アタエルモノ
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第二話
前書き
どうも。第二話です。艦これの第二話よりかは文字数多いんですけど、それでも第一話よりは少ない。どっちも第一話張り切りすぎ。
「うわぁ…………痛てぇ。」
俺は神谷の自己紹介を聞いて、真っ先にそう言った。
『ボクの空間』?『嘘写し』?何かを与えるもの?神に最も近い存在?
…………アイタタタ、だろ。当然の感想だ。高校生のくせに中二病ですかいな。
「…………まさか真っ先にそれを面と向かって言ってくるとは思わなかったよ。」
神谷は関心半分、呆れ半分というような顔でこちらを見ていた。つーか自覚してんのかよ。
…………しかし、、昼間に学食を一緒に食った神谷とはとてもじゃないけど思えないな。あんときはボクっ娘ってだけで特に特徴がない女の子位にしか思ってなかったのにな……。
「んで、一体俺になんの用だ?なんで俺はこんな変な状況に陥ってるんですか?説明してくれるよな?」
俺は神谷を睨みながらそう言った。減んな理由だったら出てってやろう。
「まぁまぁ。ほら、お茶入ったよ。」
そう言うと神谷は俺に湯呑みを一個俺に渡してきた。確かに、四月とは言えまだ肌寒い。ありがたく貰うとしよう。
「おう、サンキューな。」
俺は湯呑みを受け取り、近くにあったソファーに腰かけた。神谷もテーブルを挟んだ対面のソファーに座った。
ズズズズズ、と茶をすする俺と神谷。うむ、緑茶か。なかなか渋い趣味してんな。緑茶なんて、飲むのいつ以来だろ。
「ほら、緑茶なら和菓子でしょ。はい、お煎餅。」
神谷は一旦湯呑みを置くと、テーブルの上に置いてあった煎餅を渡してくる。
「ん、あんがと。」
俺はそれを受け取ると、袋をしたままで煎餅を割り、小さくしてから袋を開ける。煎餅をそのままバリバリ食うのはあまり品があるとは言えないからな。
「へぇ、高校生でそのマナー知ってる人って少ないよね。」
神谷は感心したように言った。ちなみに、神谷も袋に入ったまま煎餅を割っていた。
「確かにな。俺は小学校の先生の家庭訪問ん時にこーゆーマナーがあるって教えてもらってな。」
あんときは俺達がなかなか食べれない煎餅とかを食べてた先生が羨ましかったっけな…………懐かしいな。
「……じゃなくて、なんで俺はこんな状況になってるかを知りたいんだよ!」
思い出したように立ち上がる俺。なんで神谷とお茶会になってるんだよ。
神谷はそんな俺を見てニヤニヤしていた。クソ、思惑通りってか……腹立つ。
「まぁまぁ。ほら、金平糖もあるよ。」
神谷はそう言うと、これまたテーブルの上に置いてあった金平糖を渡してきた。
「………………。」
やべぇ…………金平糖とか久しぶりに見た…………。今の小学生や幼稚園児とか分かるのか?つーか、さっきから神谷の御菓子選びのセンスがお婆ちゃんすぎる。
「んで、食べないの?小さいときあんなに羨ましがってたのに?」
確かに、金平糖もなかなか食べれなかったしな…………せっかくあげるって言ってるんだし、貰っとこうかな…………て、待てや。
「なんで分かるんだよ。俺はんなこと一言もそんなこと言ってねぇぞ。」
考えはしたけども、俺はそんなことを言った覚えはない。昼間の飯ん時も、自分達のクラスでも。
「いやー、『能力視』のせいだよ。」
…………まーた中二病っぽい単語か出て参りましたよ。『能力視』だぁ?つーか聞きたいことの内にそれらの単語がどーゆー意味か知りたかったんだったわ。
「これはね、『相手体力や能力を数値にして算出して、過去に起こったことをまとめた紹介文が見える』って感じ。」
「…………こりゃまた。」
飛んでもなく突拍子もない話だった。…………マンガとかだったら、或いは凄い洞察力とかにそんなものを名付けるかも知れんが、現実でやったら本当にただの痛々しい奴だ。
「………しかしまぁ、俺の『そーゆー事情』は分かってるってことか…………。どーやって調べたのかねぇ。」
俺はあくまで信じない。と言うか信じたくない。
…………いや、もし万が一だ。億が一かもしれんけどだ。もしこいつの言ってる事が本当だったらどーするよ?絶対メンドクサイ事に巻き込まれるかもじゃあないか。
…………そんな数奇な運命は中学で卒業したのだ。せめて高校生活は平穏に暮らしたい。
まぁ、万が一、億が一だけどな!
「んで、『嘘写し』ってのは、『不特定多数に自分の考えた映像を見せる』もんで、これでこの教室を隠した。んで、『ボクの空間』は、『ボクが認めた人か、ボクに会いに来る権利がある人以外はその空間に入れない』ものだ。つまり、」
神谷はそこで俺を指差した。
「キミは『嘘写し』で無くなっていたこの教室を見つけ出し、『ボクの空間』に選ばれた人間なんだ!」
ビシッとポーズを決めながら高らかに言う神谷。
…………こっちの頭が痛くなるくらい本気で痛いなこいつ。
俺はなぜかドンドン冷静になっていった。つーな冷めていった。
だって、あの一つ無くなってた教室はこっちの見間違いで済まされるし、この教室に入れるかどうかなんてこっちの都合だ。そっちの都合ではない。
…………いや、若干無理があるのは分かってるけどさ。素直に受け入れたくないってのが本音だ。
「…………もしかして、ボクの能力を疑ってる?」
覗き込むようにこちらの顔色を伺う神谷。いや、逆に信じてもらえるとでも思ってたのかよ。あんな雑な説明と根拠の無い異常な話をさ。すぐに信じれる訳ねぇよ。
「俺が何の文句も言えないようなものを見せてくれたら信じれるかもな。」
俺は意地悪そうにそう言った。今思えば愚策にも程があったなと。神谷に対してそんなことを言ったらどうなるか分かったもんじゃ無いのに。
「言ったね?それじゃあ…………ほっと。」
神谷がそう言うと、神谷の手に湯呑みが現れた。それはもう、現れたという表現以外に言いようがない位、いきなり現れた。
そして、もうひとつ。
「あれっ?俺の湯呑み…………。」
俺がさっきから手に持っていた湯呑みがいつのまにか消えていた。よく見ると、神谷の持っている湯呑みはさっきまで俺が持っていたものだ。
さっきも言ったが、俺と神谷はテーブルを挟んで座っているため、神谷の手は届かない。俺に気付かれずに湯呑みをスル事なんてできないハズだ。
「…………何をした。」
最早これを説明しようと思ったら一つしかない。しかし、それは、まさしく超常現象。しかもそれを代表するようなものだ。
頼む、嘘だと言ってくれ…………!
「『瞬間移動』だね。『自分や相手やモノを一瞬で別の場所に移動させることができる』。よくあるやつだよ。」
俺の日常が音を立てて崩れた気がした。
「…………俺は『瞬間移動』の本物を見たことねぇからよくあるのかどうかも知らねぇよ。」
俺は半分自棄になってそう言った。あー、ちくしょう。とんでもねぇもんに絡まれちまったなー。
そんな感じで肩を落としている俺を見て、神谷は実に不思議そうにこちらを見ていた。
「ん?どうしたの?」
うーん、ここまで来ると最早狙ってるのでは無いか?そう思って俺は神谷の顔を改めて見た。
すげぇニヤニヤしてた。
正直、ハラワタ煮え繰りかえってたけど、ここで怒った所で窓からポイされるかもしれないから大人しくしておくことにした。
「…………いや、意外と神谷って可愛い顔してんだなって思っただけ。」
俺は茶化す様にそう言った。実際に、神谷は女子の中でもなかなか可愛い方だと思う。さぞかし中学時代はモテたのだろうなぁ。
「…………………(ボロボロ)。」
急に、神谷がボロボロ泣き出した。
それはもう、何の前触れもなく。
「へっ!?な、どうした!?」
俺はなんで神谷が泣き出したのか全く検討もつかない。怒らせるような事をいった覚えは無い。
「…………へ?な、泣いてなんかないし!」
と、神谷がこちらに顔を見せると、全くそんなことなんて無かったかのような笑顔を見せてきた。
…………あのボロ泣きだから、絶対直ぐに泣き止むはずはない。つまり……『嘘写し』か。
うっわ。もう受け入れ始めてるよ。この辺な状況。
俺は意外と冷静に対処していた。人間は慣れる生き物と言うけど、どうやら本当らしい。
「んで、キミはなんでここに来たのか分かるかい?」
神谷はそう言うと、立ち上がって窓際に移動し始めた。今頃たぶん涙を止めようとしてんだろうな。まぁ、本人が必死で隠してるものを兎や角言うような趣味はない。
しかし…………なんでここに来たか?
「わかるはずねぇだろ。精々偶然って位しか。」
俺がここに来た理由。そんなもの特に有るわけもない。この教室だってたまたま見つけた訳だし、ここに神谷が居るなんて知る良しも無かった。
「いやぁ、違うんだなこれが。」
神谷はちっちっち、と舌を鳴らしながらそう言った。
「『ボクの空間』に入れるのはなにか悩み事や頼み事、相談したいことを持ってる人にしか入れない。それが、さっき言った『権利』だよ。」
つまり、なんだ。『ボクの空間』とやらのルールから言わせると、俺は神谷になにか頼み事でもあるからってことか?
「…………知らねぇよ。」
会って数時間の奴になにか頼み事をするほど俺は厚かましくねぇつもりだ。朝初めて会ってからここに至るまで…………。
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………あ。
「気づいたかい?」
神谷はさっきからずっとニヤニヤしっぱなしだ。
そうだ。俺は、確かに。
二時間前だ。俺はこう言った。
『しかし、神谷はなにか部活する気あるのか?なにかしたいんだけど、これといって案がある訳じゃなくてな………。』
俺は、神谷にこう話しかけた。
この『ボクの空間』は、それを『相談』と受け取ったんだ。実際、今でも俺はどの部活にも入ろうと思っていない。
「いやぁ。そーゆーことだよ。ワトソン君。」
神谷は、終始ニヤニヤしっぱなしで俺の肩を叩いた。いつの間に俺のそばまで移動してたのか。
「さぁて、それじゃま、せっかくの高校初相談だ!なんてったって、『相談があったらなんでも言ってください。日常的なことから、超常的な事まで。』だからね!ただし、きっちり代価は貰うからね?それじゃあ………。」
俺は、この時点で、いや、もっと前から、こうなる運命だったのではないか。今でもそう思ってしまう。そして、それから逃れるような方法は、何処にもない事にも気付いていたのかもしれない。
なんて言ったって、相手はあの『神谷 沙紀』なのだから。敵う訳ない。
「八重樫 真広はこれから三年間ここに私の助手として来ること!その代わり、これからの三年間を最高のものにしてあげるから!」
神谷は、満面の笑みでそう言った。
後書き
読んでくれてありがとうございます。小説を投稿してもアクセスが一桁だったのを見ると、「最初はこうだったなぁ。」と懐かしく感じました。これからも頑張らねば。
それでは、また次回。
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