機動戦士ガンダム・インフィニットG
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第十五話「トンネルを抜けた先にはパーフェクトガンダム」
前書き
臨海学校らへんですな。
アムロ宅にて
日曜日、僕は一夏達とゲーセンに誘われたのだが、急に父さんに呼び出しを食らってしまい、しぶしぶと久しぶりの自宅へ帰ってきた。
「父さん……何だよ? 急に呼び出してさ?」
居間のソファーで寛ぐ僕は、不機嫌な態度で父さんに問う。
「いやな? 今日は、前もってお前に言っておきたいことがあるんだ。とりあえず、ハロを私に預けなさい?」
「ハロを?」
「ハロに収納されているガンダムを、改良したいんだよ?」
「ガンダム? でも、どうして?」
「ガンダムの専用追加装備の開発が終わってな? その試験動作を確認したいんだ」
「へぇ~?」
「数日後行われる臨海合宿で、そのガンダムの改良機をテストしたいんだ」
「でも、それじゃあ僕は……」
「アムロ、ガンダムの持ち主であるお前がテストパイロットだ」
「僕が?」
ソファーから立ち上がって驚いてしまった。
「当たり前だ。第一、あのガンダムはお前しか動かせんだろ?」
「そうだけど……」
「安心せい? 改良機を乗り回すだけでいい。とりあえず、ハロは借りていくぞ?」
と、父さんは僕のハロを抱えて家を出て行ってしまった。
*
それから……数日後、僕はIS学園の生徒や一夏達とは別に臨海学校の浜辺へ先回りしていた。浜辺には、この暑さにもかかわらず白衣を着た父さんが待っていた。
「おーい! アムロ? こっちだ」
パラソルの下で寛ぎながら僕を出迎えた父さんと、彼の隣にはハロが転がっている。
汗が顔に浮かびながら、僕は頭上からの日差しと暑さに目を細めて父さんの元へ歩み寄った。
「こんなにあっついなんて聞いてないよ?」
「じゃあ……制服なんか着てこなければいいだろ?」
「この後、学校の連中と落ち合うんだから制服きなきゃだめだろ?」
「今日だけお前は欠席扱いなんだぞ?」
「え!? それ早く言えよ!?」
だったら、わざわざこんな長袖の制服を着る必要なんてなかったし、しんどい合宿なんか受けることなくこの砂浜でバカンスできるじゃないか!?
「じゃあ、アムロ? ハロを使ってガンダムを展開させてみろ」
「ああ、うん……」
僕は、ハロを拾上げてガンダムを展開させた。ハロが巨大な光に代わって僕を飲み込み、そして徐々に僕はガンダムの形に代わっていく。いつもなら光が消え去った後に従来の白いフォルムを纏うガンダムに変身できるのだが、今回だけはそのガンダムに新たなアーマーパーツが追加された姿に生まれ変わっていた。MSでいう、防御力と迎撃力を高めるために追加装備を備えた重武装使用、「フルアーマータイプ」というものだな?
「……これって、『フルアーマーガンダム』か?」
「ちがう! 『パーフェクトガンダム』だ!!」
「ただのアーマー装備だろ……」
「そのへんに転がってるMSと一緒にされては心外だな? このパーフェクトガンダムは、
強襲戦としての重火器はもちろん、専用に作られたパーツで各部の耐久性、さらには死ぬはずである機動力を何倍にも上げ、飛行機能はそのまま生かしてあるのだ。また、通常のMS以上のミノフスキー粒子量で濃度も上げている。それと、大量のミノフスキー粒子を応用して『Iフィールド』も搭載できるようになったんだぞ!?」
胸を張って、父さんはこう言い出す。僕は目を丸くした。
Iフィールド、それは対ビーム無効化機能。厳密にいえばバリアではないが、ミノフスキー粒子によってビーム兵器を弱らせる効果を応用して作り上げた防御兵器だ。
しかし、これはかなりのエネルギー量を持ち合わせた戦艦や、戦艦並みの非人型MS兵器「モビルアーマー」でないとIフィールドを搭載できるほどの容量は一般のMSにはない。
しかし、それでもやってしまうのが父さんの凄いところで、逆に恐ろしいところだ……
「ガンダムにIフィールドを!?」
「だから言ったろ? 『パーフェクトガンダム』だと!!」
「恐ろしい意味でパーフェクトだよ……」
フルアーマーなのに機動力を上げ、さらにはIフィールドまで搭載してしまうなんて、これでISと模擬戦やれってか? だとしたら、単なる弱い者いじめをすることになってちまうな……
――ま、いっか? 日ごろの恨みもあるし、ここいらであの女子共をボコっとくか?
と、僕は無責任にもそう決めた。
それからしばらくして、父さんの解説を聞き終えると、僕はようやくこのP(パーフェクト)ガンダムの試験操縦に取り掛かった。
かといって、これまでのガンダムと同じ感覚だ。ほんの少々、じゃじゃ馬感があるも時期に慣れればいつも通りか、それ以上に反応が鋭く、よりスムーズに動ける。
「アムロ! そろそろ、時間だぞ?」
すると、父さんは腕時計を見て僕にそう叫んだ。
「時間って?」
「デモンストレーションだ!」
「で、デモ……?」
僕は首を傾げた。
一方、海沿いの道路を走るはIS学園のバスだ。そのうちの一部の席にはMS学園の生徒たちと、その教員たちも紛れている。今回が、IS学園で過ごす最後のイベントであるのだ。ゆえに、MS学園の……特にジュドーと教員とフォルドは鼻の下を伸ばしながらデジカメを首にぶら下げて座席に座っていた。
「楽しみだなぁ~! 海水浴だぜ!? 海水浴!!」
フォルドは、大人顔負けのはしゃぎ様で周囲の視線の的になった。
「フォルド……あんまり目立つなよ?」
「そうよ? また、ISの教員たちにイチャモンつけられるハメになるんだし」
隣に座るルースとミユは呆れ果てた。
「ジュドーも、変な真似するなよ?」
と、カミーユも隣でカメラを抱えるジュドーに注意した。
「わかってるよ! でも、少しは楽しんだっていいだろ?」
「どういう楽しみ方だよ? 普通に休憩時間の海水浴を楽しむレベルならいいけど……水着を着た女子たちの写真を撮って、ビーチヤやモンドに高く売り飛ばそうとしているんじゃないだろうな?」
そう、目を補足して疑い深く問うカミーユに、ジュドーはギクッと表情を現した。
――図星かよ……
呆れてものが言えないと、カミーユがため息をついたとき。突然バスの後部席から女子同士の言い争いが起こった。
「ちょっと! 何よ!? もういっぺん言ってみなさいよッ!?」
「ええ! 何度でも言ってあげるわ! 女のくせしてMSなんかに乗るんじゃないわよ!!」
「言ったなぁ~! この傲慢差別ビッチ!!」
「な、何ですってぇー!?」
金髪のポニテ女子と、ISの生徒が互いに口論になっていた。二人の内、ポニテ女子は三日前からIS学園に入ってきたMS学園のパイロット科の女子生徒でジュドーたちの悪友の一人、情報屋のエル・ビアンノである。愛機はガンダムマークⅡだ。
「ちょっと! 二人とも、やめなさいよ!?」
そして、仲裁に現れたもう一人のMS側の女子生徒、青色の分け髪のロングヘアーの少女で名をルー・ルカ。
実をいうと、ジュドーやエルたちはシャングリラで元ジャンク屋兼泥棒家業を営んでおり、IS社会の到来によって孤児になった彼らはMS以外にもISを盗んだりといろんな悪行を重ねており、偶然にもZZガンダムや他のガンダムタイプのMSを盗もうとした際に偶然にもジュドーたちはそれらの機体を展開、誤って自機を正式登録してしまい、現在に至っている。
一方のルーは、ジュドー達とは違って一般市民の少女だ。男女平等に親しく接する少女で、何よりもIS社会を毛嫌いしており、それが理由でMS学園のパイロット科への道を選んだ。今となっては、ジュドーよりかは行かずとも、シャングリラの代表候補生である。ちなみに彼女が駆る乗機は専用の青色でカラーリングされたゼータガンダムの再設計機、量産機のゼータプラスだ。
こうみえて、エルとルーはよくケンカする仲であるが、以外とお互い認めある良きライバルで、良き親友でもあるのだ。
「聞いてよ? ルー! コイツが、私たちを『女の皮を被った変態男子』って言ったのよ!?」
と、エルはルーに言うと、ルーは呆れたため息をついた。もちろん、その溜息はエルにそんな罵声を浴びせたIS生徒の方へだ。
「あのねぇ? 別に私達は、友好的に接しようとしているのに、どうしてそんなこと言うのかしら?」
ルーも、先ほどエルがこの生徒へ親し気に話しかけてくるのを見かけた。にこやかにエルが人懐っこく隣に座る生徒に話しかけたのだが、生徒は無視し続けるばかり。それどころか先ほどの悪口を彼女にぶつけてきた。もちろん、態度的には生徒側の方に非がある。
「アンタには関係ないでしょ! そもそも、MSに女が乗るなんてありえなくない!?」
「その言葉、そっくりアンタに返すわよ!」
「み、皆さん! 喧嘩はやめてください……」
と、新たに四人目の乱入者が現れる。彼女らよりもやや小柄な少女。ジュドーが溺愛する妹、リィナ・アーシタである。所属はオペレーター科で、兄のジュドーをオペレートしているのだ。今回は、自分よりも先に行ってしまった兄を心配して自ら今回の活動に志願したという。何度でもいうが、兄であるジュドーからは溺愛されている。
「こらこら! 何の騒ぎだ!?」
騒めきを感じて、マットがこちらへ駆け寄ってくる。
「先生! この娘が、私たちがMSパイロットだからって馬鹿にするんですよ!?」
エルが訴える。
「まぁ、みんな仲良くしなさい! 君も、いい加減にしないと千冬先生が見てるよ?」
と、マットはIS生徒へ振り向くと、それに返すことがなくなり、彼女は大人しく座席に座った。
「エルさん、そう気分を悪くしないでくださいね?」
先ほどの口論で、もっとも気分をが害したエルにリィナは気を使った。
「んもう! やになっちゃう!! どうして、女子がMSにのるだけで、あんなにもいわれなきゃならないのよ!?」
そんな、彼女の愚痴にリィナは苦笑いするしかなかった。
「……にしても、リィナちゃんも大変よねえぇ~? どうして、あなたがこの特別授業に志願したの?」
と、今度は逆にエルから問われる始末。
「だ、だって……お兄ちゃんがいつ暴走しちゃうか心配なんですよ」
「あー……ジュドーか? まぁ、アイツならいつ問題起こしたっておかしくはないからね?」
「このままお兄ちゃんを放っておいたら……ある意味で『地球の重力に魂を引かれた人』になりそうで怖いんです」
「どこで習ったの? そんな哲学……」
その後、一行はようやく目的地の臨海合宿地に到着した。生徒たちは、真っ先に休憩時間を与えられると、解放したかのように一斉に水着姿になって浜辺を駆けだしていった。
「おお~! これこそ、楽園だな!?」
双眼鏡で目の前の眩しい光景を見渡す該はよだれを垂らした。
「該、俺たちは合宿に来たんだぞ?」
後ろから隼人がため息をした。
「そーいえば……アムロのやつ、欠席って聞いたから可哀そうにな?」
と、一夏が周りの風景を見てそうつぶやいた。水着を着た女子たちの眩しい姿が広がっているというのに、それを見ずにして風でも引いたのだろうか?
「あー、アムロのやつなら親父さんに頼まれて改良されたガンダムのテストパイロットをやってるっていうぞ?」
「え! アイツが!?」
隣でジュドーが言った。情報屋の彼だからその内容が正しいのであるが、あのアムロがテストパイロットに選ばれるなんて……本人には失礼であるが信じがたい情報である。
「アムロ……」
いや、それ以上にかわいそうなのが明沙である。ようやく勝負水着を着てきたというのに、アムロが居ないということで、先ほどから砂浜をつっついていじけている。
恥じらいを押し殺して、ピンクの紐パンを選んだというのに……
「ユーマ! 早く来て来て!!」シャル
「よっしゃー!」ユーマ
「一夏、一緒にかき氷を食べに行かないか?」マリーダ
「そうですね!(マリーダさん、水着じゃなくってワンピかよ……)」一夏
目の前を騒ぐカップルを見て、ふいに明沙は胸が苦しくなる。
――でも、仕方がないよね……?
家の事情なら、ましてや彼の父親の事情なら仕方がないのだと、そこは切なくも割り切ることにした。
だが……
「……ん? なんだ?」
隼人が、何らかの轟音を耳に頭上の空を見た。太陽を背に何らかの機影が徐々に大きくなっていく。
「MS……?」
至る箇所に装備された豊富なアーマーに身を包んだそれは、まぎれもなく「ガンダム」であった。それもアムロの機体である。
「あ、あれって……!」
カミーユは目を丸くする。
「間違いない……アムロだ!」
ジュドーはサングラス越しに見上げて叫んだ。
アムロの纏うガンダム「パーフェクトガンダム」は、周囲の浜辺の砂を撒き散らして轟音と共に着陸した。
「よっ!」
パーフェクトガンダムから聞こえるアムロの声に、一同は騒然とした。それと同時に全員が砂まみれの状態である。
「ちょっと! 少しは周囲のこと考えて登場しなさいよアムロ」
砂まみれになったエルが出てきた。すると、アムロは苦手な女子が出てきたとガンダムの顔が青ざめた。
「ゴメンゴメン、父さんに言われてデモンストレーションしに来たんだよ」
パーフェクトガンダムを見せびらかしてこい! と、父さんに言われたのだ、つまりこれがデモンストレーション……子供っぽいというかなんというか?
ガンダムの頭部をボリボリとかくアムロは、申し訳なさそうに言った。すると、次にエルが何事かと駆けつけに来る。
「ちょっと! どうしたのよ?」
ルーが騒ぎを聞いて駆けつけてきた。
「アムロの仕業よ?」
エルが振り返って答えた。
「ああー……」
またかと、ルーはいつもの事のように流した。ちなみに、エルとルーは中学生のころからアムロとは同期であり、中学時代から問題ばかり起こすアムロのことは嫌というほど知り尽くしている。
*
「いったい、何の騒ぎだ?」
黒ビキニを着た千冬が砂まみれになって出てきた。そして、またアムロの仕業と知ると溜息をついてスルーした。ああいう奴はMS側の教員に任せるよりない。
そんな時、ふと彼女の背後からある二人の声が聞こえた。
「ユーグ先生? かき氷を持ってきたぞ?」
紫のビキニを着たマオが、ビーチで寝そべるグラサン越しのユーグへかき氷を持ってきた。
「ああ、ありがとう……いただきます」
フルーツシロップがふんだんに染み込んだ美味そうなかき氷をユーグは頬張った。
「私の国が誇る台湾かき氷だぞ?」
と、マオ。余談だが彼女は台湾の出身者だ。日本と台湾のハーフらしく、国籍は台湾になっている。また日本文化が好きであり、今宵は肩だしの勝負着物を着てユーグを悩殺するつもりである。
「へぇ……台湾には、こんなに美味いかき氷があるんですね?」
「うむ! 特にマンゴーソースがお勧めだぞ?」
ビーチに、台湾の国外チェーン店があってよかったとマオは心の中でガッツをした。
「……」
そんな二人のやり取りを、遠くから見つめていた千冬は、徐々に表情を険しくさせた。
――何なんだ、あの女は……!
小脇に抱えるビーチボールに力を籠めると、彼女はこのまま二人の元へ歩み寄った。
「……マオ先生?」
「……?」
いいところだったのにと、イラつくマオはビーチボールを小脇に抱えて仁王立ちする千冬を見上げた。
「何か?」
「人数が不足しているんです。よろしければ、ビーチバレーに加わっていただけませんか?」
「遠慮致します。私はスポーツは苦手なのでな?」
「オペレーターゆえに、体を動かすのは苦手……ですかな?」
「なに……?」
その声に、マオはギロッと千冬を睨んだ。すると、マオは立ち上がって負けじを言い返す。
「そこまで言うのでしたら、受けて立とうではありませんか?」
「フン、面白い……!」
「あ、あの……」
そんな二人からドス黒いオーラが流れ、とてもじゃないがユーグが割って入る感じではなかった。
その後、両者の強烈なアタックが炸裂し、結果は引き分けとなった。
「ユーグ先生……」
汗だくになった身なりを整えた千冬は、間を練って先ほどのように寝そべるユーグの元へ歩み寄る。
「……?」
「少し、御話がしたいのですが……?」
ユーグは、何も答えなかったがゆっくりとその身を起こして立ち上がった。
「ユ、ユーグ先生……!」
マオが引き留めようとするも、ユーグは彼女に微笑んで「すぐに済ませます」と、一言いい残してから千冬の元へ行った。
「……ユーグ先生? いえ、ユーグ教官」
「その呼び名で言うのは慎んでいただきたいのですが?」
「しかし、私にとって貴方は今でも私の教官です!」
「あの時と同じじゃない。今の貴女は私と同じ教員だ……」
「ユーグ教官……なぜ、何故私にそのような態度をするのですか!?」
耐え切れぬ千冬はそう叫んだ。
「織斑先生……あんたは、何故『IS』を選んだのですか?」
「……?」
ユーグの問いに、千冬は首を傾げた。
「何を言って……」
「私が言えることは以上です。『白騎士・織斑千冬』……」
「ッ!?」
その一言に、千冬は目を見開き、彼女に背を向けて戻るユーグへ振り返った。
「な、何故それを……!?」
「言ったはずだ。私が言えることは何故『IS』を選んだのかと……」
「織斑一夏!」
「ああ?」
何やら、ラウラが黒ビキニを着て叫んでいるため、一夏は面倒な顔をして振り向いた。
「いーちかっ!」
と、突然彼の背に強烈な飛び蹴りが襲った。犯人は凰だ。
「い、いてて……何すんだよ鈴!?」
「私のもみなさいよ! なにボーっとしてんのよ!?」
「いいだろ? 俺は海水浴なんて大嫌いなんだ」
「一夏さ~ん!」
次はセシリアが駆け寄ってくる。そんな彼のハーレムぶりをみて、ジュドーは嫉妬の目を向けてこうつぶやく。
「リア充爆死しろ……」
ちなみに、学園一のガキ大将の自分は当然モテたためしなんてない……と、思っているだけで本当はエルやルーから思いを寄せられていたりする。
「ジュドー!」
「こんなところにいたの?」
黄色いハイレグを着たエルと、青色のビキニを着たルーが駆け寄ってきた。あとスク水を着てくるリィナもいた。
「お兄ちゃん? さっきフォルド先生がいやらしい顔して呼んでたよ?」
「あんまし行きたくねぇな……って、リィナ!!」
「な、なに?」
「何じゃない! なんだ、その如何わしい水着はぁー!!」
「えっ? 別に学校のだよ?」
「なおさらダメだ! ロリ体系でスク水は反則なんだ!! お兄ちゃんには耐えられない!! リィナの身体が、『地球の重力に魂を引かれた』人間たちにいやらしい目でなぶる様に見られるなんて~!!」
「お兄ちゃんもそのうちの一人なんだけどね?」
「ところで、何してんのよ? ジュドー」
と、エル。何やらジュドーは一眼レフで何かを撮影しているように見えた。
「ああ、これ? ビーチの天使たちを撮りまくってるのさ♪」
「あーそゆこと? 呆れた!」
どうせそんなことだとエルとルーは呆れた。だから、それを知っていてさっきフォルド先生があんな顔をして「ジュドーを呼んで来い!」なんて言ったことも理解できた。
「とにかく、フォルド先生がいやらしい顔してお兄ちゃんが来るのを待ってるんだからね?」
「そういう風に言うのやめてくれないリィナ!? まるで今から禁断の地に足を踏み入れたフォルド先生に襲われるふうに聞こえるじゃん!?」
「とにかく行ってきなさいよ? このまま放っておいたら、フォルド先生が不審者にされて通報されるんだし?」
とルーが、呆れて言い続ける。
「わぁーったよ! 行くって? もう……フォルド先生、本気じゃないよな?」
トボトボと歩くジュドーの後ろを見てさらにため息をつく三人。
「全く、あのエロ生徒とエロ教師が……!」
エルが頭を抱えた。
*
「ふぅ……」
一方のアムロは、ひとまず一夏達に別れを告げてパーフェクトガンダムの再試験を行っていた。次は航続距離だ。自由に近くの空域を飛行して、どれほどの飛行距離が可能かを試す試験であるが。その途中にやや疲れを感じたのか、アムロはある無人の浜辺へと降り立つと、パーフェクトガンダムを解除して短パンとTシャツのラフの姿となって砂浜に座った。
「パーフェクトガンダムの性能は抜群だけど、こうも長時間なら疲労も抜群だな?」
「ハロハロ!」
いつものように、ハロは僕の小脇に抱えられた。
「試験中だけど、ちょっとだけ休憩ぐらいはいいよな?」
そう僕は深呼吸と共に疲れた体を背伸びさせて静かに漂う波の音を聞きながら目をつむった。
すると、のんびりくつろぐ僕の耳元が何かを聞き取った。
――……~♪
綺麗な女性の歌声であった。透き通った、綺麗で美しい優し気な声。それが僕の耳元へ届くと共に風に乗って彼の髪を優しくなでた。
「この歌は……?」
立ち上がると、僕は吸い寄せられるかのようにその歌声の聞こえる方向へゆっくりと歩いていくではないか。
「何だろ? この歌、何処かで聞いたことがある……」
懐かしい歌だった。小さい頃、母さんが僕に歌ってくれた子守歌とどこか似ている……
――母さん……
今は亡き、お母さんの面影を浮かべて、僕は声の方向へ歩き続ける。
歩き続けてたどり着いば場所、そこはビーチに設けられた一軒のログハウスからだった。
そして、その歌声の主はハウスのガーデニングに居て、椅子に座りながら歌い続ける僕の同い年の少女であった。黄色いワンピースに、団子ヘアーの……美少女だ。
「……?」
すると、少女は歩み寄る僕の気配に気づいてそっと振り向いてきた。僕はやや驚く。
「す、すみません……綺麗な声だったから?」
僕の、あいまいな言い訳。しかしそんな少女は僕を不思議に見つめた後。
「フフフ……」
と、優しく微笑んでくれた。どうやら、僕を不審者として見ていないようだった。僕はホッとした。
それから、少女は僕から波打つ海の方へと視線を向けて、じっと見つめていた。僕はどうすればいいのやら、気まずい雰囲気と沈黙が続いた。
しかし、僕はまたありきたな言葉で口を滑らせてしまう。
「海が……すきなのかい?」
その一言に、少女はまた僕の方へ振り向いた。そして、笑んでこう返す。
「海、綺麗でしょ?」
「う、うん……」
「綺麗なものが嫌いな人が居て?」
「……いない、かな?」
「それに……」
と、少女は椅子から立ち上がって僕の……僕の目を見つめた。僕は緊張して何も言えなくなってしまった。これほどドアップで見られたら、目をそむけたくなってしまう。
「綺麗な目をしているのね?」
「えっ……?」
「純粋で、綺麗な目……」
「……」
僕は、この不思議な少女を見つめた。何か、共通している何かを感じてしまった。彼女から純粋と、好奇心と、優しさを感じたのだ。この感覚は……
「アムロ……」
そんな二人のやり取りを、遠くから見ていたのは明沙であった。
水着の上にパーカーを着て、突然いなくなったアムロを探してここまでたどり着いたのだが、向こうのログハウスで見知らぬ少女と向き合うアムロにやや心が不安になった。
しかし、これは女性がよくいだく「嫉妬」ではなかった。彼女も、あの少女から漂う何かをわずかであるが感じとれた。純粋で好奇心の強く、そして優しさ……否、母性に満ちたあの少女。まるで、アムロが求めていたすべてを兼ね備えた、そんな女性に見えた。
それにくらべ、自分は……と、比較してしまう。そういう意味では違う「嫉妬」になってしまった。
悲し気に、悔し気に、目の前の二人を明沙は見つめていた。
*
その夜、合宿先の旅館にて携帯越しのやり取りが行われていた。箒である。
「……姉さま? 私です……はい、例の機体はもう完成したのでしょうか? ……では、明日にでもお願いします……はい、負けたくないのです! あの男に、『嶺アムロ』だけには! この私に、『ガンダム』を凌ぐ強い力を与えてください!!」
後書き
次回
「パーフェクトガンダムVS紅椿」
~どうでもいいようなコーナー~
「ダブルゼータってさ? なんで合体式にしたんだろ?」
「何突然?」
「ゼータガンダムの変形はともかく、ダブルゼータって合体の意味あるの?」
「いくつかのコアファイターがロボットに変形合体する。一様男のロマンってやつだな?」
「それはそうとして、何の需要があるんだ?」
「そりゃ~……子供が見るためにそういう設定にしたんじゃない?」
「わかるけど、ガンダムはリアルロボットアニメーションだぞ? 戦闘に役立つ機能で挑まないといけないじゃん? 変形で飛行形態になれば離れた目的地まで高速に行ける。でも、合体……って?」
「ダブルゼータ重いから分離合体になったとか?」
「Gフォートレスはどうすんだよ?」
「ああ、忘れてた。一様あったな? 出番あんまなかったけど? あれって、戦闘機っつうより爆撃機だよな?」
「フォートレスだけでよくね?」
「まぁ、一様公式設定があるんだろうよ?」
結局、わからないままダブルゼータは「男のロマン」と「収納に便利」という結論になりました……
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