ジョジョの奇みょんな幻想郷
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第一部 ケイオスクルセイダーズ
第一章 紅霧異変
12.エンハンサー
「『ルナダイヤル・キング・クリムゾン』っ!」
四方八方にフォークで囲まれた咲夜は危機一髪のところで、目の前から姿を消しフォークを回避した。
いや。姿を消したと言うべきではなく、『フォークをかわす』という過程を消し『フォークをかわした』という結果のみを残したというのが正しいだろう。
「っ!?何かしらはしてくると思ってたけどさ、キンクリ使えるようになるとか進化しすぎじゃないですかねぇ?それとも」
─────元に戻ったが正しいかな?
そう付け足すと、咲夜はニヤリと口元をゆがめた。
「ええ、あなたのおかげでね。ジョジョ」
メイド秘技『殺人ドール』
咲夜はスペル宣言とともに大量のナイフを投擲する。そして、
「『ルナダイヤル・キング・クリムゾン』っ!」
「『何ですとぉ!?』」
キング・クリムゾンは簡単に説明すると過程をすっ飛ばし結果のみを残す能力。先ほど咲夜が丞一の無数のフォークを回避したのも『回避する』という過程をすっ飛ばし『かわした』という結果を残したのだ。
では、これを攻撃に転用したらどうなるか。『攻撃をする』という過程をすっ飛ばし『攻撃が当たった』という結果のみが残る。回避もカウンターも不可能な攻撃の完成である。
そう、今のように。
「ぐ、ぐぁ!」
「ジョジョ!?」
早苗の悲痛な声を聞いた丞一には、咲夜の投擲した無数のナイフが刺さっていた。
左肩、脇腹、さらには胸にも刺さっていた。
そんな丞一を眼力を効かせて咲夜は睨みつけた。
「いつまで狸寝入りを決め込んでいるのかしら?」
「あり?ばれたか?」
丞一はひょいっと起き上がった。
は?と早苗からは抜けたような声が聞こえた。
「ああ、いてーいて。せっかくの服に傷が付いちまった」
丞一はそう言いながらポイッとナイフを抜いて捨てていった。
そして、咲夜は呆れたように肩を掬わせ、尚も笑いながら、対峙した。
「─────やってくれたわね。ニャル子!」
『へへーん。またまたやらせていただきましたぁん!』
そうニャル子の憎らしげな声とともに丞一は服の下から─────ジャンプを取り出した。
「相変わらず無茶苦茶ね」
『なにせ、私ですから』ドヤァ
「どや顔すんな」
どや顔がムカついたので軽くチョップしておいた。
そして、そのジャンプはを捨てた。因みにこのジャンプはこの紅魔館の地下図書館から無作為に持ってきたものだ。そして、そこの主は魔法(物理)を極めた男の中の女傑であることをまだ知らない。
しかし、これで本によるガード方法は使えなくなった。同じ防ぎ方を見逃すような人ではないだろう。
お互いに自分の得物、フォークとナイフを構えた。端から見るとかなりシュールな絵面だろう。だが、その雰囲気だけはままならないものだった。
「さて、真の第二ラウンドといきましょうか!!──────────姉貴!!」
「いえ、これが最終ラウンドよ──────────ジョジョ!!」
「えっ!姉弟!?うそ!?だって伏線なんてどこにも、ハッ!そういえば第二話で」
『丞一は姉妹はいるのかー?』
『いるにはいるが何故?』
「あれ!?」
早苗が一人ボケている間にも二人の姉弟喧嘩は熾烈を極めていた。ナイフとフォーク。スタンドとスタンド。ときには己の拳、脚、お互いの持ちうるすべての攻撃を繰り出し、防ぎ、かわし、いなす。そして、その攻防の優位は、
「『ルナダイヤル・キング・クリムゾン』!」
「ちっ!攻撃あたんねー」
『チートも甚だしいですね。ちくしょー!』
咲夜だった。やはり、いくら丞一といえどもキング・クリムゾンの存在は無視できるものではなく、かといって対処できる手段もなく手をあぐねていた。
「『ルナダイヤル・クロックアップ』」
「っ!クロックアップ!なら、付き合ってやるぜ!十秒間だけな!『ダークワン・アクセルフォーム』」
某破壊者さんですか……という早苗のつっこみはむなしく高速ならぬ光速戦闘をしている二人の戦闘音にかき消された。
もはや、ガガガガガガという工事現場の騒音ってこんな感じなんだろうという音が鳴り響く。
(6、7、8、後2秒。この光速戦闘で大方の決着が付く。つまり、このやりとりを制した方が勝つ。後1秒)
というか、ダークワンの時加速の時間制限はそこまで短くなかった記憶があるのは気のせいだろうか。しかもそれは本人がいっていたような。早苗は考えることをやめた。
そして、一秒がたち、十秒になった。
「っ!そんな、何で、ジョジョ!」
早苗の目の前には胸と肩にナイフが刺さった、丞一が立っていた。
あの光速戦闘の中、丞一は劣勢ながらも拮抗を保っていた。しかし、八秒の時、
「八秒の時、互いにはなったナイフとフォークを自分の得物で弾いたのよ。そして、私のナイフがあなたのところへ飛んでいったのを見たジョジョはあなたを庇った」
「そんなっ!」
嘘だと信じたかった。また、本を隠し持ってたり、便利設定で生き残ってたりというのを期待していた。しかし、現実というものは非常でそのようなことはなかったようだ。
「全く、変わらないわね。あなたは昔から最後で詰めを誤る」
「うる、せー、やい」
「ジョジョ!」
肩で息をしていてもう限界値をK点突破していた。
「ふー。─────ニャル子が言っていた『存在自体が永遠の切り札な私は自在にジョーカーを作り出せるんですよ』って。大富豪の時にな」
「あら、それは大変。ならそんなイカサマされる前にあがらなくてはならないわね」
そう言った瞬間に、咲夜から凄まじいパワーが溢れ出た。
(な、何ですか!?このパワーは!まさか、これがDioの言っていた、スタンドパワー?)
「記憶がある頃、私が辿り着いたスタンドの極致。『スタンドを纏う』。簡単そうで、未だに誰もやっていないこれは、スタンドの固有能力も変わらずにステータス値がすべてを振り切るというものよ。名前はまだ無い「いや、ある」……何ですって?」
丞一はふらつきながらも、眼光だけは鈍らせず咲夜へ睨みつけた。
「名前は、ある。そして、その極致に真に至ったものは固有能力を『捨てる』ことによってステータス値をあげることが出来る!」
「なっ!?」
「そしてなにより、その状態になるとあまりのスタンドパワー故にスタンド使い以外にもその姿が見えるということだ」
「百歩譲ってそうだったとしても、なぜあなたが知っているの!?」
咲夜の言葉を無視し、丞一は空間を操り黒いソフト帽を取り出し、被る。そして、咲夜同様にスタンドを引っ込め、スタンドパワーを跳ね上げた。
「これを習得する条件は四つ。
一つは、スタンドパワーを自在に操れること。
二つが、スタンドを纏えること。
三つが、己自身の構造をよく知ること。
最後が、河童と八雲紫印の特訓用具で特訓することだ」
丞一がスタンド展開すると、そこにはいつも傍に這い寄る混沌はそこにいなかった。
代わりに、L字のベルトが巻かれていた。
「見せてやるよ。俺のスタンドCQCエンハンサーを!」
そういうと手慣れた手つきでUSBメモリのようなものを上の突起部分に挿した。
溢れ出て放射されていたスタンドパワーは次第に丞一の元へと集まっていき、丞一を包み込んでいった。
それは、体の再構成。自らを再構成させることにより最も戦闘に適した体へ変化させる。フルフォースフォーム。
「一つ、親父が死んで心のどこか姉貴に頼りきりで依存してしまった」
完全完璧瀟洒の超人といえども、まだ子供だったのだ。それに精神的苦痛を感じなかったわけがない。
「二つ、家族がいなくなったからといって生きることを諦観してしまったこと」
諦めてしまった。今はこうして会えているからいいものの、一歩間違えれば首を吊っていた。
「三つ、家族を守れなかったこと。そして、失ったものを取り返そうとする努力をしなかったこと」
丞一は紫に言われるまでこの幻想郷へ来なかった。それは努力をしなかったことに変わりはない。
「俺は自分の罪を数えたぜ、姉貴、いや姉さん。
──────────さあ、お前の罪を数えろ!」
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