| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

機動戦士ガンダム・インフィニットG

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十四話「城を抜け出した赤い貴公子」

 
前書き
戦闘はありません。

ガトー少佐がタジタジすぎる~…… 

 
東京は、今日も多くの通行人で満ち溢れている。どこもかしこも人ごみでいっぱいだ。
会社へ通勤する社会人や休日を利用して出かける若者達。そして杖を片手に散歩を楽しむ老人たちも見受けられた。
中には、ド派手に髪を染め、ド派手な服を着たチャラ男やチャラ女も少なからず交えている。しかし、そんな分類のなかで一人だけ異例にちかい姿の人間がいた。
真っ赤な服に派手な仮面をかぶった青年、一見みればどこにでもいるコスプレイヤーと何ら変わらない格好であるも、彼から漂う風格だけは異様に違ったのだ……
「うむ……無事に日本へたどり着けたはいいが……」
落ち着いた、冷静な口調で顎を抱えながら周囲を見渡す青年。しかし、周りはやや痛そうな視線を送っている。
「やや、この姿では目立ってしまうようだな……むぅ?」
そんなとき、ふと自分と同じように……とはいえぬがやや目立った、独特の服装を来た同い年の若者たちが横切るのを見た。ここにいては、怪しまれるかもしれぬが、逆に怪しまれない場所もあるのではないかと?
「ほう……? 木を隠すなら森の中、目立った人間を隠すなら、目立った人間たちの中、ということか」
そして、それは何時しか見た興味深いイベントにつながりがあるのではないかと察した。
「行ってみるか……」
ほくそ笑んだ青年は、そのまま横切った彼らの後について歩き出そうとしたのだが……
「ちょっと君?」
「……?」
ふと、肩を突かれ振り向くと……そこには中年の警官が彼を制止させていたのだ。
「ちょっと質問してもよろしいかね?」
目の前で怪しくウロウロしている謎の派手な青年がいれば、声をかけざるを得ない。
「何か?」
「君、ひょっとしてコミケ行く人?」
「コミケ? うむ、聞きなれない言葉だ……その、コミケとは?」
「知らないの? じゃあ、どうしてここでウロウロしてたんだい?」
「いや……これ言って、特に理由は……」
「ま、とりあえずコッチに来てもらえる?」
「あの……私は特に怪しい者では……」
「いや、その格好がさ……?」
「失礼な。私は、シャア・アズナブル。ごらんのとおり``軍人``だ」
「はいはい、そんな派手な軍人はいないよ? じゃあ、署まで来てくれる?」
「あ、あの……」
何が何だかわからないまま、青年は警官に連れていかれて、後に警察のお世話に一時なってしまった。

ジオン公国軍・アクシズ基地にて


ジオン軍拠点ア・バオア・クーを中心に幾つかの各軍事施設があり、その中でも二番手の拠点の一つとして有名なのが、人工島基地のアクシズである。また、そのアクシズの指令を務める者が、軍内でひときわ人気のハマーン・カーンと呼ばれるニュータイプであった。所属している兵士たちは、もはや彼女を女神のように慕い続けているとのこと。余談であるが、そんなアクシズには何かしら「変人」ばかりが集う基地としても有名であった。

「ええい! 騒がしいと思えば、MSデッキで何をしている!? キャラ・スーン!!」
肩まで伸ばした青い髪をなびかせた美男子が、大股でMSのドッグへ現れた。彼こそがハマーン・カーンの一番のファン、マシュマー・セロである。彼は目の前で無断発進しようと暴れる赤いMSを目に怒鳴った。
「キャラ様ー! どうかお考えを~!?」
そんなマシュマーの後からもう一人の男もついてくる。マシュマーの部下でゴットンという男だ。
「MSが私を、私を……ああ、もう気持ちぃ~! 死んじゃう! 死んじゃうぞぉ~!」
赤いMS、Rジャジャはそう叫びながら何やら欲情しだす。
「各機、キャラ・スーンの機体を押さえつけろ!?」
マシュマーの命令に、周囲からやや旧式のMSザクⅢらが飛び出して、キャラが纏うRジャジャを取り押さえた。
「は、離せっー!」
キャラは暴れてジタバタするが、大勢のMSによって伸し掛かられれば、さすがの彼女も降参とくる。
「全く……世話を焼かせおって!」
溜息をつくマシュマーだが、それ以上にため息と共に怒りだすもう一人の士官が現れる。
「貴様らっ! そこで何をしているか!?」
束ねた銀髪を揺らす。険しい表情の士官。その風格は武士を思わす厳つい顔であった。彼の名は、アナベル・ガトー少佐。アクシズに続くもう一つの人工島基地「ソロモン」からこちらへ転属してきたマシュマーたちの指揮官である。
「ソロモンの亡霊」と呼ばれ恐れられた鬼神の彼が、わけあってこのアクシズ基地へと転属されたのだ。
「が、ガトー隊長!?」
厳格な少佐を目にマシュマー一同はピシッとしだした。ガトー少佐の片手には竹刀が握られている。
「マシュマー、ゴットン……今回は何をしでかした?」
と、二人をギロッと睨むガトーに対し、マシュマーは全力で首を横に振りながらRジャジャに指をさした。
「め、滅相もございません! キャラ・スーンがまたしても無断出撃をしだして……」
「そ、そうです! そもそも、なぜこのゴットンめも!?」
二人が必死で全否定する。
「やれやれ……」
再びため息をつくガトーは、ストレスを隠せなかった。これまで、数多くの生真面目な部下たちに恵まれてきた彼が、突如こんなトラブルだけを引き起こす兵士らの隊長となれば、さすがに気が動転しそうになる。
――まぁ……運よく出撃命令が出たのが不幸中の幸いか?
そう、彼らアクシズ第一小隊はハマーンの命令によりある任務が与えられた。
「キャラ! これより出撃するぞ!?」
ガトーが力いっぱい叫んだ。すると……
「何だって!?」
それを聞いた、キャラことRジャジャは、伸し掛かるザクⅢを怪力を出して振り払うと、機体を解除して、生身の身体を見せた。金髪の赤髪が左右縦に分けた派手な女であるが、そんな彼女が持つオバケ巨乳がガトーの顔面を直撃した。
「ガトー~! 大好きだよ? 愛してるぅ~!!」
「え、ええい! やめんか! 如何わしい……!!」
顔を赤くして、キャラの巨乳に顔をうずめられているガトーは慌てて叫んだ。
「んもうっ……つれないねぇ? 少佐は……」
「ハァ……ソロモンに帰りたい」
「ま、まぁ! 隊長、それよりその出撃とは……?」
と、ゴットン。
「うむ、今回は極秘ゆえに口では言えぬ故……」
ガトーはこの場で彼らに作戦内容の書類の入った封筒を渡した。かなり極秘な任務ゆえに参加する人間しか知ることを許されない。
しかし……
「な、何ですとっ!! キャスバル王子が行方不明に~!?」
ゴットンが叫んだ。
「こ、コラ! 静かにしろ!?」
慌ててガトーが制止させようとするが、それでも周囲は止めない。
ゴットンに続いて周囲の目も丸くなった。
「キャスバル様が家出なさったとォー!?」
「マシュマー! 黙らんか!?」
「キャスバル坊やが日本へ逃げ込んだ可能性が高いってことで、アタシらも日本に行って坊やの捜索するんだねぇ~!!」
と、キャラはメガホン片手に叫び回った。すると、そんなキャラのメガホンを聞いて周囲の整備士やパイロットたちは一斉にこちらへ振り向き、騒めいた。
ザワザワ……!
「貴様ラァ!! 極秘と言ったはずが何故こうも簡単に言いふらすのだぁー!! 特に貴様だキャラ・スーン!!」
ガトーがとてつもなく激怒した。しかし、そんな彼など無視して三人は日本の観光ガイドブックを見ながら雑談をかわしている。
「京都とかいいですよね!」ゴットン
「秋葉原も悪くないな!」マシュマー
「エステ!! エステ!!」キャラ
「お前たち……真面目に任務を遂行する気があるのか? 下手すればこの任務、ジオンの命運にかかわりかねない重要な任務なのだぞ!?」
「わかりました! この我々にお任せあれ!!」
マシュマーは歯を光らした。
「わ、わたくしだって!」
「ウォーミングアップにちょうどいいね!」
「う、うむ……胃が痛い」
任務に出向くとなれば話は別だ。ここは、切り替えてガトーは鬼神となる。
「……では、これより直ちに出撃準備をはじめ! 準分後に各自MSを装着!!」
と、ガトーは竹刀を振り回して「早くいけぇ!!」と、怒鳴り散らす。
「少佐ぁ~! お化粧し直さなきゃいけないから、あたしだけに十分多めにくれよ~?」
「ふざけるな! 出撃前に化粧などするアホがどこにいるかっ!!」
「ちぇ~……」
キャラに呆れて、ガトーは次第に胃が痛み始めてきた……
「全く……! 本当に軍隊と言えるのか? アクシズ部隊は!」
アクシズに派遣されて以降、毎日がこのように騒ぎが起きるため、ガトーのため息は止むことはなかった。
「……ソロモンに帰りたい」
ガトーはそうひっそりと空しくつぶやいた。

IS学園にて

「ねぇ、マリーダさんの好きな食べ物は何ですか?」
「何だ? 急に……」
学食にて、目の前の席で食事をするマリーダにそう問う一夏がいた。
「今日の休みを利用してマリーダさんと一緒に外出しようと思いまして」
「そういえば……臨海学校の準備をそろえないといけないだろ? 一夏」
「ああー、それもありましたね? でも、俺別に臨海学校で海水浴する気ないから海パンとか買いませんよ」
「なんだ、海が苦手なのか?」
「苦手っつーか……海岸って、IS主義の女性がいっぱい遊びに来てますから、トラブルに巻き込まれたくないしで、嫌なんですよ……」
「あー……それは同感だ」
「そこで、マリーダさんにアイスでも御馳走しようかなって」
「私に……か?」
マリーダは首をかしげる。
「ええ、いつも護衛してくれてお世話になってますし?」
「変な奴だな? 私は、普通に任務を行っているだけだが……日本人とは、みんなそうなのか?」
「少なくとも、いつもお世話になっている人にお礼をするのは基本ですから」
「ほう……?」
「で、もしこの後予定がないならご一緒しませんか? それに……お詫びもありますし」
「あ、そうだ! 一夏ァ……」
思い出したと、マリーダは静かに怒りを込み上げた。やはり、まだ気に障っているようだと、一夏は苦笑いである。
実をいうと、DG細胞に感染したラウラを助けるために無断で一夏達が向かおうとするも、一夏の出撃にマリーダは猛反対して彼の前に立ちふさがったが、彼女の背後にアムロがヌッと現れ、彼が抱えているハロの口から飛び出した麻酔銃の前にマリーダはバッタリと倒れてしまったのだ……
そのあと、士官のジンネマンに怒られたりなど散々な目にあったという……
「す、すみません! もうしませんから……」
「……まぁ、いい。だが、ああいう無茶なことは二度と行わないように」
「はい……」
「まぁー、その罰としてでだ。お前には特大のアイスクリームを私に御馳走させてもらおうか?」
と、マリーダはアイスクリームを思い浮かべて微笑んだ。こう見えて、有名なアイスクリーム店の広告だけはつかさずチェックしているらしい。
「とほほ……」
下手に言うんじゃなかったと、一夏は後悔した。

「よし……」
最後にリュックへハロを入れると、それを背負ってアムロは寮の部屋を出ようとした。
「あれ? どこ行くのアムロ?」
偶然にも玄関のドアを開けたところで明沙と落ち合った。アムロは、平然と行先を告げた。
「コミケ」
「ダーメ!」
「はぁー!?」
すると、これまでよほどのことがない限り威勢をセーブしている省エネ少年であるアムロも、この否定にだけはやや省エネから威勢とやらを開放してしまった。
「どうせ、露出度高いコスプレイヤーのお姉さんたちを見に行くんでしょ? それとも、二次元嫁の薄い本でも買うつもり?」
「……」
――やばい、見透かされてる……!?
「今日は、一緒にお部屋を掃除するって約束したじゃない!?」
「えぇ~!?」
「アムロの方が散らかってるでしょ?」
と、明沙はアムロの寝床側へ指を向けた。確かに、アムロの場所はぐちゃぐちゃに衣類が散乱したり、漫画やその他ホビーもバラバラ。一方の明沙は整理がしっかりと行き届いており整っているのだ。
「私も手伝うから、一緒に片づけしよう?」
「……」
しかし、僕はどうしても面倒くさいことからこれを拒んだ。そもそも、僕からしてそんなに散らかっているようには思えないぞ?
すると、僕はふと相棒のハロを抱えた。そして、ハロの後ろにあるスイッチを押す……
パカッとハロの口が開いて中から一匹の黒い何かが、ピョンと床に降下してカサカサと音を立てつつ明沙の足元を走り回った。
無論、それが何かを明沙は一発で突き止めると、か弱い悲鳴を上げて怖がり出した。
「あ、アムロォ~!?」
――今のうちに……!
僕は、ハロを小脇に抱えて玄関から部屋を後にしてその場を脱した。
「アムロ~! 助けてよ!? このゴキブリ何とかしてぇ~!!」
「ごめん! ごめん! 帰ったら何とかするよ?」
そう言い残して、アムロは寮を飛び出していった。
――フフフ! 作戦成功だな?
実をいうと、あのゴキブリは単なる玩具なのだ。ただ、動きがリアルなだけを除けば。
「いよっしゃあー! コミケに行くぞ? ハロ!!」
「ハロ! ハロ!」
ピクピクと耳を動かしてハロもご機嫌の様子だ。協力した後、ご褒美にアムロから最新のマイクロチップを買ってもらう予定なのである。

コミケ、そこは日本中、いや海外からの熱狂的なオタクたちか集まる神聖なるイベントの地である。開催拠点のドームは毎年オタクの人盛りでいっぱいだった。
「やっぱ何時来てもここはスゲーなぁ……?」
「ハロハロ!」
ハロも僕の趣味に影響されて何やら興奮状態にある。
「そうだな? まずは……写真撮影だ!」
と、僕はハロを構えてカメラモードに移行させる。ハロにはデジカメ機能も搭載されている。
僕は、とりあえず目の前に映る気に入ったコスプレイヤーを写真に収めていった。
「うわぁ……きわど~!」
やや、興奮気味の僕はここぞというショットを撮りまくった。しかし、そんな撮影の場になにやらオタク女性陣の黄色い悲鳴が飛び交っている。
「あの人! すごくない!?」
「素顔わからないけど、外人っぽいよね!?」
「イケメン~!!」
「何だ……?」
そんな、女性陣のほうへ僕は目を向けると。その向こうに叫ばれてる主を目撃する。
真っ赤な服を着、派手な仮面をつけた青年である。なにやら、オタク女子に囲まれて戸惑っており、ひたすら写メを撮り続けている。
時期に、勢いが止むと仮面の青年はこちらに気づいて、僕に向かって手招きしてきたのだ。
「よ、呼んでるのか……?」
あまり、関わりたくない雰囲気であったが、一様好奇心ゆえに僕は彼の元へ歩み寄ってしまった……
「君、少しいいかな?」
派手な仮面と真っ赤な衣装をまとった青年が迫ってくる。余計に気まずい……
「は、はい……何ですか?」
「ここが、コミケという場所なのかね?」
「はい、そうですけど……?」
「ほう……?」
初めてだろうか? だとしたら、先ほどの動揺は納得できる。
「……初めて、なんですか?」
「ああ、前々から興味があってな? 『コミケ』、というイベントなのだね?」
「まー……そうですね? ところで、コスプレイヤーの人ですか?」
「コス……? ふむ、周囲が着ている仮装のことを言っているのかい?」
「そうですよ? ほら、あの人とか人気アニメのコスチューム来ているんですけど」
「ほう? あの姿……私にも見覚えがあるぞ? 公国のテレビで見たためしがある」
「公国? ジオンの人ですか?」
「うむ! 私の名は、シャア・アズナブル。御覧のとおり``軍人``さ?」
「……」
――いねーよ、そんな軍人……
僕は心の中でそう地味に突っ込んだ。何処をどう見てもコスプレイヤーだろうが? しかし……こんな姿したアニメ、ゲームキャラは見たことがない。最近出始めたキャラなのだろうか?
だが、軍人と言われてみればその服装はまぎれもなくジオンの軍服そのものだった。真っ赤に彩られていたから一瞬「軍人」と聞いて凄い違和感があったが……
「そ、それで……シャアさんは、コスプレは初めてなんですか?」
「いや、いつもしている故慣れているさ」
「へぇ? じゃあ……」
もう、このへんでいいだろう。僕はそろそろお目当てのコスプレイヤーの撮影にでも向かおうとしたのだが……
「あ、待ちたまえ?」
「は、はい……?」
シャアさんが僕を呼び止めたのだ。
「もしよければ、私にここ一帯を案内してもらえれば助かるのだが……」
「え? 僕が……ですか?」
「いや、強制はさせんよ? 君には君の向かうべき場所があるのだからね?」
「……」
別に、これ言って探している薄本なんてないし、ぶらりとウィンドーショッピング的に回る予定だったっから、特に行きたい場所なんてない。
「……いいですよ? 僕でよければ」
「おお! それは感謝する」
こうして、僕はこの軍人だと自称する真っ赤なシャアさんにコミケを案内することになった。
コミケの会場内は、いつ来ても活気に満ちていて辺り一面同人誌だらけである。シャアは、そんな場所に興味津々であった。
「おお! これは素晴らしい……」
「同人誌っていう薄い本を売っているんですよ?」
「ほぉ……? 薄い本とな?」
「まー……全年齢もあれば、R指定の内容もあるので買うときは注意ですね? あとBLとかいう腐った内容のやつもあるからそこも十分注意してください」
「なるほど……」
シャアは、僕と会場一帯を廻って彼は気に入った本を数冊購入した。
「へぇ? シャアさんって、ロリ系が好きなんですね?」
「ああ……二次元というのか? まさに芸術だと私は思う。さらに、『妹キャラ』は神に匹敵する素晴らしさだと私は思うのだよ?」
「へぇ……」
――僕は、お姉ちゃんキャラが好きだけど……
そう、僕は姉キャラが好みなのだ!
しかし、二次元という次元を愛する同士を得て僕はとてもうれしかった。このシャアという人とはなんとなく共感できそうに思えたのだ。
その後も、僕らは積極的に趣味の会話に没頭した。そうしているうちにコミケを出てショッピングモールに向かおうとしていた。
「おいしい、お好み焼き屋があるんです!」
「何と! お好み焼きか……一度、食してみたい日本食だったのだ」
「じゃあ、今から行きます?」
「うむ、いい考えだ……!」
そんなとき、ふと通りかかった女子達に僕は声をかけられた。明沙やファじゃない。もっと嫌な奴らだ。
「あれ? アムロじゃない!」
凰とセシリア、箒、そして……ラウラだ。こいつ、強制送還されるかと思ったけど、DG細胞に感染されただけという理由で無罪放免になり、学園の生徒ととしてそのまま生活することになったようだ。こんな強化人間をよく野放しにできるよな? IS学園って……
「鳳……何だよ?」
「それはこっちの台詞よ? アンタ、コミケなんかに行ってたの?」
嫌そうな顔をする凰に僕は少し不機嫌になった。
「どうだって、いいだろ……?」
「ところで、一夏さん達を見ませんでしたか?」
と、セシリアが訊ねる。一夏、確か……マリーダさんと一緒に正門を出ていくところを見たな?
「ああ、確かマリーダさんと一緒に出ていくのを見たよ?」
「な、何だとっ!?」
箒が血相をかいて、僕の胸倉をつかむと激しく揺さぶりだした。
「何処へ行った!? 何をしに行った!? 答えろ!?」
「し、知らないよ! 一緒に出ていくのを見ただけだって!?」
「こ、こうしてはいられん……!」箒
「私にだまって、マリーダさんとなんて!!」セシリア
「あんの袖付きのアマァ!!」凰
「殺す……」ラウラ
すると、彼女らは僕らに背を向けるとすぐさま走り去ってしまった。おそらく、一夏を探しているのは間違いない。しかし、どうしてだ?
「騒がしい女性達だな?」
華やかではないと、シャアは機嫌を悪くした。
「ははは……一様、IS学園の生徒達です」
「まるで、礼儀の仕方がなっちゃいないな?」
「最近の女子って、みんなそうですよ?」
「私は、これでも女性を見る目は厳しいのでね?」
「同感です」
その後、僕は商店街でシャアとお好み焼きの食事会をした。慣れぬ手つきでお好み焼きを焼くシャアは実にお茶目に見えた。
食事の後は、シャアがとあるゲーセンに行きたいと言い出し、僕は彼と港で噂のゲームセンターへ出向いた。
僕は、普段ゲーセンは騒々しいから苦手なんだが、たまには気分転換に業務用ゲーム機にコインをつぎ込むのも悪くはない。
そして、シャアはキザな風格顔負けのテクニックで対戦相手の僕を圧倒した。
MSの対戦ゲームで、僕は何度もシャアに連敗を食らった。彼の繰り出す突進と共に腹部への蹴り込みコンボは伊達じゃない……
「シャアさん、強すぎですよ……」
「これぐらいでは、まだまだだな?」
「僕の完敗です……」
「ところで……アムロ君、その緑色の球体は?」
と、シャアは僕が小脇に抱えているハロを興味深そうに見つめた。
「ああ、僕の相棒でハロっていうんです。ハロ、挨拶しな?」
「ハロハロ!」
ニッコリと、ハロは元気に耳をパタパタさせる。
「ほう? ペットロボットというやつか?」
「僕にとっては、一番の親友なんです。そうだ! ハロ、写真だ」
「写真?」
「シャアさん、記念に写真撮りませんか?」
「うむ、いいだろう?」
僕とシャアは、二人並んでハロの自動シャッターでバーチャルアイドルをバックに一枚の写真を撮った。
「うむ、いい出来だな?」
シャアはその写真を見て微笑んだ。

「そう簡単には、見つからぬか……?」
新宿のど真ん中にて。白い半袖のワイシャツに黒いズボンを穿いた、いかにも夏のサラリーマンを連想させる姿でガトーは、捜索対象であるキャスバル・レム・ダイクンの写真を片手に、唸った。
「少佐~! こちらは手掛かりありませんでした~!」
タキシード姿のマシュマーが、バラを片手に駆け寄ってきた。
「貴様……目立たぬ服装にしろと言ったはずだぞ!?」
「何をおっしゃいます! これこそ、私の勝負服……ゴホン! 私の普段着であります!」
「後言を撤回して、前言を再宣言しろ?」
しかし、そんなガトーの後ろからキャラも戻って来た。クラブで踊るミニスカ女子のド派手な格好で……
「少佐! あたいの方も居なかったよ?」
「キャラ・スーン……! 貴様も、あれほど派手な服装は慎む様にと言ったはずだぞ!?」
「だってぇ~! これはあたしの勝負服なんだよ!?」
「マシュマーよりもストレートだな貴様! それよりか、私の説明を聞いていなかったのか!? お前たち!!」
「ガトー少佐~! マシュマー様~! キャラ様~! こちらには居ませんでした~!」
と、最後にゴットンが戻って来た。アロハシャツを着て……
「ゴットン、貴様まで……」
ガトーは、ついに怒ることすら呆れ、それどころか胃痛の限界に達してその場に倒れてしまった。
「しょ、少佐! お気を確かに!?」
マシュマーが抱え起こすと、ほか二人も慌てて駆け寄る。
「どうしたんだい!? 少佐!!」
「お体の具合がよろしゅうないようですな!?」
「もしや……日射病かもしれん! ゴットン! 体を冷やすものを、キャラは冷たい飲み物を持ってくるんだ!」
マシュマーの指示に二人は迅速に求められたものを用意しに向かった。
「ま、マシュマ~……」
わずかにも、ガトーは力を振り絞って意識を取り戻すが……
「おお! 少佐!! 気が付かれましたか!? 今すぐ治療を行います!!」
「マシュマー! ギンギンに冷えたミネラルウォーター買って来たよ!!」
と、キャラが1リットルのミネラルウォーターが入ったペットボトルを抱えて戻って来た。
「デカしたぞキャラ! さぁ、早く少佐に!?」
「ま、まて! キャラ……」
ガトーは日射病でないことを伝えようと口を開けるが、その口は即座に1リットルのペットボトルとその水にふさがれてしまった。
息苦しくもがくガトーに容赦なく注がれるミネラルウォーター……さらにその勢いは増すことなく、後方からゴットンが荷車を引いてこちらに走ってくるではないか? その荷車の中には大量の氷が山盛りになって敷き詰められていたのだ。
「皆さま~! 港へ行ったら、大量の氷が手に入りましたよ~!?」
「おお! ゴットンもよくやった!! よし、最後の仕上げだ!!」
すると、三人はガトーを持ち上げて、荷車に詰められた大量の氷の山へガトーの身体を勢いよく放り込んだのだ。ガトーは、氷の中でスケロク状態であった……
「あ! キャラ、これは水じゃないぞ!? 炭酸水だ!!」
マシュマーは、キャラが買ってきたそのペットボトルが足元に転がり、それを見ろおしてハッとした。さらに、ゴットンの持ってきた氷も、やけに冷気が濃く燃え盛っているではないか。
「ご、ゴットン……もしや、これは『ドライアイス』なのでは?」
顔を青ざめて、マシュマーは恐る恐るドライアイスに上半身をさかさまに埋めるスケロク状態のガトーを今一度見つめた。
「と、時が見えそうだ……」
一時、ガトーは生死の淵をさまよったらしい。

「では、いただくとしよう!」
笑みを浮かべてマリーダは、目の前のアイスを頬張った。
真っ白なジャージ牛のバニラに、甘酸っぱい七種類の果物ソースがたっぷりと、ふんだんに絡められているその光景は正に虹を連想させることで、「アイス・オブ・レインボー」という名前で親しまれている。当店一の人気メニューであり当店一の高額な一品でもある。
「とほほ……」
小遣いが一瞬でアイスに代わってしまったことに、一夏は悲しみをかみしめた。
「うむ! 久しぶりに食べられてよかった。やはり、つかの間のスイーツタイムは格別だな?」
「そうですね……」
しかし、一夏はそれどころじゃない。そんな彼を見てマリーダがスプーンでアイスを真っ二つに分けだした。
「ほら? 一夏も半分食べろ? このアイスの美味さを実感すれば、そんな顔など吹っ飛ぶぞ?」
「じゃ、じゃあ……」
一夏は、半分こしてくれた自分側の部分を一口巣くってそれを口の中へ運んだ。
「あ! おいしい……! これ、凄い美味いですよ!?」
「だろ? 食べて正解だったじゃないか?」
「はい!」
だが、そんな光景を誤解して監視していた数人の少女らの影が看板の裏から見えた。
「あの女……!」箒
「くやしい~!」セシリア
「おのれ! ジオンのメスネコォ~……!」凰
「袖付きめ……!」ラウラ
怒り狂うヒロインたちに気づくことなく一夏は堂々とアイスを頬張った。ちなみに、マリーダはこの気迫に感づいていたものの、下らん嫉妬と誤解だと受け止めて無視することにしたそうだ……
「あ、そういえば……マリーダさん?」
一夏は、今後の予定でふと思ったことがあった。
「どうした?」
「臨海学校……マリーダさんも行くんですか?」
「そうだな……お前たちの滞在期間は、その臨海合宿が終わったまだな? それなら、私も最後の任務として護衛にあたろう」
「そうですか……なんか、身近い間でしたけど凄い寂しいです」
一夏は、ションボリしてマリーダといられる時間をもっと欲した。しかし、そんな彼にマリーダは優しく微笑んでこういう。
「永遠に会えないわけではない。また、会いに行けばいいだけだ。後で私のパソコンのメールアドレスを教えてやろう」
「え! マリーダさんのメル友になってもいいの? 俺」
「構わん。今まで、一番親しく接してくれたのは、お前が初めてだ。一夏だけなら心を許すのも大丈夫だとな?」
「ははは! なんだか……マリーダさんって、姉みたいな感じがして、俺もなんだか親近感がわいちゃうっていうか……」
「姉? 織斑千冬がいるではないか?」
「……」
すると、一夏はその名を聞いてドッと表情を暗くした。
「あの人は……ちょっと、ね? 身内なのは確かですけど、凄い苦手なんです」
「ほぉ……」
――確かに、千冬女史の気配は不愉快さが強いからな……
失礼だが、弟の織斑一夏の詳細な情報も調べているので、この姉弟がどういう関係なのかもわかる。
「マリーダさんは、外見はウチの姉と同じようですけど、中身だけは……心だけは、なんだか好きなんです。正に弟を心配してくれる母性にあふれた姉っていう感じがして」
「一夏……」
「すみません! 変なこと言っちゃって……さて、アイスも食べ終わった事ですし次は何処へ行きますか?」
いつのまにか、ケロッと笑顔になった一夏はマリーダの手を引いてこの場を後にした。
「て、手を握った……!?」凰
「私なんて、まだ握手さえも……!」セシリア
「おのれぇ……!」箒
「ゆるざん……!!」ラウラ

気が付けば、夕暮れ時であった。僕とシャアはオレンジ色に染まる道を歩いている。
「今日は、実に楽しい時を過ごせたよ?」
「それはよかったですね? また、遊びに来てください」
「うむ、今度はもっと日本中を観光したいな!」
そのとき、二人の背後から「キャスバル様!」と叫ぶ何者かの名を叫ぶ声が聞こえた。
僕が振り向くと、そこには……善心包帯だらけの厳つい男がこちらを見ている!?
「だ、誰なんですか……?」
僕は、不審者を見るような目で男を見る。ちなみに、彼の周囲にはタキシード来た人や、派手な服着た人や、アロハ来た人とか……しかも、それぞれに頭上へ巨大なタンコブが腫れている。
「あ、警戒しないでくれ? 別に、怪しい者ではない」
と、包帯男はそう言ってシャアの元へ歩み寄った。
「……キャスバル様? お迎えに上がりました。私共と公国へ帰りましょう?」
包帯の男は、そうシャアに問う。しかし、このキャスバルという名前に、僕は途端に目を丸くしだした。
僕の知っているキャスバル一人しかいない。あのジオン公国の若き皇太子、キャスバル・レム・ダイクンである。
「しゃ、シャアさんって……もしかして!?」
「……騙したりして申し訳ない。しかし、君との時間は本当に楽しい一時であった。この記憶を忘れないよう、大切な思い出として扱おう」
シャアは、僕に背を向けるとその身は光に包まれて赤いザクⅡの姿に代わり、包帯男らの陣へはいった。時期に、彼らもジオンのMSへと姿を変えて、夕暮れ時の彼方へ旅立ってしまった。
「……」
そんな、始終を僕はぼんやりとなだめ続けた。いやはや、世の中は時に驚きと衝撃の出来事もあって、僕の心臓に悪いや。
まさか、あのキャスバル・レム・ダイクンと親しく友人のように互いの趣味を熱く語り合いながら、楽しい時間を一緒に過ごしたなんて……明日、みんなに自慢したってきっと信じてくれないだろうな? いや……
僕は、ハロを抱えてシャアことキャスバルと撮った写真を見た。これが証拠だ。でも、やっぱり内緒にしておこう。
「さて、帰るか……」
帰って明沙にみっちり説教されるだけが落ちかも……
僕は、このあとトボトボと学園の寮へ帰った。案の定、明沙にみっちり説教されて夜遅くまで部屋の片づけを一緒にすることになった。

ジオン公国、キャスバル宅にて

「王子! 今までどこへ行かれていたのですか!?」
護衛のラルが血相を書いて駆け寄ってきた。
「なに、ちょっとばかし日本でMSの慣らしをだな……」
両手を後ろに組み、カーペットが敷かれた長い廊下を歩くキャスバルにラルは焦りをやめない。
「心配したのですよ!? 私めの血圧が上がってしまいますよ~!!」
「ラルには心配をかけたな? すまん。ところで……なぜ、私が日本にいるのがわかったのだ?」
「ああ……それは、フラナガン博士のところのお嬢様が、王子の居場所を見つけてくださったのです」
「なんと! あの少女が……?」
キャスバルは、立ち止まった。確か、ニュータイプ研究所の最高責任者フラナガン博士の助手としてでも活躍しているあの少女を、シャアは思い出したのだ。
「確か、ララァとかいったな?」
シャアは口元を緩ませる。

MS学園会議室にて

「ドイツがDG細胞を独占した証拠は見つからなかったそうです」ユウ
「やれやれ……そんじゃあ、いったい誰が犯人なんだかねぇ~?」スレッガー
「OZの方も知らねぇんだとさ?」エイガー
「バルチャーやジャンク屋共が偶然拾ったという可能性も否定できないが……」バニング
「とりあえず、今後もIS委員会への警戒を怠らぬよう……そういえば、IS学園へ派遣した学徒と教員らの最終課題は?」レビル
「はい、7月の臨海合宿が最終課題です」シナプス
「そうか……うむ、今後はより警戒を強め、監視と任務を続けるように。
それと、現在アムロ君が乗るオリジナル・ガンダムに関して嶺博士から御話があるそうだ」レビル。
「皆様、今回はこの場をお借りしてご説明したいことがあります。今後行われる臨海合宿において、専用追加装備を着用した改良型ガンダムを模擬演習に参加させるようにとの指令が連邦政府より下りました。よって、オリジナル・ガンダムに追加パーツを装備させた改良機に代えたいのでありますが……教員の皆様から同意を得たいのです」
実の息子をテストパイロットにするということはわかっている。しかし、あくまでも模擬演習ゆえに心配はいらない。
教員からも同意は得られ、テムは追加装備を施され、より強化されたガンダムの改良機である名を紹介した。
「その名は、パーフェクトガンダム!」 
 

 
後書き
次回
「トンネルを抜けた先にはパーフェクトガンダム!」


~どうでもいいようなコーナー~

「サンダーボルトって、面白いよな?」
「MS装備が派手だけど、ザクのパイプやジムの関節にカバーあるとか、結構いいよね? 俺的にはツボだけどさ」
「絵のタッチも、リアル感ましてていいよね? まさにガンダムって感じでさ?」
「まぁ、深夜アニメやラノベタッチの画じゃリアル感ないからね?」
「おれ、コミック四巻まで読んだ。改めてサイコザクがカッコいいって思ったよ?」
「あれって、MSVを思わせる感じだよね? サイコザクがジョニーのザクと色が被るし……」
「そうだね? あと、ガンダム勢も負けていられないよ。イオが新しいガンダムで、たしかアトラスガンダムっていう斬新な機体が出てきて」
「そういえば……あの、アトラスガンダムって機体。顔がどこかのガンダムと似てたような気がするんだよな~? 知らない?」
「いいや? オリジナルじゃね?」
「でも、なんか前に同じような顔つきのガンダムを見たことがあるんだよ?」
「う~ん……そういわれてみると、何となくあったような、なかったような……」
「思い出せそうで思い出せないな~?」
「……何だっけ?」

余談
このあと調べてみたら、SDガンダムの「ガンダムMkⅣ」だとわかりました。リアル頭身は似ていなくても、SDの二頭身の頭部がなんとなく似ているように見えただけでした…… 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧