憑依先が朱菜ちゃんだった件
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第7話 改訂版(2019/04/30)
前書き
おはこんばんにちは、沙羅双樹です。
今回はお調子者蜥蜴人族・ガビル君の登場回です。
本作では(本気モードの)朱菜が天災級の存在である為、朱菜の前でリムルを愚弄したりしたら、どんなことになるか……。
考えただけでガクブルものです。さて、ガビル君は果たして原作通り地雷を踏むのか?それとも某剣の英霊の様に直感で回避するのか?
それでは本編をお楽しみください。
【視点:ガビル】
我輩の名はガビル。誇り高き蜥蜴人族の戦士長であり、蜥蜴人族の次期首領となる者である。
現在、我輩は側近ともいえる者達と共に蜥蜴人族の現首領である親父殿の命で、子鬼族の村々を巡っている。
何故、誇り高き蜥蜴人族が子鬼族村を巡っているかというと、20万にも及ぶ豚頭族の軍勢が蜥蜴人族の領域へと侵攻しようとしているからである。
我ら蜥蜴人族の戦力が1万に対して、豚頭族の戦力は20万と彼我兵力差は1対20。その戦力差を少しでも解消する為、親父殿は子鬼族共を戦力に加えようと考えている様である。
そして、我輩は子鬼族村を巡っている時に子鬼族共から封印の洞窟付近に新たな子鬼族村が作られたという話を聞き、態々封印の洞窟の近くまでやって来たのである。
……そう、封印の洞窟近くまでやって来たのであるが、我輩は疲れているのだろうか?封印の洞窟へと近付いて行くにつれて我輩達に巨大な壁が迫って来ている様に見える。
「………子鬼族村巡りに疲れたのだろうか?何故か封印の洞窟に近付くにつれ、我輩達に巨大な壁の様なものが迫って来ている様に見える」
「ガビル様、その壁なら俺達にも見えてるぜ」
「見えてるー」
「封印の洞窟付近に壁があるなど、聞いたことがないが……」
部下達の話を聞く限り、我輩が疲れで壁の幻を見ている訳ではない様である。しかし、あの壁は一体何であるか?今まで見たことも聞いたこともないのである。そんな我輩の疑問は壁へと近付いて行くことで判明するのである。
「あれは……、門か?」
「ということは、あの壁は人間や亜人などの街で見られる城壁というものか?」
城壁。その様なもの、今まで巡った子鬼族村には存在などしなかった。どうやら、あの子鬼族村の統率者はただの子鬼族ではない様だ。
もしかしたら、人鬼族がいるのかもしれぬ。または他の子鬼族村より子鬼族の数が多く、建造できたのかもしれぬ。
兎に角、統率者がどの様な存在であれ、我輩の方が立場は上であるという印象を与えねばならんな。
「すまんがあの村に先行し、我輩が使者として訪ねてきた旨を村の者に伝えて来てくれんか?当然のことだが、村の統率者に会いたいということも一緒に伝えてくれ」
「わかったー」
我輩が部下の中で一番愛嬌のある者にそう告げると、部下は子供の様な返事をして、門のある所まで走って行った。
「………あいつは本当に我輩の言ったことを理解しているのだろうか?」
「当然、……とは言い難い」
「あ奴は天然である故」
おい!お前らまでそう言うと我輩も不安になるであろう!!我輩がそんなことを考えていると、対して間も空けずに門へと向かわせた部下が槍を持っている手を左右に振って来た。
どうやら、子鬼族村の統率者が出てきた様である。よし!第一印象が大事である故、華麗に登場しようではないか!!
我輩は走行蜥蜴に騎乗したまま駆け出し、子鬼族村の者共の前で華麗に走行蜥蜴を止め、マントをはためかせながら地面へと降り立った。
「我が名はガビル!お前らに我輩の配下となる栄誉を与えてやろう!!」
地面に降り立つと共にカッコいいポーズをとりながらそう告げ、改めて子鬼族村の者達に視線を向けると、そこには人間と思しき者が2人、鬼人族と思しき者が6人、大鬼族と思しき者が2人いた。
……………あれ?子鬼族が1匹もいない?もしかして、ここは子鬼族村ではないのか?
【視点:リムル】
何だ、この蜥蜴野郎。配下となる栄誉?偉そうなこと言って、一体何様のつもりだ。
俺がそんなことを考えていると、真横から異様な空気が漂ってきたので、恐る恐る真横に視線を向けると、そこには冷笑を浮かべた朱菜がいた。
「リムル様、私にこの無礼者を成敗する許可を下さい」
やっぱりキレてるーーーー!朱菜さん、超キレてるよ!!あっ!?眼が輪廻転生写輪眼に変化してる!!?それにこの場にいた俺以外の全員が朱菜から距離を取ってる!!
紅麗と穂乃花、紅丸!お前らは朱菜と血の繋がった家族だろう!!何で朱菜から一番距離取ってんだよ!?紫呉と紫苑も俺の身辺警護役なのに離れてんじゃねぇよ!!
白老も気配消すな!リグルドとリグルも冢宰と右近衛大将って立場なのに、俺を見捨てようとするな!!お前ら、どんだけ本気ギレ朱菜さんが怖いんだよ!!?
…………すみません。俺も怖いです。俺もお前らと同じ立場なら自分の身を優先して朱菜から距離を取ります。けど、一生――いや、百分の一生のお願いだから俺を見捨てないで!
ちなみに俺が百分の一生って言い直したのは、神仙に至った俺には寿命というものが存在しないからだ。
というか、どうにか朱菜を宥めないとマジでこの蜥蜴人族達がヤバい。現に朱菜の眼が輪廻眼と転生眼に変化してから、ガビルって奴以外の震えが止まらなくなっている。ぶっちゃけ、イタチに睨まれた蛇だ。
(写輪眼のイタチに睨まれた大蛇丸ですね。分かります)
……あの『大賢者』さん?いきなり喋ったかと思えば一体何言ってるんですか?写輪眼の鼬って何ですか?写輪眼を持ってるのはうちはの鬼一族だけですよ。鼬が写輪眼を持ってたら、魔物が鼬以下になっちゃうよ。
それに大蛇丸って何?誰かの名前?相手が蜥蜴だから、爬虫類繋がりで蛇を例えに出して、天敵を鼬にしたんだろうけど、意味が不明過ぎるぞ。
(否。今のは『大賢者』ではなく世界の言葉です。意味は不明)
………うおぉぉぉい!マジでか?マジで世界の言葉!?噂の世界の言葉―――しかも、俺にとってこの世界初の世界の言葉が意味不明な内容って、一体どういうこと!?
(解。その質問に対する明確な答えを出すことができません)
いや、別に『大賢者』さんに質問した訳じゃないんだけど……。っていうか、名有りだけのことはあるのか?ガビルって奴、体が震えてはいるけど、他の奴等ほど酷くは無いな。
「あ、貴女がこの集落の統率者であるか?身に纏う妖気から只者ではないと思うが、大鬼族や鬼人族にも見えぬ」
「私の名は大筒木朱菜。神仙へと至った鬼――仙鬼という種族です。分かり易く説明するならば、魔王に至った鬼といった所です。
そして、私はこの街の統率者ではなく、統率者の補佐兼相談役です。この街の統率者は―――」
「一応、俺だ」
「貴殿が?失礼だが、貴殿の妖気は大筒木殿より劣っている様に感じるが……」
「お前の言う通り、俺の魔素量は朱菜より劣っている。だが、魔素量の多寡が戦力の決定的な差や統率力に繋がる訳でも無いだろう?」
「……ちなみに貴殿はどういった種族であるか?」
「元スライムだよ。今は粘体系妖怪仙人―――神仙へと至ったスライムだけどな」
「…………成程。どうやら大筒木殿は騙された、もしくは脅されておるようだ」
「「は?」」
ガビルの意味不明な発言に俺と朱菜は思わずハモってしまった。何言ってんだ、この蜥蜴野郎?
「シンセンというものを我輩は知らぬが、スライムを主に仰ぐ鬼が本来存在せぬことは知っている。もし、鬼がスライムに従っているとするなら、それは何かしらの弱みを握られているからであろう」
「お前、何言って――――」
「スライムという種族には人型生物の衣服を溶かす破廉恥極まりないものもいると聞く。大方貴様も大筒木殿を辱め、脅しているのであろう!この不埒者め!!」
「………」
いや、もう本当に何言ってんのこの蜥蜴?ってか、この世界には衣服を溶かす浪漫スライムが存在するの?
(解。該当種族はグリーンスライムという名称です。衣服しか食べない偏食スライムであり、性別が女の人型生物に嫌われています)
そりゃあ、男にとって浪漫生物でも女にとっては屈辱極まりないだろうから、嫌われるのも当然だろうな。けど、この世界のスライムがそのグリーンスライムだけってことは無いだろう?
(是。グリーンスライム以外にポイズンスライム、ロックスライムなど、様々な種族が存在します)
……なら、何でこの蜥蜴野郎は俺をグリーンスライムであることを前提に罵倒して来てんだよ!?理不尽過ぎるだろ!!?
「………――す」
俺が蜥蜴野郎の理不尽な罵倒に対して心の中で文句を叫んでいると、真横から何かしらの呟きが聞こえてきた。
「勝手な妄想でリムル様を糾弾するなど、一族郎党万死に値します。豚頭族に滅ぼされる前に私達で蜥蜴人族を滅ぼしましょう」
ヤバァァァァァい!さっきまで激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム状態だった朱菜が超新星・ムカおこエンドオブエンシェントジェノサイドブレイバァァァ状態になってるぅぅぅ!!
朱菜の周囲にオレンジを通り越して、黄金色のチャクラが火の粉の様に舞ってるよ!名付けの時に何回か見てるけど、これって尾獣チャクラモードになる前兆だよな!?
あっ!朱菜の肌に隈取みたいな模様が浮かび始めてる!これって、あれだよな!?半妖態って奴になり掛けてるんだよな!!?
「ちょっ!落ち着け、朱菜!!」
「私は十二分に落ち着いています、お兄様」
「落ち着いている様には全く見えんぞ、朱菜!少し頭を冷やせ」
「私は至って冷静です、お父様。今まで生きて来て、これほどまでに心の内が冷え切ったことはありません」
それは冷静なんじゃなくて、頭の中が殺意一色になってるだけじゃないか?取り敢えず、真剣で朱菜を止めないと、ここにいる蜥蜴人族だけでなく、ジュラの大森林にいる蜥蜴人族が根絶やしにされかねないな。
「……木遁・木龍の術」
「!!?」
朱菜が殺意と共に尾獣チャクラモードになったら、この場にいる蜥蜴人族が仙気に中てられてショック死しかねないので、俺は木龍の術で朱菜の拘束と尾獣チャクラの吸収をすることにした。
木龍に巻き付かれた朱菜は自分が拘束されるとは思っていなかった様で凄く驚いている。
「朱菜、皇の補佐兼相談役の大老が皇の意見も聞かずに勝手に行動するな。少しの間、そのまま頭を冷やせ」
「…………はい」
よし!何とか朱菜を抑えたぞ!!……あれ?これって俺の実力を見せたことになるんじゃないか?暴走し掛けの朱菜を拘束した訳だし。
「……うちの巫女姫を怒らせる様な発言は控えて貰えないか?さっきの状態を見た後なら分かると思うが、朱菜が本気になれば蜥蜴人族は疎か豚頭族の軍勢ですら滅ぼせる可能性があるんだ」
「朱菜様はリムル様のことを敬愛しておりますからな。リムル様への罵倒は朱菜様の逆鱗とも言えるでしょう」
白老、よく言ってくれた!そういうことは俺が言うより第三者が言った方が説得力はあるんだ。
「取り敢えず、これで俺の実力は示せたと思う。それでも納得できないというなら―――」
「リムル様ーって、幹部の皆が揃って何やってんスか?それに何で朱菜様が木龍に絡まれてんスか?」
ナイスタイミングでゴブタが現れた。流石に俺やうちは、日向の鬼一族が蜥蜴人族の相手をする訳にもいかんし、リグルドやリグルも論外だ。
なら、普通の大鬼族(?)であるゴブタに相手をさせればいい。一応、ゴブタは右近衛府の兵士で左近衛府との合同戦闘訓練にも参加してるみたいだし、きっと大丈夫だろう。
「1対1での勝負をしようじゃないか。こっちが負けた時は俺を含む全員がお前の配下になってやる。だが、こちらが勝った時は問答無用で帰って貰う。
交渉先の統率者を愚弄する愚か者とは手を組む気が無いんでな。ちなみにこちら側から勝負に出る戦士はこのゴブタだ」
「え?何っスか?何なんっスか?」
スマンな、ゴブタ。恨むならこのタイミングで現れた自分を恨め。
後書き
という訳で、ガビル君は見事に地雷を踏んでくれました。(笑)
もし、リムルが木龍で朱菜を拘束していないと、ガビル君達は全員が螺旋丸でミンチか、尾獣玉で消滅していたことでしょう。(笑)
まぁ、蜥蜴ミンチより豚ミンチの方がおいしいでしょうから、螺旋丸は豚頭族にお見舞いされることになる可能性がありそうですね。(笑)
次回はゴブタVSガビルということになりますが、決着方法は原作と異なる形に行きたいと思っています。
そんな訳で、次回もお楽しみに!!
追記
ガビルの一人称で「我輩」と「吾輩」が混在していたので、「我輩」に統一しました。
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