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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第六章 Perfect Breaker
  追い詰められた翼

これまでのあらすじ

セルトマンが新たに召喚したアサシンの正体は、朝倉涼子だった。
彼女は生前からの目的、キョンの殺害を試みるも、自身を見切られた長門とクウガの二人に阻まれ、撤退した。

彼等は今、オフィナの猛攻と対峙していた。


そして、蒔風は絶光尖によってアライアを追い詰めることに成功し、暴走までさせることができた。

しかし、アライアの身体は崩壊することなく、硬度をさらに上げて蒔風へと襲い掛かってきた。



そのころ―――――「EARTH」へと向かっていた、八神はやてをはじめとした時空管理局組を狙う姿があった――――



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「見られてる・・・・?」

「? ティア、どうしたの?」

「EARTH」ビルも見えてきた市街地。
まだ距離がある為封鎖地域ではないが、その「EARTH」が大変なことになっているのに合わせ、街並みから人の姿は全くと言っていいほど消えていた。

とはいえ、人の気配は感じる。
だが、バイクを駆るティアナが感じていた視線は、その彼等からの物ではない。


後部座席に座っているスバルが聞き返して来たが、それを軽く無視して周囲を見渡す。


上空を、飛行能力持ちのフェイトやはやてたちが進み、エリオとキャロを乗せたフリードがその後に続く。
自分はバイクを走らせ、後部座席にはスバルが座る。

(前方を飛ぶ八神指令にも、フェイトさんにも変わった動きはない・・・エリオなんかは気づくだろうけど、その素振りもない。ってことは・・・・・)

「ねー、ティアー?」

黙り込んでしまった相棒を心配して、スバルが声をかける。
ハッとするティアナだが、視線に敵意は感じない。前のみんなが気づいていない以上、そう気を張る必要もない。


そう結論付け、それでも一応報告はしておこうと念話を飛ばそうとし―――――


バンッ!!!

前輪に、横から跳んできた何かが当たった。
着弾したそれは、魔力弾。

かなりのスピードで進んでいたため、横からのその一撃は前輪のコントロールを奪い、バイクを蛇行させてから二人を地面に放り出した。


マッハキャリバーで着地するスバルと、受け身をとって転がるティアナ。
バイクがアスファルトを滑り、街灯の根元にぶつかって止まった。

「ティア!!」

「ッ・・・・、スバル、行って!!!」

「え、でも・・・・・」


はやてたちはすでに先に行ってしまっている。

どういうわけか、彼女たちはバイクが倒れた音が聞こえないようだ。
最後尾だったこともあり、ティアナの転倒に気付かず、どんどん点になって行ってしまう。

故に、スバルはここで敵を二人で迎え撃つつもりだった。
しかし、ティアナはスバルに先に行くように叫んだ。


「いいの。ここは私に任せて」

「・・・・・本当に?」

「ええ」

この二人だからこそ、無駄な心配や気遣いは無用。
故に、それだけ言葉を交わせると、スバルはがんばって!と声をかけてから全力疾走で「EARTH」へと向かった。


マッハキャリバーの駆動音が彼方へと消え、あたりには風の音しかしない。
風がビルによって逸らされ、強いビル風となってツインテールとリボンを揺らす。



「ゼスト・グランガイツが出てきて・・・・もしかしたら、って思ったわ」

呟く。
さっきの弾丸は、見覚えがある。


「銃デバイス使いは敵のアジトに忍び込んだ時、どうしても発砲音で敵にばれることがある。だから、同波長の音を発するサウンドバレットを同時に打ち、音を掻き消す技術がある」

バイクが地面を削った音がはやてたちに聞こえなかったのはその為だろう。
しかし、それは一体どれだけの技量なのだろうか。


「そして、相手が乗り物に乗っているときは人命を第一に考え、機体ではなくタイヤを狙う。特に二輪車は、横からの衝撃に弱い―――――」

昔、聞いた話だった。
彼女はその話を聞き、そしてそれを実行してきたその人物に憧れた。

そして、執務官になる道を選んだのだ。
その、人物とは


「そうよね?――――――兄さん」

「ああ。よく覚えてるな、ティアナ」


ティアナの後ろ。
その道路の真ん中に、青年が歩いて出てきた。

ティアナがゆっくりと振り返る。


そこにいるのは、すでに死んだ自分の兄。



元時空管理局執務官、ティーダ・ランスターがそこにいた。



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「オォオッッ!!」

「ウォッ!!?」

ズバ、ゴッッ!!!


ゼストの振るった槍が空を裂き、それを受け止めたクラウドが歯を食いしばる。
飛来してきた黄金の斬撃は、クラウドの大剣を弾き飛ばし、もしくは打ち砕こうと回転しながらギリギリと押し込んできている。


黒翼を全開させ受けるクラウドだが、ここは空。
前から来る攻撃だけを気にしていては、死ぬことになる。


斬撃を逸らし、後方へと飛ばした。
その先にいたのは、回り込んできていたゼスト。

だが彼はそれを回避することもなく、自らの槍で絡みとり、纏わせ、再びその魔力を以って今度は直接斬りつけてきたではないか。


クラウドは立てていた身体を寝かせ、回転しながら剣でそれ受けた。
そしていつの間にか分離させていた剣を右手に、ゼストの腹を下から突き刺した――――!!!


「ゴフッ!?」

クラウドのその剣は、クラウド自身でゼストの視界から隠しており、更にゼストは槍を突き立てている。
その下からの攻撃だ。喰らってしまうのは無理もない。

そしてクラウドはそこから攻勢に転じる。
突き刺した剣に魔洸を送り込み、破洸撃でそれを振り抜いてゼストを両断しようと腕に力がこもる。


「貰った・・・!!」

「オォッ!!させるか!!!」

しかし、ゼストの魔力に底はないのか。
噴き出した魔力がクラウドを吹き飛ばし、腹からも剣が抜けてしまう。

それでも破洸撃を放つクラウド。
上空のゼストをホーミングし、蒼い軌跡を描きながらゼストへと迫って行った。

それをバックステップとで回避し、背後から向かってくるそれを気にしながらも、クラウドへと一気に向かってくるゼスト。

ブォンブォン、と頭上で剣を回し、突きの前体勢のように剣を引いてかまえるクラウド。


上から来るゼストを睨み付け、クンと手首を少し捻った。


バシュッ!!という音と共に、弾丸のような速度で射出された剣が、ゼストへと向かって飛来していく。


突如として飛び出してきたそれの予想以上の速度にゼストが目を見開き驚く。

だが、その程度だ。
完全に不意を突いたそれをゼストは回避し、そのままクラウドに向かって斬り掛かって行った。


しかし、クラウドはその槍を大剣では受け無かった。
ここにきてクラウドは一歩踏み込み、先端の刃の付け根の柄を、握りしめてそれを止めたのだ――――!!


「なに!?」

「オォ!!!」

そして、大剣で斬り裂く。
だが咄嗟にゼストは槍の石突の方を動かし、その大剣を止めた。


「グッ・・・」

「この・・・・!!!」


ビタリと一致したその一点で、一本の槍の両端は攻めと守りを同時に行っていた。

先端でクラウドを斬れば、ゼストは大剣に身体を二つにされてしまうだろう。
一方クラウドも、大剣をずらせば反対の手のバランスが崩れ、槍は自分を斬り裂くことがわかっていた。

両者、動けず。
だがゼストは忘れていない。背後から飛来する破洸撃だ。

破洸撃が自分に命中する一瞬前に一気に動き、クラウドから離れるのだ。
そして、自分の放った攻撃で自滅させる。

破洸撃の距離と速度は解っている。
後はタイミングを合わすだけ。


そして、ゼストがそのタイミングを掴み――――

ドスゥッッ!!

「・・・・か・・・・!?」

左胸を、クラウドの剣が背後から貫いていた。
振り返ると、そこには誰もいない。迫っていたはずのもない。

ゼストは悟った。
あの時自分を狙い射出した剣は破洸撃を狙ったものだった。

そして宙でそれらは衝突し、その爆発で一気に、そして予想外の速度で自分を貫いたのだ・・・・・!!


グラリ、とゼストの身体が倒れる。
地面に落ちていき、そしてゼストがドスン、とその身体を大地に伏した。


それを追って、クラウドも着地する。
剣を握っていた手から力が抜け、ガラン、と地面に剣が落ちる。


戦いのさなかでは、アドレナリンの分泌で痛みを感じなかったが、腕にひびが入っているのだろう。
左手で右腕を押さえ、グラリと脚が揺れる。


「Sランクの魔道士・・・・大したものだった・・・・」

呟き、ゼストに声をかける。
他のサーヴァントと同じく、彼もまた消滅するのだろう。せめて、ひと声は駆けておきたかった。

しかし、地面に倒れたゼストの身体は―――どこも消滅していなかった。
それどころか、ムクリと起き上がってクラウドを見据えてきたではないか。


「な・・・に・・・!?」

「どうやら、俺の心臓を突くにはあれでは足りなかったようだな」

サーヴァントの霊核は頭と心臓部にある。
それのどちらかが破損され、サーヴァントは消滅するのだ。

無論、他の損傷でもそれがその二点を著しく脅かすほどの物ならば、致命傷になる。


だが、このゼストは

「スマンな。仕事柄、心臓は堅く守っているんだ」

自ら武人を名乗り、幾多もの戦いを繰り広げてきた彼は、急所となる心臓を特に魔力でコーティングして守っていた。
J・S事件時は蘇生体が故の衰弱から使用できなかったが、今ならばそんな制約はない。



なおも立ち上がってきたゼスト・グランガイツ。
しかし、クラウドはもはや満身創痍だ。



そもそも、一日経ったとはいえ先日にオフィナと交戦。
そして少し前には、フォーティーンを相手にしていたのだ。いくら知った敵であり、容易に倒せるとしてもそれはあくまでも当時と比較してのこと。体力の消耗は当然あった。

結論からして、クラウド・ストライフの総エネルギーは、MAX時の三分の二程度しかなかったのだ。
そこで、ゼストとの戦闘である。

体調はまだ支障をきたすものではなかったが、戦いが長引いてしまった今では、クラウドの体力はすでに限界だ。



(それでも、まだ最終手段がないわけではない・・・・・)

勇気集束。
行いさえすれば、体力、体調共に全快だ。

だが、まだオフィナがいる。
あれを追い詰め暴走させるとすれば、ショウと自分の二人で相手するしかない。


その為に、ここでその手札を切るわけにはいかない。
とはいえ、ここから撤退するだけの手段も、あるかどうか・・・・・・・


「退け!!ストライフ!!」

「!!!」

その時、空から声がした。

咄嗟に飛びのいたクラウドの前を、横一線に炎の刃が飛来してきた。
ヒュンヒュンと音を鳴らしてのたうつのは、連結刃。

その炎をゼストがかき消し、そしてクラウドと彼の間に立つのは、夜天の書・ヴォルケンリッターが将――――


「お前か。騎士シグナム」

「お久しぶりです。騎士ゼスト」

『ダンナ・・・・あんたを、止めに来た!!!』

アギトとユニゾンし、炎を全身から発するシグナム。
死者の魂をも利用する悪辣非道の行いに対する、彼女たちの怒りを表すかのような、劫火。



VS騎士ゼストは、相手を変えて第二ラウンドへと突入する。



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「ねぇ・・・・その程度なのかなー?」

「この・・・・・・」

「あーあ、つかれちゃって」


見極の完全・フォンVS仮面ライダーブレイド&オーズ。


優勢なのは、フォンである。
しかし、ブレイドもオーズもダメージを負っているわけではない。

荒い息は、ダメージからではなく疲労から来るものだ。


これまでの戦闘において、フォンは攻撃してこなかった。
その変わり、一撃たりとも当たらないのだ。

オーズの多種多様の攻撃も、ブレイドの様々なラウズカードも、その全てを見た瞬間に最善の回避行動をフォンは取ることができていた。



「ねえねえ?僕、一度も攻撃してないよ?ねぇ~?」

「こい・・・つ・・・・」

「映司!!無茶すんな!!!」


すでにオーズのコンボも、その亜種形態のほとんどまで使用した。
映司の体力も精神も、すでに擦り切れる限界だ。

そして、それは剣崎も同様である。
アンデットとの融合係数の高い彼は、長く変身し戦闘することで肉体に変調をきたす。

キングフォームになっていないからこそまだ大丈夫だが、すでに限界に達している。


「これ以上の戦闘はお前らには無理だ!!」

「そんなこと・・・言ってる場合じゃないだろ・・・・・」

「コイツたおさねぇと、大変なことに・・・・」

アンクの言葉に、根性論で答える二人。

そして、そんな時のために、アンクは戦わずに体力を残していたのだ。


「おい」

「ん?」

「え?」

アンクが一声かける。
二人は振り返ると、まずブレイドの顎の下にアンクの手が添えられた。

そして

「フンッ!!(ゴキッ!!)」

「ウェイッ!?」

「ケンジャキさーん!?」

その首を捻り、一瞬でオトした。
そして変身が解除され、剣崎の姿へと戻った。

何をするんだと声を荒げる映司にも手を添え、抵抗虚しく同じように首を捻った。


「や、やめ・・・・」

「フンッ!!」

「セィヤッ!?」

「ったく・・・仮面ライダーってのは、どうしてこうバカばっかなんだ・・・・」

ドサリ、と倒れた映司。
文句を垂れながら、二人の身体を抱え、アンクが翼を広げて撤退しようとする。


そのアンクに、フォンが挑発じみた声をかける。


「あれ?逃げんの?」

「このバカが死んだら困るんだよ。お前、空飛べないだろ。こうすりゃ追って来れねえ筈だ」

そう言って、飛翔するアンク。

確かに、フォンは飛ぶことができない。
空へと逃げていけば、このまま撤退成功だ。


だが、フォンは鼻歌を歌いながらそこら辺の小石を取った。
そして、アンクに向かって思い切りブン投げた。


「うぉッ!?」

「へへーん!!そこまでじゃなくても、それなりに力も強いんだ!!こうすりゃ、撃ち落とすくらいはできるのさ!!」

飛来してくる石を回避するアンクだが、いつもと違い二人も抱えているのだ。回避も楽ではない。


(落すか・・・・?)

脇の二人を見て、そんなことを考えるアンク。
しかし、どうやらそうしないで済みそうだ。


「そーれ、もういっぱ・・・つぅっ!?」

投げようとしたフォンの首元に、斬撃の閃光が飛んで来た。
フォンは振りかぶったまま上体を後ろに倒し、地面にこける。


そして直後、大地を吹き飛ばしながら理樹とセフィロスがフォンの元へと突っ込んできたのだ。


「うわお!?」

「ハ・・・今の内だ・・・!!」

それの回避をフォンがしているうちに、アンクは撤退していく。


突っ込んできた二人の構図は、バリアでのナックルで突っ込んできた理樹を、セフィロスが受け止めている形だ。
空中で喰らったそれは浅い角度で高度を落とし、そして地面に着地してきた、というところだろう。


バチィ!!と理樹を上に弾き、理樹はそれに合わせてセフィロスの頭上を側転のように回転して背後に回る。

振り返りざまにセフィロスが剣を振るうが、右、左と来るそれを理樹は左腕一本で順番に受けて右腕で反撃する。


それを脚の裏で踏みつけるように受け、バク転して下がるセフィロス。
そうしながらも剣撃は繰り出され、それを理樹がガードしていっていた。


「斬れぬ相手とは・・・・最初は楽しかったが、もはや詰まらんな」

「そうだね・・・・僕も、あなたとの戦いは飽きはじめたよ」

お互いに息も切れず、そして挑発しあう。


セフィロスからすれば、理樹のバリアを斬ることは可能だ。
しかし、可能だからと言ってそれが簡単にできるわけでもない。その隙を理樹は与えないし、いざそれだけの溜めを与えたとしても理樹は対応するだろう。

そして理樹からすれば、やはりセフィロスの斬撃は脅威だった。
気を抜けば斬られる。理樹はバリアの硬度をいつもよりも二段階ほど上げているほどだ。そして、セフィロスに攻撃を放っても、それが命中することがない。


気を抜いたほうがやられる、というのは良くあるが、これこそまさにその通りだ。



しかもそれに加え、何が凄まじいかというとその余波が尋常ではない。

フォンがブレイド、オーズと戦っていたのは林と森の中間というくらいの雑木林の中だった。
しかしいま、二人が突っ込んできた威力に地面は吹っ飛び、木々は軒並み押し倒されてしまっているほどなのだから。


「面白い・・・・!!(バサァ・・・)」

「片翼で勝てると思ってる?(バサッッ!!)」

初体験の敵に、セフィロスが開翼。
そして、それに合わせて理樹の薄緑も開翼される。


腕をハンマー状のバリアで纏わせ、セフィロスに向かって飛び掛かるように打ち付けていく理樹。
それに向かってセフィロスの刃が薄く光り、放った一閃がハンマーと衝突した。

弾かれる理樹の右腕。
しかし、そのまま回転して左の甲から伸ばしたブレードを首元に振るう。

それをしゃがみこんで回避し、上昇と共に切り上げるセフィロス。
理樹の背後の地面がバックリと割れ、理樹自身の身体もぐらりと揺れた。


しかし


ガシッ!!

「グッ・・・!?」

「捕まえた・・・・・!!」

理樹の身体は、薄皮程度にしか切れていなかった。
薄皮程度でも、理樹の表皮バリアを越えた時点で凄まじいものだが、今この状況でセフィロスは理樹に捕まってしまった。

斬り上げられた刀を理樹が掴み、更にバリアで包み拘束していく。
そしてすーっ、とバリアのエリアが一気にセフィロスの腕まで侵食し、一瞬のうちに全身を覆い尽くしてしまった。


「なに・・・・!」

驚愕するセフィロス。
無理もないだろう。あれだけの硬度を誇りながら、これだけの多様性に富む能力など、想定する方がありえない。

高硬度の物質を作り出す。
ただそれだけのシンプルな能力だが、それゆえに強力な能力だ。


理樹の腕を、バリアが覆う。
形状は、槍。

三角錐の形に理樹の手首から先を覆っていき、そしてキリキリと捩じられてその先端は鋭利さを増していく。


そしてそれを引き、思い切りセフィロスの心臓部へと突き刺していく!!


「もらっ―――――」

「はぁ~い、そこまで」

ガゥンッ!!と、理樹の身体がはじけて揺れた。

突如として襲い掛かった首への一撃。
それは、セフィロスへと突進しようとした第一歩を踏み出す理樹には、とてつもない衝撃だった。

虚を突かれた一撃に、首筋をさすりながら理樹が立ち上がる。
今の一瞬で、セフィロスの拘束も解けてしまったようだ。


「貴様は何者だ」

「あら。そんな邪険にしないでくれます?これでも味方ですよ」


そして、そのセフィロスの隣にはアサシン・朝倉涼子が。
いきなり現れた女に警戒心を表すセフィロスだが、彼女に振るおうとする刃に力が入らないところからして、自身と同じ存在であると悟る。


「手を出す気か」

「叶えたいモノがあるのは貴方も同じでしょう?だったら、マスターをどうするかは後にして今はとりあえず彼等を倒すのが先じゃないかしら?」

「・・・・道理だな」

「くっ・・・・・」


釈然とはしていないようだが、目的のためということで意見は一致してしまったらしい。

一人は長刀。一人は短刀。
正攻法のサーヴァントと、裏をかくサーヴァント。

本来相反する戦い方をするセイバーとアサシンが、二人そろって薄緑の翼人へと迫りくる。



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「おい蒔風」

「あの野郎・・・・」

「二人・・・とも・・・・逃げろ・・・・ゴブ・・・ァ・・・!!!」

ゼイゼイと喉を唸らせながら、荒い息を吐き出す蒔風。
真人と謙吾を真っ先に下がらせながら、自身もしっかり後退している。


しかし、最後尾を務めるに当たり、どうしてもアライアの相手をしなければならないわけで―――――


「おい!!こっちコイや!!」

「俺達が相手になる!!」

その蒔風から少しでもアライアを引き離そうと、両脇から攻め込む二人。
しかし、アライアはそれを気にも留めずそのまま体で喰らう。

すでにボロボロだった理樹につけてもらったナックルや竹刀は、この一撃で完全に砕け散ってしまった。

更には攻撃の際の反動で、真人も謙吾も手がしびれてしまう始末。


「なんて硬さだ・・・・」

「さっきまでの攻撃では、ここまでにはならなかったというのに・・・・」

手の痺れから怯んでしまった二人。
その二人のこめかみに、アライアの拳が軽くゴツッ、とぶつけられた。

しかし、その硬度が故に二人はそのまま頭を押さえて、その場に倒れ込んでしまった。


「て・・・めえ!!!」

がッ!!と、蒔風がアライアの胸ぐらにつかみかかる。
そのまま投げ飛ばしてやろうと振り上げるが、アライアのチョップが手首に当てられてその手を放してしまう。


「ガぅ・・・・」

「俺の攻撃力では、いくら硬い体で攻撃しても重さも威力も足りん。しかし、骨そのものに響くように攻撃すれば・・・・この通りだ」

ビシィ!!と、よろける蒔風の額に、デコピンをぶつけるアライア。
その一撃で額が割れ、もんどりうって倒れる蒔風。

転がるように距離を取る蒔風に、悠々と歩いて近づくアライア。



「無様無様!!だがなかなか楽しかったぞ、銀白の。我が真の完全も目覚めさせてくれたしな。その感謝の意を込めて貴様が生きようとする限りオレは貴様を仕留めないでおいてやろう!!」

嘲笑いながら、蒔風へと余裕の笑みを浮かべるアライア。

「しかし・・・・死なない程度には遊んでやるさ。耐え切れず、死にたくなったらいつでも言ってくれ、蒔風!!」



その言葉に悪態をつきながらも、蒔風がアライアの言うとおりに無様に転がり逃げる。

右手首はすでに砕かれた。
額からも血がだらだらと流れている。

アライアは、骨が皮一枚でむき出しになっている部分を狙って攻撃してきている。


後は肘や膝、こめかみだろう。
それ以外には脛や外腕か。いずれにしろ、攻撃を受けられる状況じゃない。

それでも、その中で蒔風は思考し、ある人物へと連絡を飛ばしていた。


『ああ・・・・いま言ったところに向かってくれ。そして、これらの物があるかどうかの確認を頼む―――――!!!』

ついさっきまでは、蒔風はショウと念話をしていた。
その結果、ある仮説が立てられる。


そして今、ある程度の推測が立てられた時点でその証明のために、念話を切り替え、「ある人物」に調査の依頼をしていた。


彼の思考は、アライアを倒すことではなく未だ「セルトマンが大聖杯をどこに接続したか」であった。
蒔風は、すでにアライアを倒すことを諦めてしまったのだろうか?


『―――――?』

『そうだ・・・こっち?お前がそう言う心配するなんて、何それちょっと怖い・・・・悪かったって。こっちは大丈夫だから、とっとと言って来い』


相手からの心配の言葉を茶化しながら、連絡を切って送り出す。
そして、転がり逃げながらもなんとか体勢を立て直し、少しずつ立ちあがって行く蒔風。


「すこーし、聞きたいんだけど?」

「なんだ?」

「お前、トイレっていつ行った?」

「・・・・・はぁ?」

「いやさ、お前らがのっとったビルよ・・・・昨日から掃除してないだろうから汚ねぇだろうなー、って思ってな・・・・」

「下らん話はやめろ。何か時間でも稼いでいるのか!!!」

ドゴォ!!


いまだ逃げる蒔風に苛立ったのか、アライアが地面を蹴ってさらに蒔風へと攻撃を加える。
それを何とか回避しながら、蒔風が舌を出して笑う。


(そのとーりだよ・・・・)


蒔風は、アライアを倒すことを諦めてはいない。
思考しないのは


(やっぱか・・・・道理で、時間がかかるわけだ)


アライアはやはり、暴走故に崩壊するからであり・・・・すでに彼の敗北は決定しているからだ。


(問題は・・・・・)


そう、問題は。
それまで蒔風が持つかどうか、である。



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「小野寺さん!!小野寺さん!!!!」

変身を解いた津上が、ユウスケの身体を揺すって名前を叫ぶ。
ユウスケの変身は解けておらず、ライジングアルティメットフォームのままだ。

だが、周囲の状況は激変していた。


建物は倒れ、街にまで及んだ被害は甚大だ。
均されたコンクリートにはクレーターが出来上がっており、周囲の建物からは火の手が上がっている。

その中でも、一際大きなクレーターの一つに、クウガはめり込んでいたのだ。背中から斜めに突っ込んだらしく、背面部は地面の中だ。そして、腕と足をぐったりと投げ出している。
凄まじい熱源によるものか、クレータのあちこちから煙が上がり高熱を発している。マグマのようなものがへばりついている場所すらある。


隕石が落下した、というのが正しい比喩表現だ。
斜めからクウガが突っ込んだクレーターの中心から、津上の声だけがしてくる。


クウガを揺する津上の脇には、周囲を経過するように見渡す長門もいた。
仮面に覆われ、彼がどんな状態かもわからないが、津上は名前を呼び続けた。


そして、変身が解ける。
傷だらけで意識はない。しかし


ギュゥッと、津上の手をしっかりと握り返してくる感覚があった。


「小野寺さん!!!」

オフィナの一撃を喰らい、死んでしまったのではないかというところまで追い込まれたユウスケは、何とか一命を取り留めていた。

あの相手は、クウガライジングアルティメットフォームをしてそれほどの化け物だったのだ。



そのオフィナは、もういない。
どこに消えたかは、誰にもわからない―――――



to be continued
 
 

 
後書き

アライアはホント、どうやって崩壊するんだろうか!?
そして、オフィナは一体どうなったのか―――――


そしてゼストは第二ラウンドへ―――――
クラウドは事実上リタイアですね。本編でもあるように、手はなくはないのですが。


ついにサーヴァントがすべてそろいました。


セイバー:セフィロス

ランサー:ゼスト・グランガイツ

アーチャー:ティーダ・ランスター

ライダー:牙王(仮面ライダーガオウ)

キャスター:“LOND”《撃破》

アサシン:朝倉涼子

バーサーカー:フォーティーン《撃破》


しかし果たして、この程度の駒でセルトマンが満足するのだろうか――――!!

セルトマン
「イヤぁまだまだ。こんな程度じゃ終わらないよ」



蒔風
「次回、アライアの最期」

ユウスケ
「そして、オフィナは―――?」

ではまた次回 
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