世界をめぐる、銀白の翼
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第六章 Perfect Breaker
砕けぬ完全
今までのあらすじ
セルトマン配下の完全の従者。そしてサーヴァントを撃破していく「EARTH」だが、だんだんと追い込まれ始めている。
すでにクラウドは消耗し、蒔風もボロボロだ。
理樹の前にはセイバーとアサシンが立ち、ティアナにはアーチャーが立ちふさがった。
そして、瓦礫の中からユウスケが、津上と長門によって運び出される。
オフィナは、もういない。
遡ること、数分前――――――
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「テメェ、勝負しろやコラァ!!!」
「うる・・・・さいっ・・・!!!」
オフィナVSライジングアルティメットクウガ
津上も長門も、この戦いは凄まじい攻防が繰り広げられると想定していた。
片や、限界知らずの高出力。攻撃の完全。
片や、上限突破の究極の力。ライジングアルティメット。
その力が真正面からぶつかり合えば、とてつもない被害が周囲に及ぶ。
ここは「EARTH」敷地外。
下手をすれば、市街地にまで被害は拡大するかもしれない。
しかし、そんな心配は最初の30秒だけだった。
最初こそ取っ組み合い、殴り合い、拳と拳、脚と脚を交差させてぶつかり合ったクウガとオフィナ。
その衝撃の余波は、大気を震わせ大地を轟かせるほどの物だった。
並みの人間なら、見ていることもできずに気を失ってしまうほど。
だが、クウガのライジングアルティメットキックと、オフィナの膨張した巨大な拳が衝突すると、そこから一気に戦局は変わった。
そして、頭のやり取りになる。
「テメェ、勝負しろやコラァ!!!」
「うる・・・・さいっ・・・!!!」
オフィナの身体に、負傷はない。
一方、いきなり全力を出しぶつかり合ったクウガの身体は、所々から血を噴き出している。攻撃の反動に耐えきれていないのだ。
助けに行きたい津上だが、長門に止められる。
解っている。いまあの場に自分たちが飛び込んでも、巻き添えを食うばかりか足手まといだ。
しかし、クウガも考えていないわけではない。
肉弾戦のほかにも、アルティメットのクウガには能力がある。
「ハッ!!」
「ん?・・・・グッ!?ガァッ!?」
吐き出した息と共に、掌をオフィナへと向けるクウガ。
すると、オフィナの身体が一気に発火し、炎に包まれて炎上し始めた。
これが、究極の力を得たクウガの力の一つ。自然発火能力だ。
手の平から発したプラズマによるものだと言われているが、この攻撃を見て津上はうまいと思った。
オフィナは、これまでも攻撃をいくらでも喰らっている。
しかし、それはそれ以上の威力で放たれたオフィナの攻撃にかき消されてしまっていた。
仮に、それが蒔風の獄炎でもショウの波動砲でも同じだろう。
あれは炎や波動をエネルギーとして打ち出したものであり、実体がある。
ただ炎をブチかます攻撃でも、振り回した腕にかき消されたりするだろう。
だが、クウガのこれはワケが違う。
身体に瞬間着火するのだ。同攻撃力で吹き飛ばそうとするとして、一体何を吹き飛ばすと言うのか。
「あっ――――ちぃいいいいい!!!」
ゴロゴロと転がって、炎に苦しむオフィナ。
とはいっても、炎のついた身体をかなりの力で振り回せば火も消える。
事実、オフィナは燃え上がった身体を、そうやって消火していた。
転がりながらクウガから離れ、その掌から逃げていく。
しかし、その動きもだんだんと緩慢になって行き、ついには大の字なって地面に倒れてしまったのだ。
「倒した・・・・?」
「ハァ・・・ハァ・・・・・」
疑問形ながらも希望を込めた津上と、ガクリと膝をついてしまうクウガ。
しかし、長門はオフィナへの警戒を解いていない。
「・・・・ダメだこりゃ」
「「!!」」
仰向けに倒れたオフィナがぼやいた。
咄嗟に身構える二人だが、オフィナは頭をガシガシとしながら上半身を起こす。
「こりゃ無理だ。相性が悪い。確かそれ、プラズマによる発火だっけか?」
オフィナが一人しゃべるが、誰も返さない。
しかし、それを異に返すことなくオフィナは続ける。
「今の俺にゃぁ、それを吹き飛ばすだけのことは出来ねぇな。フォンみてぇな力がありゃぁ別なんだが」
「どうする?降参でもするか?」
「しねーよ。言ったろ、「今は」ってよ」
そう言って、よっこらしょと立ち上がるオフィナ。
治りつつある火傷をさすって「イテー」と言いながら、彼らに背を向けてその場を去ろうとした。
「おい、待て!!どこへ行く!!」
「あぁ?どこってお前、帰るんだよ。今の俺の完全じゃ、まだお前に勝てないからな。ゆっくり完全を練り上げてまた再戦だ」
決着はその時につけようぜ。
そう言って、ヒラヒラと手を振る。
そう。仮に彼等を追い詰めたとしても、それに相手が乗りかかって来るかどうかは別問題なのだ。
彼等の完全の暴走とは、通常の向上では間に合わないのを、自らの崩壊を代償に一気に押し上げるブースターだ。
つまり、暴走して得た力というのは、そうしなくともいずれは彼らが手にする力。
ならば、負けたり追い込まれたりしたら無理をせず、撤退してその間にでも完全の力を向上させていればいいのだ。
前の三人はそんな判断のできる状態ではなかったが、オフィナは冷静に見据えていた。
その彼を、今見逃すわけにはいかないのはクウガたちだ。
今はまだこうして戦えているが、時間を置かれでもしたら、それこそ取り返しのつかないことになる。
その背に向かって駆け、掌を向け発火させる。
しかし、発火した瞬間にオフィナは全身を動かして一瞬で消火した。
「な?こうやって対処できるけどよ、こんなんしててお前には勝てねぇだろ?」
そう言って振り向くオフィナ。
地面を蹴り飛ばし、クウガへと一瞬で間を詰め、拳を握りしめる。
ゾッとする感覚に襲われクウガが後退するも、オフィナは別の攻撃に移っていた。
握りしめた拳には、大小さまざまな石が握られていた。
何の変哲もない、ただの砂利だ。
そして、更に腕の力を跳ね上げさせ、
それを周囲に向かって一気にばら撒いた――――!!!
「やばい!!!」
瞬間、小さな石ころは無数の隕石となって周辺を打ち、焼き尽くした。
通常の隕石と異なるのは、それが地面と平行して飛んでくる、ということだ。
その中で、津上は変身し回避、長門はバリアを張って防御した。
だが、その中でクウガはただ一人、オフィナへと再び向かって行っていた。
恐らくは逃走の為だからだろう。この攻撃は、本気ではない。
それでも喰らえばとんでもないダメージだが、彼等ならば防ぎきるだろう。
それを見て安心し、クウガは再びオフィナを追って駆けた。
だが、オフィナは拳大の石を取りだし、それを思い切り振りかぶって――――
「ラぁ゛ッッ!!」
投げた。
今までの隕石とは比較にならない火の玉が、握りしめられてどれだけの密度になったのかもわからない鉄球を包んで、真っ赤に発光してクウガの腹部にめり込んだ。
今まで受けてきた中で、もっとも強い衝撃だった。
クラッシャーの隙間から、吐き出した血が飛び出して口元を濡らした。
しかし、その飛沫もその一撃の熱によって一瞬で蒸発してしまった。
そうして、その場には圧倒的な破壊音とオフィナの笑い声だけが響き渡った。
これが、仮面ライダークウガと攻撃の完全・オフィナの戦いのあらましである。
撃退、といえば、確かにオフィナを撃退できたのだろう。
しかし、そう言いきるには、この状況はあまりにも苦々しいものであった。
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さて。
こうして、セルトマン一派と闘いを繰り広げる「EARTH」だが、当然ながらバカ正直に正面突破のみを考えているわけではない。
敵の力の大元は大聖杯。
恐らく、セルトマンの莫大な魔力もそこから得ているのだろう(とはいっても、その出力に耐えるセルトマンの魔術回路はやはり化け物じみてはいる)
かつて、同型の聖杯を破壊した時には、多大な被害が周囲数キロにまき散らされた。
それを恐れて、「EARTH」は大聖杯に取り込まれた「EARTH」ビルを攻撃することが出来なくなっている。
しかし、本当にそうだろうか?
溢れ出す魔力が問題ならば、その魔力を消してしまえばいい。
そして、それができるメンバーが、「EARTH」には二人ほどいた―――――
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ボシュウ!という音を上げ、煙となって霧散する魔力。
「EARTH」ビル自体にも穴が開いているため、そのままそこから侵入する人影が三人。
「じゃあ・・・・どこをぶっ壊せばいいんだ?」
幻想殺し・上条当麻と
「流石の僕でも、こう魔力が満ちてると感知しにくいなぁ」
退魔の八衢・泉戸裕理。
そして
「大丈夫。そこら辺は、俺がきっちり把握してるから」
神剣使い・鉄翼刀だ。
「EARTH」ビルは大聖杯に取り込まれる形ですっぽりと覆われているが、外から見ても所々がむき出しになっている。
粗い取り込み、というのが正しい表現か。
そして、その不完全なところは内部にもあり、少し気を付ければ廊下も歩いて進むことができる。
所々からシャボン玉が張りついたように、魔力の塊が引っ付いている個所がある。
無事なところと、魔力のついている場所の対比は3:7と言ったところか。
とはいえ、天上が完全に覆われている分の7なので、壁と床だけならば半々と言ったところだ。
「さて・・・・じゃあ核をぶち壊しに行こうぜ」
「ああ。大聖杯に組み込まれた聖杯戦争のプログラム。それを破壊さえすれば、少なくともサーヴァントとセルトマンの野望ってのは撃破出来る」
あの時。
蒔風とクラウドへと向かったオフィナを止めたのは、確かに翼刀だ。
しかしその作戦は失敗し、大聖杯は本格起動した。
その瞬間、翼刀は担っていた第二作戦へとシフトしたのだ。
(いいか翼刀。もしもだ、あいつがサーヴァントを召喚して聖杯戦争をはじめやがったら、お前はソッコーで当麻と裕理連れてあん中に行け)
その間ならば、セルトマンも外だ。中はガラ空きだと考えたのだろう。
誤算と言えば、七騎のサーヴァントがすべてセルトマン持ちだと言うことくらいか。
それゆえの苦戦を強いられているが、翼刀さえ成功すればそれですべてが終わる。
「魔力には触れないようにな・・・っても、泉戸は大丈夫か?」
「少しはね。でも、突っ込んだらさすがにまずいから」
「オレは右手以外ダメだ」
魔力域を踏まないようにして、気を付けながら先を進む。
どうやら魔力域に変動はないようだ。急に出てきたり、不意打ちの心配はない。
ちゃんと気を付けていれば、安全に進むことができる。
一回魔力を掬い取ったアリスが言うには、この内部は純魔力の為、中に何かしらの磁場が働きそれが結界のようなものを作り出しているらしい。
結界のような、といっても、何かの効果が合ったりするわけではなく、少し歪んでいる程度の地場だ。
だがそうである以上、渡航力を持つ翼刀は、容易にその核の位置を感知できる。
「そう言えば、その核ってのはどこにあるの?」
「お、それ俺も聞いてないなー」
「ん・・・ああ。一応言っとくか・・・・・舜さんの部屋だ」
「EARTH」局長室。
翼刀が核を見つけ出したのは、それを安置するにはもってこいの場所だった。
そして――――――
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「ハァ・・・ハァ・・・・・!!!」
「あっはっはっは!!どうした!!逃げてばかりじゃあないか!!」
「ぐゥッ!?」
蹴られ、押され、押し込まれ、殴られる。
起き上がってくるダルマをその度に突いて何度も転がす遊び。蒔風とアライアの行動は、それと同様だった。
アライアが小突き、蒔風がそれを回避、もしくは喰らい、どちらにしろ転がって行っては何とか立とうとする。
だがもうそろそろ限界だ。立とうとした蒔風は踏ん張りきれず、ズルっ、と足を滑らせて倒れ伏した。
それでも、ズルズルと這ってでも距離を取って行く。
そして、木の根元まで着てそれにもたれかかり、そして目の前のアライアを見上げた。
「終わりか?」
「・・・・らしいな」
認めたくなくとも、蒔風の身体はもう動かない。
仮にこの体勢で少し回復しても、ここから逃げようとすれば背中を打たれる。そうすれば、絶命は免れない。
なかなか楽しませてもらったと笑い、アライアが拳を振りかぶる。
そのまままっすぐ伸ばせば、蒔風の頭蓋骨を粉砕するコースだ。
攻撃力などのスペックも完全に振ったために、普通人のそれと変わらないものになってしまっているが、この硬度と蒔風の疲弊度ならば粉砕は容易い。
「何か、言いたいことはあるか」
「色々あるから二時間くらい時間くれない?」
「却下だ」
「・・・じゃあ一つだけ」
こんな時でもそんなことを言う蒔風だが、一つだけ、と目線を細める。
「それだけの硬度――――エネルギー元はなんだ?」
そう。それが腑に落ちない。
何故彼らの完全には、エネルギー切れがないのか―――――
「ただ単に、そんなことがあれば「完全」とは言えんからだろう」
「そんな・・・単純な・・・・」
もたれかかるのにも疲れたのか、蒔風がずるずると腰を滑らせて体勢を崩す。
そう。
彼等の「完全」は、暴走させない限り、追い込まれるようなことがない限りは、真の意味で完全なる能力である。
「終わりか?では、終わらせよう」
「・・・・・・あれ」
「?」
よし、やるかと拳を少し引くアライア。
しかし突き出す前に、蒔風のいたずらっぽい声にアライアが止まる。
「なんだ」
「お前・・・・顔色悪いぜ?」
ニヤリ、と笑う蒔風。
アライアは頬を撫でるが、特に変な感じはしない。
しかし、そう言われてみると肌の血色が悪くなってきた気が。
「あれだけのエネルギー。元がなくとも、それを使用した際の残りカスは出るはずだろう?」
エネルギー元は無にして無限。
だが、肉体をあれだけ頑強なものにして、何もないわけがないのだ。
人間の肉体は、新陳代謝の連続で強化されていく。
そのエネルギーを普段は食事からとるが、彼等は完全に関してはそれを必要としない。
それでも、代謝の結果廃棄するべきモノは、必ず存在するはずなのだ。
「とはいえ、ほとんどないだろう。でも、微量でもそれが完全になくなることはない」
「・・・・どういうことだ」
「つまりだ・・・・お前、排泄出来てんのか?って話だよ」
普段ならともかく、今は暴走状態。
その硬度は、こうしている間にも上がって行っている。そして、そのエネルギー分の代謝も行われているはずなのだ。
「お前は皮膚を柔軟な動きが出来るものにしながらも、それだけの硬度を手に入れた。それは外部からの障害や有害なものを完全に防ぎきる。しかしな・・・・お前は体内の有害なものを、排出できなくなっちまったんだよ――――」
「そんなことはないだろう。私はこうして今も動けて」
「気付いていないのか?あれだけ動きまわって、汗一つかいてない。今のお前は体力に関しては一般人だ。それで編然と?汗もかかずに?そんな人間がどこにいる」
蒔風の言葉に、みるみる青くなっていくアライア。
そして、それは決して比喩表現でもない。
正しくは――――黒ずんでいったのだ。
「な・・・・」
「血液は常に循環し、古いものは排出される。それがされなきゃ、そうもなる」
突如として、アライアの口から何かが噴き出し始めた。
吐血、ではない。それは血というにはあまりにも黒々しい。
ダラダラドロドロとしたそれをベッ、と吐き出すアライア。
それは、ほとんど泥だった。
そして自覚してしまったら、もう遅い。
「同情するぜアライア。多分――――昔の俺でも、そんな死に方はしたくなかった」
ゴボリと、今度は本流が来た。
デロデロと流れ出す泥は、凄まじい悪臭を発しながらアライアの顎を、喉を、胸元を汚しながら吐き出されていく。
次に、それは目から流れ出てきた。
眼球はこちらからも見えなくなり、涙ではなく腐臭のする泥が流れ出てきたのだ。
恐らく苦しいのだろうが、アライアは断末魔の声すら発せない。
首を抑えながら、ぐらぐらと揺れる脚でまだ何とか立っている。
しかし、それも崩れた。
今度は股間から、体内で発生し、本来排泄されるべき様々なモノが流れ出る。
それは本来、血であったものであり、皮膚であったものであり、彼の身体を構成し、その踏み台となってきた様々なモノだった。
腕を口元に当て、その臭いを防ぐ蒔風。
見ているだけで吐きそうになるが、それでも蒔風はアライアから目を離さなかった。
よろけながらも、その場をバタバタと動くアライア。
苦しいのか、首を抑えて身体を丸める。
そしてついに、身体にひびが入った。
ビシ、バシ!!と全身に亀裂が入り始め、大動脈の通っている太腿や脇の一部が決壊した。
そこからもドロドロの液体が流れだし、そしてついにアライアが膝をついた。
そこからはすぐであった。
膝をついたまま、アライアはがっくりと頭を垂れ、腕がブランと下がる。力が失われ、腰が地面について、それでも目や口、決壊した部分からそれは流れ出ていた。
そして、終わった。
ブシュウ・・・と煙を放ちがなら、膝と腰を突き、上半身は立ったまま、アライアという男は死んでいった。
もはやそこにはアライアの命はなく、ただ悪臭を放つ醜い肉塊があるだけ。
そして、蒔風は何とか立ち上がってその場を後にする。
(クソ・・・・やっぱ胸クソ悪い)
それは、死にざまの悪臭や汚物に対するものではない。
完全が故の死。
それは、不完全である彼らの本能的な拒絶から来るものなのか、それとも、悲惨な死に方をするしかなかった彼らへの同情か。
ともあれ、三人目の完全は、こうして時間差で崩壊した。
「待ってろよ、セルトマン――――!!!」
蒔風の翼が、ほんのりと銀白に輝きだす。
肉体はすでに限界だが、それでも彼にはまだ、戦う術は残されている。
「観鈴か?・・・・ちょっと来てくれ」
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「あれ、帰ってきたのか?」
「ええ。ちょっくらまだ足りないもんで」
「EARTH」ビル前。
そこで、帰ってきたオフィナとセルトマンが、まるで街中で偶然会ったかのような調子で話を始めた。
「へえ。あなたの完全で、まだ足りない?」
「相性が悪くてですねぇ。いきなり発火だとかのああいうのには、その分もっと強いん身に着けないといけませんので」
「ああ、そういうこと・・・・・ん?」
「どうかしましたかね?」
「ああ・・・・・アライアが暴走してた」
「な・・・あいつがですかい!?」
「そうだね」
硬度の完全・アライアの暴走にオフィナが驚愕するが、セルトマンには微塵の驚きもなかった。
「じゃああいつぁ・・・・」
「死ぬね」
「そう・・・ですかい・・・・・」
落胆するオフィナ。
彼からすれば、自分の力を受け止めてくれるのはアライアだけだった。
加々宮も大丈夫だったが、やはりしっかりと受け止められるのはアライアしかいないのだ。
「そろそろ暴走で消滅するから、最後に声くらいかけに行ったら?」
「いえ・・・・あいつの最期は、あまり見たくないです」
友の死にざまなどごめんだと言って、オフィナがビルの中に入っていく。
そして残されたセルトマンは戦況を冷静に分析し始めた。
(さて。私の与えた完全も残りは攻撃と見極のみ。サーヴァントは五騎、か)
その中でも、セイバーと共に攻めているとはいえアサシンはもうそろそろ脱落が近い。
やはり翼人が相手では、元の人物が物足りなかったか。
仮面ライダーガオウも、ショウ相手に良くやっているようではあるがもうそろそろ撃破されるだろう。
現に、今上空でケルベロスによってガオウライナーが落されていた。
「ふふ。じゃあ・・・・次に行くか」
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「斬り裂くぜ、魔導八天!!」
「ハ・・・喰われるのはどっちかな・・・・」
《full charge》
ショウの魔導八天に波動が。
ガオウのガオウガッシャーに、黄土色のフリーエナジーが溜まっていく。
すでにガオウライナーは墜落させられていた。
能力こそは「時を破壊する」という恐ろしい物ではあるが、その純戦闘力において、ガオウライナーはケルベロスに比べ劣っていたのだ。
逆に仮面ライダーガオウという存在は、力に物を言わせてまとめて薙ぎ倒す戦い方をする人間だ。
固有の技で戦うと言った、技能面は全く持たない。
両者ともが駆け出し、剣を手にして相手へと駆ける。
ショウの脳天にガオウが剣を振りおろし、それをショウが受け止めた。
受け止めたのは、半分に分けられ、二刀となった魔導八天。
顔の前でクロスさせたそれでガオウガッシャーを受け止めたショウは、そのまま剣を滑らせながらガオウの懐へと飛び込んでいく。
そして左の剣でガオウガッシャーをいなして落とし、空いた右剣でその胴体を裂いた。
さらに、降ろした左剣を振り上げながら胸元を裂く。
その一撃にガオウの心臓は破壊され、霊核を失ったことで肉体が消滅していく。
「チ・・・・またか」
ザァッ、と砂になって流れ落ち、消滅するガオウ。
対してショウは、トントンと右剣で肩を叩きながら、肩越しに軽くその跡を見て溜息をつく。
「こんなもん、か」
身体にいくつかの傷はある物の、見た目よりもショウのダメージは低い。
アヴィルドムの落下に巻き込まれていながらもこれだけのコンディションとは、ますます以って化け物じみている。
「さて・・・・あと戦いがあるのは・・・・・」
周囲を見回し、どこの援護に向かおうかと思案するショウ。
蒔風はどうやら、アライアを倒したらしい。
満身創痍だが、あの翼人を心配するのもバカらしい。
ゼストと戦っているのは、アギトとユニゾンしたシグナムだ。
身体の不調がなくなったゼストの相手は大変だろうが、さすがにあの戦いに手を出すほど野暮ではない。
と、なればセフィロスと朝倉の二人を相手にしている理樹の援護に向かうか。
そう結論を出し、テクテクと歩いていくショウ。
そして次第に小走りになり、そしてダッシュで理樹の元へと向かった。
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「いっけぇ!!」
「あぐっ!?」
爆心地のような場所で、セフィロスと朝倉と戦う理樹。
当初こそは全く知らない朝倉に対して警戒をしていた彼だが、ここにきてすでに理樹は朝倉を脅威として認識していなかった。
セフィロスとの交戦の中でちょっかいを出してくるのであれば、確かにそれは脅威だろう。
だがそれには朝倉は自らの身体を犠牲にしなければならない。
この先を考える朝倉にとって、その作戦だけは取るわけにはいかないのだ。
よって、結局のところ二対一という構図より、一対一を同時にやっている、という方がしっくりくる戦いになっているるのが現状だ。
そして、理樹相手に通る刃を持たない朝倉に、彼を打倒することができるわけもなく―――――
ドンッ!!
「キャァッ!?ちょ、なんですかあのバカ硬度!?こっちの攻撃が通らな」
バシィッッ!!
理樹の一撃を回避し後退しながら悪態をつく朝倉。
しかし、その足にバリアがまとわりつき、ズダン、と地面に倒れてしまう。
そこから起き上がろうとする朝倉だが、すでに理樹のバリアが腹を押さえつけて地面から離れられない。
「な・・・・え?」
そして、その腹のバリアが形を変え、その形状から朝倉は次の攻撃を容易に想像することができた。
「ちょ、それパイルバン」
ズ、ドンッッッ!!!
朝倉の腹に叩き落とされた杭は、上半身と下半身を分断させ、更には胴体を消し飛ばしてしまった。
残った血肉と、四肢と頭部が、一瞬で粒子になってキラキラと消滅していく。
だが、その光景を理樹は見てなどいなかった。
目の前のセフィロスが、それを許してくれないのだ。
「ほう。見もせずにあの暗殺者を屠るか」
「それくらいならね―――そろそろあなたも、消えたらどうかなッ!?」
セフィロスの剣撃を、流動ですべて流していく理樹。
しかし、セフィロスもそれを知っているためか、その動きに惑わされることなく追撃を繰り返していっていた。
動きさえ止めれば、朝倉のように一撃だ。
セフィロスであろうとも、消滅は免れない。
だが、そうさせないからこその、この強さ。
再び距離を取り、睨み合って立つ両者。
このままではキリがない。
負けはしないだろうが、勝ちもしない。
そしてこの戦いは、消極的な状況では敗北と変わらないのだ。
二人が睨み合い、円を描くように動いていく。
そして、セフィロスの剣先がピクリと動き―――――
ドンッ
「――――ゴッ!?」
その身体が、真横からブン殴られて吹っ飛んで行った。
「・・・・・え?」
その光景に、唖然となる理樹。
さっきまでセフィロスが立っていた場所に、スバル・ナカジマが拳を突き出して立っていた。
リボルバーナックルからは煙を吹き出し、いくつかの薬莢を吐き出して余剰魔力を排出する。
「理樹!!大丈夫?」
「えっと・・・スバルさん?」
「皆来ましたよ!!もう大丈夫です!!」
ゼストの元へと先についたシグナムに続き、スバルもこの戦場に到着した。
ガクリと思わず膝が崩れる理樹だが、その肩をエリオが支える。
「理樹さん、平気ですか?」
「うん・・・・結構疲れた。でも、あの人まだやれてないだろうし」
肩で息をする理樹。
その一言に、スバルもエリオも「え?」と驚いた顔をしていた。
「あの人があの一撃でやられるとは思えない。さあ・・・・こっから一気に・・・・」
「理樹は休んだ方がいいよ」
「でも・・・・」
「大丈夫です!!フェイトさんもいますし!!」
どうやら一緒に、フェイトも来ているらしい。
はやてたちは状況確認のために「EARTH」(仮)に向かったようだ。
理樹はフェイトがどこにいるのかを探し、遠くから剣撃が聞こえてくるのを感じた。
「・・・・まさか!!」
「多分、フェイトさんです」
「アリシアさんもいますけど、あの人が情報通りセフィロスならまだ大変でしょうし」
フォーティーン事件の際に見ていることもあり、その実力は彼等も知っている。
その為、二人の援護に向かうためにスバルとエリオもそっちへと向かって行った。
一緒に行こうとする理樹だが、どうにも体力の限界らしい。
安堵したせいか、一気に疲れが押し寄せてきた。
理樹は結局、二人の説得を受けて撤退していった。
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セルトマンの元へと向かう蒔風。
観鈴に来てもらい、今は体力を回復させているところだ。
理樹の元へと向かって行ったショウだが、その途中でフォンに見つかり、絡まれている。
ゼストとシグナムはすでに上空へと登り、すでにドッグファイトのような体となって、激戦を繰り広げている最中。
その中で、「EARTH」へと向かう翼が一つあった。
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「もうそろそろ、もっとデータが欲しいねぇ」
そんなことをうぶきながら、セルトマンが伸びをする。
かなりいい戦いが各地で繰り広げられているが、こうも一進一退では単調すぎて面白くない。
そろそろ、新しい動きが欲しいところだと、暇そうにあくびをするセルトマン。
時間はすでに夜へと差し掛かり始めている。
日は沈み、月が輝く時間だ。
ポウ、と一瞬だけセルトマンの足元が光り、再び溜息をつく。
「とりあえずこれで、っと。あー、そろそろ休もうかなぁ・・・・」
「じゃあさ、ちょっと俺の話に付き合わないか?」
「んー?いいよ」
バサァ、と、翼を畳ながら降りてきたのは、長らく魔術教会から出てこれなかった北郷一刀だ。
しかし、その急な登場にも驚くことなくセルトマンは軽く返事をして右にいる彼へと視線を向けた。
「・・・・もっと驚いてくれないと、やっとこっちに来れた俺としても立つ瀬がないんだけど」
「いや、一刀ほどの力が近づいてきたらわかるって。まあそれでも気配は絶ってたみたいだけど」
「だー!ちくしょう!理樹のピンチに行こうとしたら、スバルに取られるし!!お前はこんな反応だし!!もう俺今日は厄日なのかな・・・・・」
セルトマンを前に、軽い態度で接する一刀。
その一刀を「あー、わかったわかった」と軽くあしらうセルトマン。
「それで?話ってのはそれだけか?」
「いやぁ、もう少し違う話」
そう言って、一刀の双眸が細められる。
そして取り出してきたのは、数枚の資料だ。
「さて、セルトマン。こっちはこっちでいろいろ調べたんだけど、さ。聞いてみるか?」
見せつけるようにセルトマンにそれを投げてぶちまける一刀。
そして、静かな表情で言った。
「お前の魔術の根元。その起源の話でもしようか?」
to be continued
後書き
状況がマンネリ化してきてしまった。
このままではグダグダになる!!
というところでセルトマン解明を入れる!!
ふぅ・・・これでいったん凌げるぞ・・・・
蒔風
「ただの時間稼ぎじゃねーか!!」
そろそろサーヴァント陣もバッタバッタと倒され始めると思います。
なにぶん、良く知った間柄だったり、知らない相手ではないわけですからね。
朝倉さんとガオウなんか見てくださいよ。
なんとなく生き残ってるかと思えばほれみたことか、理樹とショウに瞬殺ですよ!?
アライアが死んでいく様は、ダイレンジャーで三幹部やゴーマが泥を吐いて死んでいくのをイメージしています。
ザイドス、ガラ、ゴーマ14世。そしてシャダムの死にざまは、本当にグロい。
目玉がぎょろぎょろして泥吐いて倒れていくんですよ!?
よく子供番組でできたな、あれ。
残りサーヴァントはセイバー、ランサー、アーチャーと、気づいてみれば三大騎士クラス。
そして、唐突に(本当に唐突すぎて心配な描写です)現れた一刀!!!
一体彼が知った、セルトマンの「起源」とは!?
一刀
「次回。奏ちゃんが狙われた理由」
ではまた次回
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