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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

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第百七話 クナップシュタイン日記


お待たせしました。

クナップシュタインは、テレーゼの事を知りません。変装しているのでグリンメルスハウゼンの孫だと勘違いしています。

クナップシュタイとグリルパルツァーの階級が可笑しいので大尉へ変更。
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第百七話 クナップシュタイン日記

帝国暦482年10月1日

■オーディン 憲兵隊総監部  ブルーノ・フォン・クナップシュタイン

私が、士官学校以来の腐れ縁グリルパルツァーと共に481年の10月大尉任官後に憲兵隊に配属されてから早くも1年がたったな。私は憲兵隊副総監モルト中将閣下の副官に、グリルパルツァーは憲兵隊査閲官ケーフェンヒラー中将閣下の副官として配属されたが、今思うにグリルパルツァーはいつも楽な方を引き受けやがるな。

憲兵隊総監のグリンメルスハウゼン大将閣下は、皇帝陛下の若かりし頃の侍従武官だったそうで、陛下の覚えも非常良い方だが、齢74歳の超ロートルなので、日がな一日総監室で居眠りし続けているのだ。しかも何時も涎を垂らしてコックリコックリしている。

しかも冬期は炬燵《コタツ》という机に赤外線管を付けて布団で机を覆った物に入り、褞袍《どてら》と言う綿入りコートを着て、蜜柑《みかん》を食べながら、緑茶《グリーンティー》を飲んでいる。体に良いそうで、風邪一つひかないと仰っているが、全く仕事をしないことには、変わらないんだよな。

しかも時々、総監の孫の小学生女子《テレーゼ・カロリーネ》2人が遊び来ているし、此処は小学校じゃないんだけどな、炬燵に入って蜜柑を食べながら、世間話をしながら数時間も遊んでいくんだ。この総監ありきてこの子達ありかとおもってしまうよ。可愛い子達なんだけどね。

総監室でまともに働いている方は総監副官のケスラー大佐しかいない状態だから、些かオーバーワークじゃ無いかと話したが、『この仕事も楽しいからね』と爽やかに返してくれた。このような上官は尊敬できるな、私もケスラー大佐のような人間に成りたいものだ。

けれど、ケスラー大佐が総監の孫達を見る目は怪しい目だ、噂で聞いたんだが大佐はロリコンだと言う話があるが、まさか本人に聞く訳にも行かないからな。出来れば犯罪行為に手を染めて欲しく無いモノだ。憲兵隊総監副官が淫行で検挙じゃしゃれに成らないからな。願わくば是非、大佐には尊敬できる御方でいて欲しい物だ。

まあ、総監は仕方ないなー、その為に私がお仕えしている、憲兵隊副総監のモルト中将閣下に全ての厄介事が持ち込まれるんだ。朝からひっきりなしにかかってくる電話と、書類の山をテキパキと片づけていく姿は凄いの一言だよ、あの能力は私には未だ未だ真似が出来ないね。

モルト中将閣下は、用兵の達人と言うタイプではないが、誠実温厚にして責任感も強い古武士であり、軍内部でも忠実で信頼の置けると評判の御方だ。それに総監に対しても全く不平を言うことなく、与えられた仕事以上を確りとやり遂げる素晴らしい上司だ。私はモルト中将閣下のお役に立つべく日夜頑張っている。

元々私とグリルパルツァーは士官学校以来の腐れ縁で何故か何時も同じ職場を廻ってきたが、今回は憲兵隊に来て良かったと思えるように成ってきている。彼奴も同じ気分だと思うな、しかし私が仕事に生き甲斐を感じてモルト中将閣下を敬愛しているのに対して、彼奴は違うんだよな。

グリルパルツァーが配属されたのは、憲兵隊査閲官ケーフェンヒラー中将閣下の元と言うのが奴らしいというか何というか。ケーフェンヒラー中将閣下は、総監より年上の75歳ではあるが、元気満タンの方だ。なんと言っても、第二次ティアマト会戦で反乱軍の俘虜になり、それから実に43年もの間収容所に居たのだから驚きだ。

479年に皇帝陛下のお慈悲で帰還したあとで、この仕事に就いたのだが、仕事全然してないんだよね。査閲官室は資料に埋もれているんだけど、憲兵隊関係の資料だけじゃなく、軍の古い資料ばかりを集めて日がな一日、眺めながら研究をしている。余り酷いのでモルト中将閣下に聞いてみたんだが、恐れ多くも皇帝陛下から43年間の苦労を考えて、自由にさせてやれとの事だったんだ。

陛下がそう仰るなら仕方が無いことなんだろうと自分に言い聞かせた。それならグリルパルツァーは、ケスラー大佐のように査閲官副官なのだから、その仕事をすれば良いのに奴は、学者肌のケーフェンヒラー中将閣下とウマが合うのか、話ばかりしている。

ケーフェンヒラー中将閣下は歴史の研究者らしいんだが、グリルパルツァーの方は地理学の探検家なんだけど、同じ研究者どうしで近いものが有るらしく、雑談で仕事を全くしていないんだよな、そのしわ寄せが俺達に全部来るんだよな。少しは仕事しろ!このグリルパルツァーめ!

憲兵隊は以前なら腐敗の温床とか言われ続けて居たけど、皇帝陛下の御英断による綱紀粛正で生まれ変わり、膿を一気に吐き出した為、今では憲兵隊に所属していても胸を張って言えるんだよな。以前なら余り言えた風じゃ無かったからね。

実戦部隊じゃ、皇女殿下の侍従武官から請われて移籍してきた、ブレンターノ准将閣下が憲兵隊実働部長として仕切っているから、安心していられるんだ、隊員も多くが装甲擲弾兵上がりでこれまた、良い奴ばかりだ、流石オフレッサー大将閣下の薫陶厚き猛者達だね。酒量が凄いのは勘弁して欲しいけど、何時か俺は肝硬変で死ぬかも知れない。

酒量が凄まじく多いので、何時も憲兵隊経理部長シュターデン大佐が老眼鏡をかけ腕カバー着け電卓を叩きながら、ぶつくさ言っているけどね。『予算を大事にせんか!』って時々実戦部隊に文句言いに行くと、最初はシュターデン大佐の弁説が栄えるんだけど、次第に実戦的な連中から来る教訓に論破されて、予算を更に取られて帰ってくるんだよね。

それからシュターデン大佐は酒の質を落とす作戦をしたりとかしているけど、何時も負けているな。その為に一番まともなモルト中将閣下と私と兵站班長のシューマッハ中佐が愚痴を聞くはめに成っているんだ。シュターデン大佐も悪い人じゃないし、ただ真面目すぎる気合いがあるんだよね。

話を聞けば、シュターデン大佐は宇宙艦隊総司令部参謀や士官学校教官というエリートコースから、あの士官学校始まって以来の成績不良と素行不良で島流しに遭ったフレーゲル男爵の逆恨みで、島流しに遭ったそうでそれを皇帝陛下がお救い下さったそうだ。

酒飲みながらシュターデン大佐は如何にして皇帝陛下のお役にたてるかを日夜考えていると力説していた。それだからこそ、無駄遣いを無くしたいという考えなんだそうだ。シュターデン大佐も色々たまってるんだなと、好感が持てるように成ってきたのは不思議だ。

憲兵隊兵站班長シューマッハ中佐も苦労が絶えない方だ、私とは出身地が近いとあって直ぐに親しくなったんだけど、それ以前は相当苦労していたようで、実力はあるんだけど、今までは上司に恵まれなかったそうだ。

此処へ来る前はアホ貴族の部下でアホ貴族が行っていた軍事物資横領に気がついたために、アホ貴族によって横領の主犯と言う冤罪をでっち上げられて、収監されて処罰を受ける寸前だったらしい。それをケスラー大佐の捜査で冤罪と判明して、アホ貴族は処罰されて、憲兵隊へスカウトされたとのことだ。

やっぱケスラー大佐は凄いね。それ以来シューマッハ中佐は憲兵隊で兵站を担当して居る。帝国では兵站科は重要視されてないけど、本来は重要なんだけどね。その専門家のシューマッハ中佐は素晴らしい補給計画を立てることで有名に成っている。

やはり、私は憲兵隊に来て良かったな。願わくば、グリンメルスハウゼン大将閣下とケーフェンヒラー中将閣下それにグリルパルツァーよ、まともに仕事してくれ!お願いだから少しは仕事をしてくれ!オーバーワークで大変です。それが駄目なら、プリーズ人員増加!!



帝国暦482年10月1日

■オーディン 憲兵隊総監部総監室

クナップシュタインが嘆きながら仕事をしてる中、総監室ではグリンメルスハウゼン大将、ケーフェンヒラー中将、ブレンターノ准将、ケスラー大佐、テレーゼ、カロリーネが集まって最後の締めを話し合っていた。

「殿下、後20日で作戦決行です」
「長かったわね、細工は完璧なんでしょう」
「はい、内務省もハルテンベルク伯を中心に動いていますし、
各艦隊、各工廠、各補給敞にも踏み込み出来る様になっています」

「マチアスもそろそろ年貢の納め時ね」
「はい、既に準備は完了しています」
「まあ、彼は囮捜査官として活躍したことに成る訳ですから」

「しかし、宜しいのですか?サイオキシン密売犯となれば、大逆犯に次ぐ大罪ですが」
「この点は、リスク分散の為と思って下さい」
「はっ」

「時期が来たら、軍務尚書、統帥本部長、宇宙艦隊司令長官、装甲擲弾兵総監にはお父様から伝えますから、その際には協力するようにとのことです、ただし主導権は憲兵隊とハルテンベルク伯の警察局が行いますから、喧嘩しないようにお願いします」
「はっ」

「所で、金髪と赤毛は旨く動いているかしら?」
その言葉に、ブレンターノが応える。 
「キルドルフ大尉が旨く誘導してくれています」

「宜しい、赤毛に出来る限り手柄を立てさせるように確りと作戦をお願いします」
「御意」
「此で、帝国に巣くう悪癖の病巣の一部を摘出出来る様になりますな」
グリンメルスハウゼンが感無量という感じで呟いた。

「全くですな。この老体にも活力が沸いてきますわ」
ケーフェンヒラーも楽しそうだ。
「あと20日間、気を締めて行くのです」

「はっ」
「御意」
 
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