| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第六章 Perfect Breaker
  残滓の刃

これまでのあらすじ

大気圏外・時空航行戦艦エスティアを舞台に、各々開始される戦い。


理想の残滓へと挑むまどか。
初撃、一太刀を喰らうカブト。
過去の幻影と対峙するガタック。

エスティアのアルカンシェル再起動迄の残り時間は、すでに8分を切ろうとしている。


その内部を、順調に進んでいると思われていたフォーゼとクロノはというと・・・・・・


------------------------------------------------------------


「うぉお!!」

「これは・・・・闇の書の?」

ホイールによって廊下を爆走していたフォーゼが、曲がり角を進んだところで急ブレーキをかける。
その先には、無数の茨が壁や床と同化して、鬱蒼と生い茂っている光景が広がっていた。


それが、壁のように彼等の行き先を阻んでいるのだ。
隙間から向こう側を見ると、その先には管制室。つまり、アルカンシェルの発射ボタンのある部屋がある。

もっとよく見ようと近づくが、ある一定の範囲に入ると茨はざわついて警告を発してくる。


「どうやら、近づけるのは二メートル程度までか。触れられたらそのまま取り込まれてしまうな」

「でも茨だろ?こいつで焼き飛ばしてやるぜ!!」

《ファイアー》ガシュゥ


魔法によるものとはいえ、あくまでも植物だとと思っているのか。
フォーゼはアストロスイッチNO.20「ファイヤー」をフォーゼドライバーに挿入する。

そしてスイッチを引くと、その姿が真紅に染まり、仮面ライダーフォーゼファイヤーステイツへと姿を変える。


「おら!!」

そして出現した火炎放射器「ヒーハックガン」を向け、炎を噴射。
茨は甲高い悲鳴のような音を上げながら、グズグズと崩れて行ってしまった。


「こんなもんか。さ、行こうぜ!!」

やりきったと言わんばかりにヒーハックガンを肩に担ぎ、軽快な足取りで先に進むフォーゼ。
その後に続き、クロノも慎重に進んでいく。

「む、まて」

「ん?」


火炎で開けた茨の穴をくぐろうとすると、クロノがフォーゼを制した。
見ると、茨は再生してその穴をだんだんと小さくして行っているではないか。

咄嗟に下がるフォーゼ。
そうすると、茨は元のような壁へと戻ってしまっていた。


「どうする?」

「今は再生しきる前に範囲外に出たからいいが、し終わったときに範囲内にいたらどうなるかわからないな」

「じゃあ凍らせればいんじゃね?」

《フ・リーズ・オン》

そう言って、フリーズスイッチを起動させる。
現れたモジュールから冷気が噴出され、今度は一瞬にして茨を凍りつかせることに成功する。


「んで、砕く!!」

《ハン・マー・オン》


フォーゼの長所は、見ての通り多種多様なスイッチによる特殊能力。
スイッチの換装に手間はかかるものの、こういった場所の攻略には非常に役に立つ。


凍らせたため、今度は容易に再生出来ないようだ。
今の内に、とその穴をくぐって先に進む二人。


瞬間


「アウェイクン」

そう一言、声が聞こえてきた。
すると凍り付いていた茨が、自らにこびりついた氷を砕き、一斉に二人へと襲い掛かって来たではないか――――!!


「こ、これは・・・・・」

「やべぇ!!」


さっきまでをは違う動き。。
明らかにこちらに対して敵意を以って襲い掛かってくるそれを、フォーゼはベースステイツに戻り「シザーズ」と「クロー」を使って切り刻む。

だが、相手は周囲360度から襲い掛かる茨。
どうあがいても逃れられることができるのは一人。


ならば

《ハン・ド・オン》

「うりゃぁ!!」

「な!?」

左足にマテリアライズされたハンドモジュールが、クロノの身体を掴んで管制室へと放り込んだ。
床を転がり、クロノが振り返ったときにはすでにフォーゼの姿は茨に隠れて見えなくなってしまっている。


「おい!!」

『心配すんな!!俺は大丈夫だ!!』

巻き込まれたか、とクロノが青ざめると、通信機から弦太朗の声がしてきた。
ハンドと同時にロケットスイッチを使い、あの茨の中から逃げきることができたらしい。


『でもさっきまでいた通路に戻っちまった。そっち行くには時間がかかるぜ?』

若しくは、別のルートから入るか、をしてみるとのことだ。
無理はするな、と一言つげ、お互いに無事を祈って通信を切る。


クロノは、静かに茨に背を向けた。
もう5メートルで、管制室に足を踏み入れる。


そこにいるのは、恐らくただ一人だろう。


クロノが入ったのは、管制ブリッジの下部階。
本来ならば数名のオペレーターが様々な計器へと向き合っているはずの空間だ。


そして、見上げながら振り返る。
管制ブリッジ内、上階。そこは艦長が座る椅子。


そこにいた、ただ一人のクルーは

「クライド・ハラオウン・・・・・・」

「・・・・来たのか、クロノ」

「ああ。父さん」


ストレージデバイスを構え、自分を見下ろす父に眼光を飛ばすクロノ。
それに対し、クライドは静かな表情だった。気構えることもなく手をかざし、ストレージデバイスを握った。


「アルカンシェルを止めてください」

「それはできない。この艦を現界させているのは確かに私だが、その制御はマスターに握られている」

「マスター・・・・アーヴ・セルトマンか」

「この艦は存在し続け、そして可能な限りアルカンシェルを打ち続ける。止めて見せろ、クロノ」

父に、この艦を止めるという意志はない。
対峙するということに、抵抗をしない。


知っているからだ。
自分の息子は、すでに自分を越えていると。

だからこれほどにまで危険な状況でも、冷静でいられるのだ。


「父さんを止めて見せろ。この破壊を阻止して見せろ!クロノ・ハラオウン提督!!」

「当然だ―――――!!!」



父を越える。
自分が、この仕事に就いた原点。

追い続けた背中。

その背中が、正面を向いて自分と向き合っている。


少年は青年となった。
それでも、目の前の父は越えねばならない。



------------------------------------------------------------


仮面ライダーカブトハイパーフォームと、仮面ライダーサソードの戦い。
ハイパークロックアップさえ使えば、相手がたとえ同等の能力を持っていても対した相手にはならないだろう。

その速度は、すでに時間を逆行させるまでの域に達している。


いくらサソードが優れた剣技を持っていたとして、それがカブトを凌駕していようとも勝てる確率はごくわずか。


しかしそんな我々の予想とは逆に、サソードはカブトに対して善戦していた。
それどころか―――――追い詰めてすらいる状況だった。


ズガッッ!!

「グァッ!!」

サソードヤイバーによって、ハイパーカブトが斬りつけられて地面を転がる。


本来ならありえないことだ。
しかし、現実にカブトは宇宙空間に吹き飛ばされぬように転がり、それを悠然とした歩みでサソードは追い詰めて行っていた。


「そのハイパークロックアップ。当然お前自身を守るための装甲もあって発動できるもの」

ハイパーフォームの装甲は、単純に防御力を上げる物ではない。

クロックアップを越える速度を発現するハイパークロックアップは、既存のライダーフォームの装甲では耐え切れないのだ。
その為の装甲。あれだけ分厚い装甲を纏い、タオキン粒子を身に纏うには理由があるということだ。



「今のお前はハイパークロックアップが出来ない。なぜかわかるな?」

「・・・・・毒か」


そう。最初に食らった一撃。
あの一撃によって、ハイパーカブトの装甲は微量ではあるが融解していたのだ。

宇宙空間での活動を不能にするほどではないがしかし、ハイパークロックアップを防ぐだけの効果はある。



「クロックアップ!!」

倒れるカブトだが、通常のクロックアップは可能のようだ。
高速世界へと移り、サソードの剣を回避する。


だが、相手もまたその世界へと入門してくる。
果たして、その中であのサソードと剣の相手をして勝てるだろうか?


《1、2、3》

「ライダー――――」

「おおぉぉお―――――!!」

《rider slash》

《rider Kick》

「キック」

ドォンッッッ!!!


サソードによる、背後からの完璧な一撃。

それを卑怯だとは彼は思わない。
相手の背後を取るのは戦闘に置いては基本である。

それをされたからと言って、それを罵るのはお門違いだ。


しかし、だからこそカブトは


「ゲ――――ブぁ!!」

「・・・・フゥ」

背後から襲い掛かるサソードに、見事な一撃をブチ当てることに成功したのだ。


サソードは振り返りざまのハイキックを喰らい、そのままエスティア内部へとぶち込まれていく。
壁に開いたその穴からカブトも追っていき、すると中の空気を逃がさないよう隔壁が閉じられる。


「な、なぜわかった」

剣を杖のようにして立ち上がるサソード。
それに対し、カブトは静かに言う。

「俺は、幾度もお前と戦ったな」

それは実力を競う戦闘から、料理、更にはもっとくだらない様々なことにまで至る。
その中で、神代剣という人間は


「俺の知る神代剣は、正々堂々と決闘を挑み、そして挑んだ以上は手を抜くことなく相手を倒しにかかる男だ」

「俺が、背後から襲い掛かると予測したのか・・・・・」

「いや、違うな。俺はただ評価しただけだ・・・・神代剣は、俺の背後を取ることができる。それだけのことが可能な、俺の知る最高の剣士だとな」


天を指す。
彼を照らすのは、エスティアの照明ではない。
地球の向こう側から顔を出してきた太陽。

エスティアに開いた穴に立つカブトを、背後から太陽が照らし出す。


「おばあちゃんは言っていた。頂は立つことが目的じゃない。そこから総てを見、総てを聞き、総てを知り、そして総てを守るためにある。それが」

「それが天の道、か」


「頂に意味はない。頂点に上る意思は重要だが、頂そのものに意味など何もありはしない。本当に大切なのは、そこに向かって足を進めること。決してそれを諦めないこと。そして、そこから何を見、何を知るか。俺は行くのは天の道。俺がみんなに、総てを教えてやるのさ」

「・・・・道理で。ただ頂点を目指していた俺が、お前に勝てるわけがなかった」

「俺はすでに頂点に立つことを約束された男。だからこそ、お前のような男が重要だった」

「勝てもしない俺がか?」


「この俺を頂点から引きずりおろすことのできる人間は、そう多くはないからな」

「―――――ここまでやって、最後に持ち上げるのか・・・・全く、卑怯なのはお前だ、天道」


そう言って、サソードは装甲がぼろぼろと剥げ落ちていき、その素顔を一瞬だけ露わにした。


「さらばだ。我がライバルよ」

「ああ。今度こそ、な」


そして、消える。
仮面ライダーサソード・神代剣は、満足そうに去って行った。



「・・・すでに人生を全うした人間を呼び戻し、心を惑わし戦いを誘発させる・・・・」

満足そうに去った彼だが、もともと彼に未練などはなかった。
もし何もなく召喚されたのならば、天道と戦うと思ったことすらないだろう。

だが、彼の心にあるわずかな思い。
「天道に勝ってみたい」というわずかな思いを、セルトマンは膨大させることでサソードを――――サーヴァントを戦わせているのだ。


「俺は決して許さない」

それは、死者の想いを冒涜する行為だ。
未練なく昇天した彼らの魂に、泥を塗りたくる行為だ。


拳を握りしめ、ハイパーゼクターを外すカブト。
ライダーフォームへと戻った彼は、大体の位置をすでに把握している。

このまま管制ブリッジに向かえば、アルカンシェル発射装置の破壊まで、お釣りが来るほど時間に余裕がある。

そして、第一歩を踏み出したところで


ズガァッッ!!!

「――――な・・・に・・・・」

背後から斬りつけられ、地面を転がる。
破壊された壁の瓦礫の中に突っ込み、そのまま転がっていく。


カブトに襲い掛かる、第二の敵。
サソードが撃破されたことを感知し、セルトマンが送り込んだ新たなるサーヴァント。


そいつは


「バカな・・・・なぜまだお前が・・・・」

「SHIIIIIGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」


握りしめた刃を力の限り振りおろし、ただただ破壊の暴風となって周囲をバラバラに引き裂いていく。
その剣には技も何もあったものではない。しかしそれでいて、空気すらも細切れにするほどの剣速。


間違いなく、その剣士は「バーサーカー」であった。



------------------------------------------------------------



「はぁ、はぁ・・・・」

「ふぅぅうウウウ!!アぁッッ!!」

「くぅっッ!!」


エスティア後部。
仮面ライダーオーガVS鹿目まどか

初撃において、弓という優位性を得ていたまどかは即座にオーガに向かって一撃を放った。


まどかをここに引きずり込んだ剣の力、エネルギーの総量からして、弾幕を張ったところで、分散した力ではこのライダーは倒せない。
アルカンシェル発射まで8分を切った今、時間を掛けている余裕はない。

ならば、狙うのは一撃。それも、初撃必殺の一発だ。



背後に展開させた翼のようなエネルギーを、一瞬のうちに手の中へ。
それは矢の形になる前に弓の元に据えられ、引かれるとともに矢の形状へと変化した。


そして放たれる、ピンクの矢。
字体は物凄く可愛く見えるが、実際の物はそんな生半可なものではない。

まどかにしてみれば、オーガを貫き、そのままエスティア内部へのダメージを与えるつもりで放った一撃だ。


しかしこうして今、オーガとまどかの交戦が続いているということは、それが失敗したことに他ならない。


振るわれるオーガストランザーは、先端が二又になった剣の形をしたエネルギーを纏った剣だ。
それが肥大し、巨大な剣の形にして振るうが故の大剣。


宇宙空間でも宙を自由に動けるまどかに対して、オーガは違う。
しかし、それでもまどかを追い詰めているのは、それが原因だ。


どれだけ離れても、どれだけ大きく回避しても、その刃はまどかの身体を完全に逃すことを許さない。
簡単な話、オーガストランザーの長さ、大きさには、限界がないのだ。



「どうした。逃げてばかりでは、オレは倒せないぞ!!」

(このままじゃ、勝てても時間がかかりすぎちゃうよ!ど、どうしよう・・・・・)


撃破出来るだけの威力を込めた初撃は、あの刃によって砕かれてしまった。
弾幕を張っても、それは同じだろう。

あの刃の面で受ければいいだけの話。


弓は遠距離。
剣は近距離。

相手との距離を取り続ければ、弓が勝つのは道理―――――

しかし、ここではその道理がねじ曲がってしまっている。
距離を取っているはずの弓が逃げ回り、相手が距離を取っているのにもかかわらず、剣が有利なのだから。


(えっとえっと・・・・た、確かこういう時には・・・・・)

鹿目まどかという少女は、実際の戦闘の経験は皆無だ。

他の時間軸の記憶を知ったからと言って、彼女自身が戦いを経験したわけではない。
フロニャルドでの戦興行も、メイン戦力はさやか、杏子、マミだったために参加したとは言い難い。

だが、その分「EARTH」のメンバーからの指導は一番しっかり聞いていた。
他の四人は自分の戦い方をすでに確立させていた分、彼女は自分なりの戦い方を知る必要があった。


そして、その指導を思い出し―――――!!


「そうだ!!」

テスト中にやっと答えが浮かんだ、というように、パァッと笑顔が咲くまどか。


(これならいける・・・・でも、問題は――――!!)

やるべきことはできた。
後は、それを実行するだけ。



オーガの上空を逃げ回っていたまどかが、その動きを止める。
そして、ブワッ!!と一気に展開されていく陣。

何かの系図にも見えるような形をしたそれは、彼女の発射台だ。
その陣の中に点在する円形の陣それぞれに、エネルギーが蓄積されていく。


「むっ・・・!!」

それを見て、オーガが薙ぎ振るう剣の腕を止める。
通常の剣の大きさにまでストランザーを引っ込め、先端をまどかに向けたまま腰に据える。


そして、両者は同時に動いた。


「せぁっッ!!」

「えいっっ!!」

キュドドドドドドドドドドゥッッッ!!!

無数に放たれる桜の光弾。
その中を、流れに逆らって突き伸ばされていく一筋の黄金。


光弾は少し捻られながら突き出されてきたエネルギーによって次々にかき消されていき、しかしその分、その刃のエネルギーを砕いて削って行っていた。


「これは――――キツ・・・・!!」

「はぁあああ!!!」

しかし、それでも優位なのはオーガだ。

刃を削りきらなければならないまどかに対し、オーガの対処は楽だ。

何せ、矢はすべて自分狙い。放っておいてもこっちにくる。
いくら弾幕だろうが、螺旋状の軌道を描いて飛んでこようが、その根元にいる自分に向かってくるのだから、剣を捻ればそれはすべて弾き落とせる。

その分の刃は矢は削れるだろうが、オーガは勝たなくともいいのだから焦りはしない。
いざとなればこの場から跳び退いて回避でもすればいい。


「もっと・・・・」

しかし、オーガは知らなかった。
彼女もまた、彼がかつて対峙した男と同じように


「もっと!!!」

諦めの悪い、ある種の「頑固者」だと言うことを。

ゴォォオオオオオオオオオッッッ!!


「ォうっ!!!」

弾幕の「濃度」が増した。
先ほどの弾幕の隙間を潰すように、更に弾幕を。

そして新たに、回り込んで飛んでくる光弾もある。

それら一撃一撃は、確かにこの装甲を貫くには威力は低いかもしれない。
だがこの光弾は、威力の不足を補ってなお余りあるだけの数がある―――――

すべてに対処するために、取る方法はただ一つ!!


「ハァああッッ!!!」

先端がまどかへと届きそうだったオーガストランザーを、左右に揺らしてから勢いをつけて振り抜く。

上部から襲いくる光弾を一旦消し去り、そして次に横から飛来してくる光弾を一掃する。
回転切りの形で振り回してそれを打ち払うオーガだが、その圧倒的な数はさばききったとして刃に甚大な被害が及ぼされる。

振り回したのは、反時計回りに。
つまり、剣の左側はすでに砕けてボロボロだ。

これで殴ればそれはそれでダメージが期待できそうな程ゴツゴツしているが、本来の形でない以上それは望めまい。


しかし、これは両刃剣だ。
オーガストランザーを返し、今度は右側で再び上方から来る光弾を叩き伏せるオーガ。

今度の光弾は、弾幕ではなく初撃のような一撃だ。
つまり、必殺を込めた一撃。

それを見、しかし今更対処を変えられないオーガは、前進から唸りを上げ、その一撃に全力で対処した。


(今の状態で、あの一撃―――いや、一貫弾かれているから、あれ以上の攻撃だと思っていい。それを受けたら、さすがに砕ける!!)

そして砕ければ最後、あの少女は自分にもう一度一撃を入れてくる。
その時は、彼の敗北だ。


(まあそれでいいんだけど・・・・ただで負けてあげるほど、僕もお人好しじゃないんで!!)


試すと言った以上、手は決して抜かない。
すでに、オーガ―――木場勇治は、鹿目まどかをただの少女としては思っていなかった。


(この世界の一員として、そこで生きていく強さを――――見せてもらう!!!)


バキィッッ!!!という砕ける音。
ぶつかり合った刃と光弾は、数秒の拮抗を経て勝敗を決した。

勝者は、刃である。
その刀身は砕けることなく、黄金の刃は光弾を打ち消してなお曲げることなく。


刃に残ったダメージは確かに大きい。
とはいえ、彼女の弾幕は終わっていないだろう。

こちらのエネルギーは無尽蔵にと言えるほどある。
次の弾幕までに、エネルギーを再装填――――


「!!!」

そこで、オーガは自らの失敗に気付く。
そこからの行動は迅速であった。


鹿目まどかが、上空から消えていた。
瞬間、オーガは自らの死角。そして最初に思いつく死角となる場に向かって、オーガストランザーを振るった。

その位置は背後。
数ある死角の内、誰もが思いつく場所だ。

はたして、そこには確かにまどかはいた。


オーガは剣を振り返りざまに薙ぎ、それに反応してまどかは手にしていた矢を弓から外した。



そして、突き立てられる弓矢。
まどかはそれを、オーガストランザーの根元に突き刺したのだ。


即ち、実際にオーガが握っているデバイス部分。そのミッションメモリーのど真ん中に、まどかの矢が突き刺さった。

火花を散らし、ショートを起こすそれをオーガが投げ捨てると、とてもあの大きさからとは思えないほどの爆発を起こす。
だが、この二人にその爆発は関係なく、ただの背景として以上の意味はなかった。


会話はともかく、爆発などの音はこの場では通じない。
空気がない以上、それは当然だ。


無音の中、漆黒の宇宙空間に爆発の光景だけが派手に演出される。

それを背景にしながら、二人は交差した。
デバイスを捨て、その腕でまどかへと拳を向けるオーガ。

そのオーガに向かい、弓を握ってまどかは走り抜けた。

当然、オーガならば対処もできるだろう。
しかし、その身体がガクリと止まる。

振り下ろしていく拳。
その腕を、黄色いリボンが止めていた。

それは容易に引き千切れるものだが、その一瞬をまどかは引きのばす。



ドシュッッ!!!と

止まった一瞬の中、弓の反りに生成した刃。それが、オーガの胴体を斬り裂き通過する。
交差した二人は、目を合わせずに止まっていた。

「・・・・それが、君の力か」

「ううん。これは、私の友達の力」

「そうか・・・・これが、今の世界を生きる君たちの強さなんだな」


決して一人だけではない力。
そも、この空間に来るだけでも皆の力を借りているまどかは、最初から一人で戦っているつもりなどなかった。

それを誇りとして胸に抱き、そしてだからこそ負けられない戦いであることを覚悟した少女は振り返り、自分の胸に手を当て、堂々と黒き騎士のライダーへと告げる。


「私たちは、一人じゃない。みんなで助け合える世界で、みんなで支えられる世界。あなたが見てきた世界がどんなにひどかったかはわからないけど・・・・この世界は、大丈夫だよ」


「大丈夫」と、その一言。
聞いただけでは不安しか残さないこの一言も、これだけの物を見せられては納得するほかない。



「そうか・・・・」

「でも、まだ完璧じゃないです。だから見ていてください。見守っていてください。あなたの、理想の世界に、近づくのを」

「ああ。そうするよ」

ザァッ―――――――


そして、風も起こらないこの空間で、木場勇治は崩れて行き、吹かれたように散って行った。



「・・・・行かないと!!」

その木場に少しばかりの黙祷を捧げ、まどかが先を急ぐ。
外壁を破壊することは可能だが、ここは宇宙空間だ。内部の空気がなくなるかもしれない。

簡単にぶち抜いて行ったフォーゼやカブトとは違い、回り込んで入り口を探すまどか。



エスティアの左側(カブトがいた場所とは反対側)へと回り込んでいき、入り口が見つからない彼女はそのまま砲台を破壊しようとそちらへと向かう。
もしも彼女がその場から下部を見れば、フォーゼが突っ込んで開け、そして隔壁の閉じた場所が見れただろう。

しかし、エスティアの上に立つ彼女からは見えない。
その代わりに、ふわりと浮いて砲台へと向かった彼女が見たものは―――――


「え・・・・・」


エターナルに首を掴まれて持ち上げられているガタックと、少し離れて地面に倒れている長門の姿だった。



------------------------------------------------------------




エスティア内部の通路。
結局あの茨を排除することはできず、管制ブリッジをぐるりと回って入れる別の入り口を探しているところだ。


しかし

「だーぅ!!ここもかよ!!」

管制ブリッジに入るための通路や扉の前には、ことごとく茨が発生していた。


「これじゃ入れねぇぞ・・・時間もないし・・・・」

内部に持ち込んでいたマシンマッシグラーを回収し、それで周囲を回っていたフォーゼだが、すでに下階は見回り終わってしまっていた。
壁に貼られた地図によると、ブリッジ内は上階と下階に分けられているらしい。

と言うことで、今度は上階殻はいろうと、そちらを調べて回っているのが現在。
現在位置は、エスティアの円形部の前部に当たる場所。

バイクでなければ、タイムアップしてしまうだけの広さがあった。


「やっぱこいつ連れてきてよかったぜ~」

そう言いながら、上階部周囲を時計回りに走るフォーゼ。

上階に上がったのはエスティアに突入した場所――――つまりは左部分から。
そこから前部へと回り、弧を描きながら回っていくと、そこから右側部へと入り


「んな!?」

そこに散らばる瓦礫にまず驚いた。
左を見ると外壁が崩れ、そして閉じられた隔壁があった。

そして、次に見たものは


「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」

刃を振るう、一人の――――否、もはやそれは一匹の獣の咆哮。
バーサーカーとして召喚されたそいつが、何に向けているのかもわからない咆哮を上げていた。


フォーゼが見たのは、後姿。
紫の装甲に、握っているのは剣。

そしてチラリと見えたマスクは、間違いなく

「あんたは・・・・仮面ライダー、なのか?」

「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA――――。」


聞こえるはずのない声量での一言。
しかし、何を感じたのか咆哮がピタリとやんだ。

そして、その先に倒れるカブトを見つける。

「カブト―――天道先輩!!」

倒れるカブトを見て、身構えるフォーゼ。
対し、バーサーカーの首だけがこちらに振り返り、静かな時間が二、三秒。

瞬間


「な、なあ、あんた仮面ライダーなら」

「GOOOOOOOOOOOOOOOHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!」

フォーゼの言葉を掻き消し、その仮面ライダーは猛進してきた。
そして一気に天井まで飛び、そこに脚を付け、更に勢いをつけてフォーゼへと突っ込んでくる。

剣の柄をその先端を握り、切っ先を押し当てるように突っ込んで来るそれを、フォーゼはその場から瞬時に跳ねて回避した。

アストロスイッチNo.9「ホッピング」
左足にマテリアライズさせたそれを発動させ、その場から圧倒的な瞬発力を以って右側へと跳ねるフォーゼ。

そのままそれで壁を蹴り、倒れるカブトの脇に着地する。


「大丈夫か!!」

先輩と言っても、その口調は崩さないのは弦太朗らしい。
身体を起こされたカブトは、フォーゼの肩を掴み、何とか自分で立ち上がる。

「お前は・・・たしか如月か」

弦太朗でいいっすよ、といつもならば言う彼なのだが、さすがにそこまでいつも通りに行こうとは思わない。


二人の正面には、獲物を逃した猛獣が、剣を引き抜いてユラリと立ち上がっているのだから。



「先輩。あれ、仮面ライダーっすよね?」

「ああ。だがあれは・・・・・そうか」

一瞬の疑問。
だが、即座にその回答を得るカブト。

何も知らないフォーゼは、頭をひねるばかりだ。


「えっと・・・あれ、仮面ライダー何って言うんだ?」

「あれは・・・・いや、あれが本来の、ということだろう」

「???」

バーサーカーの事情を知らないフォーゼはカブトの言葉を理解できていない。
しかし、今話すには時間がない。

一つ明らかにすべきことは、敵の名だけ。


「あれは、仮面ライダー・・・・サソードだ」

「WOOHHHHAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAARRRRRRRRRRRRRRRRRRRR!!!!」


バーサーカー・仮面ライダーサソード
一切の理性を失い、怒りの身に突き動かされるそれは、目の前の二人を標的として破壊を開始する。




アルカンシェル発射まで残り、5分3秒





to be continued
 
 

 
後書き

今回の流れは


・カブト、サソードを撃破するも、新たな敵に一撃を喰らう。

・クロノ、管制ブリッジ到達。クライドと対峙。
・フォーゼ、管制ブリッジに入れず、入り口を探す。

・まどか、オーガを撃破。砲台上のガタック、長門、エターナルを発見。

・フォーゼ、カブトと合流。バーサーカー・サソードと接敵。


ですね。



只今のサーヴァントは

(地上)

キャスター:プレシア・テスタロッサ

ブレイカー:鉄翔剣


(大気圏外・エスティア)

キャスター:クライド・ハラオウン

アサシン:大道克己(仮面ライダーエターナル)

バーサーカー:仮面ライダーサソード


ですね。
追撃のサーヴァントはバーサーカーです。


蒔風
「サソードって二人目だろ?セルトマンは同じ個体を二体も呼び出せないはずだぜ?」

これは仮面ライダーカブト本編を見た人ならわかるはずです。
次回で説明はしますので、見てない方もご安心を。


アリス
「サーヴァント枠はあと二個空いてますね」

一つは「彼女」に開けて牽制しているとして、もう一つを使うのか?どうなんだセルトマン!?

セルトマン
「ノーコメント」

マジかー
まあこれ以上出してもキリがないっぽいけどね。



弦太朗
「次回。激・突・上・等!!だぜ!!」

加賀美
「それで伝わるのか?」

ではまた次回
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧