[Ⅰ]
翌日の早朝、俺は夜が明ける前に目を覚ました。
夜明け前に起床できるかどうかが不安であったが、昨夜は早めに寝た事もあり、上手い具合に体内時計が働いたようだ。
まぁそれはさておき、俺はそこで室内を見回した。だがまだ夜が明けていない事もあり、室内は非常に薄暗かった。その為、俺はレミーラを使って明かりを灯し、ゆっくりと室内を見回したのである。
するとレイスさんとシェーラさんの寝ている姿が俺の視界に入ってきた。レミーラの明かりに全く反応しないところ見ると、どうやら2人の眠りはかなり深いようだ。日頃の疲れが溜まっているのだろう。
次に俺はアーシャさんとサナちゃんのベッドに視線を向けた。が、しかし……彼女達のベッドはもぬけの殻になっており、室内のどこを見回しても、姿が見当たらないのであった。
(あれ? 2人共、何処に行ったんだ……便所か?)
などと考えた、その時……。
「ン?」
左右の脇腹の辺りに、なにやら柔らかい物体があるのを俺は感じ取ったのである。
俺は(まさか……)と思い、そこでまず左側に目を向ける。
すると、思った通りであった。
アーシャさんがスースーと可愛い寝息を立てて、俺の左隣で寝ていたのである。
(はぁ……やっぱり、アーシャさんだったか……)
昨晩、マルディラント城で宿泊した時は大丈夫だったので安心していたが、この様子を見る限り、まだあのトラウマからは解放されていないのだろう。
この調子だとマルディラント城以外での宿泊は、ずっとこんな感じになりそうだ。嬉しいような、悲しいような、といったところである。
だがしかし……そうなると別の疑問が1つ浮かび上がってくる。
それは勿論、右側にあるこの感触は一体何なんだ? という事である。
俺は首を右に振り、その物体を確認した。
と、次の瞬間!
「エェ!?」
俺は目を見開き、思わず、驚きの声を上げてしまったのである。
なぜなら、そこにいたのはサナちゃんだったからだ。サナちゃんが俺の右腕にしがみ付くように腕を回し、スースーと寝息を立てていたのである。
「はへ……な、なな、なんでサナちゃんがここに!?」
と、そこで、アーシャさんの寝むたそうな声が聞こえてきた。
「ンンン……どうしたんですの……コータローさん、大きな声を出して……」
アーシャさんは瞼を擦りながら、ムクリと起き上がる。
だが、俺の隣で眠るサナちゃんを見た瞬間、目を擦る動きを止め、静かに固まったのであった。
室内にシーンとした静寂が訪れる。
程なくして、アーシャさんは俺に鋭い視線を投げつけ、怒りの籠った低い声色で言葉を発した。
「コータローさん……これはどういうことですの?」
「ええっと……これはですね……俺もどういう事なのか、は、はは、ははは」
「……」
アーシャさんは無言で俺を睨み付けていた。
この様子を見る限り、多分、妙な想像をしているに違いない。
(はぁ……どう説明したもんか……ン?)
と、その時である。
丁度そこで、サナちゃんがモゾモゾと動き出したのであった。
サナちゃんは眠い目を擦りながら、俺とアーシャさんに視線を向け、ニコリと微笑んだ。
「あ、おはようございます、コータローさんにアーシャさん」
「へ? ああ、おはよう」
「え、ええ……おはようございます、サナさん」
サナちゃんがあまりにも普通に挨拶をしてきたので、俺とアーシャさんも釣られて挨拶をしてしまった。
そして暫しの沈黙が、俺達の間に訪れたのである。
まず最初に口を開いたのはアーシャさんであった。
「あの、サナさん……どうしてここに?」
サナちゃんは頬を染め、恥ずかしそうに口を開いた。
「えっと……夜中に、アーシャさんがコータローさんのベッドに入るところを見たので……私も、と思って入ってしまいました」
「あの……つまり、どういう事?」
「じ、実は……私もアーシャさんと同じで、1人で寝るのが怖いんです。それに私も、コータローさんが近くにいると安心できるものですから……つい……ご迷惑でしたか?」
サナちゃんはそう言うと、少しションボリとしながら、俺の顔を潤んだ目で見詰めたのである。
こんな風に見詰められると、俺も流石に何も言えない。
だが、今の話で腑に落ちない点があったので、俺はそれを訊ねた。
「いや、別に迷惑ではないけどさ。というか、なんでサナちゃんが、それを知っているんだい?」
「悪いとは思ったんですが……実は昨日の朝、コータローさんとアーシャさんの会話を私は聞いてしまったんです。それで……アーシャさんも私と同じだったんだと思って……」
サナちゃんが言っているのは、多分、ガルテナの宿での事だろう。
どうやらあの時の会話を聞かれてしまったようだ。
と、ここで、アーシャさんが気まずそうに口を開いた。
「そ、そうでしたの……。そ、それなら、仕方ありませんわね……」
まぁ確かに、サナちゃんは今までが逃亡生活だったようなもんだから、仕方ないといえば仕方がない。
だがそうなると、1つ懸念すべき事があるので、俺はそれを忠告しておいた。
「レイスさんとシェーラさんはこの事を知っているの?」
「い、いえ……レイスとシェーラにはまだ……」
「あのね、サナちゃん……俺を信用してくれるのは嬉しいんだけど、俺達は出会ってまだ5日しか経ってないんだ。だからレイスさんやシェーラさんには、ちゃんと言っておいた方がいいよ。護衛の2人も想定外の行動をされると困るだろうからさ」
「そ、そうですよね。すいません……軽率でした」
サナちゃんはションボリと肩を落とす。
と、そこで、レイスさんとシェーラさんが、ムクリと上半身を起こしたのである。
「私は別にいいわよ。コータローさんなら信用できるから」
「私もだ。皆でいる時くらいはイメリア様のしたいようにさせてあげたい」
「へ? 聞いてたんですか?」
「こんなに近くで話をされたら、嫌でも目が覚めるわよ」
シェーラさんはそう言って微笑んだ。
言われてみればその通りである。
「で、ですよね。なは、はは、ははは」
「ありがとう、レイスにシェーラ」
「いえ、お気になさらないでください、イメリア様」とレイスさん。
まぁそんなわけで、なんかよくわからんが、あっさりと2人から公認されたのであった。
めでたしめでたしといった雰囲気である。
だがしかし……そこで、俺にジッと視線を投げかけてくる者がいたのだ。アーシャさんである。アーシャさんだけは俺に向かい、何かを言いたそうな表情を浮かべていたのであった。
もしかすると、俺がサナちゃんによからぬ事をすると思っているのかもしれない。
とはいえ、そう思われるのは俺も心外だ。
その為、俺はサナちゃん達には聞こえないよう注意しながら、アーシャさんの耳元で小さく囁いたのである。
「アーシャさん、安心してください。俺は紳士です。いくらなんでも、子供に情欲を起こしたりしませんから」
するとアーシャさんは、アタフタとしながら口を開いた。
「な、なな、何を突然言うんですの。わ、私、そんなこと考えてませんわよ。い、いやですわ、コータローさんたら」
「へ? 違うんですか? アーシャさんの表情見てたら、俺がよからぬ事をするんじゃないかと心配してる風に見えたんですけど」
「そ、そんなんじゃありませんわ。も、もういいです」
そしてアーシャさんは俺から顔を背けたのであった。
だがさっきと比べると表情が明るかったので、少しは安心したのかもしれない。
とりあえず、誤解は解けたのだろう。
とまぁそんなわけで、朝から少し予想外の展開があったわけだが、俺達はその後、旅の準備を整え、1階の受付で待つラティと合流した。
そして、巡礼の地・ピュレナへと向かい、俺達は馬車を走らせたのである。
[Ⅱ]
ルーヴェラを発ってから、どのくらいの時間が経過しただろうか……。
地平線の彼方に目を向けると、大地に沈み始めた赤く滲む太陽の姿が視界に入ってきた。
空は朱に染まり、周囲は薄暗さが増している。またそれに伴い、気温も少し肌寒いものへと変化していた。この分だと、あと1時間もすれば、日は完全に沈んでしまうに違いない。
馬車の車窓から周囲を見回すと、辺りは、ルーヴェラからずっと続いていた草原の姿ではなく、赤い土が広がる褐色の大地となっていた。草木も少なく、やや荒れた感じに見える。
街道の先に目を向けると、背の低い山々が柵のように、横に連なって伸びていた。
というわけで、以上の事からもわかるとおり、ルーヴェラ周辺の青々とした大地の肥沃さは、ここからは感じられない。その為、この辺りは、少し寂しい感じがする所であった。
俺の知っている地球の景色で例えるならば、オーストラリアのエアーズロックがある辺りの光景だろうか。まぁとにかく、そんな感じの赤い大地が広がっているのである。
ちなみにだが、ラティが言うには、ここも一応、バルドア大平原だそうだ。
そして、この辺りからは人が住みにくい土地になる為、町や村がないそうである。
だがとはいうものの、この辺りまで来ると、俺達の周囲は結構賑やかな感じになってきていた。
なぜなら、俺達の他にも、沢山の人々や馬車の姿が確認できるからである。
というわけで、俺達は今、巡礼者や旅人達に紛れて進んでいるところであった。
その為、夕刻になったにも関わらず、魔物に対する不安はあまり襲ってこない。まぁ早い話が、赤信号、皆で渡れば怖くない、というやつだ。
それから程なくして、前方に見えていた山の麓へとやってきた俺達は、多くの巡礼者達と共に、そのまま山の中へと伸びる街道を進んでゆく。
近くに来て分かった事だが、山の斜面は赤い岩と土だらけで、今までと同様、草木はそれほど生えていない。そんなわけで、ある意味ここは、ベルナ峡谷に近い環境の所であった。
だが、山の標高自体がそれほど高くはないので、どちらかというと、丘陵地帯といった感じだろうか。それもあり、似てはいるものの、ベルナ峡谷ほどの険しさは感じられないのだ。
とりあえず、ここはそんな感じの所である。
そんな周囲の光景を眺めていると、ラティが俺に話しかけてきた。
「巡礼地は、このピュレナの丘を暫く進んだ所やから、後もうちょっとやで」
どうやらこの辺は、ピュレナの丘と呼ばれる地らしい。山にしては低いと思ったので、これで納得である。
まぁそれはさておき、俺はそこで太陽に目を向けた。
すると、太陽は今、地平線に4分の1ほど隠れたところであった。
日没の時間帯である。
「ラティ、太陽が沈み始めてるけど、日没までには着けそうか?」
「まぁそれまでには着けるやろ。ちゅうても、ギリギリってとこやろうけどな」
「それを聞いて安心したよ。ところでラティ、話は変わるんだけどさ。巡礼地に着いたら馬と馬車はどうするといいだろ? 厩舎なんてないよな?」
実を言うと、俺達の前後にいる沢山の巡礼者達を見てからというもの、これがずっと引っ掛かっていたのである。
この巡礼者の馬の数は、宿屋が仮に数十件あったとしても、手に余りそうな数だったからだ。
ラティは少し考える素振りをする。
「う~ん……神官や貴族が使う厩舎はあるけど、巡礼者や旅人用のは無かった気がするなぁ」
「じゃあ、他の人達はどうしてるんだ?」
「ピュレナ神殿のすぐ隣に大きな湖があるさかい、その湖畔で旅人達は馬の世話をしとるな。多少混雑はするやろうけど、そこで世話するしかないんやないか。まぁ結構広い場所やさかい、十分場所はあると思うで」
「ふぅん。てことは、自分達で面倒見るしかないんだな」
「まぁそういう事になるな」
「そうか……」
どうやら、自分達で何とかしないといけないようだ。
俺やアーシャさんは馬の世話なんてできないから、レイスさんやシェーラさんに面倒を見てもらうしかないだろう。
ついでなので、これも訊いておく事にした。
「あと、食事が出来るところはあるのか?」
「一応、あるにはあるな。神殿側が、巡礼者相手にやっている食事の配給があるんや。まぁお布施が必要やけどな。でも、味はあまり期待せん方がええで。出てくるのは神官達が食べるハミルとガラムーエにルザロやからな」
「それかぁ……確かに、あまり期待はしない方が良さそうだな」
ちなみに今言った料理だが、ハミルはフランスパンよりも固い、丸く平たいパンで、ガラムーエは何種類かの豆を使ったスープ、そしてルザロは、数種類の干した果実や野菜を混ぜ合わせた乾燥食品である。まぁ早い話が、イシュマリアにおける精進料理というやつだ。一応、この地で広く食べられている簡素な食事の代表的な物である。
俺もついこの間までいたベルナ峡谷では、ガラムーエとルザロを食べていたので、その味はよく知っている。ハッキリ言って味気ない食事だ。
まぁそんなわけで、これに関しては過度の期待は禁物のようである。残念……。
俺達はそれから更にピュレナの丘を進んでゆく。
すると前方に、高さ100m以上はあろうかという、褐色の断崖絶壁が見えてくるようになった。
また、徐々に近づくにつれ、断崖に彫りこまれた巨大な女神像の姿も、俺の視界に入ってきたのである。
夕日に照らされオレンジ色に輝く断崖の女神は、ゆったりとした波打つ衣を身に纏い、両手を大きく広げ、訪れる者に優しく微笑む美しい女性の姿であった。
全体的に、古代ギリシャの美術品を見ているかのような美しいフォルムの巨像で、その表情は慈愛に満ちており、胸元にはイシュラナの紋章が刻み込まれていた。
そして、そんな女神像の足元には、今まで見てきたイシュラナ神殿と同じ建築様式の建物が幾つか建ち並んでおり、その隣には、断崖から黄金色の
飛沫を上げる大きな滝と、夕日が反射してキラキラと黄金に波打つ大きな湖があるのであった。
夕日が創り上げるそれらの光景は、周囲の景色を忘れるほどに美しいモノであった。
俺は感動のあまり、ただただ無言で、その光景を眺め続けていた。
また、アーシャさんやサナちゃんも俺と同じなのか、その光景を目の当たりにし、言葉少なであった。
「あれが巡礼地ピュレナや。結構、壮大な眺めやろ。特に、この夕日が射す時間帯の景色は、巡礼者達の間でも一番美しい眺めやって言われてるんやで」
「私は今までピュレナの事を色々と聞いた事はありましたが、まさか、これほど美しい所だとは思いませんでしたわ」
「私もです……」
「俺もだよ」
そして、俺達は暫しの間、夕日に彩られた幻想的な巡礼地の姿を眺め続けたのである。
[Ⅲ]
夜の
帳が下りる前に、巡礼地へと到着した俺達は、ラティの指示に従い、まずは湖畔の方へと移動する。それから適当な場所で馬車を停め、俺達はとりあえず馬車を降りたのである。
馬車を降りた俺は、大きく背伸びをしながら周囲を見回した。
すると、断崖に彫りこまれた女神像とその足元に広がる幾つかの神殿の他に、そこへ群がる沢山の巡礼者や旅人達の姿が視界に入ってきた。
また、俺達がいるこの湖畔も同様で、沢山の馬車や馬で少々混雑した感じになっているのである。
まぁ予想していた光景ではあるが、実際にこの混雑ぶりを見ると、流石に圧倒されてしまう。
(凄い混雑してるな……まぁそれだけ、この国の人々には重要な施設なんだろう。日本で言う出雲大社とかみたいな位置付けなのかもしれない。そういや、アーシャさんが道中、ピュレナの伝説を話してくれたっけ。確か……『コータローさん。巡礼地ピュレナは、イシュマリアに住む者達にとって、特別な意味を持つ聖地の1つなんですのよ。なぜならピュレナは、光の女神イシュラナが、御子であるイシュマリアに、破壊の化身ラルゴを倒す為の秘法を授けた地だとされているのです。そして、秘法を授かったイシュマリアは、ピュレナからラルゴの住まう魔境アヴェラスへと旅立ったと言い伝えられているのですから』……だったっけか。この内容なら、そんな感じで受け止めて間違いないだろう)
つまりここは、女神イシュラナが啓示を示したという事の他に、イシュマリアの足跡を辿るという意味においても、非常に重要な意味を持つ場所なのである。
以上の事から、イシュマリアの歴史を語る上で外せない宗教施設なわけだが、俺はそれらを眺めるうちに、少し気になる事があったのだ。
それは何かというと、神殿の入り口や、その周辺がやけに物々しい警備になっていたからである。
しかも、警備している兵士は、磨き抜かれた銀の重装備に白いマントという、見るからに精鋭部隊といった感じであり、明らかにその辺の兵士とは装備のレベルが違うのである。
俺も街にあるイシュラナ神殿には何回か訪問した事があったが、こんな物々しい光景を見る事はなかった。
というわけで、俺は早速、ラティに訊いてみる事にした。
「ラティ、神殿の警備がやけに物々しいけど、ピュレナはいつもこんな感じなのか?」
「いや……あんなに厳重な警備はしてへんわ。でも、あれはこの神殿の者やないな。あのマントの中央に描かれた光と剣の紋章はイシュマリア王家の紋章やから、多分、王族の近衛騎士やと思うで」
俺はマントの紋章に目を凝らした。
「近衛騎士……。てことは、今日は王族が来ているのか?」
「多分、そうやろ。ここは王族の者もよく来るさかいな」
「ふぅん、そうなのか」
王族がよく来るというのが、少々意外ではあった。が、このピュレナの言い伝えを考えると、イシュマリアの血を引く王族にとっては無視できない場所だし、普通の事なのかもしれない。
「ま、そういうこっちゃ。さて、それじゃあ目的地に着いた事やし、向こうにあるガテアの広場に行こっか。案内するわ」
ラティはそう言うと、女神像の前に幾つか建ち並ぶ建造物の1つへと視線を向けた。
「でも、馬の世話をしなきゃならんから、全員てわけにはいかんだろ。誰かがここに残らないと」
と、そこでレイスさんが声を上げた。
「馬と馬車は私が見ておこう」
「え、良いんですか?」
「ああ。それに一応、馬車にも屋根はある事だしな。私だけならどうとでもなる」
まぁ確かに馬車ならば、1人分の就寝スペースは確保できる。
ここはレイスさんの言葉に甘えさせてもらうとするか。
「じゃあすいませんが、レイスさん、馬の世話と見張りをよろしくお願いします」
「うむ。了解した」
その後、俺達4人は、ルーヴェラで購入した簡易寝具や道具等の荷物を馬車から降ろす。そして、各自がそれらの荷物を少しづつ持ち、俺達はガテアの広場へと向かい、移動を始めたのである。
[Ⅳ]
コータロー達が、巡礼地ピュレナに到着する少し前の事。太陽が沈み始めた時間帯の話である。
丁度その頃、断崖に彫りこまれた女神像へと続く通路に、数名の者達の姿があった。
構成は次のとおりで、赤い神官服を纏う初老の男性神官が1名に、白い神官服を纏う若い女性神官が3名。紅白の生地で彩られた美しい衣をその身に纏い、額に金のサークレットを抱いた、艶やかな長く赤い髪が特徴の美しい少女が1名。そして、少女を護衛する赤いマントに身を包む若い女性騎士が1名に、白いマントを纏う若い女性騎士が3名の計9名の者達である。
この9名の者達が向かう先は、断崖の女神像の足元にある巨大な台座であった。
その台座には、美しい女神の姿が彫りこまれた大きな金色の扉が設けられており、訪れる者を静かに待ち受けているのである。
程なくして、巨大な台座の前へとやってきた一行は、扉の前で立ち止まる。そこで神官の1人が前に出て開錠し、金色の扉を左右に開いた。
扉が完全に開かれたところで、赤い神官服を纏った神官が一歩前に出る。
それから神官は少女に向かい、恭しい所作で、中へ入るよう促したのである。
「ではフィオナ様……神授の間への道は開かれました。さ、中へお進みください」
フィオナと呼ばれた少女は無言で頷くと、通路の奥を見詰め、意を決したように口元を引き締める。
そして少女は、艶やかな赤く長い髪を颯爽と靡かせながら、神官と護衛を引き連れ、前へと歩き始めたのである。
台座の中へと入った一行は、その先に続く、魔物と人々の戦いが描かれた壁画の通路を脇目もふらずに進んで行く。
暫く進むと、一行の前に白い壁が現れた。通路はそこで行き止まりであり、壁の中心には、イシュラナの紋章が大きく描かれていた。
一行はその壁の前で立ち止まる。
と、そこで、先程の赤い神官服を纏った神官がフィオナに頭を垂れ、恭しく口を開いたのである。
「これより先は、イシュマリアの血族にのみ許された聖域。我等はこちらで、フィオナ様の帰りをお待ち致しております」
フィオナは無言で頷くと、白い壁へと近づく。
そして、イシュラナの紋章に手を触れ、静かに言葉を紡いだのである。
「我が名はフィオナ・ラインヴェルス・アレイス・オウン・イシュマリア。女神イシュラナが御子であるイシュマリアの末裔なり、ここにその証を示す。――マルゴー・ケイル・ラーヒ――」
次の瞬間、イシュラナの紋章が眩く光り輝き、白い壁が横にスライドしていった。
壁の向こう側も壁画の通路が続いていた。が、今までのような通路ではなく、白く淡い光が漂う安らぎを感じさせる不思議な通路となっていた。
道が開かれたところで、フィオナは居ずまいを正し、通路に足を踏み入れる。
すると、その直後、白い壁は部外者を遮るかのように閉まり、この場は神官と護衛の者達だけとなったのである。
背後の壁が閉じたところで、フィオナは前へと歩き始めた。
程なくして、行き止まりとなったドーム状の丸い部屋が、フィオナの前に現れる。
フィオナはその部屋に入ったところで立ち止まり、大きく深呼吸をして心を落ち着かせた。
そこは何もない部屋であった。ただ一点を除いて……。
部屋の中心に、イシュラナの紋章が描かれた白く四角い石版が台座のように安置されている以外、他には何もない。その石板だけがある部屋であった。
フィオナは呼吸を整えた後、その白い石板の前へと行き、そこに跪いた。
そして、石板に描かれたイシュラナの紋章の上に両掌を置いた後、静かに、そしてゆっくりと、言葉を紡いだのである。
【……我が名はフィオナ・ラインヴェルス・アレイス・オウン・イシュマリア。第50代イシュマリア国王 アズラムド・ヴァラール・アレイス・オウン・イシュマリアが次女であります。……遥かなる天上より、慈愛の光にて世を包み、我等を見守りし女神イシュラナよ……。今一度、我が問いかけに、お答えください……】――
[Ⅴ]
ガテアの広場は、ドーム状の屋根で覆われた縦長の建造物であった。
見たところ、学校の体育館2つ分くらいの広さは優にあり、中には天井を支える為の大きな丸柱が何本も立っていた。天井も高く、ドームの一番高い所で20mくらいはありそうな感じだ。
以上の事から、かなり大きな建造物なのだが、広場には沢山の人々の他に荷物等もあってゴタゴタしている為、それほど広くは感じなかった。
おまけに、ザワザワとした話し声が至るところから聞こえる所為もあってか、酷く雑然とした雰囲気が漂っており、こんな場所にも拘らず神聖な感じが全くしないのだ。まるで、震災直後の避難所のような光景である。
やはり不特定多数の人が集まると、宗教的な施設でもこうなるのだろう。
ちなみに、このガテアという名前だが、ラティ曰く、この巡礼地の初代神官長の名前だそうだ。この人が広場を作るよう指示したので、その名前を付けられたそうである。
まぁそれはさておき、ラティの話だと、この広場での場所取りは早い者勝ちらしいので、俺達はまず、寝る場所を確保する事にした。
そして、寝場所を確保したところで、広場の一角にある食事の配給場所へ行き、俺達は質素な晩餐にありついたのである。
話は変わるが、神官食は1人前につき2ゴールドのお布施が必要であった。まぁ早い話がお布施という名の料理代だ。
というわけで、俺は12ゴールドを支払って6人分の神官食を購入し、外にいるレイスさんにも食事を届けたのである。
それとラティの食事だが、今はルーヴェラで調達しておいたバンバの実という果物を食べているところであった。
一応、人間の食べ物もOKらしいのだが、ここのドラキー族は基本的に、バンバの実を主食にしているそうだ。
ちなみにだが、バンバの実はドラキーだけでなく人間も食べる果実である。
形は洋ナシに似ており、林檎のように赤い色をしているのが特徴だ。ついでに言うと、食感も林檎そっくりである。
だが、味はプラムのような甘酸っぱい感じである為、食べ慣れない俺からすると、不味くはないが、少しギャップを感じる果物なのであった。
つーわけで、話を戻そう。
食事を終えたところで、俺はアーシャさんの一時帰宅に付き合う事となった。
転移場所を探すべく、俺とアーシャさんが外に出ると、辺りは既に、満月の光が仄かに照らす薄明の世界となっていた。
そんな視界の悪い中、俺達は、神殿から少し離れた所に、人の数倍はある大きな岩があるのを見つけた為、とりあえず、そこへと移動する事にした。そして、周囲に誰もいないのを確認したところで、アーシャさんは風の帽子を使い、空へと舞い上がったのである。
とまぁそんなわけで、暫しの間、俺は待つ事になるわけだが……今回は予想外にも、かなり早くアーシャさんが帰ってきたのだ。時間にして10分程だろうか。
いつもと比べると、20分くらい早い、お帰りだったのである。
「お疲れ様でした。今日はえらく早いですね」
「ええ、今日はお兄様にだけ会ってきましたわ。お母様は、配下の夫人達との晩餐会でお忙しいようですので」
「へぇ、晩餐会ですか」
良いもん食ってんだろうなぁ……羨ましい。
「ところで、ティレス様は何か言っておられましたか?」
「そういえば、これをコータローさんに渡しておいてほしいと言われましたわ」
アーシャさんはそう言って、シャンシャンと鳴る銀色の鈴が取り付けられたネックレスの様なものを、俺に差し出した。
「これは?」
「魔除けの鈴だそうですわ。敵の魔法に掛かりにくくなるそうなので、これを持っていた方が良いと言われたのです。一応、皆さんの分も貰ってきましたわ」
懐かしい名前がまた出てきた。
ドラクエⅡで結構お世話になったアイテムである。
確か効能は、マホトーンやラリホーといった魔法に掛かり難くなるんだったっけか。
まぁともかく、派手な効果はないが心強いアイテムである。遠慮せず貰っておくとしよう。
「ありがたく頂戴いたします。他には何も言ってませんでしたか?」
「いいえ、何も。他は、今現在の場所を訊かれただけですわ。でもお兄様ったら、私がピュレナに到着したと言いましたら、羨ましそうな顔をしてましたわよ。うふふふ」
「ティレス様も執務に追われて、毎日が忙しいでしょうからね」
ここ最近は執務室から出られない日々が続いているとティレスさんも言っていたので、そりゃ羨ましくもなるに違いない。
まぁそれはさておき、用は済んだので、そろそろ戻るとしよう。
「さて、それじゃ戻りますか」
「ええ」――
[Ⅵ]
ガテアの広場に戻ると、サナちゃんが笑顔で俺達を迎えてくれた。
「ご苦労様でした。コータローさんにアーシャさん」
「ごめんね、待たせちゃって」
「いいえ、全然待ってませんよ。今日はコータローさん達も早かったので」
と、ここでシェーラさんが、小声で訊いてくる。
「で、何か目新しい情報とかあったの?」
「いえ、それは無いんですが、代わりにちょっとした物を貰ったんですよ」
俺はそこで、アーシャさんに目配せをした。
アーシャさんは頷き、2人にお土産を差し出した。
「これは魔除けの鈴ですわ。お兄様から皆さんの分を頂いて参りましたので、遠慮せずにお使いください」
2人は顔を見合わせる。
サナちゃんは慌てて俺達に頭を下げてきた。
「あ、ありがとうございます、アーシャさん。レイスとシェーラの武具の他に、このような物まで頂けるなんて、もはや、お礼の言葉すら見つかりません」
「サナさん、そんなに気にしないでください。お兄様は当然の事と思って、私に持たせたのですから」
素性を知らないティレスさんは、サナちゃん達の事をアーシャさんの護衛と考えているので、そう言うのは当然だろう。とはいえ、いつかは本当の事を言わないといけない日が来るに違いない。はぁ憂鬱である。
まぁそれはさておき、ラティの姿が見えないので、俺は2人に訊いてみる事にした。
「ところで、ラティはどこに行ったの?」
「そういえば食後の散歩に行ってくるとか言って、さっき外に出て行ったわよ」と、シェーラさん。
「外に行ったのか」
俺は広場の入り口に目を向ける。
と、そこでタイミングよく、ラティが入口から姿を現したのであった。
ラティはパタパタと羽ばたきながら、こちらへとやってきた。
「お、戻ってたか。何の用やったんか知らんけど、とりあえず、お疲れさん」
「ラティは散歩に行ってたのか?」
「ま、そんなとこや。それはそうとやな……」
するとラティは俺の肩に止まり、非常に小さな声で耳打ちをしてきたのであった。
「コータロー……エエ場所が、ここにもあんねん。どや、ちょっと外で話でもせぇへんか。今度は大丈夫やさかい」
全てを察した俺は、そこでサッとウインクをしてラティに合図を送った。
他の3人は、そんな俺達のやり取りをジッと見ている。
だが、これは機密事項なので、当然彼女達のいるところで話す事は出来ない。
その為、当局はこの瞬間を持ってミッションの開始となるのだ。
俺は3人に告げた。
「あのですね。ラティが俺に相談したい事があるらしいんで、外でちょっと話してきます。ですから、少し待っていてもらえますか」
アーシャさんは首を傾げる。
「ラティさんが相談?」
「ごめんな、アーシャねぇちゃん。コータローにどうしても相談したい事があるんや」
「そうですか。わかりましたわ」
「まぁそういうわけなんで、ちょっと行ってきます。では」
そして、俺とラティは、ガテアの広場を後にしたのである。
[Ⅶ]
フィオナが白い壁の奥に足を踏み入れてから、2時間が経過しようとしていた。
壁の外にいる護衛の者達や神官は、その場にて静かに待機しているが、流石に帰りが遅い為、少しソワソワする者も現れはじめていた。
フィオナの護衛を務める女性近衛騎士のルッシラもその1人であり、帰りの遅いフィオナの身を案じて、同じ場所を行ったり来たり繰り返しているところであった。
磨き抜かれた美しい銀の鎧に身を包み、その上から赤いマントを纏うルッシラは、うなじで結った金色の長い髪を揺らしながら誰にともなく呟いた。
「遅い……遅すぎる……これほど時間が掛かる事は今までなかった。中で何かがあったのではあるまいか」
ルッシラの言葉に、赤い神官服を着た初老の神官が反応した。
「ご案じ召されるな、ルッシラ殿。この奥は女神の力によって守られた、云わば、神聖なる聖域。まず危険が及ぶような事などはありますまい」
「しかし、グスコー神殿管理官。今まで、これほど時間が掛かった事があったであろうか」
尚も、ルッシラは険しい表情を浮かべていた。
「フィオナ様が遅いのは、女神から深い啓示を受けているからとも考えられますぞ。何れにしろ、我等に出来るのは、ただ待つ事のみ。近衛騎士である貴殿の思いもわからぬではないが、今はフィオナ様が出てくるのを待ちましょうぞ」
「まぁ確かに、そうなのだが……ン?」
と、その時であった。
白い壁が横へスライドし、奥からフィオナが姿を現したのである。
疲れた表情を浮かべたフィオナは、ややおぼつかない足取りでルッシラ達の元へとやってきた。
そこでルッシラは、フィオナに労いの言葉を掛けた。
「フィオナ様、長い間、お疲れ様でございました。顔色が優れぬようですが、お身体の方は大丈夫で?」
「え、ええ……身体はなんともありません。ですが……」
フィオナは歯切れ悪く答えると、納得のいかない表情を浮かべた。
ここでグスコーと呼ばれた神官が口を開いた。
「フィオナ様、なんと啓示があったのかは存じませぬが、女神の意思は古来より、このイシュマリア国の進むべき道標であります。それを、ゆめゆめお忘れなきよう」
「グスコー神殿管理官……。私もイシュマリアの末裔ですから、それは十二分に心得ております」
「ならば、何も言いますまい」
「……では神授の儀は終わりました。もう戻りましょう」
【ハッ】――
フィオナ達一行が女神像の台座から出ると、外はもう完全に日も落ち、空に浮かぶ満月が辺りを照らす、薄闇の世界となっていた。
一行はレミーラで足元を照らしながら、台座の反対に位置するピュレナ神殿へと移動を始める。
それから程なくして、神殿へと足を踏み入れた一行は、中の礼拝堂と思われる場所で一旦立ち止まったのである。
そこで、グスコーがフィオナに向かい、恭しく頭を下げた。
「フィオナ様、沐浴の用意は既に済んでいるそうなので、このまま光の泉へとお向かい下さい」
「わかりました。ではルッシラ、すいませんが、着替えの用意をお願いします」
「畏まりました」
ルッシラは返事をすると、女性騎士の1人に指示をした。
「フィオナ様のお着替えをすぐにご用意し、光の泉まで持ってくるのだ」
「はッ、ただ今」
指示を受けた女性騎士はキビキビと返事をし、この場を後にした。
そして、フィオナはルッシラに告げたのである。
「では行きましょう、ルッシラ」
「はい、フィオナ様」
神殿の外へ出たフィオナ達一行は、湖がある方角へと伸びる石畳の道を進んで行く。
暫く進むと、一行の前に、やや小さな神殿様式の建造物が現れた。
一行はその建造物の前に来たところで、一旦立ち止まる。
フィオナはそこでルッシラに言った。
「ではルッシラ、この前で待っていてください。すぐに戻りますので」
「仰せのままに」――
フィオナが入口を潜った先は、壁一面に女神の絵が描かれた明るい部屋で、そこには中年の女性神官と、若い女性神官が2人いた。
2人はフィオナの姿を見るなり、跪いて頭を垂れる。
まず中年の女性神官が口を開いた。
「光の泉にようこそお出で下さりました、フィオナ様。こちらで御召し物をお預かりいたします」
フィオナは無言で頷く。
そこで中年の女性神官は、もう1人の若い女性神官に指示を出した。
「さ、フィオナ様のお手伝いを」
「はい」
指示を受けた若い女性神官は、フィオナの背後に回り、脱衣の手伝いを始める。
それから程なくして、一糸纏わぬ姿となったフィオナは、長く赤い髪をフワリと靡かせ、この部屋の奥にある扉へと歩き始めたのである。
そこで若い女性神官が奥の扉を開き、フィオナに中へ入るよう恭しく促した。
「どうぞ中へお入りください、フィオナ様。光の泉にて、お身体をお清め下さい」――
フィオナが扉を潜ると、青い石畳の床の中心に、白い石で縁取られた丸い泉があった。
泉の周囲には、白く発光する八本の柱が立っており、その柱から発せられる光が泉の水面に反射して、まるで泉自体が光を発するかのように、白く輝きながら揺らめいていた。
フィオナはその泉に向かい、ゆっくりと歩を進める。
泉の縁に来たところで、フィオナはゆっくりと片足から泉の中に入って行った。
腰のあたりまで泉につかったところで、フィオナは備え付けられた小さな水瓶を使い、全身をゆっくりと洗い流すかのように、静かに水を掛けてゆく。
そして、右手で女神の紋章を宙に描いた後、目を閉じて両掌を胸の前で組み、イシュラナへの祈りを捧げたのであった。
「……遥かなる天上より、慈愛の光にて世を包み、我等を見守りし女神イシュラナよ……今日も1日が無事に終わりました。大地を育み、水を育み、命を育み、世界を育む貴方の息吹に感謝しますと共に、罪深きこの身を清めて悔い改め、我等が主たる貴方様へ感謝の祈りを捧げます。……そして願わくば、世の生きとし生ける物全てに、貴方様の加護と祝福の光があらんことを……」
祈りの言葉を捧げたフィオナは、目を閉じて掌を組んだまま、静かにそこに佇む。
だが次の瞬間、この建物内に、低い男の声が響き渡ったのである。
【祈りはもう済みましたかな、フィオナ王女。クックックッ……】
「だ、誰です!?」
男の声だった為、フィオナは反射的にしゃがみ、首まで泉につかった。
そして、声の聞こえた入口に振り返ったのである。
するとその直後、入口から、フードを深く被って顔を覆い隠した漆黒のローブ姿の存在が、ユラリと姿を現したのであった。
フィオナは叫ぶように言葉を発した。
「何者です! こちら側の泉は男子禁制ですよッ」
【ええ、勿論、存じておりますとも】
「ル、ルッシラ! 誰かッ!」
フィオナは泉の入口付近に待機しているであろうルッシラ達に、慌てて呼びかけた。
しかし、ルッシラはおろか、他の騎士も現れなかったのである。それどころか、返事すらないのであった。
ローブ姿の存在は愉快そうに言葉を発した。
【ククククッ、助けを呼んでも無駄ですな。外の者達は今、ぐっすりと眠っているところだ。起こさずに休ませてあげたまえ。クククッ】
ローブ姿の存在は泉の前に来ると、そこで立ち止まる。
それを見たフィオナは、泉につかったまま後ずさり、険しい表情で弱々しく言葉を発した。
「一体、な、何をするつもりなのです」
【何をするつもりだって? クククッ、決まっている。貴方にとって良くない事だ。だが心配はするな、今はまだ命まで奪うつもりはない。といっても、後の事まではわからんがな。まぁそういうわけだ。観念してもらおうか、フィオナ王女よ……】――