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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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756部分:第六十一話 袁術、歌で仕掛けるのことその四


第六十一話 袁術、歌で仕掛けるのことその四

「中々難しいのよ」
「あの連中は狡猾だからな」
「それに帝を押さえられているわ」
 これが辛いというのだ。
「だからね。迂闊にはね」
「手を出せないか」
「ええ、残念ながらね」
「しかしあの連中はだ」
 華陀は腕を組んで真剣な顔になって述べる。
「天下にとっては病と同じだ」
「そうね。それも死に至るね」
「いや、そこまではいかない」
「軽いっていうの?」
「あの連中は言うならばできものだ」
 それに過ぎないというのだ。
「取り除くことはだ。まだできる」
「随分と軽く見ていると思うけれど」
「死に至る病は他にある」
「他に?」
「そうだ。宦官も問題にならない位の病がある」
 それがあるというのだ。こう曹操に話すのだった。
「俺は今それを探しているんだがな」
「じゃああの書がそれなの?」
「そうだな。そのうちの一つかもな」
「他にもあるのね」
「それが問題なんだ」
 曹操に対して話す。考える顔でだ。
「どうも俺が考えているよりも深く暗いものがあるような気がする」
「随分深刻な話ね」
「そうだな。とにかく今はだ」
「とりあえずは三姉妹を何とかすることね」
「正直あの三人はただの女の子だ」
 華陀は三姉妹についてはそう考えていた。何でもないというのだ。
「無欲じゃないが野心はない」
「天下をどうこうというのは、なのね」
「ああ。そういう考えは全くない」
「じゃああれなのね。自分達が売れればいいって思ってるのね」
「それで旅をして美味しいものを食べられればな」
「それじゃあ普通の女の子と変わりないじゃない」
「その通りだ。あの三人は放っておいて何ともない」
 こう曹操に話すとだ。曹操も考える顔になって述べた。
「むしろあの歌は使えるわね」
「そう思うか」
「ええ。処罰するには惜しいわね」
 曹操も三人の力は認めた。そして三人のその性格もだ。
「野心もないし。それならね」
「ただ。利用されやすいところはあるな」
「それは何とでもなるわ」
 三人のそうした性格については特に気にしないという曹操だった。
「目付でも付ければね」
「それで済むか」
「ええ。まあこれからのことはそうして」
 おおよそを決めた話だった。
「後はね」
「後はか」
「言葉だけでは駄目よ。実際に動かないとね」
 こう華陀に話す。
「動いてことを為さないとね」
「そうか。でははじめるか」
「そう。はじめないと何にもならないわ」
 よく言われることをだ。曹操も言葉にして出した。
「だからね。はじめるわ」
「わかった。それじゃあな」
「ええ。けれど」
 曹操は華陀の顔をあらためて見た。そうしてそのうえでこう話した。
「貴方もまた」
「俺も?」
「何かと沢山のものを背負ってるみたいね」
「ははは、俺は医者だからな」
 曹操は笑ってこう答えた。
「それは当然のことだ」
「医者だからなの」
「医術は仁術だ」
 それだというのである。
 
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