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魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年

作者:レゾナ
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真・三十九話 真相

 
前書き
さあ、こっから大大大逆転劇が見れますよっ!

の、前に……まずはなぜこのような事態に陥ってしまったのか、考察と推論を重ねます。

そして、あの映像の真実が明かされます。 

 
テストが終了し、全は商店街で買い物をしてから家へと帰宅していた。

ちなみに、全の今回のテストの出来は上々。恐らく、百点がいくつかはあるだろう。

いくつか、というのは自己採点した結果であり、それに含まれない。つまり自己採点で百点に届いていないと思われるテストの時間の際に全は誰かの視線を感じ取ったのだ。

それに集中を切らされたという程ではないが、それでも気になってしまいペンがあまり進まなかった。

テストを提出した後、再び視線の元を感じ取ろうとしたが決まって視線の元を感じ取る事は出来なかった。

「一体、何だったんだろうな。あの視線は……」

『私の方でもサーチしてみましたが、探知は出来ませんでした』

《私もだな。というか、私は全と視覚を共有しているから見る事は出来ないんだが》

「そうだったのか。知らなかった」

全は自身のデバイスであるシン、自身に宿っている真耶と会話しながら家に到着する。

家のドアの鍵を開け、家に入った瞬間


カチッカチッカチッ……カ……チ…………カ…………………







――――――――何かの歯車が止まったような、そんな感覚を全は感じた。

と、同時に右目に様々なビジョンが浮かんでいた。

「がっ……な、何だ、これ……っ!?」

『マイスター!?どうかされたんですか、マイスター!?』

「ぐ、くそっ…………」

苦しみながらも全はその光景になぜかわからないが既視感(デジャブ)を感じていた。

るいを庇いながら、うつ伏せに倒れる自分。皆から魔法による攻撃を受けて倒れる自分。そして……シンを、自身の相棒たるシンを自身に突き立て、自殺する自分。

そのようなビジョンがいくつも浮かんでは消えてを繰り返していた。

そして、それらが終わる頃には全の額には汗が滝のように溢れていた。

「はぁっ……はぁっ…………い、今のは…………」

《全、今のは恐らく(アイオン)の眼の効果だ》

「アイオンの…眼……?」

確かにそのような能力を持ってはいた。だが、今回全は使用するプロセスを踏んではいない。だというのになぜアイオンの眼の効果が表れたのだろうか?

いや、そもそもアイオンの眼は少し先の未来を見る能力だ。今のような映像を延々と見せるような能力はない。

では、なぜ……?その疑問に答えたのは真耶だった。

《恐らくは(アイオン)の眼の真骨頂だろう。そもそも(アイオン)の眼は未来を見せる物ではないない。()()()()()()()()()()()()と、()()()()()()()()()()()()()()……それが、(アイオン)の眼の真骨頂なのだ》

「未来を選ばせる……?じゃあ、今俺が見たビジョンは……」

《恐らくは……これからお前が歩むであろう未来の一部だろう……》

「アレが、俺の未来……あんなのが、俺の未来なのか…………!?」

その事実を知り、全は愕然とする。あんなのしか、俺には未来はないのかと。

しかし、と真耶は続ける。

(アイオン)の眼は、未来を見せる……つまりは、確率の高い未来を見せるのだ。攻撃をされる未来を見せ、それで所有者はどうするかを判断する。防御して確実にダメージを抑えるか、喰らう覚悟を持って突撃するか、避けてカウンターを浴びせるか……今あげただけでも三つ存在する。これらはありえたかもしれない未来だ……可能性が低い未来でさえも可能性として存在する》

『?つまり、何がいいたいのですか?』

《ここまで言えば、全は分かると思うが?》

そう言って真耶は全を見つめる。先ほど、全は崩れ落ちるように両手を地面に置いている。が、その口元と脳は休む事無く動き続けていた。そして一つの可能性にたどりついた。

「…………どれだけ可能性の低い未来でさえも……(アイオン)の眼は可能性としてその未来を選択肢とする?」

《その通りだ、全。(アイオン)の眼とはすなわち、運命をその手につかみ取る力なのだ。どれだけ少ない可能性でも…………100万分の1という確率であったとしても……そのような可能性が存在する限り、(アイオン)の眼はその可能性をつかみ取る……それこそが、(アイオン)の眼の未来を選ばせる力なのだ》

そう、つまりはそういう事だ。つまり…………全が絶望してしまう未来ではなく、全が希望をもって日々を生きていく未来も小さな可能性かもしれないが、確かに存在している。その可能性がある限り、全が諦めずにその可能性を追求し続ける限り、(アイオン)の眼はその未来を必ず掴み取る。

それこそが、(アイオン)の眼が(アイオン)の眼たる所以なのである。

「じゃあ…………俺が、諦めさえしなければ、あんな未来は来ない…………?」

『そうですよ、マイスター!マイスターは幸せになっていいんですよ!』

「シン……ああ、そうだな……信じてみるよ、俺の幸せって奴を……」

こうして、全は決意を新たにし、最悪の未来を回避する為に動き出すのであった。
































さて、場所は移って全達がいるのは自室。そこで今後の事を話し合おうと思ったのだ。

「まず状況確認だが……真耶、あんた俺が見ていた映像見ていたんだろ?」

《ああ、確かに見ていた。お前が見ていた映像と寸分違わず同じだろう》

「その上で聞きたい…………今回の敵は、何を改変していると思う?」

『?何を改変っというと、過去ではないのですか?先ほど調べましたが、既に記録上では先ほどマイスターが説明してくれた通りの物になっていますが……』

全はまずシンに管理局にある今の情報と映像の中で見た情報の差異の確認をさせた。そして出た結論は同じ。つまり、先ほど何かが止まったかのような感覚に陥った時、既に改変されていたのだろう。

「そう、映像の中の俺は過去を改変していると思っていた。だが変だと思わないか?過去改変なんていくら神様と言っても不可能に近い。それこそ運命を司る神でもない限り……そして真耶はそんな事はしていない」

《そうだな、そんな事は断じてしていない。そもそも過去改変など簡単にやっていいものではないからな。ここまでの規模の改変など私の全盛期の力を持ってすれば不可能ではないが、それでも大量の力を使う事になる。故に、ありえない事なのだ》

『し、しかし現に変わっています。これは一体……』

シンにも分からないこの異様なる改変。しかし、全は既にある一つの仮説を立てていた。

「あるだろ、一つだけ。過去改変じゃないのに、皆の過去が改変されている。となれば残る答えは一つだけ」

《…………そうか、それならば確かに可能だ》

『え、え?あの私にもわかるように説明していただけると……』

「つまり………………今回の事件には、()()()()()()が関わっている」

『そ、そうか!過去改変ではなく記憶改変!確かに記憶を司る神ならばそうするのは容易!』

そう、今回の事件。全には敵は過去改変をしているというある種の思い込みがあった。しかしよく考えてみると過去改変などというあまりにも巨大な問題、並の相手に出来るのであろうか。

そして方向を転換してみたのだ。つまり、過去改変ではなくその過去に関わった人物の記憶が書き換えられているのではないかという事。記憶を司る神も確実にいるのではないかという事。

その事から今回の事件には神が関わっているという結論に至ったのだ。

「そして、恐らくこの世界にもその神に加担している奴がいる……あの映像の中でメリットを得ているのは一人しかいない。そいつが記録を改変しているんだろう。過去の記憶との差異を無くす為にな」

《高宮、だな。フェイト達は記憶を取り戻してからはあいつよりも全と関わることが多くなった。しかし、改変が起こってからはフェイト達は高宮の方へと行っていた。そして、最終的にお前の前に姿を現していた……何かしら関わっているのは間違いない》

「……………………そういえば、あの高宮が見せてきた映像」

と、そこまで考えた所で全はもう一つ、ある事実を思い出した。

映像の中で聖が決まって全に見せていた映像。あれは一体何だったのか?

だからこそ聞く。全は真耶ならば知っていると思ったから。

「真耶…………映像の中で高宮が俺に見せてきた映像……あれは、真実か?」

《……………………………結論から言えば、事実だ》

長い沈黙の後、真耶は事実だと伝える。しかし、すぐにだが、と否定する。

《あれはその前の事が重要なのだ。あの部分だけを見ればお前が悪いという結論に達する。しかし、その前を見ればわかる。あれは誰が悪い訳ではないのだ》

「…………その記憶が俺にないのは、何でだ?」

『マイスター。それは……』

《いいんだよ、シン。いい機会だ。もう全も大丈夫だろうからな》

と、姿見に写っていた真耶が同じく姿見に写っている全の頭に手を置く。と、現実の全にも何かが頭に触れている感覚に襲われ…………何かが、開かれる感覚もあった。

そして、全は思い出す。消された記憶を。月神東吾と上月東馬にある縁を。そして、自身がどれだけ愛されていたのかを………………。
























ここは、ある施設の訓練場。その訓練場にただ一人ぽつんと立つ一人の少年の姿があった。

彼の名は上月東馬。その身に神を宿している少年だ。しかし少年の瞳には光がない。

それもそうだろう。自身を鍛えてくれた師匠が自身を庇って死んだのだ。希望を持てる筈がない。それこそ仲間達の信頼でさえも疑ってしまう程に全は周りを拒絶した。

そんな中でも全は仕事をこなした。暗殺の仕事をこなし続け、今は次の仕事の前の一休みというやつなのだ。

そんな憔悴しきった東馬の元に歩み寄る人影がある。

彼の名は月神東吾。全に色々な事を教えてくれた人だ。そして妙に全に対して過保護な所もある。

それが何なのか全は分からない。でも全はそれを邪険に扱わなかった。なぜか懐かしい感じがしていたからだ。

そんな東吾が東馬の元に辿り着く。

「東馬君、そろそろ休んだらどうっすか?あんまり働きづめじゃ体に悪いっすよ」

「…………東吾さんには関係ないでしょ」

そう言って東馬は立ち去ろうとしたがその肩を東吾は力強く掴む。まるで行かせないと言っているかのように。

「いや、関係ない訳ない。俺たちはチーム、仲間っすよ。関係ない訳ないっしょ?」

「…………関係ない、でしょ」

「だから「うるさいっ!!!」っ!」

東馬は力任せに振りほどく。

「俺に、仲間なんかいらない!失う位なら、仲間なんかいらない!家族なんかいらない!!何も…………いらないっ!!!!」

その時、全を中心に何か得体のしれない力が巻き起こる。

そしてその余波を一身に浴び続けている筈の東吾は顔色一つ変えない。

「…………………………」

「東吾、一体……東馬!?」

「東馬君!?一体どうしたんですか!?」

「東馬!?」

東馬の仲間である双覇、メリル、そして美咲は訓練場にて謎の力を放出し続ける東馬と相対する東吾を見た。

「みんな、ちょっと離れててくれ」

そんな中、東吾は離れるようにと三人に言う。

「離れられるか!こんなになってんだぞ!?」

「そうですよ東吾さん!せめて私たちも!」

「来るなって言ってんだっ!!!」

「「「っ!!??」」」

三人は初めて聞いた。東吾の激昂する声を。それ程まで東吾には余裕がないのだ。

「俺が止める……大丈夫さ、必ず止めるからよ」

東吾はそう言って右腕を前に突き出す。そして言霊を紡ぐ。自身の中に眠っている存在を起こす言霊を。

起きろ(覚めよ)起きろ(覚めよ)起きろ(覚めよ)。我は望む、(暴力)を。我は望む、(トリックスター)を。我は望む、知略(智勇)を。起きろ、悪戯を愛する神、神を降す神、()()

言霊を紡ぎ終わった瞬間、美咲達は見た。東吾の隣に寄り添うように。否、まるで品定めをするかのように東馬を見つめる第三者がいる。しかもその人物は浮いていた。

《いやはや、久方ぶりに叩き起こされたから寝ぼけながらも来てみたが……こりゃまた、とんでもない時に起こしてくれたもんだな》

「協力しろロキ。東馬を助ける」

《えぇ~嫌だよ。あれは俺たち神を生み出したといっても過言じゃない神様だぜ?いくら俺が悪戯好きと言ってもあれには関わりたくないんだよ。興味本位で関わったら俺様死んじゃうもん》

「大丈夫だ、もしもの時は俺が受けるよ」

《…………ああ、なるほどな。お前がそこまで真剣になってる理由がよくわかったよ。()()()()()()()()()か。なるほどね…………いいぜ、死ぬ覚悟、しかと見せて貰った。力を貸そう人間よ》

「感謝するよ、ロキ…………東馬、お前を守ると姉さんに誓っちゃったんでな……だから、俺は勝手にお前を……救う」

そして、東吾にとって初めての救うための戦いが始まった。
















「今の、は…………」

全は愕然とした。なぜならば、東吾が神を憑依させていたからだ。しかも第二段階、神の顕現までやってのけている。

実は神憑きになるのに必要な段階という物が存在しており、完全な一体化を第三段階としている。真耶の場合は疲れるから現世に顕現はしないがそれでも真耶は可能だ。

そして東吾も顕現させた。しかも顕現させたのは、北欧神話の神ロキだ。神の実力は信仰値によって変わるとされている。(まあ、真耶は例外だが)

しかし、本当は違う。その神をどれだけの人間が知っているかによって変わるのだ。そしてロキは北欧神話やゲームなどでもよく出てくる有名な神。それ故にロキの実力は高い。

そして全が最も驚いた事。抱いていたガキ、姉さんとの約束…………それらから導き出される可能性は一つしかない。

そしてその答えを真耶は言い放った。

「そう、月神東吾。あ奴は……………お前の母である上月真白の、()()()だ」 
 

 
後書き
はい、実は東吾君は真白の弟でした。過去編で東吾が「まさか、そうなのか、姉さん」と言っていたでしょう?それは東吾君は前もって自分たちが襲撃されるかもしれないという事を真白から聞いていたからです。 
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