Re:童話姫たちの殺し合いゲーム
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竹林の賭博 -終-
豚一…【右ひずめ切り落とし】
豚三…【異端者のフォーク】
山羊四…【アイアンメイデン】串刺死
山羊六…【磔】焼死
***
五回戦
『さあさあ、次の勝負にまいりましょう♪ どなたをどんな方法で"殺します”かツギハギさま』
「………」
『あら? どうなさいました。…もしかして、獣が二匹死んだくらいで怖気づきまして?』
「まさか、勝負はこれからだ。豚二を【三角木馬】に座らせる」
『それを怖気づいていると申すのでしょう…。いいでしょう。では私は山羊五を【審問椅子】に座らせましょう』
観客達がカードを書き、投票箱に順番に入れて、俺達が引く。
「『じゃんけん、ポン!』」
俺は【チョキ】 竹美姫は【パー】
「俺の勝ちだな」
『ええ。そうです、おめでとうございます』
何処からか持って来た木馬型で背の尖った拷問具に豚二を座らせる。急所を突き刺す激痛に悲鳴をあげる豚二。三角木馬は身体を拘束して跨らせ、本人の体重で股間に苦痛を与えるものだ。また石などの重りを用いる場合もある。
今回は重りなどは使わず、観客の黒羊達が一匹につき一回ずつ鞭で豚二をしばく(叩く)。
「鞭は言ってない」
『サービスですわ、お気になさらず』
と言った後に竹美姫はぽそりと『……だってただ座らせるだけではつまらないでしょう?』 言った。こっちが本音か。
六回戦
『これでゲームも六回線目を迎えました。私の手駒は三匹負傷しました六匹います。
それに引き換えツギハギさまの手駒は…』
「二匹お前に殺されて残り四匹だ」
『うふふふ…ここからどう逆転なさるのか愉しみですわ♪』
『ハァハァア』と竹美姫は熱の帯びた吐息を漏らす。確かにこのまま素直にゲームを続けていたら、お前の勝ちで終わるだろうう。俺達は皆殺し、もしくは生殺しにされ、生き地獄というものを味わせられるのだろう。
―奴の引いたレールにそって素直にゲームを進めたらの話しだけどな。
「いや俺はもう十分楽しんだ」
竹美姫は俺の言っていることが解らないと首を傾げる。
「そろそろ興も冷める頃あいだ。これで決着といかないか」
『決着? どうやって』
「簡単な話しだ。俺は残り全ての手駒をあんたの望む通りの殺し方で殺させてやる」
「ツ、ツギハギさんっ!!?」「わぁ~お♪ お兄ちゃんってばダイタ~ン、アハハハッ♪」
『まあそれはとても魅力的なお誘い。…ですが、貴方さまはどうなさいますの?
まさか駒だけ渡し、自分だけはなんの対価も払わないということは…』
「それこそまさかだ。俺はお前の使徒になってやる。…勝てば好きにすればいい
負ければ……お前のその魂(命)俺が貰おう」
竹美姫は『うふふふ』と妖艶な笑みを浮かべる。奴の中ではこのゲームで自分が負けるかもしれない、ということは微塵も考えていないようだ。
―ならその甘い思い込み 俺が破壊してやろう
改め最終戦
『ガードは引きましたね。あぁっ! この勝負で貴方と私、どちらかがこの世界から消えるのですね!
ああぁうっ! 想像しただけで、体が火照り、濡れて…ングッ』
「随分と楽しそうだな」
『ええ。だってこの勝負で貴方を、ツギハギさまを手に入れることが出来ると思うと、はうぅ!』
「まだ勝負は始まってもいないのに、もう勝った気か」
『もちろんです。この勝負は私の勝ちで決まっていますもの』
「それはそうだろうな。なんせイカサマをしているのだから」
『はぃ? 申し訳ありません、聞き取れませんでした。もう一度行ってくださいな』
「ああ、何度でも言ってやる。お前はイカサマ野郎だって」
『まあ』
『ベェエエエ!!』と口々にあがるブーイングのように聞こえる、黒羊達の鳴き声。
「気づいてないと思っていたのか? この黒羊達、お前のグルだろ」
『はぃ? なんのことでしょう』
「とぼけるのま、いい。今までの投票から言って全員って事はないだろう、少なくとも十人…万全を期すなら二十人くらいか」
『なにを…根拠に?』
「やり方が拙いんだよ。お前は駒の生死がかかった、大勝負になると二回連続で同じ手を出した。なにかあると思うのが当然だろう?
駒の生死が関わらない時は適当な手を混ぜていたが、カモフラージュしてるつもりだったなら下作だったな、拷問大好きマゾ女が」
竹美姫は『はうぅん』と頬を赤くし体を抱きしめよじらせる。俺に図星を突かれ、罵倒されたことが相当気持ち良かったようだ。
『最期に言い残したいことはそれだけ、ですね? 早く! 早くカードを出しましょう! 嗚呼―私もう我慢できませんっ』
本当、とんだ変態野郎だ。
『じゃんけん、ポォォォォオォオン!』
竹美姫が出したのは【パー】
「ポン」
―俺は
「チョキ……ツギハギさんの勝ちですよーーー!!」
「やったぁぁ」と喜ぶピノキオと山羊七の声が背中越しに聞こえてくる。その声に混じって赤ずきんの狂った笑い声もな。
生き残った豚山羊黒羊達は泣き叫ぶような、悲痛の鳴き声あげている。
―終わった。竹美姫とのゲームが終わった。勝者は俺。敗者は
ズシーン ズシーン ズシーン
『背に迫りくる"死の恐怖”そうです、そうなんですね、お爺さん、これがっ!』
ブヂュリ。
プレス機に潰されぺったんこ。持ち上がったプレス機の下には真っ赤な血で染まった着物と
「み~けっ♪」
赤ずきんがヌップとぺしゃんこになった着物だったものから取り出したのは、ぺしゃんこになった―竹美姫の心臓
「あぐっん」
赤ずきんはソレを一口で食べる/飲み干す。これで二人目。
『あ。あの…メェー』
声をかけられた。振り返るとそこには半分消えかかり半透明になった山羊七いた。
城の主が消えれば、役目を終えたモノも同時に消える。竹美姫の使徒である奴も例外ではない。
「なんだ」
『最期に…どうしても…聞きたかった…メェー
どうして…姫さまの…いかさま…わか…メェー』
なんだ、そんなことか。最期と言う割にはじょぼい内容だ。
「カジノはイカサマをしてなんぼの世界。奴がイカサマをしていることぐらいすぐにわかる。
そこで俺はどいつが多く投票しているのか知る必要があった」
『…メェー』
「仮に竹美姫と通じていた奴が二十人いたとする、この二十人が出す手を共有しないとイカサマにはならない。
だが観察した限り投票される手に規則性はなかった、かといって予め順番を覚えていたとも考えにくい。よってなにを出すかはその場、その場で毎回決められていた、ということになる。…じゃあどうやって?
五回戦までずっと観察していたが、竹美姫は特に合図のような物は出していなかった。じゃあ、音は―? いや、そんな音も出してはいなかった。
なら残りは一つしかない、竹美姫の代わりに賭博場にた誰かが合図を出している。この考えが正しければ、皆の視線を集める特定の人物がいるはず、観察を続けるうちふと、気づいた。
俺への視線は対戦相手なのだからあって当然と、その考えが間違いの元だった。黒羊共の視線は俺にではなくその実、俺の後ろにいた
お前に注がれていたんだ、七」
『やっぱり…すべて…お見通し…だった…メェー』
「後は簡単だった、お前の挙動から合図を推察すればいいんだから」
『…メェー?』
「持っててよかった、手鏡」と言い名がポケットに入れていた小さな丸い鏡を見せてやる。山羊七は満足そうに微笑み、スッと消えた。
「………」
「ツギハギさん…」
「なんだ」
―感傷に浸る暇なんて俺達にはない
「赤ずきん、次は何処へ行く」
「あっち!」
崩れ朽ち果てた、千年魔京の先 南の方向に見える 青く波打つもの
「海か」
―ふわりと吹いた風 磯の香
―To be continued-
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