、クライドはなおも語りかける。

「お前は乗り込んできてしまったがために敗北する。しかも、仲間も巻き添えにして。もうアルカンシェルは止まらない。これがお前の作戦か、クロノ提督!!」


その言葉に、クロノが止まる。

階下の二人は、立てないなりにその場から動こうとするがやはり遅々とした速度だ。
サソードはというと、あの剛剣撃に剣がどこかに行ったらしく、瓦礫の中の剣を探しているところだった。

バーサーカーにもかかわらずあくまでも剣での攻撃にこだわっているあたりが、元はやはり神代らしいと言えばらしい。


だが、剣が見つかるのは時間の問題。
それも、そうかからないはずだ。

二人の移動速度では、逃げ切ることは不可能だ。




しかし、クロノはその階下の状況をちらりと見、ある一点をじっと見ながらその場を動かなかった。
そして、一言。


「・・・・確かに、僕の作戦は愚策でした」

「なに」

「しかし」

驚愕するクライド。
しかし、クロノの言葉は続く。

「ボクは失敗したとは思っていない。これは成功しているんです」


最初こそは確かに愚策と言えるものだったが、今となっては功を奏したと言える。

アルカンシェルを発射しなかった理由は、確かになかった。
しかし結果論ではあるものの、しなくてよかったと思っている。

その理由は一つ。
ここに明らかになったキャスター、闇の書の闇と化した前所有者の存在だ。


もしもアルカンシェルを発射していたら、その兆候を察知して闇の書はクラウディアへと侵入していたかもしれない。
周囲の戦艦を取り込むのは、すでに過去確認されていることだから確実だろう。

もしもクラウディアが闇の書に乗っ取られれば、被害は確実に全滅だっただろう。
それを回避するには、やはりこの手しかなかったのだ。


「とはいっても結果論。やはり僕のこの作戦は、褒められたものではないでしょう」

「・・・・だがアルカンシェルは止まらない」



結果的に良かったのは確かにそうだ。

だが、それでもこれを成功したと言えるのか。


アルカンシェルは止まらない。
スイッチを破壊しようとも、プログラムそのものを乗っ取られては意味がない。

砲台部の破壊も、今からでは間に合わない。


もう一分もしないうちにアルカンシェルは発射され、地上の半径数十キロにわたる範囲は時空断裂に巻き込まれて消滅することになるだろう。
もちろんその中にセルトマンや大聖杯もあるわけだが、これを実行したあたり何か対策はしてあるのだろう。



そうしていると、クロノの眼下でついにサソードが剣を拾い上げた。

そしてユラリと、天道と弦太朗の方へと向き直る。
腕を広げ、その圧倒的な破壊の一撃の矛先を、生身の二人に差し向けるために。


それでも、クロノは動かなかった。
じっと、その状況を睨み付けるのみ。


その内、無情にも機械音声が時間を告げる。



アルカンシェル、発射完了時間まで残り―――――



《発射スイッチのロック―――解除を確認。アルカンシェル発射目標の座標を確認。機体旋回。目標を射程範囲に入れます。チャージ完了、及び再発射まで残り20秒。19、18、17――――》




to be continued
 
 

 
後書き

なんということ!!アルカンシェル発射は止められないのか!?

アナウンスだけでわかりにくそうなので、アルカンシェルの段階を少し簡単に。


再発射の意志を確認

目標の位置の打ち込み

発射スイッチのロック解除(プログラム内で処理)

砲台を目標へと向ける


ですね。

エスティアは地球に対して腹を見せるように停滞しています。
最初に発射し、再チャージするために機体を水平に戻したんですね。で、また地上に向けると。


にしてもバーサーカーサソードヤバいっすね!!

原典を見ると、神代剣は二人います。

スコルピオワームに殺された神代剣(本人)と、カブトTV本編に出てきた神代剣(スコルピオワームの擬態)です。
今回は、前者にセイバー、後者にバーサーカーになって出ていただきました。

バーサーカーサソードは剣を振るって暴れるだけですが、その威力がケタ違いです。
まあいろんなスペック(クロックアップや毒液のライダースラッシュ)を犠牲にしてますから、それくらいないと割に合わないですがね。


天道
「とか言いながら最初の一撃だけはしっかり毒液があると言うご都合設定か」

あれは召喚時にもともと剣に蓄積されていたものです。
それを初撃に出してですから、もうそれ以降にはない、ということです。

「毒液での攻撃スペックがない」というよりは「毒液を生成するスペックがない」と言った方がいいですね。



そしていつの間にか終わっていたガタックとエターナルの戦い。

ガタックもエターナルも、真正面からのぶつかり合いで殴り合いましたからねぇ。
まあライダーカッティングとかいろいろやったから「殴り合った」のとはちょっと違いますが。

お互い未来を、先へ先へと生きようとする者同士。
しかし大道克己は過去を斬り捨て、対して加賀美は過去を乗り越えて今の強さとして未来へと進んでいます。

その意思の強さが一つ。
そして何より、こちらもいつの間にか帰ってきていた長門の援護があったからでしょう。


まあ仮にエターナル側に援護があったとして、ガタックはそれでも「守るべき仲間」のためにごり押しで敵を粉砕していたでしょうが。

加賀美
「書きゃよかったじゃんか!!!」


ほら、その・・・・話のテンポ的に

加賀美
「 」




クロノ
「次回。地上への砲撃。エスティア編完結」

時間かかったなァ・・・・・

ではまた次回 
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