銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません
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第百六話 カイザーリング艦隊の休日
お待たせしました。相変わらずの神経痛。しかも今回の事件でやばめの所を修正しましたが、そこまで目くじら立てないようですね。しかし念には念を入れておきました。
キルドルフはオリキャラじゃなく、レンテンベルクで処刑されたオフレッサーの部下です。
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第百六話 カイザーリング艦隊の休日
帝国暦482年9月1日
■ドヴェルグ星域 カイザーリング艦隊旗艦テュービンゲン 参謀長室
参謀長室では、参謀長リヒャルト・パーペン少将と後方主任参謀クリストファー・フォン・バーゼル少将の二人が話し合いを行って居た。
「それで、配属されたあの二人だが、どの様な状態なのかな」
「シェーンヴァルトの方は、ふて腐れながら仕事を行っているな。キルヒアイスは確りと仕事を行っているし、シェーンヴァルトのフォローも行って居ますな」
「うむ、何かを探るような行動をしていない訳だ」
「全くその様な素振りはありませんな」
「幼年学校出でいきなり艦隊勤務だから、怪しんだのだがな」
「その辺りを軍務省の友人に聞いたところ、面白い話が聞けましたよ」
「シェーンヴァルトは陛下寵姫の弟ですが、幼年学校でも暴れ者で有名でほとほと困り果てた存在だったそうで、士官学校進学などは自分には無駄でしかないと任官を強請ったようですな、キルヒアイスはシェーンヴァルトの家臣のような存在の様ですから一緒に来たらしいです」
「それで、陛下の口利きで幼年学校出でいきなり少尉か」
「最初は皇女殿下の近衛との話だったようですが、拒否し最前戦配置を願ったようで」
「なるほど、貴族のボンボンの我が儘と言う訳か」
「その様ですな」
「それで居て何故この艦隊に?」
「それなら、寵姫の弟を最前戦でもし戦死でもさせたら軍務省の責任問題になりますから。比較的安全なこの艦隊に配属したようですな」
「確かに、最前戦に居ることは居るが、パトロール艦隊だからな」
「適当に回っていれば終わる仕事ですからな」
「違いないな」
「下手に怪我でもされて査閲でも受けたら、我々の仕事がばれる可能性もありますからな」
「だからこそ艦橋勤務でゆっくりして貰うだからな」
「1年ほど居たら移動だろうからな」
「まあ大丈夫だろう」
「そうだな」
「所で、今月の上がりだが、益々増えているからな」
「補給敞の方でも増産をすると連絡が来ている」
「引き取りは何時だね?」
「来月の15日にビロレスト補給敞で物資搬入時に受け取ります」
「また稼げるな」
「ですな」
「明日にはドヴェルグ軍事宇宙港に到着する」
「此処で、10トンのブツを受け渡すからな」
「仲間以外の要員は皆上陸させるからな」
帝国暦482年9月2日
■ドヴェルグ星域 カイザーリング艦隊旗艦テュービンゲン 士官私室
ラインハルトとキルヒアイスは本来ならば士官と准士官で有ったため本来で有れば別々の部屋であるが、軍務省からの指示で同室になっていた。実際はテレーゼ側からの働きかけであったが。
「キルイアイス、前線勤務と言いながら、全く戦いが無いな。此では昇進の機会が無いじゃないか」
「ラインハルト様、いつも叛乱軍が攻めてくる訳でも有りませんから、仕方のないことかと思いますが」
「しかも、毎日毎日辺境惑星を廻るだけだ、それに航海日誌など、書くことが無くて暇でしょうがない」
「それだけでも、辺境が平和で良いでは有りませんか」
「あー、手っ取り早く辺境貴族でも謀反を起こしてくれないかな。
そうすれば、俺にも武勲を立てる機会が巡ってくるのにな」
「ラインハルト様」
「気にするな、誰も聞いちゃ居ないさ」
そう言う訳で言ったのでは無いのだけどなと、キルヒアイスは思うので有った。
するとラインハルトの部屋に誰かがやってきてようで、インターホンが鳴らされた。
キルヒアイスが返答すると、エミール・キルドルフ大尉だった。
「ご両人、俺だ、キルドルフだ」
「何か、御用でしょうか?」
「おう、久々の上陸日だからな、我々で卿等を招待しようと思ってな、
10.00に空港のラウンジに集合だからな、確り伝えたから」
ラインハルトとキルヒアイスはお互いに顔を見合わせながら、どうしようかと考え始めた。
「キルヒアイス、態々行く必要があるのか?」
「ラインハルト様、折角の招待なのですから、しかもキルドルフ大尉達は我々に好意的です。参謀長達がラインハルト様を腫れ物を触るようにする中で、親身になってくれています。その好意は受けるべきだと思います」
「脳筋で筋肉達磨達の宴会など行く気が無い」
「そう仰らずに、只でさえ、ラインハルト様は貴族出身の士官の間では、悪意を持って見られているのですから、好意を持ってくれる方を邪険にするのは得策では有りません」
「しかし、奴は鬱陶しいだけだ。何であんなに馴れ馴れしいだ」
「大尉としても、何も判らない新米は親切心から、良くしてくれているのだと思いますが」
「それが気に入らないのだ、俺はそこいらにいる、馬鹿貴族の何も判らない新米とは、訳が違う!あんな連中と一緒にされるだけで虫酸が走る!」
「大尉は、親切心ですから。好意は受けておきましょう。それともラインハルト様は好意を持ってくれる人物をあからさまに、拒否するほど心の狭いお方でしたか?さぞやアンネローゼ様もお嘆きになるでしょうね」
そう言われたラインハルトは、むくれた顔をしながら、キルヒアイスに返答する。
「仕方ない、姉上に薄情者と思われたくないし、キルヒアイスが行きたいというのであれば、付き合うしか有るまい」
如何にも、キルヒアイスに付いていくというスタンスで仕方が無いという感じでラインハルトはキルヒアイスと共に空港のラウンジへと向かうのであった。
ラウンジに到着した、ラインハルト達をキルドルフ大尉以下数十名の艦隊陸戦要員達が待ち構えていた。「おっ来たな、早速行こうぜ」
皆が口々にラインハルト達を歓迎しつつ、表に止めてあるバスに乗せて空港から市内へと向かい、大衆レストランへと到着した。
「さあさあ、ご両人今日は卿等が主役だ、存分に飲み食いしてくれ」
キルドルフ大尉がそう宣言し、テーブルやカウンターにそれぞれが座って、飲み物が出されてくる。
「卿等は未だ15歳か、ワインは行けるか?」
「嗜む程度なら」
キルヒアイスが代表して答える。
「無理するな、ジンジャーエールでも飲んでおけ」
がたいの良い軍曹がそう言うが、ラインハルトはムキになってワインのグラスを受け取った。
「じゃあ、酒は皆に届いたか?」
「「「「「「「「「「「「おーーー」」」」」」」」」」」
騒がしい声にレストランは包まれる。キルドルフ大尉が乾杯の音頭を取る。
「新しき仲間、ラインハルト・フォン・シェーンヴァルト少尉とジークフリード・フォン・キルヒアイス准尉の今後の発展と武勲に乾杯!」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「乾杯ー」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
一気に飲み干す猛者達。ラインハルトも真似するが、咽せてしまった。
「ゲホゲホ」
それを見ていた、女性下士官がハンケチを渡し、背中をさすってくれた。
それを見ている、猛者達からは揶揄の声が上がる。
「ヘールトロイダ曹長、若い子だからって襲っちゃ駄目ですよ!」
「五月蠅いね、そんな事をするなら、酔わせてからするさ!」
その言葉に、皆が口笛や指笛で囃し立てる。
「姉御は、もう少し大人の男性が好みですからね」
「ハウザー軍曹、後で覚えてなさい!」
「ハウザー、ご愁傷様」
「ハハハ、まあ飲め飲め!」
あまりの豪快さにラインハルトもキルヒアイスも呆気に取られるだけである。
そんな中でも、キルドルフ大尉は親身になって、ラインハルトに教えようと話している。
「いいか、卿は記録係が面白くないと思っているだろうが、記録は何れ役に立つ物だ。それにだ、幼年学校出の半人前に重要な仕事を任せる訳が無いだろう。まあ面白くても、半年は我慢して実績を残すことだ。俺達陸戦要員だって、普段は仕事が無いからな」
そう話していると、別の隊員が話してくる。
「そうだよ。艦内で俺達が役に立つようなときは、大概終わりが近い時だからな。
俺達が働かない方が艦隊は平和と言う事さ」
「それに、働かなくて給料が貰えるなんて、こんなに素晴らしい事はないぜ」
レストランに笑い声が木霊する。
「そう言う事だ、卿等は未だ若いんだから、急ぐことはあるまい」
「そう言う事だよ。少尉殿」
「艦橋で虐められたら、お姉さんが慰めてあげるからね」
「慰めるじゃなくて、取って喰うの間違えだろう!」
「一々突っかかってくるんじゃないよ。お前を喰ってやろうか!」
「おー怖っ、姐さん勘弁」
「「「ワハハハハ」」」
レストランは賑やかであるが、ラインハルトはこのノリについて行けない。何故なら殆ど人付き合いをした事のない、言ってみれば引きこもりに近い精神構造になっていたために、何故此奴等はこうも馬鹿なことをするのだろうかと言うだけしか考え着かないのである。
キルヒアイスは揉みくちゃにされながら、キルドルフ大尉以下が孤立しがちなラインハルトと自分を心配して、殊更陽気に宴会をしてくれていることが判り感謝していたが、ラインハルトが眉をひそめて憮然とした顔をしているのが、キルドルフ大尉以下に失礼に当たるのにと考えていた。
散々飲み食いした後で、一応礼を言い、キルヒアイスは確りお礼を言っていたが。ヘロヘロになっても、未だ暫く此処で飲みまくる陸戦隊員達と分かれてラインハルトとキルヒアイスは帰艦した。
自室に戻ると、ラインハルトはキルヒアイスに愚痴をこぼし始めた。
「案の定、碌でもない宴会だった、俺が未熟だと!あの脳筋共は判っていない!!」
「ラインハルト様、世間一般では15歳は未だ未だ子供ですから」
「俺は違う、子供の心なんぞ、10の時に捨ててきた!」
「能力の無い参謀共と比べても俺の方が遙かに優れているのに、記録係とは!俺に任せれば叛乱軍のカプチュランカ基地なんぞ、上空からの攻撃で爆砕するモノを。只パトロールだけで何もしない!救いようがないと思わないか?」
「ラインハルト様ほど参謀達も賢くは無いのでしょう、
暫くは大きな心で見てあげる事も大切だと思いますよ」
ラインハルトは思う。キルヒアイスは誰にでも優しいな、しかしその優しさは、俺と姉上にだけで良いのになと。
「そう言うモノかな」
「そう言うモノです」
「それにしても、二度とあんな宴会は勘弁だ、次回からは居留守を使おう」
「ラインハルト様、人付き合いも大切だと思いますよ」
「いや、低脳共と付き合うだけで、俺の精神が逆立つ!」
仕方が無いかと、キルヒアイスは心の中で溜息をつくのであった。
宴会の最中にバーゼル少将は、地元の麻薬組織と会談を終え、サイオキシン麻薬10トンを受け渡し料金2000万帝国マルクを手に入れホクホクした表情で帰艦してきた。しかしその取引を闇から監視する人物達が居ることを彼等は全く気がつかなかったのである。
サイオキシン麻薬一斉摘発まであと50日、後50日である。
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