ジョジョの奇みょんな幻想郷
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第一部 ケイオスクルセイダーズ
第一章 紅霧異変
11.咲夜の世界2
丞一と別れた後、早苗と霊夢は先へと急いでいた。
しかし、早苗は浮かない顔をしていた。何てことはない。ただ、丞一が心配なだけなのだ。
「……早苗。やっぱりあんたあっちに残ってなさい」
「で、でも霊夢さんは」
「私は大丈夫よ。相手が誰だろうと遅れをとる気はさらさらないわ。それに、おそらくあの二人の実力は拮抗しているわ。ぶつかればただですまないのは必定よ。わかったらさっさと戻った戻った」
「霊夢さん………………異変の首謀者は任せます」
霊夢が頷き返すのを見て、早苗はすぐさまきた道を戻っていった。そして、その道中。一人の男が脇道から出てきた。
「あなたは、迅さん!」
「やあ、早苗さん。さっきぶり」
「どこ行ってたんですか?」
「いや、ちょっと散策にね」
この男、迅優作の趣味の一つは暗躍である。この男ほどソロプレイを推奨する奴はそうそういない。どこぞのブラッキー君ぐらいのものだろう。
「早苗さんは丞一のところへ?」
「え?何でわかったんですか?」
「さっきチラ見してきたし、方向が方向だからね。………行くなら急いだ方がいいよ。あの二人の能力ならば、そう長引くことはない。あの同系統の能力だからね。君が着く頃には決着が着くだろう」
「………わかりました。ありがとうございます」
ぺこり、とお辞儀をして迅と別れた。そして早苗はまっすぐと走る足をさらに早めて戻っていった。
(お願い!間に合って、ジョジョ!)
その早苗の祈りが届いたのか、早苗が元の場所に近づくに連れて、金属音が聞こえてきた。その音が、丞一のフォーク、咲夜のナイフという結論に至るのにそう時間を要さなかった。
(やった、間に合った!運命に勝った!)
そして、ようやくエントランスへ通じるところへ出てきた。
早苗の目に映った光景はまさに死闘を繰り広げられていた。綺麗で煌びやかともいえたエントランスの姿は微塵も感じられなかった。床や壁はひび割れ、フォークや
ナイフが錯乱していた。
そして戦況はというと、
「はあ、はあ」
「………」
丞一が無傷で圧勝していた。咲夜はというと所々血を流し、膝を着いて息を荒くしていた。
「す、すごい」
早苗はただそれだけの言葉しか出てこなかった。丞一の圧倒ぶりとその丞一の醸し出す雰囲気がそのすごみを助長させていた。
「ど、どういうことなの。何故あいつの攻撃は当たって、私の攻撃はすべて読まれているかのようにかわされる!」
この戦況を作り上げたのは、偏に丞一のすべての攻撃を無傷で防ぎかわすだけの未来予知にも到達しうる先読みによってだった。まるで、事前にテストにでる問題がわかっていたかのように、咲夜が攻撃を中止できないタイミングで迎撃または回避行動を開始させていたのだ。
「─────あんたがあんただからだよ」
「何ですって?」
「あんたがただの『紅魔館の専属メイド』である限りは、俺に勝つどころか指一本触れられない」
「何を、言っているの?」
咲夜には丞一の言っていることがわからなかった。そんな咲夜の様子を見て丞一はため息をついた。
「はあ、仕方ない。ショック療法のしかないみたいだな。せいぜい死んでくれるなよ」
「何ですっ────え?」
「な、なんだ、ありゃあ!!ジョジョの後方に大量のフォークが待機しているっ!!しかもそれぞれの砲門が咲夜さんをピッタリマークしている!あれでは咲夜さんは逃げることすらままならない!」
早苗の解説通り、丞一の後方には金色の波紋が空中に浮かびその中心にはフォークが待機していた。
これこそが、丞一の数ある奥の手の一つだ。
「スタンドの能力と自身の能力を最大限に生かし、それをより実践的なものにして型に落としたものこそが──────スタンドCQC!」
「ス、スタンドCQC?」
「『Closed Quarter Combat』!近接戦闘のことだ。そして、これが俺の『空間を操る程度の能力』でフォークを取り出し座標を固定、重力操作でフォークに重力を乗せ射出、そしてそれを能力で空間を操り回収する。このサークルを永遠と続ける!そうこれこそが、俺のスタンドCQCパート2!『明滅し煌々とどまることの知らない王の三叉』だ!!」
丞一の高らかとされた宣言とともにすべての砲門から三叉槍が放たれる。
咲夜はナイフを放ったり、彼女のスタンド『ルナダイヤル』で弾いたりと迎撃をするが、速度と質量がともに勝っている丞一のうちゅ、じゃなかった。スタンドCQCにはなす統べないのがオチだった。
能力で時を止めるも、今度は丞一自身が出張り身丈サイズのフォーク──どこで手に入れたかは聞いてはいけない──を槍のように扱い応戦する。
しかし、十秒、二十秒と時は過ぎるが一向に時は止まったままだ。だが、今見るべきところはそこではない。
「なんで、あなたは私の世界でずっと動いていられるのっ!」
自分以外が時を止めた場合、その世界の中で自分が動ける時間は限られている。承太郎も時間が止まった世界で動けるのは二秒が限界だった。しかし、丞一はそんなの知るか、と言わんばかりに動きまくっていた。丞一は咲夜が時を止めたその瞬間、ほぼ同時に自身に通常時と同じだけの重力を纏ったのだ。時間を止めるということは、空間を歪めるということ、空間を歪めるということは、重力を歪めるということ。つまり時が止まった状態イコール重力は皆無になのだ。そこで、通常と同じ重力をかけることで、丞一は咲夜の世界の中に僅か小さいながらも己の世界を展開したのだ。
そしてついに、世界に色が戻った。
その瞬間、再び世界は色を失った。
「『ダークワン・ザ・ワールド』!」
ドォォーーーーン!カチコチ……
「俺が時を止めた。あんたが能力が解除された時点でな」
(なっ!しまった!完全に不意をつかれた!)
咲夜が自身の失態を悔いるまもなく、丞一は砲門をすべて咲夜に向き、砲門がドーム状に取り囲んだ。
そして、すべてのフォークを四方八方へ撒き散らす。
そして、すべてが咲夜の目の前で止まる。
「あっけのない幕開だぜ。さてと、早く戻すもん戻さんと───────あんた、死ぬぜ?」
それと同時に時は刻み始める。
かつて、丞一と戦った魔理沙はフォークについてこう語った。『数十本でも刺されれば痛みのあまりショック死するレベルだぜ』と。そして、そのフォークが今まさに、百本にまで届こうとしているのではないか、という数で咲夜に迫っていた。
人は死ぬと思った瞬間今までの人生が走馬灯が駆け抜けるという。もちろん、彼女にも駆け抜けた。
しかしそれは、彼女に身の覚えのない物ばかりだった。
『勝負だ姉さん!今日こそその顔面に拳をたたき込んでやりますよぉ!』
銀髪を肩まで伸ばし何故か後ろで括っている弟との記憶。
互いに切磋琢磨し、参考資料(ジョジョ単行本)を読み漁り、実力を高めあった、自慢の弟。
彼女自身は何故忘れていたかは知らない。だが、今ならばわかる。『さっきの』自分が勝てなかったわけが。
止まっていた者に勝ち目などなかったのだ。彼は進んでいたのだ。勝つため負けないために。
そして、実に十九年という短い人生の記憶の旅は終わった。
「強くなったわね、ジョジョ。それしか言う言葉が見つからない」
「っ!」
彼女は紡ぐ。
彼、慶条丞一の義姉でも紅魔館の瀟洒なメイドでもない。
『十六夜の如く、夜に咲き誇る』十六夜咲夜のしての物語を。
そして、自覚せし者は自らの能力を超越する。
「『ルナダイヤル・キング・クリムゾン』!」
後書き
十六夜咲夜
19歳
種族:人間(スタンド使い)
能力:『時間を操る程度の能力』
紅魔館のメイド長。過去に一度記憶をなくし、幻想入りする。その時に運命を覗いたレミリアが再びこの名をつける。丞一の義姉。幼少期の丞一をボコボコにしていた。たまに会話にジョジョネタを挿んだりとやはり姉弟は姉弟である。また事あるごとに右手を天に突き上げ『お嬢様が仰っていた』という言葉から放たれる名言十六夜語録を残している。
スタンド『ルナダイヤル』
自身の能力と同じ『時を操る能力』。姿は『ザ・ワールド』の黄色い部分を赤くしたものをイメージしてください。
ページ上へ戻る