世界をめぐる、銀白の翼
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第六章 Perfect Breaker
不意打ちの乱入者
神は―――――
一日目に光を作り賜うた
暗闇のみだった世界は照らされ、全てが見えるようになった。
そして闇を夜、光を昼と名付けた。
二日目に空を、三日目に大地を作り賜うた。
見上げるべき方向が出来、足を付ける土台が完成した。
水が張り海となり、根を降ろし草花が生えた。
四日目 神は太陽と月と星を作り賜うた。
空は瞬き、夜の闇の中にも光が生まれた。
五日目 神は新たに二つの生物を作り賜うた。
その内の魚に海を、鳥に空を支配させた。
そして、七日目に休む前に
最後に
六日目の内に、人をお造りになったのだ。
世界をめぐる、銀白の翼
第六章
Perfect Breaker
★☆★☆★
「で?覚えはないと」
「当たり前だろ。あんな男は知らない」
音無や奏に何度か話を聞き、これでもう三回目。
蒔風も意味はないと知りながら、どうしても聞いてしまうのはそれこそ、手がかりが全くないからである。
「この写真の男とか?やっぱ」
「知らないって」
「だよなぁ~」
ぐで~、と机に突っ伏してため息をつく蒔風。
戦興行での襲撃から一ヶ月近く経つものの、一切のコンタクトがない。
いきなりの攻撃も、不穏な動きすらない。
こっちが察知しきれていないと言うのならば、それまでの話ではあるのだが・・・・
「それにしても、あの時の「奴」があれだもんなぁ~」
「な~?面白いだろ?」
「二人ばかりわかってるのね」
「あ~・・・すまん、奏」
「そうそう。こいつ君いなくなってからずっと生徒会長しててさ、奏を待つんだ~、とかやってて」
「お前今このタイミングでそれ言う!?」
蒔風の爆弾発言に、奏がゆらりと立ち上がって音無に詰め寄っていく。
すぐに来てくれなかったんだ・・・・などと言いながら少しずつ寄って行く彼女はかなり怖い。
「どんまい」
「お前まいた種ほっといてどっか行こうとするなよな!?」
「だが断る」
「外道ーーー!!!」
バタン、ととびらをしめて、部屋から出ていく蒔風。
男の正体は依然としてわからないが便宜上、彼の脳内では「アーヴ・セルトマン」としている。写真とは全く違うが。
だがそれを差し置いても、セルトマンは謎が多すぎる。
世界を越える際の、灰色のオーロラ。
奏を利用した目的。
そして、彼女を見つける際のあの六つのアイテム。
脳内にいくらでも考えは出てくるが、どれもが現実的ではない。「それ使って何か小説でも書けば?」クラスの物止まり。
だが、蒔風は妙にその考えを捨てきれない。
ゴンゴン、と頭を軽く殴ってから、その考えを捨てようとする。
「うーん・・・・わからん・・・・」
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「一刀はどう思うの?」
「なにが」
一刀の部屋で、理樹と一刀がゲームをしている。
今日は珍しく二人とも一人きりで、暇だからと言ってゲームに興じていた。
その間に、理樹から一刀に話を振ったのだ。
「あの男のこと。戦ったの、一刀と僕でしょ?」
「まあ他にもいるけどな。ヤバかったらしいけど」
セルトマンとされる人物と戦ったのは、この三人のほかにはティアナ、氷川、名護の三人だ。
だが三人は口をそろえて「戦いにならなかった」と述べる。
三人が三様の攻撃を敢行し、様々な武装、能力の全てを駆使しても、その悉くが男には通用しなかっと言うのだ。
しかし、効かなかったわけではない。
当たれば多少なりとも身じろぎし、唸り声程度は上げていたのだから。
だが、その攻撃のほとんどは回避することで無効化されていた。
ガトリングを構えれば走り回られ、双銃を向ければ弾幕を吹き飛ばされ、刃を振り下ろせば太刀筋を見切られる。
その内にすべてを破壊され、彼らは敗北を期したのである。
「一刀はどうだったのさ?」
「俺か?俺の攻撃は結構当たってたと思うぞ―――うぁっ!?お前その隙にそう来る!?」
「油断大敵でしょ?―――当たったの?」
「ああ、割とな。でもなんだろうな・・・・あいつ、俺がだれの何の力を借りてるのだとか、わかってるみたいだった」
「・・・・・マジ?」
「マジマジ――――ってだからいきなりそう言うこと、おま、ちょっ!?」
「次に一刀は「話しながらゲームは無理だろ!?」という」
「話しながらゲームは無理だろ!?・・・ハッ!、じゃなくて」
「うん」
ゲーム画面で勝敗が決まり、理樹の使っていたキャラがポーズを決める。
二人はコントローラーを置いて休憩にし始めた。
「理樹の方はどよ?」
「僕の方は完全に隙を突かれたよ。あの世界じゃ怪我もしないからって感じだったから」
フロニャルドにおいて怪我はしない。
その認識が、理樹のバリアをいつも以上に緩めていたのだ。
その隙を、男は一気に突いてきた。
そしてフロニャ力の恩恵の中で、理樹から血を奪ったのだ。
「もう何が何だか」
「一緒にいた男たちってのも、行方知れずなんだろ?」
「うむむぅ・・・・」
腕を組んで考え込んでしまう一刀と理樹。
そうして考えていると、今までは聞こえなかった音が聞こえてきた。
それは結構前から続いていたのだが、ゲームのせいか聞こえていなかったようだ。
ともあれ、二人は部屋から出て何事かと様子を見に行く。
騒ぎの中心は
「玄関ロビー?」
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『私はアーヴ・セルトマン。魔術教会の資料とは違う姿だが、そこは気にしないでくれ』
玄関ロビーの人だかりは、円形に中心を開けて作られていた。
その中心に、ホログラムのように映し出される男。
床には手紙だったのであろう紙が散らばっており、そこからの光でこの虚像を作り出しているのだろう。
「その理由を教えてくれるのか?」
『いやいや。それは君の優秀な理解力で解いてくれよ、蒔風』
それと対峙するのは蒔風だ。
考え込みながら三階を歩いていると、下のロビーから「きゃ」という悲鳴がして飛び降りたのだ。
手紙を開けたのはアリスらしい。
驚いて声を出してしまったのをからかわれたせいか、顔が少し赤い。
「じゃあなんだ。お前が世界を破壊すると言うのは知ってるが」
『あー、別段それは目的ではないのだが、途中経過でそうなるな』
「ふざけんな」
『だろうね。でももうほとんど準備は出来てるんだ。後は実行するだけさ』
男の言葉に、蒔風の双眸が険しくなる。
もしそうなら、自分たちの知らないところで世界破壊の段取りは進んでいるということだ。
『蒔風。君らにとっての最後のチャンスは、あの時に立華奏を私から守るときだったんだ。それが失敗した以上、私はこれ以上ない完璧となって世界を破壊する』
「でもそれが目的じゃないんだろ?何が目的だ」
かつて、「奴」であった頃のショウは世界を破壊してそのエネルギーで新たな世界を再構築、自らの失われた世界を取り戻そうとしていた。つまりはショウ自身も、世界の破壊そのものは目的ではなかった。もしかしたらこいつも、同じように何かの理由があるかもしれないと言う蒔風の考えだ。
だが
『私は、この私の完璧を世界に示す――――たとえ世界が破壊され、その存在が消滅しても!なおその存在を失わないとなれば・・・・・それは紛うことなく「完璧な存在」であるといえるだろ?』
「実験か?」
『そう。いうなれば「存在実証実験」とでもいうのか』
「余計ふざけんな」
眉間にしわを寄せて嫌悪感を表す蒔風。
だが、それでも口に出さないだけで何かあるのか、と思ってしまうあたりはこの男の人の良さと言うか甘さと言うのか。
『だがね、それであっさり世界を破壊して自分がいて、それで貴方は完璧な存在です、と言われても実感がないだろう?答えをいきなり明け渡され、その過程や方程式がわからないと納得できないのと同じで』
「だから?」
『あっさりしてるね。ま、その方が楽だけど・・・・私はね、蒔風。君らに戦いを仕掛けたいのさ』
「・・・はぁ?」
蒔風が素っ頓狂な声を上げる。
コイツ何を言ってるんだ?
『世界の護り手として、存在してからまだ三年経ったか経ってないかの組織。にもかかわらずその実績は華々しい物ばかり。世界の大結合、巨大邪神事件、赤銅大戦・・・・・あと、ワルプルギスの夜撃破だったかな?』
「・・・おい・・・ちょっとまて」
『あ、あとは蒔風が「EARTH」局員を消していく事件とか、邪神倒した後にセフィロスとかいう奴倒してたっけ?確かマリアージュ事件も「EARTH」の協力で・・・・』
「待て!!お前、何故知っている・・・・!?」
ワルプルギスの夜撃破は、「EARTH」の局員なら彼等からの聞いた話で知っている。
管理局にも、報告書の形で伝わっている。
だが、それだけだ。
それ以外の人間は、知るはずもないし知らなくていい。
だと言うのに
過去から一気に塗り替えられ、ワルプルギスの夜どころか魔女の存在すら根本から消滅したと言うのに、なぜこいつはそのことを知っているのか――――!!!
しかも、こいつは蒔風がかつて一時的とはいえ局員を消したことも、そしてフォーティーンを撃破した後のセフィロスとの戦闘も知っていた。
「お前、本当に誰だ」
『それ以上に気になることがあるだろ?それとも、この問答もそれを理解するための情報収集かな?』
不気味だ。
蒔風は首筋に嫌な感覚がまとわりつき始めるのを感じていた。
だが同時に推測も立てやすい。
非常に魔術師らしくない手段だが、ハッキングをしたのかもしれない。もしくは侵入して資料を見たのかもしれない。
蒔風が思考し、その推測を立てて不気味な男から逃れようとする。
しかし、目の前の男はそれを容易く
『ワルプルギスの夜の時さ、まさか彼女の願いをヤミーで代替できるとはね』
打ち砕く。
「なん・・・・で・・・・・」
報告書には「ある少女」の願いでワルプルギスをはじめとする魔女を消滅させたと記した。
だがその少女のことは一切書いてないし、ヤミーと言う単語は欠片すら出てこないのだ――――!!!
「何故知っている!?」
『そんなことより、「EARTH」のことさ。とにかく、いろんなことを為してきた「EARTH」。障害としてはぴったりだ』
「・・・まさか」
『君らに最後のチャンスだ。私の最後の障害として、存分に抵抗してくれたまえ』
最初から、この男には負ける気は無い。
勝つことが前提の障害だと、アーヴ・セルトマンははっきりと断言する。
勝つことがわかっていても、障害があるのとないのとではやる気が変わると言い放つ。
「お前・・・・ふざけんじゃねえぞ」
『それ、三回目』
「ああ、大事なことだから三回言ってやったよ。お前、本当にイカレてんじゃないのか?」
『うーん・・・・完璧な私はそうあるはずないんだがなぁ・・・・まあとりあえず・・・・宣戦布告はしたよ』
「あー、よし。おーけぇおーけぇ・・・・・・いつでも来いよ。クソ野郎」
蒔風が睨み付けてその宣言に応じる。
周囲に集まっていたメンバーからも、やってみろ、と言う無言の気迫が上がる。
そして、男もまた応じて言葉を発した。
「じゃあ始めようか」
スピーカーから出るような声ではなく、はっきりとした声がロビーにした。
「なに!?」
ド ド ド ド ド ド ォ ッッッ!!!
「いつでも来いと言ったのはそっちだろ?ま、もともとこのつもりだったけど――――」
砲撃される「EARTH」。
炎のように赤い砲撃が、そのビルを殴打して行く。
理樹が飛び出してバリアを張り、それを防いで土煙が晴れるとその先に
「セルトマンッッ!!!」
「そんなに声を荒げなくても聞こえるだろ?」
四人の男を従えたアーヴ・セルトマンが、不敵な笑みを浮かべて「EARTH」外門をゆっくりと越えてきた。
「さあ、はじめようじゃあないか!!本気出してくれよ、蒔風!!あっさり終わったらつまらないからさ!!」
いきなりの襲撃。奇襲。
その足元から魔法陣があふれ出し、四人の男が飛び出してきた。
開戦である。
だが、これほどまでに不意打ちなものはかつてなく
「くそ、戦えるのか・・・この状況で・・・・!!」
「EARTH」最強とされる男は、いまだに全力を取り戻していない。
to be continued
後書き
いきなり開戦。
いきなりすぎるかもしれないですが・・・・変な風にならないように善処いたしましたのでそうでなければ幸いです。
冒頭の文はあまり気にしないでね~
伏線じゃないんだからね!!(迫真)
ちなみにCV.中田譲二で
ではでは~♪
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