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魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年

作者:レゾナ
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真・四十一話 反逆への狼煙

 
前書き
過去に愛されていた全。自分を愛し守ってくれた東吾の為にも全は生ききる決意を新たにする。 

 
翌日、全は何事もなく起き上がり、シンが帰ってきているのか確かめるが、まだ帰ってきていない。

つまりは、まだ確実な情報を入手できていないのだろう。だが、全の心には不安などなかった。

シンならば絶対に入手してくれる、そんな確信があったからだ。

《ところで、全》

「なんだ、真耶」

朝食の準備をしていた所、真耶は話しかけてきたので全は応じる。

《お前、シンの事を信じているんだな》

「当たり前だろ、()()()()()()()()()なんだからな」

《なんだ、やはり気づいていたんだな。シンがお前が前世で愛用していた短刀『月影』だという事に》

「まぁな」

そう、シンは元々意思も何も持たないただの銘を与えられた短刀だった。

しかし、前世で全が愛用している間に全の中にいる真耶の影響を受けたのか、徐々に意思が生まれていきいつしか主である全を心から慕うようになった。

そして全が死に、デバイスに関して悩んでいた真白に頼み込んだのだ。自身をデバイスにしてくれと。

「にしても、母さんも粋な事をしてくれるよね。まあ、一発で分かったけど。あの馴染み深い感触は相棒である月影でしか抱けないと確信してたし」

《なるほどな。戻ってきたシンに伝えてやれ、恐らく泣くかもしれんがな》

「ははっ、あり得る」

そんな何気ない会話をしながら朝食を食べ、身支度を済ませ家を出る。












家から出て学校へと向かう間、あの記憶の中と同じように町の人からは嫌悪を感じさせる視線を全は受けていた。

「よぅ、坊主。登校か?」

「あ、肉屋のおじさん。おはようございます」

「おう、おはような!最近めっきり来てくれなくてちょっと寂しかったんだぜ?また顔出してくれよな!」

「あ、は、はい……」

豪快な感じのする肉屋の店主はそのまま歩いて去っていった。

「真耶、完全に記憶は改変されてないのかな?」

《分からん。だが、前回までと今回の違いの一つだな。前回までは全員から嫌悪の視線を向けられていたが、少なくともあの肉屋の店主はお前を嫌ってはいなかった。今回の改変は上手くいかなかったのか?》

「何が原因だと思う?」

《…………恐らくは、(アイオン)の眼だろう。あれは運命を選定する眼だ。運命と記憶、どちらが優先されるかは一目瞭然だろう?》

「そうなのかな……」

《ああ、(アイオン)の眼とはそういうものだ。だが、気をつけろ。(アイオン)の眼は使用と同時に使用者の魂を喰っていき、最終的には全ての魂を喰いつくす存在だ。まあ、私がいる間は私が肩代わりするがな》

「大丈夫なのか?」

《神を舐めるなよ?》

「そうだった」

小さな声で全と真耶はそんな会話をしながら学校への道をまた歩き始めた。



そんなこんなで学校へと辿り着き、日課である読書へと耽る全。

「「「「「「「「おはよう!」」」」」」」」

小説を読み始めて少し。聞き覚えのある声がおはよう言ってと教室にやってきた。

なのは達が登校してきたのだろう。全は顔は動かさず目線だけなのは達に向ける。

いつもならフェイト、アリシア、はやて、るい、アリサ、すずかは全に挨拶をしてから自身の席に座る筈なのだが、今回もやはり誰も来なかった。

恐らく彼女達の記憶改変は確実にしているんだろうと全は結論付ける。

分かっていればそこまで動揺もしないので、全は気にせず読書を続けた。

だからこそ、全は気づかなかった。

「「………………………」」

その内の二人の少女が全をじっと見つめている事に。

そして、先生がやってきてHRが始まる。

「橘」

「はい」

「…………橘、後で先生と一緒に来なさい」

「はい」

点呼の際に全は先生に一緒に来いと言われた。今回も呼ばれるとは思っていたが、とりあえず朝のHRを終わってから先生と共に教室を出て、ある教室へと入っていった。

そこは「生徒指導室」。

(ここまで一緒だと流石に寒気がしてくるな……)

先生の後を追って全も生徒指導室に入り、先生と向かい合って座る。

「橘……」

「はい」

「……先生はな、正直混乱している」

「…………はい?」

まさか、第一声が混乱しているとは思わなかったので全は思わず目が点になってしまった。

「あ、あのどうかしたので?」

「いや、な……商店街の方からお前の素行が悪いという話が上がってきたんだが……「そんな事ない!あんなよくできた子供、そうそういない!」とお前を擁護する人がうちに直接やってきたんだ」

「………………………え?直接って…………学校にですか?」

「ああ、対応した教諭も驚いてたよ。うちの一生徒の為に学校にまで来てそんな事ないって言ってくる人がいるなんてってな」

「そう、なんですか…………」

商店街など横の繋がりが大事な仕事などではそれらを気にして、他と違う意見など滅多な事では出せない。なぜならばその人が爪弾き者にされるかもしれないからだ。

にも、関わらずその人は直談判までしてくれた。そんな人がいてくれたんだと全はその人の事を心から凄いと思った。

「で、確認だ。お前、店毎に対応を変えてるなんてないよな?」

「ありません、絶対に。誓えます」

「…………そうだな、お前のそんな瞳を見せられたら先生も何も言えないよ。橘。先生もお前の事を信じる」

「はい、ありがとうございます」

全はそう言って、席を立ち生徒会指導室を後にし

「っと、忘れる所だった、橘」

「っ、はい?」

ようとした所で先生に呼び止められる。

「生徒の事を信じなきゃいけない俺なんだがな…………正直、これは言おうか迷ったんだが……」

「…………?」

思わず首を傾げてしまう全。

「…………高宮な、気をつけろ」

「え?高宮、ですか?」

まさか先生の口から聖の名前が出るとは思わなかった全は聞き返す。

「ああ。ここ最近、あいつのお前を見る目がなんていうか、その……表現が難しいな……こう、自信に満ち溢れているというか、自分の勝利を確信しているというか……うぅん、何て言えばいいんだろうな……」

「えっと。要するに自信満々な感じって思えばいいですか?」

「ああ、それが分かりやすいな。だが、その中に何というか……下心みたいな物も感じたんだ。生徒を信じないなんて先生失格だ。だが、高宮には一応俺の方からも言っておくが、注意しておけ」

「はい、わかりました。心に留めておきます」

そう言って全は今度こそ生徒指導室を後にした。

教室へと帰る最中、小さな声で全は真耶と話す。

「あいつ、俺にそんな視線向けてたのか」

《もしかしたら、テストの時にお前が感じた視線というのは高宮のものだったのかもしれんな》

「かもな」

そうして、帰っている最中、ポケットにいれていたシンが急に震えだす。

『マイスター、只今帰りました。わかりましたよ、本日高町なのは達が向かう世界が』








さあ、歴史の修正の始まりだ。






























































???SIDE

「爺や、この書類を担当の方に持って行ってくれる?」

「かしこまりました、社長」

「もぅ、二人っきりの時はもうちょっとラフでもいいのよ」

「いえいえ、以前まで使っていたお嬢様という呼び方は今となっては彼限定での呼び方ですからね」

「っ、か、からかう爺やなんて嫌いだわ!早く行って!」

「ほっほっほ、青春ですのぉ」

爺やと呼ばれたお爺さんが部屋から出ていく。

部屋に残されたのは少女ただ一人。少女は今はこの会社を取り仕切る社長である。そして彼女の背後には一振りの剣が飾られていた。

しかし、その剣の形は独特だ。刀身は西洋風なのだが刀でいう鍔の部分が丸みを帯びており、その丸の中の上、下、右、左にそれぞれ「火、水、土、風」を表す紋章が描かれており、中心部分には小さく「天地」と書かれている。

これは彼女がある一件で手に入れた剣であり、主従の誓いを交わした彼との思い出の品であり……ともかく大切な剣なのだ。

「…………今頃、何をしてるのかな…………」

少女は立ち上がり、背後にある剣を見つめる。

「…………幸せに暮らしてる、そうだよね…………()()…………」

東馬の名前を口にし、さあ、仕事仕事と少女が再び席に座ろうとすると

―――――――――――――お願いが、あります。

そんな声が、部屋に響いた。

「っ、誰!?」

少女が叫ぶと、声の主が現れる。

「貴女にお願いがあるのです、東馬と主従の契約を交わした「神山・P・梨桜」さん」

SIDE OUT

反逆への狼煙を上げるときが、着々と近づいていた……。 
 

 
後書き
次回辺りから、なのはの撃墜事件に入ります。そして、今回の最期で出てきた彼女。ぶっちゃけると、彼女の前に現れたのは真白です。そして、彼女も全の事情を少なからず知り、全の理解者である人物です。さらに言うと、美咲さんは彼女の事が好きですが同時に羨ましくも思っています。だって、ねぇ?

追記:最後の東馬の主である少女の名前を一部変更。




あ、後。この彼女、いつか全が話していた我儘お嬢様ご本人です。 
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