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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第六章 Perfect Breaker
  解決日和


割れんばかりの歓声

様々な音響

アイドルたちの歌声

レーザーライトやスモークの派手な演出



会場内を包んでいた熱気。
その要因であったものが、一斉に途切れた。


スピーカーは切られ、マイクの一切は機能しなくなる。

音響の故障か?と思われると、直後にライトがステージの物を残してすべて消えた。



「え?えぇ!?」

「どうしたのかしら・・・・・」

ステージ上にいたアイドルたちも困惑の表情を浮かべる。



そして


ダァンッッ!!!


銃声
そして、一人の男にスポットライトが当てられた。

「只今を以って!このコンサートホールは我々赤イ竹が占拠したッ!!!」

同時に、コンサートホール内の明かりが一斉に点灯し、出入り口から武装した兵士が、一気に侵入してくる!



あまりの事態に唖然としてしまう観客たち。
もともと暗かったライブ会場と言うこともあり、目がまだ慣れていない者もいる。


その状況をうまく使い、男の声だけが響き渡る。

「いいか!!勝手な行動を起こすものは、即座に射殺する!!」

拳銃を手に、ステージ上から命令する首領の男。



ステージ上にいた三人のアイドルたちはと言うと


「な、何がどうなってるの・・・・?」

「なんか大変なことになってるの・・・・」

「これは・・・・くっ」

天海春香、如月千早、星井美希の三人は、抵抗することなく捕まっていた。
状況がよくわかっていないというのもあるが。


『コンサートホール、占拠完了』

『建物内部の制圧を確認』

『コントロールルーム占拠しました』

『建物外部の観測点設置完了』

「よろしい。では諸君、それぞれの持ち場は任せたぞ」


無線機から聞こえてくる報告に、まずは上々と頷く。
そしてカメラマンに向かってこっちに来いと指さす。

カメラマンはカメラと共に男の元へ向かい、ステージの上に上った。



すると男の部下がカメラを取り上げ、首領の男を映し出す。



「見ているか、国民の諸君。我々は世界救世組織「赤イ竹」だ。今晩、この国から世界は変わる」


そこから、男の演説が始まった。

言ってることは綺麗事。
それだけならまだいいが、「邪魔をする者は実力を以って排除する」「逆らうものは皆殺し」「自分たちがこの世界を統治するのが最良」などとくだらない計画や国家論を、さもそうであると思わせるかのように吐き出していた。

要は、その綺麗事を建前に「世界征服」を狙っている、と言うことらしい。



それらの話は、聞いているだけでふざけるなと言いたくなるものだ。

実際、観客の中もざわめきだしている。
そもそも、楽しみにしていたライブをこんな形で台無しにされてしまっている彼等だ。

こんな話を聞かされては、いつ暴走してもおかしくはない。

そして



「ふざけんな・・・・!!」

「ん?」

ステージにあげられていたカメラマンが、キレた。
自分の扱っている仕事道具を奪われ、さらにこんなくだらないことに使われているのが、我慢ならなかったのだろう。


「あんたがやってんのは・・・・ただの犯罪だ!!何が世界を救うだ・・・・!!ただの・・・・ただの自己満足だろうが・・・・!!」

「ほう」


カメラマンが一気にまくし立てて叫ぶ。
怒りで我を忘れているのと、目の前の凶器が本物であるという実感がないために行うことのできる蛮行。


だが、行っていることは正しい。
その言動に、観客たちももっと言ってやれ、と視線で後押しする。


「ガキみたいなこといやがって・・・・お前さんが一体・・・・どれだけすごいか知らんがな・・・・なんだ?」

だが、男の言葉は止まる。
首領の男が、あまりにもつまらなそうな、悲しそうな顔をするからだ。


「はぁ・・・・悲しいなぁ?我々の崇高な目的を理解できない愚か者が、どうしてもやはりいてしまう」

「何が崇高だ・・・・何が・・・・」

男の文句。
そして

「だから、黙ってもらうのが一番だ」

そして、男が撃った。

ダンッ!!

「え・・・・あ?」

・・・・・ド、バタッ!!

「晒せ」


短く命令すると、数人の男が倒れた男の身体を抱えて、ステージの真ん中に引きずっていく。
そしてそれがカメラに収められ、メインモニターに映し出された。


「これが逆らった結果だ。我々がコケ脅しでないことはわかるはずだ。さらに」

銃口を、観客に向ける。
向けた先から、観客がウェーブして伏せて行った。


「これだけの人質がいることを忘れるな。我々の当面の目的は、まずこの国の明け渡しだ。連絡はこのホールにしてくれ給え」

それだけ言うと、部下たちがカメラマンの死体を放し、そこに放っておく。
ドシャ、と倒れ込んでそのままにされる。


「さて、この国の愚かな治世者たちよ。お前達もわからぬほど、愚かではないだろう?」

そう言って、いったんカメラが切られた。


すると数分後、部下が受話器を手にして男の元へとやってくる。



「早いじゃないか。我々の要求を呑めるかな?」

『そんなことは』

「あぁ、先に行っておくがこの会話はこの会場内にいる人間にも聞こえているぞ。下手な発言はよした方がいい・・・・で?「そんなことは」?」

『・・・・そんなことは簡単にできない』

「だろうな。君たちも身辺整理が必要だろう。我々も無駄な労力を掛けたくはない。出て行ってくれないかね?」

『時間が必要だ』

「ではこの嵐が過ぎ去るまでは待とう。あと一時間半か二時間ほどか?」

『そんな短時間では無理だ!!せめて・・・・』

「おいおい・・・・我々はこの嵐の中行くのは大変だからそれだけ待っているのだぞ?」

『だが実際に無理だ!!』

「もっと短く設定しても良いのだが?」

『・・・・・わかった・・・』

「嵐が過ぎ次第、我々の部隊がそちらに向かう。もし妙な真似をすれば・・・・愚かな決断のために、多くの国民の血が流れることになる」

ガチャっ


電話を切って、ステージの上から観客を見下ろす。


(愚かな国民たち・・・・莫迦な治世者たちの莫迦な政治に振り回されていることに気付かない者ども)


(だが、私が変えてみせる。そして崇めるのだ。この私が、この国の唯一の統治者となるのだ!!!)


口角が上がり、自然とにやけてしまう。



その様子を見て、春香は悔しかった。

せっかくみんなで成功させようと、毎日のように練習したのに。
忙しい時間を縫って、なかなか会えないけど集まって、それで頑張って来たのに。

そのみんなのライブを、こんなふざけた形でぶち壊されるなんて。


隣を見ると、千早も美希も同じ気持らしい。


だが


さっきのカメラマンのことが脳裏によぎる。
反論すれば、簡単に殺される。

ドラマや映画。
演じる世界の物ではなく、あまりにもリアルな、死の恐怖。

何も言えない。
何もできない。




------------------------------------------------------------


「ヘリも飛ばせないのか!!」

「この強風では無理です!!」

そのころ、対策本部では怒号が飛び交っていた。

なんであそこを見落としていただの、今すぐ部隊を編成して突入させろだのと、完全に混乱状態だ。


その中に、ティアナ・ランスターはいた。

騒然とする中を進み、連絡班のオペレーターのもとへと進む。

「今ライブ会場には誰もいないんですか?」

「えっと・・・・そう言えば。おい!!確かライブ会場を確認するように連絡あったよな。あれ受けたの誰だ?」

「私です!!」

オペレーターの一人が立ち上がり、その場にティアナが向かう。
聞くと、ライブ会場のことに気づいて連絡してきたものがいたらしい。


「どうしてもっと早く報告しなかったの・・・・・いえ、今の混乱状態じゃ無理ね」

「すみません・・・」

「いまさら言ってもしょうがないわ。それで?だれが?」

「えっと・・・それが」

オペレーターの話では、向こうからの名乗りもなく、話が終わったら「行きます」の一言で切れてしまったらしい。
頭を抱えるティアナだが、その音声を聞かせてもらう。

「この声・・・・青龍さん?」

「「EARTH」からの応援ですか?」

「行く、と言ったのよね・・・・」


聞き覚えのある声から、相手を知るティアナ。
だが

(だったら内部に侵入している?だったらこんなことには・・・・でも、報告時間はライブ開始の二分前。と言うことは、到着した時にはすでにライブは始まっていたはず。対策を取ろうにも、ってことかしら・・・じゃあ今はタイミングを見計らって・・・・?)


思考が渦巻く。
兎にも角にも、内部の情報が全く入ってこないのだ。


捜査本部のモニターには、赤イ竹の犯行声明と要求、そしてカメラマンを打ち殺すまでのシーンが流されていた。
そちらにふと目を逸らし、ティアナは見た。

「あ・・・・」

そして、気づく。
それからまた考え出すも


「おい!!内部と周辺の見取り図まだ来ないのかよ!!」

「こっちにあります!!」

「何でそっちにあるんだよこっちに移せ!!」

「部隊編成はどうなってんだ!?」

「こっちでやってます!!」

「はぁ!?おいこっちでもやってんぞ!!」

「各捜査員はライブ会場に向かって・・・・」

「そんなことしたら人質殺されんぞ!!捜査員はそのまま待機だ!!」

周りがあまりにも騒々しい。
声が大きいだけならともかく、混乱具合が飛び交う声の音量にに拍車をかけていた。

指揮系統は混乱でメチャクチャ。
やかましい声ばかりが行き交い―――――

「あ゛ーーーー!!うるさい!!もっと静かにできないんですかッッ!!!」

ティアナが叫んだ。
その一喝に、シィン・・・と静まり返る捜査本部。


「A班は現場周辺と建物内部の解析!!B班はいざという時の部隊編成!!C班は各捜査員にライブ会場周辺に急行するよう連絡してください!!ですが、敷地内には入らないよう厳命を!!」

「「「「「・・・・・・」」」」」

「何してるの!!早くするッッッ!!!」

「「「「「お・・・おぉぉぉおおおお!!」」」」」


ティアナの言葉に、一気に動き出す捜査本部。
そのなか、一人が心配そうに言った。

「おい!!勝手にんなこと決めていいのか!?」

確かに、不安にもなるだろう。
だがティアナはそんな暇はないと言って、にっこりと笑って優しそうな声を出した。


「今そんな議論している暇はありますか?まだ慌ててるようなら―――――いっぺん頭冷やします?」

「だ、大丈夫ですっ!!」


「・・・・大変ですね」

「まったく・・・・ルネ、私たちは出るわよ」

「え!?」


「ここのメンバーはこういう事件を取り扱う人員が集められているわ。系統がしっかりすれば、あとは大丈夫でしょ」


そう言って、車に乗り込む二人。
嵐の中に、ヘッドライトが走り出す。




------------------------------------------------------------



『Cエリア、異常なし』

『Dエリア、異常なし』

『Eエリア、異常なし』

「Fエリア、異常なし」

『よし。引き続き、警戒を怠るな』

「了解・・・・」


Fエリア。コンサートホール裏側のエリアだ。
防音の関係か、裏は林になっているこのホール。その中で、もっとも警戒されているエリアだ。

裏いう事もあり、窓もドアも極端に少ない。
ところどころに申し訳程度にある中からの明かりも、この夜の闇の前にはなすすべもない。



異常がないことを確認し、報告をした男が横を見る。数十メートル離れた先の、シルエットにしか見えない男が「大丈夫だ」と言わんばかりに、片手をあげて合図をしてくる。

(何事もないか)

左右の健在を確認し、男は林の中をじっと見つめる。
暗視スコープ越しに見る夜の世界は、少し緑掛かっていた。


(まあ来たところで返り討ちだ。首領の計画通りに事は進んでいる)


そう考えていると、だんだんと雨音がしてきた。
降り始めたようだ。

最初はおとなしそうな雨ではあるが、一気に大粒になって来た。
もともとあった強風も混ざって、嵐と変わらなくなっている。


今の状況では、無線のイヤホンのおかげで仲間の声は聞こえるが外界の声が聞こえない。
だが想定内だ。訓練はつんできた。


「Fエリア班。見ての通り、降り始めた。耳は当てにならん。予定通り、自分のバディと交代して目で警戒に当たれ」

連絡をする。
そして、自分もバディと後退しようと振り向いた瞬間


「了解、隊長」

ブォッ!!


聞きなれない声がした瞬間、男は背後にナイフを振り上げていた。

聞いてから判断したのではなく、バディの物ではないその声がした瞬間に、反射的に腕が動いていた。
その判断速度に、相手は驚きながらもそれを受け止めた。


「なに!?」

相手は、下から振り上げられるその男の手首を止めていた。
手首でクロスし、それを当てて止めていたのだ。


即座にナイフを放し、腿のホルスターから拳銃を抜いて銃口を向けた。
だが相手は一歩踏み込んできて、撃鉄を掴んでその発砲を阻止する。

そして膝蹴りが鳩尾にぶち込まれ、くの字に折れた体に、カウンター気味のアッパーが叩き込まれて男が沈黙した。


「ふぅ・・・・さっきこっち向いてきたときはビビったけどな。適当に手を振っといてよかった」


そこにいたのは、雨に揺れた翼刀だった。
すでにこのエリアの隊員はすべて倒され、さっき手を振ってきた隣の隊員は翼刀だったらしい。


「さて・・・・ことはもう始まってるみたいだな」

無線機を回収し、翼刀が中に侵入する。
兵の目をかいくぐり、中へ中へと進んでいった。


会話が耳に届いてきた。



「おい。人数が合わないみたいだぞ」

「何人か隠れてるみたいだな。見つけて引きずり出してやれ」

「俺、ここのアイドル好きなんだよな」

「そうなのか?」

「あぁ・・・・だから見つけたらよ、いろいろさせてもらうとするかねぇ・・・・」

「そ~りゃいい。愉しませてもらうとするか」


下卑た笑いを携えて、兵士たちが進んでいく。
どうやら、わりと余裕はないようだ。




------------------------------------------------------------


少し時間は過ぎ


「なかなか反抗的な目だな」



ステージの上。

春香達の自分を睨む目つきをに気づき、首領の男が面白そうにニヤつく。
まるで、その光景が滑稽なもののように。


「なにか言いたいが、言った瞬間に殺される恐怖が混ざった、い~い目だ」

「・・・・・」


「そうだ。貴様らは何も言えん。力無き、哀れな者どもにすぎん。だが何かをしようとも、貴様らは殺さん」

「え・・・・?」


「貴様らをこのステージの上で客からもわかるようにおいているのはな、それだけで抑止力になるからだよ」


ここにいる観客は、765プロアイドルのファンだ。
ならば、彼女らが一番の人質であるこの状況で無茶をするはずがない。

また、彼女達に手を出したとなると、観客は暴徒と化す可能性もある。
そうなってしまえば、いくら銃があるとはいえ数に押されてこちらが負ける可能性もある。

負けなくとも、人質は一気に減るだろう。


「お前らはこの俺に生かされている、と言うことだよ」

「・・・ふざけないで・・・・」

「ほう。死なないとわかってから強気に出たな。だが、貴様らが何かおかしなことをするならば・・・な」


そう言って、三人を引っ張り、先ほどのカメラマンの元へと歩かせる。
観客はどよめくが、すぐに銃口を向けられて口を紡ぐ。


「何かすれば、すぐにこうだ。お前らではない、あの観客の中の誰かをだ」

「そんな・・・・」

「自己犠牲ならいくらでもしようが、さすがにファンの命は犠牲にできまい?貴様らは相互に人質なのだよ」

「この人たちは・・・・・」


「なんとでも言うがいいさ!!見ろ!この力!!これだけの群衆が、俺の前に跪いている!!待っていろ!!これからオレは、全人類をこうしてみせるのだ!!は・・・はっは・・・はっはっはっはっはっは!!」



目の前の光景が愉快なのか、男の高笑いが反響して行く。
その言葉にいい気になったのか、ホール内部を囲む兵たちもクックと笑い始める。



「さあ!!諸君らは新たな世界の礎になるのだ!!そのことを光栄に思いたまえ!!」

「そんな!!」

男のボルテージは最高潮だ。
自分に酔っているのか、それとも、上機嫌になって本性が出たか。



足元の男を見下し、春香たちを引きずり、観衆をあざ笑って叫ぶ。

「反抗するか?はっはっはっは!!この世界を統治するには、優れた人間であるべきだ!!今の統治者が愚かであることにも気づかない、哀れな貴様らの代わりに、私が新たな道を示してやろう!!私が一番だ!!私が率いる!!私が導く!!私が・・・・」


「少しうるさい・・・・ですよ」

バリィッッ!!!



瞬間

男の身体に電流が走った。
全身の筋肉が硬直し、その手から銃が落ちた。


あまりに不可解な光景に、周りを囲む兵士たちは唖然としている。

足元で死んでいたはず男が、起き上がっているではないか――――――



唖然とするのは当然だ。
だとしても、唖然とする時間は実に一秒にも満たない。

とはいえ、彼にとってはそれだけで十分である。


「・・・・フッ!!」

「コッ!?」

呂律の回らない、男の間抜けな声。

膝裏を軽く小突かれ、カックリと崩れ落ちる。
同時、手をはたかれて彼女たちを掴む手を放してしまう。

そして死体だったはずの男は、はたいた右手で三人を背後に回させる。
膝を小突いた左足は、着地と当時に堕ちた拳銃を蹴り飛ばし、ステージの幕の下に滑らせて引き離した。


そして入れ替わり右足を繰り出し、電撃で体の自由の利かないと男の背中を蹴り飛ばした。


「カボッ!!!」

またもや間抜けな声と共に、顔面を擦りつけて、男が床に倒れ込む。




「・・・・・え?」

「だれ・・・・」

「なの?」


そこにいたのは、胸を真っ赤に染め、さっきまで死んでいたはずの男。
だが、こうして見ると見覚えがない。

リハーサルや打ち合わせの時からいるのだ。
スタッフならば、見覚えがあるはずなのだが・・・・・


一方、その質問に答えようとして、その青年は顔についた血糊を拭い、べちゃっ、と地面に払う。


「遅れて申し訳・・・・ございません・・・・「EARTH」局長付使役獣・・・・青龍です」

「え・・・?「EARTH」?」

「って、あの!?」


「てめぇ・・・・何様だァ!!!」

「?」


ようやく男も身体に力が入り始めたのか、怒声を上げて青龍を指さす。
それに対し、青龍は堂々と言い放った。


「あなたの・・・・敵だ!!!!」



ステージ上で面と向かい合う二人。
映画か何かのワンシーンのようだが、首領の男はニヤニヤと笑っている。


「おいおい、あの観客たちは良いのか?」

「それが・・・・なにか」

「こっちは命令一つで皆殺しできるんだぞ!!」

「それがそんなに・・・・楽しいですか?」

「はっ!!この口がちょいと動けば即座に全殺し!!命ですら俺は操作できる!!そんな愉快なことはないだろう!?」

「はぁ・・・・そうですか・・・・では、獅子」

「合点!!」


ドッ!!ごゴゴゴゴンッッ!!


「・・・へ?」

「あまりにもくだらない愉しみのようなので・・・・無力化・・・・させてもらいました」


男が見ると、周囲を囲んだ兵士たちはテレビカメラや照明などに、軒並み押しつぶされていた。
パンパン、と言う音がしたと思うと、伏せる観客の真ん中に男が立ち上がっていた。


言わずもがな、獅子である。

たとえ人型であっても、獣神体の力は使える。
彼はその鬣を伸ばし、足元を這わせてカメラや天井の照明に引っ掛けていたのだ。


そして、それを合図と共に引っ張ったのだ。
それらは一斉に飛び上がり、空中でぶつかり合って方向を調整されながら兵たちの元へとスッ飛んでいった、というわけだ。


それに加えて、それらの機材は出入り口をふさいでおり、外からの増援を防いでいた。


「お・・・まえらぁあああああ!!!」

「これ以上の抵抗は・・・・無駄です・・・・大人しく・・・・」

「するかよ!!!」

ガボン!!と、男が足元の大きなカバンを蹴った。
すると、それが一気に開いて中から一つの黒い塊が飛び出してくる。


「あれは・・・・」

「ろ、ロケット砲!?」

背後で驚く千早。
実際にはRPGとか呼ばれるものだが、この際そんなことはどうでもいい。

重要なのは


「てめぇらまとめて吹き飛ばしてやるぁ!!!」


この男の、その暴力の向く先である。
青龍が構える。


引き金が


ガチッ!!


引かれた。





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「おい!!てめぇら出てきやがれ!!」

「抵抗しても無駄だよ~このままだと全員殺しちゃうよ~」



「ま、真ちゃぁん・・・・」

「だ、大丈夫さ。みんなはボクが守る!!」

「やよいや真美、亜美達は大丈夫でしょうか・・・・」

「あいつがついてるから、きっと大丈夫よ・・・・でも・・・」

「や、やばいぞ・・・・あいつら銃持ってるゾ・・・・」



控室。
そこに、数人のアイドルが立てこもっていた。

いるのは萩原雪歩、菊地真、我那覇響、四条貴音、秋月律子と、竜宮小町の三人だ。


そろそろ春香たち三人の出番も終わり、やよいたち三人が出るという、その時。
その次の出番である真達が出ようとした瞬間、妙な集団が現れた。

異常を察知した真が即座に部屋に立てこもり、バリケードを作ってこうして事なきを得ている状況だ。



「だ、大丈夫なの?真」

「今は・・・・・でも、無理矢理来られたら流石に・・・・」

「ですが、いくら真でもあれを相手には・・・・」

「いい!?来ても絶対に抵抗しないのよ・・・」

「どうして伊織はそんなに落ち着いてるんだよ!!」

「慌てたってどうしようもないでしょ!?私だって!!・・・」

『おい、もうこれぶっ壊しちまおうぜ』

《!?》


口論していると、聞こえてきた外からの声。
その一言に、彼女たちに戦慄が走った。


『おいおい~もうちょっと楽しもうぜ~』

『それもいいが、これ以上時間も掛けられん。とっととぶっ放して開けるぞ』

『へーい』

ガシャッ!!


扉の向こうから、重々しいを音がしてくる。
装備を外しているのか。


そして



『だぁ~~・・・・ドリャァッッ!!』

バガォッッ!!


男のタックル一つで、机などを積んだバリケードは扉ごと一瞬で吹き飛んだ。


そう、この扉を突破しようとすれば、彼等には簡単にそれができたのだ。
ただそれをしなかったのは、中で怯える少女たちを愉しんでいたからに過ぎない。


その証拠に、舌なめずりをした巨漢が扉をくぐって入ってきた。



「へっへっへっへ・・・・さぁ~あ、怖がらないでこっちおいでぇ~」

「ひぃっ・・・・」

「へっへっへ・・・いいぜェ、その顔。恐怖に歪む声だァ・・・こいつがたまんなくて、俺ァこの仕事やってんだぁ!!」


目の前の標的に、ダラダラとよだれを垂らしてくる男。
説明はいらないと思うが、この男はもはや壊れている。

人格が、ではなく、倫理などの人としての理性が、だ。
そう言う意味ではもはや「人間ではない」。


男の身体は二メートルを超えている。
扉は完全に男の身体でふさがれており、廊下が一切見えない。

塗り壁、という妖怪がいるが、それがきちんとした(?)人間の体を持ったらこういう感じなのだろう。



その大きさに、全員が絶望する。

最初こそ「自分が犠牲になってでも・・・」と思っていた者も、この光景に動けなくなる。
目の前の圧倒的な暴力に、身動きが取れなくなる。

ガチガチと奥歯が鳴り、全身が震えだす。




「ぶっ壊れるまで遊んでやるよ・・・・楽しみでしょうがないぜェ!!」

叫ぶ男
しかし、男の後ろからは何か音が聞こえてくる。
それはひしゃげる音であり、吹っ飛ぶ音であり、何かの悲鳴でもあった。

自分の興奮した声で気づかなかいのか、男はまだ叫ぶ。


「最初は誰がいいかねぇ・・・・い~い悲鳴を聞かせてくれよぉ!!がはははははははァ!!!」

「そうか」

「んあ?」


ようやく気付く。
男は、背後から下声にゆっくりと振り返った。


そこには、自分よりも小さな男が一人。


「なんだ?お前」

「敵」

「は?・・・・!?」


そこで、ようやく男は気付いた。
廊下が惨状と化している。

破壊された兵器。
ブチのめされている仲間。


その光景に、男の額に青筋が立った。


「お ま え・・・・」

「へぇ、仲間を傷つけられてキレるくらいの精神はあるのか」

「許さん!!」

ゴォッ!!

「オッ!?」

男は叫び、相手の肩を両腕でつかみかかった。

この身長と体格の差だ。
相手の両肩に手を当てて、思い切り押しつぶせばそのままひしゃげてしまうであろう構図。


しかし、そうして掴みかかった男ではあるものの

「な・・・・」

「・・・・どうした、力自慢」

(う、動かねぇ!!なんだこいつ・・・・俺よりもちっちぇえ癖に、まるで地面に突き刺さった鉄骨を押してるみてぇにびくともしねぇ!!)

相手の男は動かない。
そのかわりのように、口が動いた。


「あんた、悲鳴が好きなんだって?」

「あ?」

「そんなに好きなら、自分のでも聴いていろ」

「は?あぉっ!?」

その言葉に一瞬疑問符を浮かべ、男は直後、投げ飛ばされた。

相手の男が、自分の腕を下から掴んできたのだ。
肩を掴まれているこの状況で、そんなことをしてくること自体考えもしなかったことだが、そのまま扉の方へと投げ出される。


相手はその腕を掴んでブリッジのように身体を反り返し、壁を砕いて部屋の出入り口をさらに大きくしてこの巨漢を投げ飛ばしたのだ。

「ぐブゥ!!!」

その一撃に、巨漢が悲鳴を上げる。
自分の体重があだとなり、その衝撃はかなりの物だ。


そして彼女たちに初めて、鉄翼刀の姿が現され

「変な悲鳴。そんなの聞いて何が楽しいのやら」

そう一言コメントを送る。




「さて・・・大丈夫ですか!?」

「は、はい・・・・あの?」

「あ、俺「EARTH」の人間ね。助けに来たから、避難しよう!」

妙にノリノリの翼刀。
まあ目の前に国民的アイドルがいるから当然だが。


「「EARTH」ってなんだ?」

「た、たしか警察みたいなのって聞いてたけど・・・・」

「あー、そんな感じでいいっす」


あれだけのことをしてケロっ、としている翼刀を見て、ボー、っとしてしまう一同。
しかし


ガシッ!!

「うっがぁ!!」

巨漢、再び立ち上がる。

廊下から伸びてきた腕は、翼刀の脚を掴んで振り回し始めた。



「う、ぉっ!?」

「おめぇはぐちゃぐちゃにしてぶっ殺してやるよ!!」

「お断りしたいなぁ・・・・」

「ルッセェ!!」

バガァッッ!!


ブンブンと振り回されながらも、翼刀が小声でつぶやいた。
それを聞き逃さず、男は怒りのままに廊下の方へと翼刀を思い切り叩きつけてから、踏み潰すように蹴りをぶち込んだ。

ゴッバァッ!と凄まじい音がして、部屋から見て反対側の廊下の壁が崩壊する。


その向こうに翼刀の姿が消え、巨漢が彼女らの方へと向き直ってきた。


「お前らは俺のもんだァ!!誰にもわたさねぇぜ。がっはっはっはハァ!!」

頭から血を流し、装備もボロボロの男だが、目だけは凶器と欲望にギラギラと妖しく煌いている。
彼女たちは左右に散って逃げ出すが、一人雪歩がその場にへたり込んでしまった。


「雪歩!!」

「雪歩ぉ!!」

「あ・・・いや・・・・」

そしてその雪歩に、男は一歩ずつ近づいていく。
部屋の明かりが男に遮られ、その影に雪歩がつつまれていく。

男が叫び

「逃げねぇとは良いぜお前!!最初はお前の悲鳴を・・・・・」


「やめろって」

ピタ

「言ってんだろ!!」

――鉄流不動拳――

ごゴォゥッッ!!!

「―――爆貫!!」

ベギャ、バグォッ!!!


轟音。
直後、男の姿は目の前から消えていた。

男は翼刀の一撃に頭から壁に突っ込んでいき、大穴を開けて外に落ちて行っていた。


「え・・・・」

真っ暗だった視界に、部屋の明かりが飛び込んでくる。
そして、そこに手を差し伸べる翼刀。

「さあ、逃げよう」


おどおどとしてしまう雪歩。
しかし、確かに彼女はその手を取って、しっかりと立ちあがって見せた。


「だ、大丈夫!?雪歩!!」

「すみません・・・オレがいながら怖い思いさせてしまいました・・・・」

「え・・・うん・・・・だ、大丈夫だよ、真ちゃん・・・・」


「す、すっごいぞ、あの人・・・・」

「うふふ、まるで王子様みたいね~」

「しかしあのような怪物を倒せるとは・・・・」

「どうしたのよ、貴音?」

「面妖な!!」

「貴音、失礼だゾ」


こうして、この場に残った彼女らは救出された。


残りは



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発射されるRPG
それは白い煙を引いて、青龍へと一気に伸びて行った。


着弾

爆発

ドッォンッッ!!!


「うわぁ!!」

「あぁ・・・・はるるんがぁー!!」

「俺のミキミキが死んじまった!?」


どよめく会場。
悲鳴を上げる観客達。


その光景に、二人の男がにやりと笑った。


一人は、首領の男だ。
確実に吹き飛ばしと、勝利を確信した笑い。


そしてもう一人は、獅子。
男の思考を推測したうえで、小さくつぶやく。

「それはやれてないフラグだぞ」

ご、ォぅッッ!!



「な!?」

突風のような音。それと共に竜巻く爆煙。
目の前の光景に、男は驚愕する。


「青龍よ。お主、静かそうな風体して・・・実はお主が一番、主似だよ」


晴れる煙。
消え去る炎。

青龍は当然、背後の春香たちも無事である。
それどころか、かすり傷一つ負っていない。


だが、それ以上に男が驚愕したのは


「りゅ、龍・・・・!?」

男は、青龍の頭上にまさしくその名の通りの龍が浮かんでいるのを見た気がした。
薄っすらとした青いそれは、青龍の頭上で、まるで守護神であるかのように浮かんでいる。


「あくまでも抵抗するのであれば・・・・」

「つ、次を寄越せ!!」

「私も相手をしましょう・・・・」

「よし・・・喰らえェ!!」

「しかし」


青龍の言葉を無視して、男が二発目を発射する。
だが、それはもはや彼の前で爆発することすら許されず


キン―――――ドドッ!!


青龍の手の中に瞬時にして現れた青龍刀によって、真っ二つに切り裂かれた。
彼等を通り過ぎ、フラフラと落ちたそれは重々しい音を立てて地面に落ちる。


「ぁ・・・・・?」

声にならない男。
事もあろうに、この青龍はRPGを切っただけでなく、その信管を切り取って足元に落しているのだから。


そして、言葉の続きを青龍が語る。


「後悔だけは・・・・なさらぬように」




ドォン!!

「獅子さーん!ほかの人たち全員ぶっとばしたよ!!」

「上々」


ホールの扉がオーラによって勢いよく開かれ、そこから唯子が飛び出してくる。
その後ろでは捜査官が兵士たちを鎮圧しており、魔導師や仮面ライダーが制圧を完了し、安全を確保していた。




「ち・・・く・・・しょおおおおおお!!!」

残るのは、首領の男のみ。
ナイフを構えて、突っ込んでくる。



青龍が青龍刀を手放し落とす。落ちる過程で県は粒子と消え、青龍自身は一歩前に出る。


両腕を龍の顎のように突きだし、そこからの一連の動作で拳を突きだし構えに移る。
前に出す手が開き、四本の指がチョイチョイと誘った。






30秒後






コンサートホールは解放され、ライブは場所を移し、このまま「EARTH」の地下闘技場を使用して再開催されることとなった。





to be continued






小劇場



ブッ飛ばした後


翼刀(穴から下をのぞいて)
「えっと・・・・(暗くてよく見えん)」

巨漢(三階下の地面でぶっ倒れている)
「・・・・・・・・・・・」

翼刀
「・・・・」

巨漢
「・・・・・(ヒクヒクっ)」

翼刀
「よし、生きてる!(グッ b)」


獅子がやったのも生きてます。
一応



出番ない子が裏で一番活躍


唯子
「私の出番あまりなかったなぁ・・・・」

翼刀
「でも何気に撃破数一番らしいじゃん」



もう一つの立てこもり

社長
「このままでは見つかる・・・・ここは私が囮になるからみんなは逃げるんだ!!」

プロデューサー
「な、なにいってんですか!?」

小鳥
「ダメですよ社長!!」

社長
「しかしだね・・・・」

やよい
「諦めちゃだめですよ!!」

真美
「そうだよ!ここぢゃ終われないよ!!」

社長
「みんnごばぁ!!」

五人
「「「「「社長ーーーー!?」」」」」

唯子
「黒づくめ撃破!!みんな大丈夫ですか!?ってうわ!!アイドルの双海真美ちゃんに高槻やよいちゃんだ!!」


数分後
唯子は翼刀に拳骨を食らった。


 
 

 
後書き


はい解決!!
青龍さんマジドラゴン(マジレンジャーのことに非ず)

シルエットの龍は、イメージとしては青いオーラで出来た感じ。
龍騎とドラグレッダーみたいな感じで。


流石に全員描写しきれなかった・・・・

というかアニメだと社長黒づくめじゃねないし!!
やっぱりデネブネタで攻めるべきだったか・・・・?


リクエストを反映させようとしたら雪歩が姫になった。
でも作者は響と真がお気に入り。

だから響をもう少し出そうとしたけど、難しかった・・・・



と言うか、状況的には春香たち三人もかなりヒロインのポジションなのになんか空気だ!?


翼刀の拳の一撃は「ばっかん」と読みます。
相手は完璧に変態です。

ティアナさんは正確になのはのモノを受け継いでいます。
恐ろしい子やでぇ・・・・




次回から、本格的に始まります。
とりあえずフロニャルドの戦興行です!!


日常編は、多分ちまちま入れていくと思う。
・・・・入れられたらいいなぁ・・・・

「EARTH」に移ってのライブの様子は、その時にでも


蒔風
「次回、戦興行開始!!レッツ戦!!」

ではまた次回




 
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