魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年
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真・四十話 愛情
「東吾さんが……俺の母さんの、弟……?」
《そうだ全……月神東吾、あ奴こそ上月家きっての天才と謳われた男だ》
全は思わず真耶に聞き返し、真耶はそれを紛れもない真実だと言った。
しかし、全には信じられなかった。なぜならそんな話、聞いた事もなかった話だからだ。
『マイスター。聞いた事もないのも仕方ないと思われます。東吾様はマイスターが物心つく前に出家されましたから』
「ちょ、ちょっと待ってくれ。出家?家を出たんだよな?でも確かその条件って……」
全はシンが言った出家という言葉に驚く。だって出家したという事はあの無茶苦茶な条件をクリアしたという事なんだから。
《そうだ。出家の条件は、本家並びに分家当主全員……つまり二十一人を同時に相手し勝利しなければならない。無論当主達は全員神を己に憑依させているので普通の身体能力を持った人間と戦う訳ではない》
そう、そんな無茶苦茶な条件なのである。ちなみに神憑家は本家と分家を合わせて二十二もある。ではなぜ二十一なのかというと、出家する人間の生家は出家に反対しているという訳ではないので初めから頭数には入っていないからだ。さらに言うと、その時上月家の当主は真白が務めていたというのもあるだろう。
《あ奴は自由を何より愛した。故に格式ばった家の連中が嫌いになっていったんだろうな。だが、そんなあ奴を変えたのが……生まれたばかりのお前だそうだ》
「俺が……?」
《元々あ奴は真白が当主についた時に何も言わずに家を出る予定だったらしい。しかし、お前が生まれこう思ったそうだ「この子に何かがあった時には全力を持ってこの子を守ろう」とな》
「それが、この時……?」
全は改めて目の前で行われている熾烈を極める戦いを見つめる。
一方は自身の武器である短刀を正確に動脈などを狙いながら斬りつけ、さらに力の波動を相手にぶつけている。
一方、東吾は防刃処理を施した手袋を用いて徒手空拳で東馬の体を傷つけずに気絶させようとしているのが分かり、時折来る神の波動に対しては東吾に宿る神であるロキが同質量の波動を放ち、相殺する。
そんな攻防が続く中、ついに東吾の膝が折れた。
「く、くそ…………」
『あっはは、やっぱり神様としての格の違いなのかね?やっぱり無理なんだよ』
「諦めるな、ロキ……俺の命を使ってもいいから、東馬君を助けるんだ……!」
『はぁ……男の約束って奴かい?しょうがないねぇ……でも、いいのか?死ぬぜ、お前』
「構わん……姉さんを守れなかったんだ、そんな俺が姉さんの子供を守れるんだ、だったら本望さ」
『はぁ……ホント、お前ら姉弟は……』
そんな呆れた声を出しながらロキはさらに力を強く発揮させていく。先ほどの東吾の言葉通り、彼の命を削って力を高めているのだろう。
「東吾、さん……」
《全、お前は前世の親戚達には恨まれており、またお前も恨んでいると思っていただろう?だが、違うんだ。少なくとも一人。ただ一人だけ……東吾だけはお前を愛していた。あの狂った家に生まれながらもお前の家族と同じようにお前を愛していたんだ》
「東吾、さん……」
全はその記憶を見ながら涙を流した。それもそうだろう、少なくともあの家に関わった人間が家族を除いて全の事を愛してくれた事などなかったのだから。
「ありがとう、東吾さん……愛してくれて……!……ありがとう……!」
そして、全ての決着がつき東吾は倒れ、東馬もまたその場に倒れ伏した。
そこで、記憶は途切れた。
《この後、東馬の最期を看取ったのはその場にいた双覇達だ。だからこそ、彼らはお前の事を忘れはしなかった》
「そう、だったのか……」
記憶を見終わり、自身の部屋に戻ってきた全。その目からはまだ涙が流れており、しかしそれは悲しみの涙ではないのは分かっているので真耶もシンも何も言わない。
やがて全は泣き終わり目元をごしごしを擦る。
「す、済まない……ありがとう、この記憶を取り戻せてよかったよ」
『マイスター……』
「大丈夫だよ、シン。心配かけたな……前世の分も含めてありがとう」
『いえ、マイスターが無事ならそれで……』
《さて。それでは、これからの事について話し合うか……》
「そうだな。差し迫ってまずは、なのはの撃墜を阻止する所からだな」
そして話し合いが再開される。まずはなのはの撃墜事件を阻止する所からだ。
「あの時なのはに襲い掛かった犯人は、恐らく高度な幻術使いだろう。高宮の可能性は……あると思うか?」
《十中八九、高宮の可能性がある、と私は睨んでいる。根拠としては奴はお前の事を心底恨んでいた。お前に化けて高町を墜とせば、記憶や記録が改変されている今となってはお前に疑いの目が向くのは必然だ。その間にお前の家に火を放つ……あの時見た映像のようにな》
「ああ、俺もそう思っている。あいつは恐らく高宮だ。でもという事は……」
『あいつ、自身の目的の為に自分が守ると公言している少女を墜とした、という事になりますよね……!』
シンは怒りを抱く。なぜなら守ると言っているにも関わらずその守る対象を攻撃しているのだ。自身で自分の言った事を破っているのだから怒るのも無理はないだろう。
「そうだな。あいつを許す訳にはいかない。かといって明日学校に行かないのも不自然だ。よって明日は俺は普通に学校に出向く。シン、お前はアースラのデータベースにアクセスして明日高町達が出向く世界の情報を集めるんだ。タイムリミットは……明日の夜中までだ」
『了解です!必ずや、掴んできます!』
そう言ってシンの本体であるクリスタルから光が消えた。アースラのデータベースにアクセスしに行ったのだろう。
「さて、その間に俺たちに出来る事はないものか……」
《今のところは、ないだろうな……英気を養っておく事位しか》
「そう、だよな……頼むぞ、シン……」
そう言って全は前世から引き続き自身に従ってくれる自身の相棒を思いながらキッチンへと向かった。
???SIDE
「以上が、これまでのお話です。貴方にこれ以上迷惑はかけられないのは分かっています。この世界で平穏に暮らし始めていた貴方に話をしてしまえばどうなるのかもわかっていたのに……それでも」
「いいよ、神様。あいつがそんな大変な目に合ってるって知れて良かったよ。知らずにそのままだったら多分後悔してたからな」
「そうですよ、困ってるときは助け合う!これが私たちですから!」
「そのような悲劇を繰り返させる訳にはいかないからな。私たちも向かうぞ」
「そうだな、苦しい思いをした後は幸せになっていい筈なんだよ。あたしと同じように」
「そんな幸せを壊す奴は」
「私たちがぶった切ってやるデース!」
「だから、安心してちょうだい。私たちも話を聞いて実際に映像を見て、彼を助けたいと心の底から思えるから」
「皆さん……本当に、ありがとうございます……!どうか、私の息子を……お願いします……!」
「おぅ!任せとけって!」
「絶対に死なせはしませんから」
「私も微力ながらも頑張ります」
「さて、そうと決まれば早速準備だ。これは一人の少年の未来を守る戦いとなるだろう。皆、気合を入れて望んでくれよ!!」
「「「「「「「「「はい(おう)!!」」」」」」」」」
「…………待ってろ、全…………絶対に諦めんなよ……!」
SIDE OUT
後書き
一応状況確認終了。
そして最後に出てきた方々が全君の理解者達です。まあ、一人が物凄く特徴的な語尾してるからわかるかな?
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